皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
nukkamさん |
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平均点: 5.44点 | 書評数: 2814件 |
No.1054 | 5点 | 折鶴が知った…- 日下圭介 | 2016/02/07 04:20 |
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(ネタバレなしです) 26の長編と18の短編集を残した日下圭介(1940-2006)はジャーナリスト出身者ですが、「新聞記者が推理小説を書いたと聞いて『ははあ、社会派』と先回りする人が多い。勘弁してほしい」と述べているように国内ミステリーで人気の高い社会派推理小説には背を向け、フレンチ・ミステリーに影響を受けたサスペンス小説と本格派推理小説が創作の中心でした。1977年発表の長編第3作の本書は前者に属する作品です。私はフランスのサスペンス小説を読んでいないので比較はできませんが、婚約破棄の理由がはっきりしない上に殺人犯と疑われてしまった主人公(結城京子)が被害者の家族につきまとわれるプロットはサスペンス豊かで、作者がねらった「過去の傷痕を負った人間たち」「穏やかな川面の下の暗い底流」「激しく静かなドラマ」が過不足なく描かれています。また折鶴や絵葉書や不思議なメッセージが謎を深め、終盤にはよく考えられたアリバイ崩しがあるなど本格派も意識したようなところがあります。最後は自白に頼ってしまったため本格派になりきれていませんが。 |
No.1053 | 5点 | 北斎殺人事件- 高橋克彦 | 2016/02/07 04:02 |
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(ネタバレなしです) 1986年発表の浮世絵三部作の第2作です。歴史の謎解きと現代の謎解きの二段構えであるところは前作の「写楽殺人事件」(1983年)と同じです。現代の謎解きは捜査場面の描写も少ないまま終盤に唐突に解決されている感があります(読者が推理に参加する余地もほとんどありません)。最初は津田良平のサポート役と思えた風俗史研究家の塔馬双太郎(既に本書以前のいくつかの短編で活躍しているのですが)は後半になると単独行動が目立つようになり、どちらが主人公なのか困惑した読者もいたのではないでしょうか。前作から改善されたと思えるのは歴史の謎解きで、説明がわかりやすく整理されていて歴史知識のない私でもそれほど退屈しませんでした。事件の悲劇性がひしひしと伝わってきますが、それでいて結末はどこかさわやかな後味を残します。 |
No.1052 | 7点 | 雨月荘殺人事件- 和久峻三 | 2016/02/07 03:50 |
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(ネタバレなしです) ジョー・リンクス原案、デニス・ホイートリー著の「マイアミ沖殺人事件」(1936年)に代表される捜査ファイルシリーズに影響を受けて1988年に発表された「公判調書ファイルミステリー」です。ホイートリーの二番煎じと批判される方もおられるとは思いますが、完成に5年をかけて発表されただけあって細部に至るまで丁寧に作り上げられた、(変な表現ですが)一級の二番煎じ作品です。私が読んだのは約550ページから成る双葉文庫版ですが、前半の100ページほどが6回に渡る市民セミナー、残り約450ページが10回に渡る公判調書の構成となっています。読者は市民セミナーの講師の指示にしたがって公判調書で使われる専門用語を学ぶと共に事件について推理できる仕掛けとなっています。現場図や写真も用意されていますが圧巻は証人たちの証言で、これが一癖も二癖もあるところが本書をミステリーならしめています。動きや感情の表出の描写がないため小説らしさを犠牲にしているのはやむを得ませんが、単に記録を後追いするのではなく読者が推理に参加できる本格派推理小説として完成度は非常に高いです。 |
No.1051 | 5点 | 女囮捜査官 触姦- 山田正紀 | 2016/02/07 03:40 |
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(ネタバレなしです) 1996年発表の北見志穂シリーズ五部作の第1作です。もともとのタイトルは「女囮捜査官1 触姦」という、かなり過激なタイトルでした。エログロシーンはそれほど過激なものではなく(全くないわけでもないが)、タイトルで官能サスペンスと思われて敬遠されるか、官能サスペンスを期待して読んで裏切られるか、いずれにしても本書のタイトルはネーミング失敗だと思います(笑)。メルカトルさんのご講評に私も賛成で本書は警察小説かと思います。私のイメージする山田ミステリーは幻想的な作風なのですが本書はそんな要素は全くなく、ある意味ハードボイルド的にドライで明快なストーリー展開で、読みやすさ抜群でした。体当たり捜査だけでなく随所で推理場面もあるところは本格派推理小説的でもあります。といっても序盤で容疑者が勢ぞろいして犯人当てに挑戦するというタイプの作品ではありませんが。 |
No.1050 | 6点 | 火曜日ラビは激怒した- ハリイ・ケメルマン | 2016/02/07 03:29 |
