皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格 ] 五枚目のエース ミス・ヒルデガード・ウィザーズ |
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スチュアート・パーマー | 出版月: 2014年07月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 3件 |
原書房 2014年07月 |
No.3 | 6点 | mini | 2014/08/12 10:01 |
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ちょっと前に論創社からパーマーとライスの合作短編集が出たと思ったら原書房からもパーマー久々の長編が刊行されて、やっとこの作家に光が当たり出したのは嬉しい
パーマーはEQMMにも度々短編が掲載されるなど当時の人気作家で、パーマーをマイナー作家と思い込んでいるのは日本の読者だけだろう、過去にマトモな紹介をされ損ねたのが残念だ さてここで質問、黄金時代の本格派作家の中で、英国風とは対極的ないかにもなアメリカ的な本格派作家を3人選べと言われたら誰を選びますか? 条件は本格派としてのロジックとかトリックがどうとかの要素は二の次、あくまでも”英国には居ないタイプのアメリカならでは”というのを最重要条件とする その条件で私が選んだのは次の3人、まず1人目はレックス・スタウト、これはもういかにもミスター・アメリカン・ミステリーそのものだからね 2人目は当然ながら御大クイーンである、これは異論が無いだろう、アメリカの社会風俗描写などを取り入れているし、作家だけではなく編集者として業界をリードした功績も含めてだ 3人目はクレイグ・ライスと言いたいところだが、ライスのデビューは黄金時代には遅く活躍時期的に戦中戦後作家と言うべきで、黄金時代全盛期の只中に活動したという条件には合わない そうなるとライスの代わりにP・A・テイラーか少々マニアックだがデイリー・キングあたりかだが、テイラーは日本では未紹介過ぎるし、本格マニア受けのキングではこの場合の選択の主旨とは少々ズレてくる これも紹介が不十分だが一応本格黄金期に活躍という条件にぴったり当て嵌まる点など、ライスの代わりに3人目を選ぶなら絶対外せない作家がスチュアート・パーマーである パーマーはアメリカンな雰囲気という意味ではスタウトやクイーン以上の正にミスター・アメリカン本格だ 生まれも育ちも生粋のニューヨークっ子で、その能天気で明るいユーモア、都会的な雰囲気、どう見ても絶対に英国からは出てこないタイプの本格派作家である 今回原書房から出た「五枚目のエース」、題名の由来は4枚のエースを揃えても負ける”緑のエース”という故事らしいのだが知らない故事だ デッドラインものという基本設定だけど、あまりその手のサスペンスが横溢していない これには理由が有って、あまり詳しく言うと勘の良い人にはネタバレになるのでボカシてしか言えないが、要するにちょっとした仕掛けが有る訳だ だからデッドラインものとしてのサスペンス不足はこの作品の弱点ではないと思う、そう考えると当サイトでの他の方の御指摘通りで解説で森英俊氏が主張するほど特別な異色作でも無い ちなみに私は真相は8割方見破った、何となく違和感有ったんだよね、パーマーならこの位は仕掛けてくるだろうとね ところでこれはよくクリスティがやる手なんだけど、終盤の解決編で容疑者全員を一堂に集めて探偵役が謎解きを披露するパターンって有るでしょ ケレン味が嫌いで渋い謎解き場面が好きな私としては、関係者一堂解決場面演出って嫌いなんだよな ところが「五枚目のエース」にはこの手法に対する皮肉が込められた文言が有って、私の感性にマッチしていたのも好感 |
No.2 | 6点 | kanamori | 2014/08/01 23:04 |
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ショーガール殺しの罪で死刑の執行が迫るアンディ・ローワンから、パイパー警部宛てに警部を相続人にする旨の連絡が入る。直感的にローワンの冤罪を確信したミス・ウィザーズは、旧友の警部を巻き込み、関係者を引っかき回して次々と容疑者を集めるのだが、新たに殺人事件が発生し-------。
元小学校教師のオールドミス、ヒルデガード(ヒルディ)・ウィザーズ・シリーズの11作目。 死刑執行という”デッドライン”が設定されていますが、それほどサスペンスは強調されておらず、むしろパイパー警部とヒルディの軽妙なやり取りや、ヒルディの飼い犬タレーランのトボケた行動など、コメディ要素のほうが目立ちます。死刑囚ローワンの妻・ナタリーの招待状でもって、関係者を一堂に集めた最終盤はさすがに盛り上がりますが。 生前に被害者と関係があった3名の容疑者の存在感がいまいち薄いのが残念なところですが、デッドラインものの定型にヒネリを加えた真相はまずまずと言えるのでは。 |
No.1 | 6点 | nukkam | 2014/07/22 13:05 |
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(ネタバレなしです) 1950年発表のヒルデガード・ウィザーズシリーズ第11作の本書はシリーズ最大の異色作と原書房版の巻末解説で紹介されていますが、本書以前に翻訳出版されたシリーズ作品が「ペンギンは知っていた」(1931年)の1作のみでは、どれほど本書が異色なのか読者には伝わりにくいのではと思います。その解説では死刑執行日をデッドラインにしてサスペンス濃厚なこと、ユーモアやどたばたが抑えられておることが異色の理由と書いてありますが、パイパー警部とミス・ウィザーズのどこか噛み合わない会話はユーモアたっぷりだし、一方でデッドラインサスペンスの方はさほど効果的とも思えず、やはりこの作者の本領はユーモア本格派推理小説だと思います。 |