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メルカトルさん
平均点: 6.02点 書評数: 1767件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.23 7点 決戦!忠臣蔵- アンソロジー(出版社編) 2024/02/16 22:42
夢枕獏が、山本一力が、諸田玲子が……「忠臣蔵」を描く! いままで戦国時代を舞台にすることが多かった「決戦!」シリーズだが、今回の舞台は江戸は元禄、テーマは「忠臣蔵」。当代きっての名手・七人が、日本人が愛し続ける物語に挑む。義挙を前にした人々の悲哀、本懐を遂げた男たちの晴れ晴れとした思い。そして、主君を守れなかった吉良方の無念……。今までにはない、”涙”の「決戦!」シリーズの誕生。
Amazon内容紹介より。

各賞を受賞した手練れの時代作家達がそれぞれの『忠臣蔵』を、思いを込めて書き上げた決戦!シリーズのひとつ。無論、真正面から描くには短編では容量が足りないので、スピンオフではないけれどサイドストーリーとなっています。主人公は大石内蔵助、不破数右衛門、内蔵助の妻りく、神崎与五郎の妻ゆい、吉良側のお抱え武士清水一学ら。勿論他の赤穂浪士の名前も色々出て来ます。その中で目立っているのは堀部安兵衛、小野寺十内、大高源五辺りか。

いずれも史実を基にしたフィクションでありながら、そんな事もあったかも知れないと思わせるだけのリアリティは持っています。全て佳作揃いで、中でもラスト二作は思わず落涙させられてしまいました。ありきたりな忠臣蔵には飽きた方にも珍品として重宝されそうな短編集です。

No.22 5点 厭な物語- アンソロジー(出版社編) 2024/02/14 22:11
誰にも好かれ、真っ当に生きている自分をさしおいて彼と結婚するなんて。クレアは村の富豪の心を射止めた美女ヴィヴィアンを憎悪していた。だがある日ヴィヴィアンの不貞の証拠が…。巨匠クリスティーが女性の闇を抉る「崖っぷち」他、人間の心の恐ろしさを描いて読む者をひきつける世界の名作を厳選したアンソロジー。夢も希望もなく、救いも光明もない11の物語。パトリシア・ハイスミス、モーリス・ルヴェル、ジョー・R.ランズデール、シャーリ・ジャクスン、フラナリー・オコナーらの珠玉のイヤミス集。翻訳文学未体験者もゾクゾクしながら読める短篇揃い。有名作から、隠れた衝撃作まで、一人では抱えきれない「厭な」ラストを、ぜひ体験してみてほしい。
Amazon内容紹介より。

印象に残ったのはパトリシア・ハイスミスの『すっぽん』(既読)、シャーリィ・ジャクソン『くじ』、ローレンス・ブロック『言えないわけ』位です。『くじ』は有名作で期待していましたが、それ程でもありませんでした。いずれも先が読める作品なので、評価としてはあまり高得点は付けられないですね。他は訳が分からないものとか、退屈さを覚えるもの等、とても褒められたものではありませんでした。

こう云うのを読むにつけ思うのは、やはり日本のミステリは世界一だという事です。あくまで個人の感想ですので、お前が言うなというご意見は甘んじて受けますが、日本を除いた全世界が束になってかかっても日本のミステリには勝てないと思います。特に本格ミステリに関してはレベルが違い過ぎると言っても過言ではないです。古典はその限りではありませんけどね。
本作品集もジャンル的にはイヤミスになるかと思われますが、日本のイヤミスの方が洒落の効いた粋な短編が多いですよ。何度も言いますがあくまで個人の感想です。

No.21 6点 名著奇変- アンソロジー(出版社編) 2023/10/03 22:28
教科書に載る誰もが知る
あの名作が現在に舞台を遷し、
奇怪な物語として蘇る! 