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(ネタバレなしです) 1973年発表のラビ・スモールシリーズ第5作です。ユダヤ思想と哲学の講師としてウインダミア大学で講師をすることになったラビが描かれていて学園ものとしても意外と面白く、何も知らないのに意見だけはやたらと持っている大学生をラビがどう対応していくのかが興味深く読めました。ラビは事件捜査にはあまり積極的に関わりませんが、それでも謎解き伏線はしっかりと用意されており本格派推理小説としても十分な水準は保たれています。 |
No.1049 | 6点 | 憑かれた夫- E・S・ガードナー | 2016/02/07 03:14 |
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(ネタバレなしです) 1941年発表のペリイ・メイスンシリーズ第18作です。ヒッチハイクでロス・アンジェルスへ向かう女性が大型車に乗せてくれた運転手に車中で襲われ、抵抗する内に車が横滑りして数台に衝突し、女性が気づいた時にはなぜか運転席でハンドルを握っていて運転手が消えていたという事件で幕開けしますが、プロットは地味で法廷場面も盛り上がりを欠き、真相は結構入り組んでいますのでじっくりと読むことを勧めます。第19章でメイスンが「生物でない手掛かりは余り重視しない方がいい。それよりも動機だとか機会だとかいうものを分析してみて、どういうことが起こったかを推理する方がずっと効果が大きい」と語っているのが興味深いですね。 |
No.1048 | 6点 | 今はもうない- 森博嗣 | 2016/02/07 00:03 |
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(ちょっとネタバレになったかもしれません) 1998年発表のS&Mシリーズ第8作です。私の読んだ講談社文庫版では「シリーズナンバーワンに挙げる声も多い」と絶賛されていますが、どちらかといえば読者を選ぶ問題作ではないかと思います。確かに私にとってシリーズ作品で最も驚かされた作品ではあるのですが、シリーズ作品をある程度読んだ人でないと驚きを味わえない仕掛けになっています。仮に本書が初めて読んだS&Mシリーズだと何が何だかわからないのではないでしょうか。密室トリックを巡って次々に仮説が飛び交う本格派推理小説としても楽しめますが(現場見取り図は欲しかった)、前述の仕掛けのためにメインの謎解きが霞んでしまったような気もします。シリーズ作品としては評価7ですが、単独作品としては評価5といったところでしょうか。 |
No.1047 | 6点 | 月をのせた海- 陳舜臣 | 2016/02/06 23:57 |
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(ネタバレなしです) とてもミステリーとは思えないような美しいタイトルですが、1964年発表の本書はアリバイ崩しの本格派推理小説です。徳間文庫版で250ページに満たない短さのためか好都合過ぎな展開で犯人にたどり着いている感じを受けますが、謎解きよりも人物描写の妙が印象的な作品でした。自身の容疑を晴らすために恋人同士の男女が探偵役となるプロットですが、特にヒロイン役の小夜子の芯の強さは強烈な個性となっています。ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか微妙な幕引きも作品の個性だと思います。 |
No.1046 | 5点 | 薫大将と匂の宮- 岡田鯱彦 | 2016/02/06 23:47 |
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(ネタバレなしです) 岡田鯱彦(おかだしゃちひこ)(1907-1993)は大学教授が本業でミステリーの執筆は余技の域を出なかったようですが、1950年発表の長編第2作の本書は代表作として評価の高い本格派推理小説です。歴史ミステリー自体、当時の国内ミステリーでは非常に珍しかったと思いますが、舞台を紫式部の「源氏物語」という古典文学の世界を下敷きにしているのが非常にユニークです。ちなみにオリジナルの「源氏物語」は中途半端な終わり方から未完説と完成説があるそうですが岡田は未完説に準拠して本書を書いたそうで、未完に終わった「源氏物語」の続編があり、しかもその内容が世界最古の探偵小説だったという内容です。紫式部の探偵ぶりが「合理的な理屈を積み重ねて行って事件の謎を究める」のでなく「個人の感情による直感」頼りのため非常に心もとないのですが、最後は推理で解決に至っています。「源氏物語」をよく知らない読者(私もその1人)でも困らないように人物関係の説明は丁寧ですが、それでも登場人物が男か女か名前だけではわかりづらいのは辛かったです(薫(男性)、匂の宮(男性)、中宮(女性)、中君(女性)など)。 |
No.1045 | 5点 | 源氏物語人殺し絵巻- 長尾誠夫 | 2016/02/06 23:23 |
