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nukkamさん
平均点: 5.44点 書評数: 2921件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.401 6点 関税品はありませんか?- F・W・クロフツ 2014/08/13 18:19
(ネテバレなしです) 「フレンチ油田を掘りあてる」(1951年)から6年ぶりの1957年に発表されたフレンチシリーズ第29作でクロフツ(1879-1957)の遺作となりました。第一部が犯罪物語、第二部は本格派推理小説(犯人の正体は第一部で読者にオープンになっています)という古典的な倒叙推理小説です。第一部は細部まで緻密に仕上げられていますが、第二部は推理が短絡的で都合よく解決されてしまうところが少々弱いかと。でも1番印象に残ったのはフレンチを激怒させたある真相。いやあ堅実なクロフツ作品でまさかアントニイ・バークリー級の「羽目はずし」を味わうことになろうとは。本当は5点評価ぐらいなのですがこの意外性にもう1点おまけしましょう。しかし主任警視になって地方の事件にはあまりタッチしないって言っておきながら、いざ現場に行くと部下(本書ではロロ警部)に任せずほとんど自分でやってしまうフレンチって、管理職としては失格かも...(笑)。

No.400 4点 死の館の謎- ジョン・ディクスン・カー 2014/08/13 17:47
(ネテバレなしです) 1927年の米国を舞台にした、ニュー・オーリンズ三部作の最後を飾る歴史本格派推理小説です(出版は1971年です)。もっとも作中時代がカーが生きていた時代ということもあってかあまり歴史物らしさを感じられませんでした。不可能犯罪プラス容疑者の大半にアリバイ成立というカーらしいプロット、更には宝探し趣向まで織り込んでいるのですがさすがに晩年の衰えは隠せないですね。元気な時代のカーなら無理そうなトリックでもこれでもかと言わんばかりの伏線を用意してトリック成立の説得力を高めていたのですが、本書では伏線が十分でなく推理の強引さばかりが目立ってしまっています。カーの長所の一つであるストーリーテリングの巧さも翳りが見られ、読みにくくなってしまったのも残念です。

No.399 6点 13羽の怒れるフラミンゴ- ドナ・アンドリューズ 2014/08/13 17:13
(ネタバレなしです) 2001年発表のメグ・ラングスローシリーズ第3作の本書は作品世界になじむのに時間がかかったのと事件がすぐに起こらないので前半はやや退屈でしたが、昔風な舞台背景と現代風な登場人物の組み合わせに慣れるとこれがとても楽しかったです。物語の後半になるとテンポもどんどんアップして最後はまさしくスラプスティック(どたばた劇)風のクライマックスが待ち構えています。シリーズ前作の「野鳥の会、死体の怪」(2000年)がややトーンダウン気味に感じられて心配していましたが本書では十分に盛り返しています。

No.398 6点 赤髯王の呪い- ポール・アルテ 2014/08/13 16:50
(ネテバレなしです) デビュー作の「第四の扉」(1987年)より前に書かれ、1986年に50部の限定出版された本格派推理小説です。しかしミステリーコンテストであのフレッド・ヴァルガスに敗れてしまい、しばらくお蔵入りの末に1995年にやっと正規出版されました。そのため公式にはアラン・ツイスト博士シリーズ第10作という位置づけです。ジョン・ディクスン・カーに私淑しているだけあって、不可能犯罪、謎めいた雰囲気づくり、歴史趣味などがてんこ盛りですが単なるカーのコピー作品ではなく、語り手の狂乱ぶり描写などには早くも作者の個性がうかがえており、短い作品ながら内容豊かです。陽の目を見てよかったですね。

No.397 6点 フォーチュン氏を呼べ- H・C・ベイリー 2014/08/13 16:00
(ネタバレなしです) もちろん異説もありますが一般的には英国の本格派推理小説の黄金時代は1920年に始まるとされています。この年にデビューしたのがアガサ・クリスティー、F・W・クロフツ、そしてH・C・ベイリー(1878-1961)です。興味深いのはクリスティーは長編短編を満遍なく書き、クロフツは長編中心、そしてベイリーは短編中心だったこと(後には長編も書くようになりますが1930年代になってからです)。日本におけるベイリーの知名度の低さはそこにも一因があったかもしれません。1920年発表の本書はレジナルド・フォーチュンシリーズの第1短編集で、後年作品と比べて未熟であるかのように紹介している文献もありますが個人的には決して捨てられるべき作品ではないと思います。フォーチュンを時には冷徹で分析的だが温かみとユーモアも持ち合わせている人間として描写しており、そこには後年デビューするヴァン・ダインのファイロ・ヴァンスやドロシー・L・セイヤーズのピーター・ウィムジー卿の人物像が重なります。ヴァン・ダインの某作品を先取りしたような結末の作品があったことも驚きでした。心理分析推理が印象的な中編「几帳面な殺人」、現代の犯罪にこそありそうな動機の「ある賭け」などは複雑なプロットを持っていて読み応えがあります。