国民的ベストセラーが持つDNAを
次世代の小説家がさらに
進化させた第一級のホラーミステリ。

謎解き、考察…。どんでん返し! 
読書に馴染みのない方も
ぐいぐい一気に引き込まれる!
Amazon内容紹介より。

6編の中で元ネタを読んだのは『走れメロス』だけ。葉山嘉樹って誰?位の知識しか持っていない私に読む資格があるのか、とも思いましたが、問題なく読めました。更に著者は初めましての方ばかりで、大丈夫なのかとの不安もあったりしました。でもそれぞれが味を出していて結構楽しめました。一概にホラーと言っても、おそらくみなさんが想像している様なものとは違うと思います。それだけ日本のホラー小説も進化しているのかも知れないですね、人間の暗部を描いたものが多かったです。

中にはミステリっぽい作品もありますし、どんでん返しも。どれも一定の水準に達していますが、敢えて好みを交えて選ぶとすれば、相川英輔『Under the Cherry Tree』、大林利江子『せりなを書け』のツートップとしましょうかね。このお二方は文章がこなれており読みやすく、意外性もあり大変面白く読ませていただきました。

No.20 6点 怖い食卓- アンソロジー(出版社編) 2023/09/26 22:31
筒井康隆作〈定年食〉が物語るように、定年を迎えた男は最後に一家団欒の食卓上にて家族の胃袋へと消えて役目を終える。美味に酔う家族の笑顔が祝祭日にふさわしい。エロスの根源から湧き起こる人肉食への快美な誘惑。
『BOOK』データベースより。

カニバリズムばかりかと思いきや、そういう訳ではありませんでした。人肉かと思わせておいて実は・・・だったり、逆に植物に人間が取り込まれたりと様々な食に特化したホラー・アンソロジー。
当初7点にしようかと迷いましたが、意味不明なのが何作か混じっているので、その分を差し引いて6点としました。

印象に残っているのは最初の筒井康隆『定年食』、これは短い中にもストーリー性や家族間の機微を重視しながら、ストレートな表現力が生きています。他に作者らしいファンタジー色の強い、安倍公房の『魔法のチョーク』。流石の文章力とエンターテインメント性が前面に押し出された、谷崎潤一郎の『美食倶楽部』。ウルトラQ的な怪奇譚、ジョン・コリア―の『みどりの想い』。これは訳者が数多のミステリを翻訳した事で有名な宇野利泰であり、ここでも見事な仕事ぶりを見せています。他に既読ながら水谷準の『恋人を喰べる話』、村山槐多の『悪魔の舌』も良かったですね。

No.19 7点 ベスト本格ミステリ2018- アンソロジー(出版社編) 2023/06/18 22:33
本格ミステリ作家クラブが選んだ2017年のベスト本格ミステリ短編&評論のすべて!

小説◎
夜半のちぎり 岡崎琢磨
透明人間は密室に潜む 阿津川辰海
顔のない死体はなぜ顔がないのか 大山誠一郎
首無館の殺人 白井智之
袋小路の猫探偵 松尾由美
葬式がえり 法月綸太郎
カープレッドよりも真っ赤な嘘 東川篤哉
使い勝手のいい女 水生大海
山麓オーベルジュ『ゆきどけ』 西尾維新
ヌシの大蛇は聞いていた 城平京

評論◎
吠えた犬の問題 有栖川有栖
Amazon内容紹介より。

人気作家による、本格ミステリ作家クラブが厳選した2017年の短編アンソロジー。
全般的に高い水準を誇っており、それぞれが捻りの効いた、反転や意外な結末が味わえる本格ミステリに仕上がっていると思います。白井智之の『首無館の殺人』は荒さが目立つし、西尾維新の『山麓オーベルジュ「ゆきどけ」』はホワイダニットに拘っていますが、どうにも納得できない感があります。それ以外は特にこれといった欠点は見当たりません。各作家の特色がよく出ているのも好感が持てますし、十分満足のいくアンソロジーと言えると思います。

有栖川有栖の評論ははっきり言って余分だったですね。個人的にはいりませんでした。
尚、余談ですが読んだばかりの『バカミスの世界』に掲載されていた、霞流一の『わらう公家』が02に載っていたのはちょっと驚きました。しかし、この本格ミステリ作家クラブ、分かっているじゃないかと感心したのは確かです。