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(ネタバレなしです) 長尾誠夫(ながおせいお)(1955年生まれ)は非ミステリーの歴史小説も書いていますがデビュー作は1986年発表の本書で、紫式部の「源氏物語」をミステリー仕立てにアレンジした本格派推理小説です。こういうタイプでは岡田鯱彦の「薫大将と匂の宮」(1950年)という偉大なる前例がありますが岡田作品は光源氏死後の時代の物語、本書は光源氏の時代の物語となっています。紫式部が作中人部として登場しているのは両者の共通点ですが、岡田作品では式部の一人称形式にしてほとんど出ずっぱりでしたが本書は頭中将など式部以外の人物にスポットライトが当たる場面が随所にあります。平安時代の貴族社会では普通なのかもしれませんが現代の社会常識から見れば乱れた人間関係描写が多く、時にホラー風な場面さえあるのは好き嫌いが分かるでしょう。重苦しい結末も読者を選びそうです。 |
No.1044 | 5点 | 中国銅鑼の謎- クリストファー・ブッシュ | 2016/02/05 12:24 |
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(ネタバレなしです) 1935年発表のルドヴィック・トラヴァースシリーズ第13作の本格派推理小説です。被害者の周囲に容疑者たちがいたにも関わらず銅鑼が鳴った音で銃声がかき消されてどこから撃たれたかわからないという、誰がどのようにして被害者を射殺したのかというのがメインの謎です。トラヴァースの手書きによる現場見取り図が添えられていて、しかも誰がどこにいたかまで書き込まれているのが親切で大いに助かります。でも微妙に書き方が粗くてわかりにくいです(笑)。この作者らしいのですがストーリーテリングが上手くなくて損をしており、せっかく容疑が転々とするプロットを用意しても謎解きが盛り上がりを欠いています。 |
No.1043 | 5点 | 小鬼の市- ヘレン・マクロイ | 2016/02/03 14:33 |
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(ネタバレなしです) 1943年発表のベイジル・ウィリングシリーズ第6作ですが、洗練された本格派推理小説だったシリーズ前作の「家蠅とカナリア」(1942年)とは作風が大きく異なっていたのに驚きます。カリブ海の島国サンタ・テレサを舞台とし、異国情緒や時代性を感じさせます。フィリップ・スタークという男を主人公にした冒険スリラー風のプロットですがスターク自身も謎めいた人物として描かれており、スパイ小説的な要素もあります。犯人当てとしての推理も充実したもので、ジャンルミックス型ミステリーとしてよくできた作品だと思います。ただ本書におけるベイジルの扱い方はかなり特殊なので、シリーズ作品として最初に読むべき作品ではないと思います。 |
No.1042 | 6点 | 迷路荘の惨劇- 横溝正史 | 2016/02/03 14:17 |
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(ネタバレなしです) 中編「迷路荘の怪人」(1956年)を長編にリメイクして1975年に発表した金田一耕助シリーズ第28作の本格派推理小説です。元となった中編の方は私は未読ですが本書はだらだら感もなく、この長編化は成功と言ってもいいのではないでしょうか。作中時代が1950年ということもあって前時代的な雰囲気が濃厚ですが、横溝の作風はこの古さがよく似合っていると思います。密室トリックまで前時代的なのはまあご愛嬌ということで(笑)。 |
No.1041 | 4点 | オイディプス症候群- 笠井潔 | 2016/02/03 14:03 |
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(ネタバレなしです) 矢吹駆シリーズは第3作の「薔薇の女」(1983年)と第4作の「哲学者の密室」(1992年)の間に長期間の空白がありましたが、シリーズ第5作である本書も2002年の出版とこれまた久方ぶりです。光文社文庫版で上下巻合わせて1000ページを超す大作の本格派推理小説で内容も濃厚です。このシリーズの特色である哲学に加えて、神話や性愛に関する議論がびっしりと作中に織り込まれています。ただ過去のシリーズ作品に比べてそれらの議論と謎解きとの関連性が弱いように感じられ、無用に長大な作品になってしまったような気がします。また読者へのフェアプレーを意識したのでしょうが、早い段階で共犯者や便乗殺人の可能性が指摘されるのですが、そこまで可能性を広げられると私のような凡庸な読者では真相を当てようとする気になりません(理解するのも難儀でした)。過去作品のネタバラシをする悪癖は相変わらずで、「バイバイ、エンジェル」(1979年)や「薔薇の女」の犯人名を明かしています。これは本当にやめてほしいです。 |
No.1040 | 5点 | 長い長い眠り- 結城昌治 | 2016/02/03 13:43 |
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(ネタバレなしです) 1960年発表の郷原部長刑事シリーズ第2作です。ユーモア本格派推理小説として紹介されていますが直接的に笑いを誘うような場面はほとんどなく、最後になってそそっかしさが招いた皮肉がわかるというプロットでした。主人公の郷原部長刑事の出ずっぱりではなく、合間合間で容疑者たち同士のやり取り場面を挿入して単調にならないように工夫はしていますが、感情を抑制した人物描写は好き嫌いが分かれるかもしれません。国内ハードボイルド作家の先駆者の一人として評価されることになる結城らしいとは言えるでしょうけど。 |