No.396 7点 ケニアに死す- M・M・ケイ 2014/08/13 14:39
(ネタバレなしです) 1958年発表のミステリー第4作である本書はケニアを舞台にしているからかどことなくスケールの大きさを感じさせる本格派推理小説です。ケニアの生活に慣れ親しんで少々のことでは動じない人々と、英国から来たばかりで戸惑いを隠せないヴィクトリアとの人物対比がよく描けています。早い段階で殺されるので登場場面は少ないけどアリスも印象に残ります。彼女が殺される動機はなかなかユニークで驚かされました。謎解きのまとまりでは「キプロスに死す」(1956年)を上回ると思います。なおハヤカワミステリ文庫版の巻末解説は事前には読まない方がよいと思われる記述がありますので注意下さい。

No.395 5点 夜の来訪者- プリーストリー 2014/08/13 14:23
(ネタバレなしです) 英国の小説家で劇作家のジョン・ボイントン・プリーストリー(1894-1984)の代表戯曲が1946年発表の本書ですが(後には映画化もされています)、恩田陸が「堂々たる本格ミステリ」と絶賛していたので興味を持って読みましたがちょっと違和感を覚えました。バーリング家の人々と死んだ娘との関係がグール警部の事情聴取で少しずつ明らかになっていくプロットなのですが、これがそのまま犯人当てには発展しないのです。秘密を暴かれて後悔する人、開き直る人、全く動じない人など人間模様が巧に描かれ、ユニークな結末も印象的ですがこれは本格派というより(強いて分類するなら)サスペンス小説ではと思います。

No.394 6点 春にはすべての謎が解ける- アラン・ブラッドリー 2014/08/13 14:09
(ネタバレなしです) 2013年発表のフレーヴィア・ド・ルースシリーズ第5作は相当ひねった謎解きが用意された本格派推理小説で、ここまでひねられると完全正解できるわけがないと読者から不満の声が出るかもしれません。しかし珍しいトリックとそれが皮肉な結末につながる真相は一読の価値はあると思います。これまでのシリーズ作品でも警察の目を盗んでのフレーヴィアの捜査はサスペンスを生み出すのに効果的でしたが、本書では冒険スリラー並みにまで突っ走り思わぬ危機を迎えます。さすがに体力勝負では打開できないフレーヴィアが得意の化学知識で対処する場面は映像化したら結構派手になりそうですね。

No.393 6点 ダーブレイの秘密- R・オースティン・フリーマン 2014/08/13 13:54
(ネタバレなしです) 1926年に発表されたソーンダイク博士シリーズ第9作でフーダニット型本格派推理小説ですがハウダニットの要素も強い作品です。17章で説明されるトリックについては現場見取り図があればもっとよかったですね。ロンドンのガス灯や馬車の描写が古きよき時代のミステリーであることをしみじみと感じさせます。謎解きとは関係ありませんが5章でアッシャー医師がグレイに名医の秘訣(?)を語る場面がなかなか興味深かったです。作者のフリーマン自身も医師だったのですがもしかして彼もアッシャータイプだったのでしょうか?

No.392 5点 ペニーフット・ホテル受難の日- ケイト・キングズバリー 2014/08/13 13:21
(ネタバレなしです) 英国出身で米国在住の女性作家ケイト・キングズバリー(1934年生まれ)はロマンス小説家としてデビューしましたが最も書かれたのが1993年発表の本書がシリーズ第1作となるペニフット・ホテルシリーズのミステリーです。20世紀初頭の英国を舞台にしていますがそれほど歴史描写は多くなく、多彩な人物描写の方が目立っています。シリーズ第1作のためかホテル関係者が前面に出過ぎて容疑者の存在感が薄くなってしまったところがありますが。犯人当て謎解きとしてはやや容易過ぎかと思いますが、推理による謎解きを心がけているところは好みです。もっとも穏健な態度と裏腹に主人公セシリーの捜査は時に過激ですけど(笑)。