No.18 6点 賭博師たち- アンソロジー(出版社編) 2022/12/27 22:42
平穏な日々を嫌い、明日を拒み、ときには愛するものさえ裏切り、賭博師たちは凌ぎのために、一切の感情を捨て去る。己の神経を極限にまで研ぎ澄まし、“勝負”というただ一点のみに真実を見出そうとする彼らの生き方とはいかなるものなのか。人生の深淵を知り尽くした八人の作家が、非情の世界に生きる男たちの栄光と破滅を描破したベストアンソロジー。
『BOOK』データベースより。

黒岩重吾と樋口修吉(誰?)以外は十分楽しめました。それにしても八人の作家の中の二人が阿佐田哲也を主人公に持ってきているのには、流石に博打の神様、雀聖と呼ばれた男だと感じ入りました。その二人、生島治郎と清水一行は明らかにノンフィクションらしき短編で、阿佐田哲也の魅力を遺憾なく描写しています。特に有名なナルコレプシーという突然眠ってしまう奇病について両者ともページを割いています。何だかんだ言いながら最後にはかっぱいでしまう強者として描かれていて、又氏の意外は素顔をも知れます。

伊集院光はヒリヒリした博打と言うより官能小説の体を成しています。黒川博行はバリバリの麻雀小説で1ページ目から牌図が出て来ます。しかし、プロの主人公が簡単な絡繰りに気付かないのは不可解でした。佐藤正午は博打と恋愛を天秤にかけた様な作品で、最も小説らしい小説です。ただその分博打の醍醐味は味わえませんでした。

No.17 6点 ウルトラQ dark fantasy- アンソロジー(出版社編) 2022/08/01 22:53
憧れのマイホームを手に入れた主婦・加代子だったが、街のいたるところに書かれた“らくがき”に悩まされていた。消しても消しても翌日には再び現れる奇妙ならくがきは、いつしか加代子の家の中にまで現れて―「らくがき」。ほか、異星人との不思議な交流を描く「ウニトローダの恩返し」、失踪した人間たちの行き着く先は?「楽園行き」、連続変死事件の鍵を握る黒頭巾の男の目的とは!?「送り火」。あなたをアンバランスな世界へ導く4つの物語。大人気ドラマが完全ノベライズで登場。
『BOOK』データベースより。

2004年4月からテレビ東京で放映された作品の中から2話、6話、8話、10話の四篇をチョイスしてラベノイズ化された短編集。脚本、監督、作家が全て違うので、テイストの違う作品が味わえます。SF、ホラー、ファンタジーの要素が入り混じったものばかりで、ジャンル分類不可です。担当作家が皆ラノベ出身者ばかりで、ややクセ強めの文体が特徴ではあると思います。

個人的ベストは『らくがき』ですね。テンポよく話が進み、先が読めません。目まぐるしい展開にワクワクさせられ、突如驚愕に襲われます。オチもなかなか気が効いていると思いますね。他の作品も総じて面白く、心に残るものばかりです。最後の太田愛が脚本を書いた『送り火』が一番ウルトラQらしくないなと感じました。これは普通のファンタジーですね。ドラマの脚本を描き慣れているだけに、逆にそれが災いした気がします。

No.16 6点 平成ストライク- アンソロジー(出版社編) 2021/04/30 22:48
JR尼崎駅で通勤電車を待っていたカメラマンの植戸は電車脱線の報せを受ける。その後、ホームで見かけた高校生が事故の取材現場にも現れて…(「加速してゆく」青崎有吾)。私は悪を倒すため、正義のために、彼のブログに殺害予告を書き込み続ける(「他人の不幸は蜜の味」貫井徳郎)。平成に起きた、印象的な事件や出来事をテーマに9人の注目作家が紡ぐ衝撃のミステリ。今を手探りで生きる私たちの心に刺さる、珠玉の競作集!
『BOOK』データベースより。