No.1039 | 6点 | 青いリボンの誘惑- 飛鳥高 | 2016/02/02 18:59 |
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(ネタバレなしです) 本業である建築学者としての仕事が忙しくなった飛鳥高(1921年生まれ)は「ガラスの檻」(1964年)を最後にミステリー執筆をやめてしまいましたが1990年、実に26年ぶりに本書を発表したのには驚いた人も多かったでしょう。久しぶりといっても文章に硬さは見られず、プロットもしっかり練り上げられています。難を言うなら登場人物の関係が案外と複雑で整理が大変なので、登場人物リストを作りながら読むことを勧めます。アリバイトリックに本格派推理小説らしさを、過去の事件に関わる企業進出と地元との利害関係に社会派推理小説らしさを感じ取ることもできますが、本書で一番力を入れているのは人間ドラマの部分でしょう。それぞれの思惑がからみあって悲劇が生まれ、その悲劇がまたそれぞれの人生に影を落とすという、重苦しいドラマが読者に突きつけられます。謎解きよりも小説部分の方に力を入れているように感じました。 |
No.1038 | 5点 | 東京ー盛岡双影殺人- 山村正夫 | 2016/02/01 00:05 |
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(ネタバレなしです) シリーズ探偵の登場しない1988年発表の本格派推理小説です。アリバイ崩しをメインにしたプロットですがこのアリバイが大変ユニークです。2つの殺人と1人の有力容疑者、しかしどちらか片方で殺人犯だった場合、もう片方の殺人に関してはアリバイが成立してしまうというものです。とりあえず片方の事件で逮捕すればという単純な話にはならず、東京と盛岡の警察が面子を争って自分側の事件だけ解決しようとしてうまくいかないという奇妙な展開を見せます。ユーモア本格派として書かれた作品ではありませんが、一方が証拠を集めれば集めるほどライバル(?)にとっては自分の捜査の足を引っ張られるという皮肉が何とも言えません。トリックは感心するほどのものではありませんが、設定の妙で退屈させません。 |
No.1037 | 5点 | 二人道成寺- 近藤史恵 | 2016/01/31 23:57 |
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(ネタバレなしです) 2004年発表の今泉文吾シリーズ第5作(歌舞伎シリーズ第4作)です。複雑な心理を掘り下げていく作品としてはよくできた作品ではありますが、ミステリーとしては三角関係があるのかないのかという謎をメインに据えたプロットでは物足りなさを感じてしまいます。殺人でなくてはいけないとまでは言いませんが、やはり魅力ある謎は提供してもらいたいです。今泉の登場場面も非常に少なく、存在感が希薄です。謎は解けるけど未解決という不思議な結末が残ります。 |
No.1036 | 6点 | 殺人予告状- 大谷羊太郎 | 2016/01/31 23:51 |
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(ネタバレなしです) 大谷は初期には芸能界を題材にした本格派推理小説をいくつか書いたそうですが、1972年発表の本書もその一つです。巡業殺人シリーズ第1作と紹介されていますが、確かに東北巡業が描かれていますけど旅情はほとんど感じられません。このあたりは後年にトラベルミステリーブームを巻き起こした西村京太郎とは比べ物にはなりません。しかし芸能界描写という点では大谷らしい個性が発揮されており、特に第2章での戦後の音楽バンド活動についての語りは現代とは全く違う時代背景を感じさせて新鮮でした。謎解きプロットはやや変わっており、2つの出入口のある部屋での準密室殺人を扱っています。1つの出入口は施錠されて衆人監視状態なので普通に考えればもう1つの出入口が使われているはずなのですが、普段はそちらが施錠されているので犯人が侵入路として目を付けるとは考えにくいというのが準密室を成立させています。一応は両構えでの捜査となりますがバランスはかなり偏っていて、この辺はもう少し改善すれば謎解きがもっと複雑になって読者に色々と考えさせるのでしょうけど、徳間文庫版で300ページに満たない短い作品なのでそこまで望むのは贅沢でしょうか? |
No.1035 | 5点 | ガラス瓶のなかの依頼人- シャロン・フィファー | 2016/01/31 23:42 |
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(ネタバレなしです) ハウス・セールで購入した品物からホルマリン漬けの指が入った瓶が出てくる、2002年発表のジェーン・ウィールシリーズ第2作は結構読みづらいコージー派ミステリーでした。第18章でのジェーンによる事件の振り返りが本書の問題点をずばりと当てているのですが、細切れの情報が多すぎるのです。文章自体が難解なわけではありませんが、様々な謎が互いの接点を見出せない状態で読者に投げられる展開には手こずりました。ジェーンの説明もそれほど論理的な推理でなく、すっきりした謎解きではありません。第15章の電話の混乱場面が楽しめた以外はあまり私の印象に残りませんでした(単に私のもの覚えが悪いというのもありますけど)。 |