No.391 5点 黒い壁の秘密- グリン・カー 2014/08/13 12:28
(ネタバレなしです) 1952年発表のアバークロンビー・リューカーシリーズ第6作の本格派推理小説です。事件は早い段階で発生するものの、事故か殺人か曖昧な状況が長く続きます。ある意味リアルな捜査描写なのですが、やっぱり事故死でしたなんて結末を期待していない読者としては少々冗長に感じられ、早く殺人と断定して捜査を進めてほしいなと思わずにいられませんでした。殺人と仮定(そうに決まっていますが)しても動機がさっぱり見当がつかないという状況が長々と続くのも捜査がなかなか進展しない原因です。あー、じれったい(笑)。本格派推理小説としての謎解き伏線はちゃんと用意しているのですが、前半を盛り上げる工夫が足りないのが辛いところですね。山岳描写はさすがに手馴れたものです。

No.390 5点 レディ・モリーの事件簿- バロネス・オルツィ 2014/08/13 12:14
(ネタバレなしです) 「隅の老人」シリーズでミステリー史に名を残した作者ですが、女性警官を探偵役にしたミステリーの先駆的作品である本書も忘れてはいけないと思います。本書が出版された1910年には、女性警官がまだ実在していなかったという史実にまず驚かされます。もっとも女性の社会進出を描く目的で執筆されたかというとそこは疑問で、「終幕」でレディー・モリーがとった行動は男女同権主義の読者からは賛同を得にくいと思います。「隅の老人」シリーズと比べて謎解き要素が弱く、中には全然ミステリーでない作品もありますが「フルーウィンの細密画」と「大きな帽子の女」はまずまずの出来栄えかと思います。

No.389 6点 同窓会にて死す- クリフォード・ウィッティング 2014/08/13 12:00
(ネタバレなしです) 1950年に発表したチャールトン警部シリーズ第9作の本格派推理小説です。事件発生が物語の後半というプロットで、こういう構成だといかに前半を退屈させないかに作者の手腕が問われるところですが、本書は高い水準で課題をクリアしていると思います。当然ながら捜査は限られたページ数で描かれるのですが、その中で部外者扱いのチャールトン、地元警察、ロンドン警視庁の三者がそれぞれの面子にこだわっているところを挿入したりとなかなか芸の細かいことをやっています。結末のつけ方にはツッコミを入れたい読者もいるでしょうけど、読み応え十分の作品でした。

No.388 8点 狩場の悲劇- アントン・チェーホフ 2014/08/13 10:26
(ネタバレなしです) アントン・チェーホフ(1860-1904)といえば短編小説と戯曲の名手として世界的に有名なロシアの文豪ですが、1884年から1885年にかけて新聞連載発表された本書は数少ない長編作品でしかもミステリーです。当時のロシアはちょっとしたミステリーブームでフランスのガボリオやロシアのシクレリャフスキーが人気作家だったそうです。本書の作中人物にそういう作品はもう時代遅れだと揶揄させているのも興味深いですね。前半は恋愛を軸にした複雑な人間関係描写が中心であまりミステリーらしくありませんが19世紀の作品ですからこれはやむを得ないでしょう。むしろ謎解きの面白さだけで読者を魅了することが困難になり、事件が人間関係や生活に与えた影響を描くようになった現代ミステリーを読んでいる読者にこそ受け容れやすいかもしれません。驚くべきことに謎解きに大胆なアイデアが採用されており、謎解き伏線もそれなりに(ある意味これ見よがしですけど)張ってあって同時代のドイルの「緋色の研究」(1887年)やファーガス・ヒュームの「二輪馬車の秘密」(1886年)よりも高く評価されてよいのではと感じました。

No.387 5点 ケンブリッジ大学の殺人- グリン・ダニエル 2014/08/13 10:06
(ネタバレなしです) 英国のグリン・ダニエル(1914-1986)はケンブリッジ大学の教授でしたが、あるミステリーを読んで窓から投げ捨てたくなるほど腹が立ち(どんなミステリーだろう?)、誰だってこれより巧く書けるぞと発言したのがきっかけで本書を執筆したそうです。内容は犯人当て本格派推理小説で、大学教授が大学を舞台にして書いた作品ながら教養知識や学説を披露する場面がほとんどなく謎解きに集中しています。推理が大変緻密で様々な可能性を細かく検証していくプロットなのですが、惜しくらむは一本調子気味なこと。劇的な展開がなく漫然と読むと退屈しかねません(分量もそれなりにあります)。

