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E-BANKERさん
平均点: 6.01点 書評数: 1809件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.18 6点 ポアロ登場- アガサ・クリスティー 2012/05/27 21:50
初期のポワロ登場作品をまとめた作品集。
全ての作品が、良き相棒であるヘイスティング氏とのコンビ。ポワロが自慢の灰色の脳細胞を使って事件を解く!

①「<西洋の星>盗難事件」=対になる2つの宝石「西洋の星」と「東洋の星」。そこにはある人物の謀略があった・・・
②「マースドン荘の悲劇」=本作では美女にまんまと騙されるヘイスティングをポワロがからかう、というプロットが多用されているが、本編もそう。
③「安アパート事件」=相場より大幅に格安な賃料のアパートは・・・やっぱり「ウラ」があった。
④「狩人荘の怪事件」=これは古典的な短編作品なんかでよく使われる「仕掛け」だが・・・普通に考えればムリがある。
⑤「百万ドル債券盗難事件」=短い作品には、こういう小粋なトリックがよく似合うという見本。
⑥「エジプト墳墓の謎」=本編の舞台はエジプト。「海を越える」ことを極端に嫌がるポワロが微笑ましい。プロット自体は小粒。
⑦「グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件」=登場人物自体にトリックが仕掛けられている・・・これも本作に多用されている。
⑧「首相誘拐事件」=英仏間にまたがる首相の誘拐事件をポワロが請け負う。でも、この程度で誘拐されてしまう首相って・・・?
⑨「ミスタ・ダヴンハイムの失踪」=失踪そのものの謎解きはともかく、その後の隠れ家に関するポワロの推理・・・まぁ、よくある趣向ではあるが、これを実践する犯罪者っているかぁ?
⑩「イタリア貴族殺害事件」=これも登場人物そのものに「仕掛け」があるパターン。
⑪「謎の遺言書」=おじから財産を譲渡されるはずの「遺言書」にはある仕掛けが・・・かなりしょぼい。
⑫「ヴェールをかけた女」=本作の特徴:『美女は基本的に信用するな!』 本編もそう。
⑬「消えた廃坑」=西洋人にとって、中国人はやっぱり謎の人々っていうことなんだろうな。
⑭「チョコレートの箱」=ポワロがベルギーで警察官だった時代の失敗談というのが珍しい。チョコレートの入れ物とふたの色が異なっている理由が面白い。

以上14編。
何だか、ホームズ物の作品集を読んでいるような感覚だった。
ポワロ-ヘイスティングのコンビは、そのままホームズ-ワトスンの名コンビそのままの雰囲気。
でも、それだけ古臭さは感じるし、長編有名作品のような絶妙なミスリードや伏線といった技巧はなく、謎の提示から一足飛びに解決まで行ってしまうのがちょっと物足りない。
プロットも単純なものが多いので、やっぱり純粋なクリスティファンの方なら、長編を先に読む方をお勧めします。
(特にコレっていうお勧めはないなぁ・・・)

No.17 8点 アクロイド殺し- アガサ・クリスティー 2012/03/02 22:28
650冊目の書評は、例の「仕掛け」であまりにも有名な作者の長編6作目で。
確か大昔にジュブナイル版で読んで以来、超久々に再読。

~深夜の電話に駆け付けたシェパード医師が見たのは、村の名士・アクロイド氏の変わり果てた姿だった。容疑者である氏の義子が行方をくらませ、事件は早くも迷宮入りの様相を呈し始めた。だが、村に越してきた変人が名探偵エルキュール・ポワロと判明し、局面は新たな展開を見せる。驚愕の真相でミステリー界に大きな波紋を投じた名作~

「さすが!」としか言いようがない。
計算され尽くした作者の技量や構成力にはただただ脱帽ですね・・・
ラストで詳らかにされる、ポワロの推理にはやはり相当のインパクトを感じざるを得ませんでした。
例の「フェアかアンフェアか」という論争については、ミステリーそのものが成長期であった頃の話であり、現代の読者にとっては特に気にする必要はないはず。

果たして本作の「仕掛け」は叙述トリックなのだろうか?
無論、真犯人によって手記にまぎれて意図的に隠されていた箇所もあり、その点でちょっとアンフェアっぽさは残るのだが、真犯人を特定するロジックは読者にも十分解き明かせるものである。(デイクタフォンの件なんかは秀逸だと思うが・・・)
要は、容疑者に視点人物を含めるかどうかというところが「鍵」なのだが、数多のミステリーを読み続けてきた今だからこそ、オリジナルである本作の「スゴ味」が伝わってくる。

