皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ パスティーシュ/パロディ/ユーモア ] 通信教育探偵ファイロ・ガッブ ファイロ・ガッブ |
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エリス・パーカー・バトラー | 出版月: 2012年04月 | 平均: 6.50点 | 書評数: 2件 |
国書刊行会 2012年04月 |
No.2 | 6点 | nukkam | 2016/03/21 07:30 |
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(ネタバレなしです) 米国のエリス・パーカー・バトラー(1869-1937)は銀行家としても成功する一方で20世紀前半を代表するユーモア作家としても名を残し、その作品数は1700を超すそうです。全部で44の短編が書かれたファイロ・ガッブシリーズは1909年から書かれていますが最初の3作品は探偵物語でないユーモア小説で、第4短編の「ゆでたまご」(1913年)から通信教育探偵として活躍(というか迷走)します。壁紙張り職人であり、「日の出探偵事務所」の探偵養成通信教育講座の受講生でもあるファイロ・ガッブがついに私立探偵としてデビューするが、失敗の連続にもかかわらずなぜか事態が丸く収まっていくというのが基本パターンで、気軽に読める作品です。本書は17編のシリーズ作品を収めた1917年出版の短編集ですが、ちゃんと自力で解決した作品もあれば悲劇としか思えないような衝撃的な結末の作品があったりと決して基本パターンばかりではありませんでした。 |
No.1 | 7点 | mini | 2012/10/10 09:53 |
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エリス・パーカー・バトラーは多作のユーモア一般文学作家で、特にプロパーなミステリー専門作家じゃないのでたしか森事典にも載っていなかった筈
一般文学作家なのでミステリー著作はこれ位だと思うが、「ファイロ・ガッブ」は”クイーンの定員”にも選ばれている、おそらくはユーモア・ミステリー短篇集の代表という選出理由も有ったのだろう ”クイーンの定員”は内容だけでなく原著の入手困難性も重要視されているが、この作は希少価値マークが付いてなかったからレア度は低かったと思われる という事は日本での原著テキストの入手も容易なわけで、そのうちどこぞの出版社が手を出すだろうと思ってはいた ただ手を出すとすれば原書房や論創じゃなくて岩波か国書刊行会あたりかと予想していたが結局国書だった ガボリオ「ルルージュ事件」、バー「ウジェーヌ・ヴァルモン」に続いて国書やるなぁ、特定の編集者のセンスとの噂は有るけどね 私はユーモア調よりシリアス調なものの方が好きなのだが、アンソロジーで収録の1篇を読んだ時には珍しく笑ってしまった それ以来短篇集出したらウケるのではないかと思っていたのだが、短篇集に纏まってしまうとまた印象も違ってくる場合も有るからね 1つ予想外だったのは連作形式になっている事だ 基本的な事件の部分は独立しているのだが、主役ガッブ君の身辺雑記や探偵稼業を続けざるを得ない金銭的事情は話が連続しているので、話によっては断片的に読んでも意味が分り難いものも有る、こういうのは古典的短篇集には時々有るよね でもホームズのライヴァルたちの系譜を俯瞰した時、パロディとは別種のユーモア調の代表的短篇集としての歴史的価値は揺るがないと思う |