皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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kanamoriさん |
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平均点: 5.89点 | 書評数: 2426件 |
No.966 | 6点 | こわされた少年- D・M・ディヴァイン | 2010/08/08 18:20 |
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普通の本格パズラーであれば、後半になって事件が動き出すあたりから小説が始まってもおかしくないのですが、冒頭の少年の失踪から、学校及び家庭の人間関係、事件の背景の説明などで小説の半分を費やすというゆったりとした展開は、ディヴァインの作風を知らないとちょっとついていくのがきつそうです。
二人目の被害者が少年の姉に言った「あなたは彼に似ていない」という伏線は面白いのですが、提示方法が巧くなく効果をあげていないのがちょっと惜しい。 トリックをほとんど使わず、ミスディレクションのみで意外な犯人の設定ということで、作者の特徴の出た作品だと思います。 |
No.965 | 6点 | はだかの太陽- アイザック・アシモフ | 2010/08/08 14:04 |
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「鋼鉄都市」に続く地球人刑事イライジャとロボットコンビによるSFミステリ第2弾。
今回は、ロボットが大多数を占める別惑星が舞台になっていて、密室からの凶器の消失という不可能トリックを扱っています。特殊世界の本格ミステリという点では前作と同じですが、真相はやや意外性に欠け、前作より出来は落ちる気がします。 ただ、惑星ソラリアに関する趣向はSF作家の本領が発揮されていて読ませます。 |
No.964 | 7点 | 死者の中から- ボアロー&ナルスジャック | 2010/08/08 13:45 |
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この作品もボア&ナルの心理サスペンス・ミステリの傑作だと思います。
死んだはずの女性の出現というのは「悪魔のような女」を踏襲したかのようですが、その意味合いは全然違います。高所恐怖症の男という主人公の心情描写が丁寧に描かれていて、それが第2部で主人公が陥る悪夢の状況を際立てているように思います。 文庫は絶版のようですが、簡単に読めない状況はもったいない逸品です。 |
No.963 | 7点 | 悪魔のような女- ボアロー&ナルスジャック | 2010/08/08 13:20 |
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ボア&ナル・コンビの合作ミステリ第1作で、サスペンスミステリの教科書のような作品。
逆にいえば、今では愛人と結託した妻殺しのプロットは定型すぎて、謎解きミステリとしては仕掛けがほぼ見えています。タイトルもある意味ネタバレ気味ですが、心理サスペンスの古典名作には間違いありません。 |
No.962 | 3点 | ゴールド1 密室- ハーバート・レズニコウ | 2010/08/08 13:00 |
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80年代に出たコテコテの密室ミステリということで、珍品ではありますが、文章の酷さ(翻訳の問題もある)で読み終えるのが非常に苦痛でした。
密室の中の被害者と重要容疑者というシチュエーションは、多分に「ユダの窓」を意識した状況ながら、トリックはいささか平凡。 探偵役の人物造形も酷い。 |
No.961 | 6点 | 衣裳戸棚の女- ピーター・アントニイ | 2010/08/08 12:49 |
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素人探偵ヴェリティものの本格ミステリ第1作。
さすがに、”戦後最高の密室ミステリ”という惹句は大袈裟ですが、誰もが考えつかなかったバカミス的解決法がユニークではあります。軽妙なユーモアと味のある人物造形でサラッと読めます。 |
No.960 | 6点 | メリー・ウィドウの航海- ニコラス・ブレイク | 2010/08/07 20:59 |
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ギリシャ周遊の観光船上の殺人を扱った私立探偵ストレンジウェルズものの後期の作品。
容疑の船客たちが、いわくありげで過去に何らかのつながりがあるという設定で、最後は関係者全員を集めての謎解きというまさに正統クラシック・パズラーそのものでした。 金持ちの未亡人など登場人物たちの造形が面白く、何気ない描写が伏線になっていて、まずまずの佳作という印象です。 |
No.959 | 6点 | 死の殻- ニコラス・ブレイク | 2010/08/07 20:43 |
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私立探偵ナイジェル・ストレンジウェイズ登場のシリーズ第2作。
往年の名飛行士への脅迫・殺人事件を扱っていて、テーマは復讐です。足跡のない殺人のトリックは陳腐ですが、もともとトリック主体のミステリではなく、プロット自体の仕掛け(構図の逆転)がキモで、登場人物の性格描写がしっかりしているため、真相にも説得力があるように思いました。 |
No.958 | 7点 | 心ひき裂かれて- リチャード・ニーリィ | 2010/08/07 20:24 |
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小泉喜美子のエッセイで、ニーリィのミステリはフーダニットでも、ハウダニットでも、ホワイダニットでもない。謎そのものが謎だ、という趣旨の分析があったが、まさに同感。
精神不安定で暴行魔に襲われた主人公の妻を巡る心理サスペンスを、連続して発生する暴行事件を絡めて描いていますが、訳文の悪さもあり中盤まではちょっとリーダビリティに欠ける。しかしながら、隠されていた謎が判明する終盤のサプライズは相当のもので、作者の最良作だと思います。 |
No.957 | 6点 | 殺人症候群- リチャード・ニーリィ | 2010/08/07 16:17 |
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連続殺人もののサイコ・サスペンス、と思わせて、叙述の仕掛けで驚かすタイプのミステリ。