とにかく、大作家クリスティのすごさを味わうには外せない1冊なのは間違いなく、後世に残すべき作品という評価。
(「仕掛け」を知っててここまで面白く読める作品というのもなかなかない)

No.16 8点 葬儀を終えて- アガサ・クリスティー 2011/12/22 23:41
エルキュール・ポワロ登場の長編第25作目の作品。
作者中期の傑作という評判もありますが・・・

~「リチャードは殺されたんじゃなかったの?」・・・アバネシー家の当主・リチャードの葬儀が終わり、その遺言公開の席上、末の娘のコーラが無邪気に口にした言葉。すべてはその一言がきっかけだったのか。翌日、コーラが惨殺死体で発見される。要請を受けて事件解決に乗り出したポワロが、一族の葛藤のなかに見たものとは?~

「実にうまい」作品。熟成したワインのような味わい(!)
とにかく、プロット的にはクリスティらしさが十分に出ていて、これぞ王道ミステリーと呼びたくなる。
プロットの鍵は「大いなる欺瞞」という表現が合ってるかなぁ・・・
作品序盤から、作者のミスリードは始まってるわけで、並みの読者なら簡単に騙されるかもしれません。
「鏡」の伏線なんて秀逸でしょう。(何とも言えない小憎らしい演出です)

敢えて難を言うなら、あまりにも「らし過ぎて」、クリスティに慣れた読者ならば何となく気付いてしまうかもしれないというところか。
でもちょっとその「動機」には気付かなかったなぁ・・・
あとは、真犯人のある行動が、あまりにもリスクがあって、ムリがあるのではないかという点。
(いくら「知らなかったり」、「しばらく見ていなかった」としてもねぇ・・・)

というようにアラを探せばあるのですが、トータルではやはり高品質な佳作という評価は揺るぎないのではないでしょうか。
(初読の筈なのに、既視感があったのはなぜ? もしかして再読だったのか?)

No.15 4点 魔術の殺人- アガサ・クリスティー 2011/10/10 16:20
ミス・マープル物の第5長編。
セント・メアリ・ミードから離れ、古い友人のためにひと肌脱ぐマープル。
~旧友の依頼でマープルは変わり者の男と結婚したキャリイという女性の邸宅を訪れた。そこは非行少年ばかりを集めた少年院となっていて、異様な雰囲気が漂っていた。キャリイの夫が妄想癖の少年に命を狙われる事件が起きたのもそんななかであった。しかも、それと同時刻に別室では不可解な殺人事件まで発生していた!~

正直「たいしたことない」作品。
「魔術の殺人」などという、大げさな邦題こそ付けられてますが、魔術などというほどのトリックではありません。
(原題は、『They do it with mirrors』。殺人の現場を奇術やショーの舞台と舞台裏に見立てているわけです・・・)
「誰が殺せたか」といういわゆるアリバイが鍵となるわけですけど、別にマープルでなくて刑事レベルでも十分に看破できるようなトリックだと思うんですけどねぇ。
第2の殺人もよく意味が分からなくて、はっきりいって蛇足気味。
何より、複雑でドロドロした一族の姿をさんざん描写している割には、ミスリードもそれほどなく、結局最も怪しげな人物が真犯人という展開はガッカリ。
ということで、辛い評価となってしまいました。
(別に少年院という設定じゃなくてもよかったんじゃない?)

No.14 5点 雲をつかむ死- アガサ・クリスティー 2011/08/12 23:58
ポワロ登場作でいえば10番目の作品。
大昔にジュブナイル版で読んで以来、超久々に再読。
~パリからロンドンに向かう定期旅客機が英仏海峡にさしかかったとき、機内に蜂が飛び回り始めた。乗客の1人が蜂を始末したが、最後部席には老婦人の変死体が。そして、その首には蜂の毒針で刺されたような痕跡が残っていた! 大空を飛ぶ飛行機という密閉空間で起きた異様な事件にポワロの推理は?~

他の佳作に比べると、確かに1枚落ちる作品と言わざるを得ないかなぁ・・・
飛行機の機内というほぼ完璧なクローズド・サークル。どれもいわくありげな乗客(容疑者)が12名も登場。毒蛇の毒による毒殺・・・
など、事件設定は実に魅力的なんですがねぇー。
ポワロが最終章で指摘する真犯人と殺害の手口、そして動機。
「動機」についてはまぁ納得できます。(読者には推理不能だとは思いますが)
問題はやはり殺害の手口でしょうか。
ある乗客の「持ち物」が問題になるのですが、これはかなり疑問符ですねぇ・・・
(ネタバレかもしれませんが)この「持ち物」だけで、ある人物になりすますのは相当に困難(ていうか、普通気付くよ!)。
全体的には好感の持てる作品だけに、非常に残念!