No.386 7点 罪深き村の犯罪- ロジェ・ラブリュス 2014/08/13 08:41
(ネタバレなしです) フランスのロジェ・ラブリュスが1984年に発表したミステリー第1作の本書は意外な掘り出し物の犯人当て本格派推理小説でした。登場人物はそれなりに個性的ですがもっと深彫りした描写であればと思わなくもないし、謎解き伏線も色々と張ってあるものの決め手としての説得力はやや弱いように感じられます。でも真相は結構印象的ですし、本当に理解しているのか怪しいくせにやたらと連発される「もちろんです」が醸し出すユーモアがいいアクセントになっています。最近のミステリーでは珍しくなった、犯人に罠を仕掛けておびき出す場面の緊張感もなかなかで、読ませどころたっぷりです。

No.385 5点 パニック・パーティ- アントニイ・バークリー 2014/08/12 19:05
(ネタバレなしです) アガサ・クリスティーの名作「そして誰もいなくなった」(1939年)より5年も前の1934年に発表された孤島ミステリーという紹介は間違いではないのですがかなり性格の異なる作品で、本書がクリスティ-に影響を与えたとは思えません。「ルールをことごとく破って」という冒頭の作者コメントが気になりますが、推理の説得力が弱い印象は受けたもののルール破りとまでは感じませんでした。他のバークリー作品と異なるのは冒険スリラー小説の要素が強いことで、特に終盤では謎解きよりもどう混乱を収めるかについて多くのページを費やしています。その点で本書のタイトルは適切だと思いますが犯人当ての面白さが犠牲になっていることも否めません。特に最終作的な演出的はありませんがロジャー・シェリンガム第10作の本書がシリーズ最後の作品となりました。

No.384 5点 見えない精霊- 林泰広 2014/07/23 18:04
(ネタバレなしです) 林泰広(1965年生まれ)の2002年発表のデビュー作で好き嫌いが大きく分かれそうな本格派推理小説です。嘘を見抜く能力を持った人間など超能力ぎりぎりの設定があるのはフェアな謎解きのために必要なのは理解しますが、あまりにも異世界風に感じられます。トリックもシンプルでわかりやすいのはいいのですが、これを成立させるための前提があまりにも好都合すぎるという気もします。そこに目をつぶれば真相はこれしかないという説得力はそれなりにありますけど。

No.383 6点 五枚目のエース- スチュアート・パーマー 2014/07/22 13:05
(ネタバレなしです) 1950年発表のヒルデガード・ウィザーズシリーズ第11作の本書はシリーズ最大の異色作と原書房版の巻末解説で紹介されていますが、本書以前に翻訳出版されたシリーズ作品が「ペンギンは知っていた」(1931年)の1作のみでは、どれほど本書が異色なのか読者には伝わりにくいのではと思います。その解説では死刑執行日をデッドラインにしてサスペンス濃厚なこと、ユーモアやどたばたが抑えられておることが異色の理由と書いてありますが、パイパー警部とミス・ウィザーズのどこか噛み合わない会話はユーモアたっぷりだし、一方でデッドラインサスペンスの方はさほど効果的とも思えず、やはりこの作者の本領はユーモア本格派推理小説だと思います。

No.382 5点 秘められた傷- ニコラス・ブレイク 2014/07/17 15:39
(ネタバレなしです) 1968年発表の非シリーズ作品でニコラス・ブレイク(1904-1972)の最後の作品となりました。ハヤカワポケットブック版の裏表紙解説では「本格ミステリの醍醐味」と紹介されていますが、結局自白頼みで真相が明らかになるのでは本格ミステリとしては高い評価を与えられないと思います(論理的な説明にもなっていません)。サスペンス小説として読むべき作品で、派手な展開ではありませんがじわじわとサスペンスを盛り上げていく手法は手堅さを感じさせます。謎めいたエピローグの意味するところを自分は理解できなかったのが少し心残りです。

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nukkamさん
ひとこと
ミステリーを読むようになったのは1970年代後半から。読むのはほとんど本格派一筋で、アガサ・クリスティーとジョン・ディクスン・カーは今でも別格の存在です。
好きな作家
アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、E・S・ガードナー、D・M・ディヴ...
採点傾向
平均点: 5.44点   採点数: 2921件
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E・S・ガードナー(84)
アガサ・クリスティー(57)
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