青崎有吾の『加速してゆく』を読んだ直後は、なるほどそう言えば尼崎でマンションに突っ込んで、多くの犠牲者を出した電車脱線事故があったなと久しぶりに思い出しました。そしてこの作品がこのアンソロジーの規範となっていれば良いなと思うほどの良作でありました。しかし、他は平成という時代を振り返って、膝を打つような事件を扱ったものは天祢涼の東日本大震災のその後を描いた『From the New World』くらいです。あと消費税導入もありましたね。

本アンソロジーに寄稿している9人の作家は、全て平成デビューらしいですが、井上夢人は岡嶋二人として昭和デビューなので要らなかったかなと思います。作品自体もあまり印象に残らなかったですし。遊井かなめは平成の流行を散りばめただけの凡作だし、白井智之は相変わらずエログロ全開でやりたい放題だし。小森健太郎は唯一書下ろしではないので、ほとんど平成とは関係ありません。バカミススレスレのトリックはあまり感心しませんが、意表を突かれたのは確かです。
玉石混交であるのは間違いないですが、総じて楽しめたのでこの点数にしました。結構豪華な作家陣だったので期待し過ぎた私がいけなかったんです。

No.15 5点 金田一耕助の新たな挑戦- アンソロジー(出版社編) 2021/03/27 22:48
ぼさぼさの髪、よれよれの袴、人なつこい笑顔が印象的な、色白で内気な好青年…。横溝正史が生んだ日本を代表する名探偵『金田一耕助』が歴代の横溝賞作家たちの手によってよみがえる―。戦後の混乱時に起こった哀しき犯罪をあざやかに解決する金田一耕助。海外で初の難事件に挑む金田一耕助。そして、現代まで生き、八十歳で事件に遭遇してしまう金田一耕助など様々なトリックが仕掛けられた事件に新たに挑戦!横溝ワールドへの入門書としても役立つベストアンソロジー。
『BOOK』データベースより。

横溝正史賞作家九名による、金田一耕助が活躍する短編パスティーシュ集。
亜木冬彦の『笑う生首』、姉小路祐の『生きていた死者』、藤村耕造の『陪審法廷異聞―消失した死体』以外は正直箸にも棒にも掛からない出来の作品ばかりです。とはちょっと言い過ぎかも知れませんが、まあ誉められたものではありません。それだけ横溝正史賞のレベルが低いって事でしょうかね。

霞流一の『本人殺人事件』は『本陣殺人事件』のトリックや犯人のネタバレを派手にしていますので、未読の方は要注意です。他作品にも『本陣殺人事件』に関する記述が多いですね。金田一耕助の人物像の描き方は、各作家により微妙に違っており、中には最後の事件と称するものや渡米してからの事件を描いたものもあり、枯れてちょっと不遜な感じの言葉遣いをしている金田一もいたりします。
それはまあ良いとして、全体的に探偵金田一の個性に頼った物語が多く、読み物として面白味のない作品が目立ちます。凝ったトリックもなく、猟奇事件の動機がありきたりだったり、ミステリとしてあまり感心しないですね。

No.14 6点 ミステリー傑作選・特別編5 自選ショート・ミステリー- アンソロジー(出版社編) 2020/07/20 22:31
赤川次郎から皆川博子まで、現代日本を代表する33名の作家が、自ら選んだマイ・ベスト・ショート・ショート。本格推理から幻想譚、変愛ミステリーにホラー等々、どこから読んでも面白い、何度読んでも愉しめる、絶対お得な超豪華アンソロジー。単行本未収録作品を多数収めた永久保存版。
『BOOK』データベースより。

様々な小説雑誌や機関誌などから集められたショート・ミステリ。寄せ集め感はあり、本格っぽい物からホラー、時代小説、サスペンス、ハードボイルドなどジャンルも色々。流石にこの枚数で本格ミステリはなかなか書けないものと見え、そちら方面を期待すると裏切られるかも知れません。