最近は類似趣向のミステリがいくつか出ているので、サプライズの程度は読書経験によって異なるでしょうが、少ない登場人物のシンプルなプロットながら、大きな驚きを与えてくれる逸品でしょう。 |
No.956 | 7点 | ロウフィールド館の惨劇- ルース・レンデル | 2010/08/07 15:29 |
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異常心理もののサスペンスの傑作。
サスペンス小説は、いったいどういった結末が待っているのかの興味で物語を引っ張っていくのが通常だと思うが、本書は冒頭でいきなり結末を明かしたうえで、物語が展開していく。 文盲という他人に知られたくない秘密をかかえた家政婦ユーニスの心の闇と崩壊の過程を描くだけで、ここまでのサスペンスをものにする作者はやはりスゴイとしか言いようがない。 |
No.955 | 6点 | まっ白な嘘- フレドリック・ブラウン | 2010/08/07 15:08 |
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「東西ミステリーベスト100」海外編の135位は、短編の名手によるヴァラエティに富んだミステリ作品集。
だいぶ以前に読んだので、ほとんど内容を忘れてしまっていますが、最後の「うしろを見るな」だけは鮮明に覚えています。まあ、オチは見え易いけれど、新本格以降の読者でもうけるんじゃあないかな。 |
No.954 | 8点 | 二人の妻をもつ男- パトリック・クェンティン | 2010/08/07 14:37 |
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最後のどんでん返しによって著者の最高傑作とされるサスペンス・ミステリ。
サスペンス路線に変更後も、本格ミステリ時代のシリーズ探偵・ダルース夫婦を主役にすることに固執してきた作者ですが、本書はノンシリーズにすることでプロットの幅が広がり、緊迫感にあふれたミステリになっています。 実際、ダルースものは妻アイリスの不在(「女郎ぐも」「悪魔パズル」)をプロット上の必要性で演出したり、「わが子は殺人者」では、わざわざダルースの近親者を主人公にしていますが、本書で100%ホイーラーの作風との感がします。 人物造形と心理描写の綾で読者をミスリードするディヴァインにも通じるところがある名作だと思います。 |
No.953 | 4点 | 陸橋殺人事件- ロナルド・A・ノックス | 2010/08/07 13:52 |
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ゴルフ仲間の4人が、プレー中に発見した「顔のない死体」と暗号のようなメモを基に推理合戦を展開する。
探偵役が筋違いの解答を提示していくプロットはアンチ・ミステリを志向しているバークリーの諸作を彷彿とさせますが、ダミーの解答であってもある程度説得力や面白味がないとダメでしょう。 提示された証拠が意味がないものであったり、真相がヒネリのない尻すぼみで終っておりイマイチの内容です。 11番目の戒律 探偵小説の真相は、ある程度ひねりのあるものでなければならない。 |
No.952 | 7点 | ブラウン神父の知恵- G・K・チェスタトン | 2010/08/06 23:08 |
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「東西ミステリーベスト100」海外編の118位は、ブラウン神父シリーズの第2短編集。
世評的には、法廷ミステリ趣向と意外性のある「通路の人影」とか、ファンタスティック風味で意外な犯罪が暴かれる「ペンドラゴン一族の滅亡」が傑作といわれているようですが、個人的にはバカミス的な密室からの人間消失「グラス氏の失踪」がツボでしたね。この作品は翻訳も気が効いています、原文はどうなっているんだろうか。 |
No.951 | 6点 | 切り裂かれたミンクコート事件- ジェームズ・アンダースン | 2010/08/06 21:24 |
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疑似古典本格ミステリ、”オールダリー荘”シリーズの第2弾。
前回の事件でパーテイに懲りた荘園主の伯爵ですが、映画撮影に協力し、結果的に荘園に色々な思惑の人々が集まってくるという前回同様のシチュエーションになってしまうのが笑える。 アリバイ偽装のトリックはちょっと拍子抜けの感がありますが、ダミー探偵役を設定して物語を翻弄させながら、今回もヴォリュームのある解決編で楽しませてくれてます。 |
No.950 | 7点 | 血染めのエッグ・コージイ事件- ジェームズ・アンダースン | 2010/08/06 21:09 |
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黄金時代の探偵小説を再現してくれた”オールダリー荘”シリーズの第1弾。
伯爵の荘園屋敷のパーテイに集まった色々の思惑を秘めた招待客のなかで発生する殺人事件。いかにもクラシック・ミステリの常道の設定で、スパイや強盗が絡む複雑な事件を、ユーモアを交えた明るめの雰囲気で描いています。 バカミス風の豪快トリックも面白いが、延々と続くすごい分量の解決編には感嘆。作者の本格ミステリに対する愛情がにじみ出ている逸品です。 |
No.949 | 4点 | ぶち猫 コックリル警部の事件簿- クリスチアナ・ブランド | 2010/08/06 20:49 |
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ミステリ短編集。
戯曲のシナリオ、ショート・ショート、エッセイなど、バラエテイに富むと言えば聞こえいいが、拾遺集の感は否めない作品集でした。 |
No.948 | 7点 | 緑は危険- クリスチアナ・ブランド | 2010/08/05 21:19 |
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戦時下の野戦病院を舞台にした本格ミステリ。
派手なトリックはありませんが、限られた容疑者の中から犯人を当てる端正なフーダニットでした。 代表作の「ジョゼベルの死」などと比べて、アクの強いところがないので、ブランドの入門書に最適だと思います。 |
No.947 | 6点 | 帽子から飛び出した死- クレイトン・ロースン | 2010/08/05 21:05 |
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奇術師グレート・マーリニが探偵を務めるシリーズ第1弾。
密室のトリックは、魔術的な殺人現場の雰囲気創りに寄与していますが、真相は意外と平凡だと思いました。著者の短編のほうがはるかにキレがあります。 むしろフーダニットが本書のキモで、さりげない伏線の張り具合が絶妙です。 |