No.13 8点 杉の柩- アガサ・クリスティー 2011/05/31 22:25
E.ポワロが登場する18番目の作品。
ミステリーとラブストーリーがうまくミックスされた佳作。
~婚約中のロディとエリノアの前に現れた薔薇のごとき女性メアリー。彼女の出現でロディが心変わりし、婚約は解消された。激しい憎悪がエリノアの心に湧き上がり、やがて彼女の作った食事を食べたメアリーが死んだ。犯人は私ではない、エリノアは否定するが・・・真実は?~

これは、隠れた(?)名作では!?
最近読んだクリスティ作品の中ではダントツに面白かったような気がします。
事件の鍵は、関係者がついた少しづつの「嘘」と不可解な行動・・・その1つ1つがポワロの灰色の脳細胞によって解明されていく・・・
途中まではエリノア以外に「これは怪しい」という容疑者も浮かばないまま、最終章へ突入。
裁判シーンが描かれる「第3部」で真相が明かされるわけですが、これまで全くノーマークだった1人の事件関係者が真犯人として糾弾されるカタルシス!
読者が解明するのは厳しいですが、2つの「物証」もなかなか効果的です。(相変わらず知らない薬物が出てきますが・・・)
ネームバリューでは、他の有名作に劣りますが、高いクオリティーの良作という評価で間違いないでしょう。
(何というか、実に気品のある作品でクリスティらしさが十二分に出ています。ラストのポワロのセリフもなかなか味わい深い・・・)

No.12 7点 三幕の殺人- アガサ・クリスティー 2011/04/15 23:09
ポワロ物としては9番目の作品。
かなり以前、確か新潮文庫版で読んで以来の再読。
~引退した俳優が主催するパーティーで、老牧師が不可解な死を遂げた。数か月後、あるパーティーの席上、俳優の友人の医師が同じ状況下で死亡した。俳優、美貌の娘、演劇パトロンの男などが事件に挑み、名探偵ポワロが彼らを真相へと導く~

個人的には、非常に高いレベルで、出来のいい作品だと思います。
もちろん、「動機」の問題はいろいろな方々が書評しているとおりで、まぁ「問題あり」ではありますが・・・
「こんな理由で殺人を犯すか?」というのは正常な感覚ならば当然なのですが、そこは推理「小説」なのですから・・・
プロットとしてはよく練られていると思いますし、いかにもクリスティらしさに溢れた作品だと感じますね。
本物の「劇」の如く、ラストで鮮やかにある人物の姿が反転させられる、ましてやその人物とは「○○」なのですから、舞台効果は満点でしょう。
というわけで、作者の格調高い作品の1つとして、十分にお薦めできる作品です。
(相変わらずポワロは最後までもったいぶってくれますが、今回は本当に第1の殺人の「動機」が分からなかったんですね・・・)

No.11 8点 スタイルズ荘の怪事件- アガサ・クリスティー 2011/03/09 21:08
偉大なミステリー作家、A.クリスティの長篇デビュー作。
かつ、「灰色の脳細胞」を持つ名探偵、エルキュール・ポワロの初登場作品。
~旧友の招きでスタイルズ荘を訪れたヘイスティングは、到着早々事件に巻き込まれた。屋敷の女主人が毒殺されたのだ。難事件の調査に乗り出したのは、ベルギーから亡命して間もないE.ポワロだった~というのが粗筋。

読後にまず思ったのは、「これがデビュー作?」
さすが、ミステリーの歴史に燦然と輝く作者だけのことはあります。デビュー作とは思えないほどのクオリティ!
もちろん、細かい点では不満なところもあります。例えば、薬局でストリキニーネを買ったという場面・・・いくら相手のことを知らないとはいっても、そこまで間違うのかは大いに疑問。毒殺トリックの真相も、その辺りの専門知識なしではやや苦しいかなぁ・・・
まぁ、全体的にはその程度の齟齬は気にならないほどのプロットでしょう。ポワロの発言自体にかなりの伏線が張られている辺りもニクイ・・・
というわけで、ミステリー黄金世代の幕開けを飾る作品として、万人にお勧めできる良作という評価でいいのでは?
(ヘイスティングの道化ぶりはなかなか哀愁を誘います。ポワロも後年の作品よりも人間味があって好感が持てる・・・)