大御所から名前も知らなかった作家まで、幅広く収録されています。
あまりに短かいためネタバレになりますので、内容は紹介できませんが、個人的に良かったと思うのは、夏樹静子、はやみねかおる、霞流一、斉藤伯好、左右田謙辺りですかね。でもマイ・ベストという割りにはそこまで力作揃いとは思えません。

No.13 7点 多々良島ふたたび ウルトラ怪獣アンソロジー- アンソロジー(出版社編) 2020/06/10 22:59
レッドキング、チャンドラー、そしてマグラーが相争った「怪獣無法地帯」の真相に迫る―山本弘の表題作「多々良島ふたたび」。希少生物としての怪獣の保護を図る戦闘的環境団体とウルトラマンが対峙する―小林泰三「マウンテンピーナッツ」。生命の危険を顧みない、怪獣類足型採取士の死闘―田中啓文「怪獣ルクスビグラの足型を取った男」など、SF的想像力でウルトラ怪獣とウルトラマンの世界を生き生きと描く7篇。
『BOOK』データベースより。

SF、ホラー作家が真面目にウルトラ怪獣を描いた短編集。幼い頃、ウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブンが再放送される度に観たという人は楽しめるはず。
作家陣は山本弘、北野勇作、小林泰三、三津田信三、藤崎真悟、田中啓文、酉島伝法の七人。これは錚々たる顔ぶれですね。ほとんどが変化球で、まともにウルトラマンと怪獣が対決するのは小林泰三の『マウンテンピーナッツ』くらいです。山本弘は多々良島のあの雰囲気を壊すことなく、新たな試みに挑戦しています。ピグモンとガラモンの意外な関係も創造していたりします。最も好感度が高かったのは未読作家の藤崎真悟で、メトロン星人を始め、チブル星人、イカルス星人などを登場させ、ウルトラセブンの世界観を見事に再現し、それでいてオリジナリティを持った逸品に仕上げていています。

田中啓文は結局ダジャレかよって感じ。三津田信三は己のスタイルを貫き、別にウルトラじゃなくてもよかったと思います。まあらしいと言えばそうなんですが。酉島伝法はいらなかったかな。怪獣が死んだ後始末を描いていますが、読みづらく、どう頑張っても情景が浮かんできませんでした。

No.12 6点 ミステリ魂。校歌斉唱! メフィスト学園- アンソロジー(出版社編) 2020/05/12 22:33
事件は学園で起きている!凄腕ミステリ作家陣が放つ、謎と伏線!!起立!ミステリの授業を始めます―学園ミステリ傑作集。
『BOOK』データベースより。

様々な形の学園ものミステリのアンソロジー。全てミステリ雑誌『メフィスト』に掲載されたちょっと長めの短編です。

『無貌の王国』 三雲岳斗  図書閲覧室で手首を切って自殺した少女の謎。本当に自殺だったのか、何故この場所で? 真相が明かされた後に待っているものは。6点

『≪せうえうか≫の秘密』 乾くるみ  校歌に纏わる暗号を解いていく物語。かなり地味でややこしい。5点

『ディフェンディング・ゲーム』 石持浅海  ある国(日本)の海軍士官学校の近辺で同時発生した4件の強盗未遂事件を、士官学校生が追う。 6点

『三大欲求』 浦賀和宏  嫌な性格で隠れオタクの主人公の歪んだ青春物語、途中までは共感できる点もある。しかし意外な展開に、そしてラストは・・・ 7点

『三猿ゲーム』 矢野龍王  こんなのばっかり書いているのか、この作者は。三猿というアイディアは良いが、途中のプロセスが何だったのか、疑問に思う。 6点


押し並べて、まずまず面白かったとは言えますが、特にこれといった突出した作品は見当たりませんでした。
総合点は6点で。  

No.11 6点 0番目の事件簿- アンソロジー(出版社編) 2020/02/21 22:41
人気作家のアマチュア時代作品を無修正で大公開!作家志望者、ミステリファン必読の“前代未聞”本。
『BOOK』データベースより。

