皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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E-BANKERさん |
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平均点: 6.01点 | 書評数: 1785件 |
No.5 | 7点 | 盗まれた都市- 西村京太郎 | 2009/07/30 22:32 |
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私立探偵、左門字進シリーズ。
日米ハーフの名探偵左門字が活躍するシリーズは、作者初期の野心溢れる良質な作品が並んでいます。 人口10万人のある地方都市が、ある日を境に突如「反東京」という狂気に支配されてしまう。その謎を解明すべく乗り込んだ左門字夫妻は、たちまち狂気に巻き込まれ、あげくの果てには殺人事件の容疑者にされてしまう。さて、この「狂気」の正体は何か? というのが本作の粗筋。 何はともあれ、この「プロット」自体がたいへんによくできており、面白い。 左門字もこの理不尽な狂気に巻き込まれるわけですが、それに対して冷静にかつ鋭い観察&推理力で対抗する姿に何ともいえない魅力を感じてしまいます。 真相は、意外といえば意外で、想定内といえば想定内(どっちだ?)。 現実的に考えて、マスコミはともかく市民感情をここまでコントロールできるのか? という疑問は湧くのですが、ナチズムの例を出すまでもなく、人間とは「より声の大きい方」へ流されてしまう特徴があるのでしょうし、特に日本人はその危険性がより大きいような気はします。 まぁ、昨今溢れてる作者のトラベルミステリーとは一味も二味も違う作品ですし、一読に値すると言ってよいでしょう。 (マスコミの功罪って大きいですよねぇ・・・本作を読んで、まず感じるのはこのこと。マスコミの良心ってなんなんでしょうか?) |
No.4 | 6点 | マジックミラー- 有栖川有栖 | 2009/07/30 22:17 |
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講談社から出した最初の作品。
火村准教授も江神さんも登場しないノンシリーズの1冊。 ~琵琶湖に近い余呉湖畔で女性の死体が発見された。殺害時刻に彼女の夫は博多、双子の弟は酒田にいてアリバイは完璧。しかし、兄弟を疑う被害者の妹は推理作家の空知とともに探偵に調査を依頼する。そして謎めく第2の殺人が・・・犯人が作り出した驚愕のトリックとは?~ 作者としては珍しく(と言うかこれ1作だけでは)、時刻表まで駆使したトラベルミステリー風アリバイ崩し。 ただし、そこは「新本格の雄」とも称される作者ですから、単なる旅情ミステリーではありません。 「双子」というのも1回はトライしてみたくなるテーマなんでしょうねぇ。 きれいにとはいかないまでも、なかなか巧みな騙し方だとは思います。 それと、やっぱり「アリバイ講義」(!)。 書きたかったんでしょうねぇ・・・ というわけで、ボリュームの割にはいろんな要素を詰め込んでいて、まずは読んで損のない1冊ではあるでしょう。 (プロットそのもは既視感あり。まぁそれは致し方ないですね。) |
No.3 | 5点 | 摩天楼の怪人- 島田荘司 | 2009/07/28 22:45 |
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御手洗潔シリーズですが、舞台はNY。
NYに留学中ということで、若き日の御手洗の姿がなかなか凛々しく描かれてます。 ~ニューヨーク・マンハッタン。高層アパートの1室で死の床にある大女優が半世紀近く前の殺人を告白した。事件現場は1階、そのとき彼女は34階の自室にいてアリバイは完璧だったというのに・・・。その不可能犯罪の真相は、彼女のいう「ファントム」とは誰なのか? 建築家の不可解な死、時計塔の凄惨な殺人、相次いだ女たちの自殺、若き御手洗が摩天楼の壮大な謎を鮮やかに解く!~ 今回は、マンハッタンに聳え立つ高層マンションが事件の舞台&主役。 嵐の日に起きた殺人事件、エレベーターが停止したにもかかわらず、50階から1階へテレポーテーションしたとしか思えない、という不可能状況に御手洗が挑む・・・というのが本筋。 トリックについては、読者に解明しろというのはちょっと酷じゃないかというレベルで、「へぇーそんな秘密があったのねぇー」というような読後感になっちゃいます。 この辺り、「荒わざ」とか「荒唐無稽」とか言われても、読者には想像可能な範囲内にあった初期~中期の作品に比べると、どうしても不満感が残る感じなんですよねぇ・・・(作者が進化したということかもしれませんが) あと、本筋とはあまりリンクしてませんが、摩天楼やNYセントラルパークの歴史などの薀蓄はなかなか面白く読ませていただきました。 (本作はタイトルからも分かるように、ルルー「オペラ座の怪人」が下敷きになってます。そういう意味では、自然に真犯人も分かっちゃうんですよねぇ・・・) |
No.2 | 7点 | 出雲伝説7/8の殺人- 島田荘司 | 2009/07/28 22:35 |
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吉敷刑事シリーズの第2作目。
今回の舞台は、山陰地方と寝台特急「出雲」! ~山陰地方を走る6つのローカル線の終点と大阪駅に女性のバラバラ死体が流れ着くという大事件が発生、なぜか頭部だけは発見されず。捜査の結果、被害者の女性は死亡推定時刻に「出雲1号」に乗車していたことが判明するも、容疑者には鉄壁ともいうべきアリバイが・・・~ 寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁に続く、吉敷刑事分数シリーズですが、猟奇的な殺害方法や不可能状況といった、初期島田作品に共通のガジェットが本作品でも多く取り入れられています。 列車を使ったアリバイトリックというと、好き嫌いの分かれる分野かもしれませんが、やはり島田流トラベルミステリーは一味も二味も違うというべきで、バラバラ殺人の必然性とアリバイトリックをうまい具合に処理しています。 ただし、この設定も今は昔。登場した列車やローカル線の大部分は今は消滅しているのが悲しい・・・ 事件の背景として引用される「ヤマタノオロチ」伝説へのなぞらえ方も見事に嵌っていて、水準以上のミステリーに仕上がっています。 (本作までの吉敷はキャラがはっきりしてませんね。その分、次作「北の夕鶴」での吉敷の変身振りに驚くことに!) |
No.1 | 4点 | 奇跡の人- 真保裕一 | 2009/07/28 22:29 |
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ストーリーテラーとして定評のある作者としては中途半端な作品。主人公をはじめ登場人物のキャラもなにかしっくりこない印象。もう少しやりようがあったのでは? |