No.10 6点 愛国殺人- アガサ・クリスティー 2011/02/12 21:00
エルキュール・ポワロ作品のNO.19
いつもより多めの登場人物ですが、この登場人物の中に「欺瞞」が仕掛けられている・・・
~憂鬱な歯医者での治療を終えて一息ついたポワロのもとに、当の歯科医が自殺したとの連絡が入る。しかし、自殺の兆候を示すものは何もなく、本当に自殺なのか、それとも巧妙に仕掛けられた殺人なのか? マザーグースの調べにのって起こる連続殺人事件の果てに辿り着いたポワロの推理とは?~

ということですが、マザーグースは特に本筋とは関係なし。
実にクリスティらしい作品だなというのが読後の感想ですね。「動機」の謎から始まった自殺(殺人)事件が第2・第3と連続し、さらに複雑化していくうち、作者の術中に見事嵌っていく・・・そんな感じです。
動機も「顔をつぶされた死体」も、ミスリードするために読者に示された「手品のタネ」なんですよねぇ・・・まぁ普通騙されます。
ポワロの推理により、事件の構図がガラッと一変させられるラストのカタルシスが本作の白眉でしょう。
ポワロ物も中期に入ると、派手な展開よりは緻密な構成とでも表現すべき作品が多くなりますが、本作もその例に漏れず、円熟した作者の手技を堪能できる作品だと思います。ただ、ちょっと中盤ダレるのでそこがやや不満かな。
(タイトルの「愛国」っていうのはやっぱり違和感がある。けど、二重のミスリードになってるので、そういう意味ではうまいタイトル?)

No.9 6点 ひらいたトランプ- アガサ・クリスティー 2010/12/29 22:57
ポワロ物の長編。
トランプの代表的な遊びである「ブリッジ」が事件を解く鍵になる。
~名探偵ポワロは、偶然から夜ごとゲームに興じ、悪い噂の絶えないシャイタナ氏のパーティーに呼ばれていた。が、ポワロを含めて8名の客が2部屋に分かれブリッジに熱中している間に、客間の片隅でシャイタナ氏が刺殺されていた。しかも、居合わせた客は殺人の前科を持つ者ばかり・・・ブリッジの点数表を通してポワロは真相を追究するが~

一種のクローズドサークル内での事件ですし、最初から容疑者はほぼ4名に絞られています。
ポワロはブリッジの点数表や会話の中から真犯人を特定していく・・・というわけで、容疑者たちの心理が推理の大きな要素になるという展開。
まぁ、確かにラストは作者らしいサプライズが用意されているわけですが、やっぱり全体的に地味な印象はぬぐえず、真相も何となくスッキリしない気がしてなりませんでした。(ポワロの途中の発言も「ミスリード」というよりは、故意に捻じ曲げているといった感じなんですよねぇ・・・)
ブリッジについては別にルールを知らなくてもあまり本筋には関係ありませんのでご安心ください。
以前に二階堂黎人の短編(作品集「ユリ迷宮」中の「劇薬」)を読んでたので、個人的にはルール等理解して読むことができました。

No.8 6点 検察側の証人- アガサ・クリスティー 2010/12/04 18:42
クリスティの戯曲集の中では最も有名かつ秀作。
シンプルかつ短く、たいへん読みやすい作品と言えます。
他の方の書評では、ラストのどんでん返しが高評価の要因のようです。
確かに、それまでの事件の構図を一変させるラストは、「さすが!」と唸らせるものがありますし、戯曲らしく実に舞台栄えしそうな展開だと思います。
ただ、あのミスリード(あるいは変○)は普通気付かないですかねぇ? 舞台ではどのように処理されたのか気になるところです。
評価は若干辛めかもしれません。
気に入った方は、本書と小泉喜美子女史の「弁護側の証人」を読み比べてみるのも一興かと思います。

No.7 7点 ポアロのクリスマス- アガサ・クリスティー 2010/11/03 23:07
ポワロ物の佳作。
時期的にはちょっと早いですが、中味もあまりクリスマスを意識した内容ではありません。
本作、「館」に集まった大家族や怪しげな使用人、ゲストも登場という具合にいわゆる「コード型ミステリー」の要素満載ですが、そこは”いかにもクリスティー!”というストーリー&プロットを十分に感じさせてくれます。
正直、前半~中盤まではやや平板で盛り上がりに欠けるような気がしたところへ、ラストで意外な真犯人が指摘されます。
既視感のある「意外さ」なのは確かですが、見せ方がうまいですね。簡単に騙されてしまいました。
「外から施錠された密室(?)」というのも理由付けを含めてなかなか面白いと思います。