収録順に有栖川有栖『蒼ざめた星』、法月綸太郎『殺人パントマイム』、霧舎巧『都築道夫を読んだ男』、安孫子武丸『フィギア・フォー』、霞流一『ゴルゴダの密室』、高田崇史『パカスヴィル家の犬』、西澤保彦『虫とり』、初野晴『14』、村崎友『富望荘で人が死ぬのだ』、汀こるもの『Judgement』、綾辻行人『遠すぎる風景』。

一様に皆さんがあとがき解説で書かれているのは、赤面するとか恥晒しとかです。しかしながら、満更でもなさそうな様子が伺えるのは微笑ましいところですね。
『人形館の殺人』の原型である『遠すぎる風景』は別格として、意外と霞流一の短い中によく詰め込んだ密室トリックが面白っかったです。あとは初野晴が本格ではないけれど、とても印象深くラストの捻りも好感が持てました。有栖川有栖や安孫子武丸辺りはらしさがよく出ていると思います。
汀こるものはちょっと訳が分かりませんでしたし、西澤保彦に至っては最初から最後までほぼ理解不能でしたね。しかし総合して及第点ではないかと思います。ただやはり、若書きとか粗削りな感は否めませんね。

No.10 4点 前代未聞の推理小説集- アンソロジー(出版社編) 2020/01/05 22:18
歴史学者・芥川賞・直木賞・天才バカボン、元文化庁長官など短編の名手11人集。
『BOOK』データベースより。

雑誌『小説推理』1979年1月号から12月号までの「推理小説に挑戦」欄掲載。
『ある殺人』『古墳殺人事件』『若葉照る』以外はほぼ凡作か駄作です。中にはどこが推理小説なのってのもあり、やはり非推理作家による推理小説なんてものはこの程度なのかと思いますね。
赤塚不二夫以外全く知らない作家ばかりなので、思い入れも先入観もなしに読めました。因みに、最も興味が惹かれた赤塚不二夫は俳句を扱ったダジャレ連発の、くだらない作品でした。同じ俳句をあしらった『若葉照る』は密室物で、これは面白かったですね。キャラもよく練られていて好感が持てました。同じトリックを使用した作品がありましたが、どちらが先だったのか曖昧なので何とも言えませんが、当時としては意外と斬新だったのかも知れません。

世間的に見てミステリは文芸作品より低く見られがちな気がしますが、この短編集を読んでみるといかにミステリ作家が優れたアイディアを提供しているかが良く分かります。そして推理小説を書く事の難しさが身に沁みますね。11作も並んで目を引くのが3作だけというのはちょっと淋し過ぎます。ミステリ作家としてデビューしながら次第に他ジャンルへ流れていった幾多の作家の気持ちがなんとなく想像できますね。