No.6 7点 白昼の悪魔- アガサ・クリスティー 2010/09/25 22:18
中期のポワロ物。
派手な設定はありませんが、丁寧に作りこまれた雰囲気のある良作という感じ。
孤島(陸路はありますが)のリゾートホテルを舞台とする、クローズドサークルでのフーダニットがメインですが、単なるアリバイ崩しかと思いきや、ラストで想像以上の「爆弾」が炸裂します!
タイトルもなかなか気が効いてます。「悪魔」という言葉が読者のミスリードを誘うようにできてるんですね(ポワロは最初から気付いていたと言ってましたが・・・)。
ただ、トリックの”肝”である「あのこと」はかなりリスク(バレる)があるんじゃないですかねぇ? 作品中ではみんな納得してますけど・・・

No.5 6点 五匹の子豚- アガサ・クリスティー 2010/08/28 00:07
ポワロ物の一作。
英国の童謡(?)「五匹の子豚」になぞらえた五人の容疑者が登場、ポワロが16年前の殺人事件の真相に迫ります。
5人の容疑者との面談内容や、それぞれに書かせた手紙を順に読ませていく展開に終始していて、確かにこの作品はかなり地味な部類に入るでしょう。
「最も犯人らしいと思わせた部分が実は犯人ではない最大の証拠である」というからくりがラストで示され、その点思わず唸らされます。
ただ、普通に読むとどうしても平板な感じがして、もう少しドラマティックな展開があってもいいなぁという感想になってしまいますねぇ・・・

No.4 7点 そして誰もいなくなった- アガサ・クリスティー 2010/08/21 00:04
300冊目の書評は歴史的なこの名作で。
今さら私ごときが書評するのもおこがましい限りです。
細かい部分はさておいて、やはり「孤島」というジャンル(?)を確立した意義は特大。
地元の童謡になぞらえて、次々と殺されていく招待客。殺人とともに1つずつ減っていくインディアン人形・・・こういう道具立てだけでもミステリー好きの心を痛いほどくすぐってくれます。
評点としてはやや辛いのかもしれませんが、やはり現代の成熟した同系統ミステリーと比較した場合、サプライズの大きさでやや劣るかなぁという部分で・・・
あと、動機も(10人殺すにしては・・・)

No.3 6点 カリブ海の秘密- アガサ・クリスティー 2010/06/25 22:43
ミス・マープルもの。
静養先の東インド諸島にあるリゾートホテル内で殺人事件に巻き込まれて・・・という展開。
「最初の被害者が”誰”を見て驚いたのか?」「ホテルオーナーの妻の奇妙な行動の理由は?」という2点が本作品の大きな謎として立ち塞がります。
まぁ、真相はそれほど突飛なものではなく、納得できる「意外な犯人」が指摘されるわけですが、本来なら完全に脇役的な役柄の登場人物が妙に出番が多いなぁ・・・と思ってたら「やっぱり」という感じでした。
あと、翻訳ものとしては抜群の読みやすさですね。

No.2 7点 オリエント急行の殺人- アガサ・クリスティー 2009/10/14 22:20
意外すぎる犯人物の最右翼でしょう。(「アクロイド・・・」も当然その一つですけど)
まずは作品の設定そのものがいいですね。雪の中で立ち往生するオリエント急行の中で起こる殺人事件・・・
被害者の体に残った多すぎる傷跡が問題になるわけですが、まさかそんな結末とは。
薄々そういうことかなぁと考えてはいましたが、実際そうですと言われると、「大技!」と唸らざるを得ません。
ただ、このネタは2度と使えないというのが本作の一番の特徴かもしれません。

No.1 7点 ABC殺人事件- アガサ・クリスティー 2009/10/12 15:27
私を最初に(レベル1の)ミステリー中毒にした記念碑的作品です。(今はレベル5くらいの中毒ですが・・・)
とにかく謎の提示が魅力的ですし、それに尽きるといっていいでしょう。「なぜ、犯人は被害者と殺害場所をABC順にしなければならないのか?」
それだけなんですが、最後、解決の場面でポワロが事件関係者を集めて真犯人を指摘したときに、感動で体が震えたのを今でもはっきり覚えています。

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E-BANKERさん
ひとこと
好きな作家
島田荘司、折原一、池井戸潤などなど
採点傾向
平均点: 6.01点   採点数: 1809件
採点の多い作家(TOP10)
島田荘司(72)
折原一(54)
西村京太郎(43)
アガサ・クリスティー(38)
池井戸潤(35)
森博嗣(33)
東野圭吾(31)
エラリイ・クイーン(31)
伊坂幸太郎(30)
大沢在昌(27)