No.9 6点 新鮮 THE どんでん返し- アンソロジー(出版社編) 2018/07/06 22:42
気鋭による「どんでん返し」がウリの短編集。

『密室竜宮城』 青柳碧人  
お伽噺の『浦島太郎』そのままの設定。助けた亀に連れられて竜宮城に来てみれば、謎の密室殺人事件が。

『居場所』 天祢涼  
前科持ちの八木は、過失致死で殺してしまった少女を想起させる女子高生マナを執拗に追い回すが、それを知った若者にある取引を持ち込まれる。

『事件をめぐる三つの対話』 大山誠一郎  
一見普通の殺人事件だが、なぜ死体を移動させたかが焦点に。説明文を排除し、全編会話文で構成されたホワイダニット。

『夜半のちぎり』 岡崎琢磨
奇妙な成り行きで遭遇した、新婚旅行中の二組のカップル。その中の一人茜が殺害される。入り組んだ人間関係が悲惨なラストを呼ぶ。

『筋肉事件/四人目の』 似鳥鶏
これは作品の性質上、内容には触れないほうが無難と判断し、割愛します。

『使い勝手のいい女』 水生大海
私七尾葉月は使い勝手のいい女。昔の男に金を用立てるように泣きつかれ、抱き着いてきた。それを過剰防衛と知りながら凶器を握り・・・。

ミステリ的に最も優れていると思われるのは『事件をめぐる三つの対話』で、前例はあるものの、どんでん返しと言うに最も相応しい作品でしょう。
構成が凝っている『筋肉事件/四人目の』は、これまた過去に似たトリックが存在していますが、二度読み必死の力作かと思います。
他はどんでん返しというよりごく普通のミステリです。若干のエッジや捻りを効かせた程度で、中には拍子抜けなものも混じっており、上記二作以外はこれと言って見るべきものはありません。

No.8 6点 7人の名探偵- アンソロジー(出版社編) 2017/09/19 22:17
新本格ミステリ誕生30年を記念して編まれたアンソロジー競作。
顔ぶれは新本格第一世代の綾辻、法月、我孫子、歌野の講談社ノベルズ出身作家と第三世代の麻耶に創元社から有栖川、最後は山口雅也となっています。ですが、有栖川と山口は果たして新本格のカテゴリーに入るべきなのかどうか。まあそれだけ生き残りが少ないということでしょうか。なんだかなあ。
それぞれ個性を出していますが、やはり一番面白かったのは本格でもミステリでもないけれど、綾辻でした。ネタバレになりそうなので内容については触れませんが、ほのぼのした感じと不安感を煽るような書きっぷりはさすがだなと思います。群を抜いているとは言いませんが、格の違いを見せつけた感じですかね。
他では個人的に歌野が気に入っています。将来的な名探偵像というんでしょうか、SF仕立てでありながら本格ミステリの精神を忘れていない辺りはらしいなと思います。あとは意外に山口雅也も良かったです。落語のネタを発展させたアイディアはちょっとこれまでになかったものじゃないでしょうか。最も異色な作品です。有栖川は己のスタンスを貫いた、なかなかの逸品ですね。その他はまあそれなりといった感じですか。まあしかし、全体的にそこそこのレベルだとは思いました。下手に肩に力が入らない感じはみなさんもうベテランゆえでしょうかね。

No.7 5点 このミステリーがすごい! 三つの迷宮- アンソロジー(出版社編) 2015/12/04 20:22
『リケジョ探偵の謎解きラボ』 喜多喜久
『ポセイドンの罰』      中山七里
『冬、来たる』         降田天

以上の三作品からなるアンソロジー。とは言え、別にこれと言ったテーマが与えられているわけではなく、勝手気ままに書かれたミステリ。
『リケジョ』と『ポセイドン』は本格物。『冬』は何とも言い難い不思議な作品。敢えて言えば、三姉妹の母が亡くなり葬儀の日に、突然現れた一番下の弟。幼くして失踪した彼は果たして本物なのか、というのがあらすじ。正体不明の人物が登場する辺りは、横溝を彷彿とさせるが、果たしてミステリと言って良いものかどうか判断が難しい。
喜多氏がミステリとしての出来は一番だと思われる。これまでにない密室トリックは、さすが理系の作者だけのことはある。
一方中山氏は船上での殺人を描いており、被害者以外すべて動機ありの容疑者という、いかにもありがちな設定。こちらはこの作者にしては凡作ではないだろうか。

No.6 6点 気分は名探偵 犯人当てアンソロジー- アンソロジー(出版社編) 2015/01/06 22:39
再読です。
表紙の猫がかわいいね。黒猫がカメラ目線でじっとこちらを見ているよね。
さて、この犯人当てアンソロジーだが、なかなか良質の短編が並んでいる。いずれ劣らぬパズラーが目白押しと言いたいところだが、出来不出来の差は見られるのはやむを得ないだろう。と言うか、ここまで来ると好みの問題なのかもしれない。個人的には、貫井徳郎の『蝶番の問題』が圧倒的に面白かった。投稿による正解率がわずか1%だというのだから、その難解さは群を抜いている。しかし、その割には実に明快で意外すぎる真相が光る逸品となっている。
他は安孫子武丸、法月綸太郎あたりが良かったかな。
巻末の筆者による座談会も興味深く読ませてもらった。やはり、こうした誌上掲載のキッチリした締め切りの犯人当てという企画ものには、様々な苦労が付きまとうものだということがよく分かる。
それにしても、当時も、そして今でもこのメンバーは豪華すぎる。これだけの執筆陣が揃っているのだから、期待しないほうがどうかしている。多くの読者にとっては、その期待を裏切らないだけのポテンシャルを持った作品集と言えるかもしれない。

No.5 7点 放課後探偵団- アンソロジー(出版社編) 2014/10/01 22:13
これこそ粒ぞろいと呼ぶにふさわしい学園ミステリ珠玉の短編集。しかし、みなさんタイトルで敬遠されてはいないでしょうか?読んでみればそれが杞憂に終わると思うので、どのジャンルが好みとかに拘わらず、多くの方に読まれることをお勧めしたい。
それぞれが他愛無い、或いは些細な日常の謎を扱っているが、それを端正なロジックで攻めて、スッキリと解決に導いている辺りはとても好感が持てる。似鳥氏のトリックだけはちょっとややこしいが、まあ私の頭脳がついていけなかっただけで、問題ない。
各キャラもふとしたしぐさや言葉に個性が出ていて、よく描かれているので、ライトな読み物としても合格だろう。特に、それぞれの物語に登場する女子は魅力に溢れていて、読んでいてほのぼのとした気分にさせてくれる。
各短編が際立った特徴を持っていて、違った色の光を放っているが、最後の最後で梓崎氏にもっていかれた感が半端ない。掉尾を飾るに相応しい作品だと感じる。途中まではあまり好みではなかったが、見事な反転でやられた、いや本当に参りました。

No.4 5点 5分で読める!ひと駅ストーリー 降車編- アンソロジー(出版社編) 2014/05/05 22:31
宝島社からデビューした、ミステリー、ライトノベル、恋愛小説の作家たちが、「ひと駅」をテーマに書き下ろした24篇からなるアンソロジー。『このミス』出身作家が最も多く参加しているが、舞台が限定されていることやショートショートという縛りが厳しいため、ミステリ度は低い。
全体的には玉石混交であるが、石のほうが多めだろうか。どれもいまひとつオチがヌルいので、強烈に印象深い作品がない。勿論、これは!というのも中には混在しているので油断はできないが。こうした狭い設定の作品には既視感のあるものが多い気がするが、意外とそういうわけでもなく、各々オリジナリティが見られて、その点では評価されてもいいかもしれない。当然、これだけ並ぶと訳の分からないのや、読者を舐めているのかと思われるものもあるが、全般的にそこそこ面白いのではないだろうか。
一つ確かなのは、水田美意子はデビューからほとんど成長していないということ。相変わらず文章が中学生の作文レベルで、さすがにプロとして食べていくには力量が不足していると思わざるを得ない。私自身も相当酷いが、私は素人だからね。
そして宝島社にも一言いわせてもらうと、なぜ同じようなアンソロジーが、280ページでも360ページでも同じ値段なのよ。普通はページ数によって値段も変わってくるものじゃないのかねえ。それに280ページで税込み700円は高すぎると思うけど。

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メルカトルさん
ひとこと
「ミステリの祭典」の異端児、メルカトルです。変人でもあります。色んな意味で嫌われ者です(笑)。
最近では、自分好みの本格ミステリが見当たらず、過去の名作も読み尽した感があり、誰も読まないような作品ばか...
好きな作家
島田荘司 京極夏彦 綾辻行人 麻耶雄嵩 浦賀和宏 他多数
採点傾向
平均点: 6.02点   採点数: 1767件
採点の多い作家(TOP10)
浦賀和宏(33)
島田荘司(25)
西尾維新(25)
アンソロジー(出版社編)(23)
京極夏彦(22)
綾辻行人(22)
折原一(19)
中山七里(19)
日日日(18)
森博嗣(17)