皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
nukkamさん |
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平均点: 5.44点 | 書評数: 2814件 |
No.394 | 6点 | 春にはすべての謎が解ける- アラン・ブラッドリー | 2014/08/13 14:09 |
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(ネタバレなしです) 2013年発表のフレーヴィア・ド・ルースシリーズ第5作は相当ひねった謎解きが用意された本格派推理小説で、ここまでひねられると完全正解できるわけがないと読者から不満の声が出るかもしれません。しかし珍しいトリックとそれが皮肉な結末につながる真相は一読の価値はあると思います。これまでのシリーズ作品でも警察の目を盗んでのフレーヴィアの捜査はサスペンスを生み出すのに効果的でしたが、本書では冒険スリラー並みにまで突っ走り思わぬ危機を迎えます。さすがに体力勝負では打開できないフレーヴィアが得意の化学知識で対処する場面は映像化したら結構派手になりそうですね。 |
No.393 | 6点 | ダーブレイの秘密- R・オースティン・フリーマン | 2014/08/13 13:54 |
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(ネタバレなしです) 1926年に発表されたソーンダイク博士シリーズ第9作でフーダニット型本格派推理小説ですがハウダニットの要素も強い作品です。17章で説明されるトリックについては現場見取り図があればもっとよかったですね。ロンドンのガス灯や馬車の描写が古きよき時代のミステリーであることをしみじみと感じさせます。謎解きとは関係ありませんが5章でアッシャー医師がグレイに名医の秘訣(?)を語る場面がなかなか興味深かったです。作者のフリーマン自身も医師だったのですがもしかして彼もアッシャータイプだったのでしょうか? |
No.392 | 5点 | ペニーフット・ホテル受難の日- ケイト・キングズバリー | 2014/08/13 13:21 |
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(ネタバレなしです) 英国出身で米国在住の女性作家ケイト・キングズバリー(1934年生まれ)はロマンス小説家としてデビューしましたが最も書かれたのが1993年発表の本書がシリーズ第1作となるペニフット・ホテルシリーズのミステリーです。20世紀初頭の英国を舞台にしていますがそれほど歴史描写は多くなく、多彩な人物描写の方が目立っています。シリーズ第1作のためかホテル関係者が前面に出過ぎて容疑者の存在感が薄くなってしまったところがありますが。犯人当て謎解きとしてはやや容易過ぎかと思いますが、推理による謎解きを心がけているところは好みです。もっとも穏健な態度と裏腹に主人公セシリーの捜査は時に過激ですけど(笑)。 |
No.391 | 5点 | 黒い壁の秘密- グリン・カー | 2014/08/13 12:28 |
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(ネタバレなしです) 1952年発表のアバークロンビー・リューカーシリーズ第6作の本格派推理小説です。事件は早い段階で発生するものの、事故か殺人か曖昧な状況が長く続きます。ある意味リアルな捜査描写なのですが、やっぱり事故死でしたなんて結末を期待していない読者としては少々冗長に感じられ、早く殺人と断定して捜査を進めてほしいなと思わずにいられませんでした。殺人と仮定(そうに決まっていますが)しても動機がさっぱり見当がつかないという状況が長々と続くのも捜査がなかなか進展しない原因です。あー、じれったい(笑)。本格派推理小説としての謎解き伏線はちゃんと用意しているのですが、前半を盛り上げる工夫が足りないのが辛いところですね。山岳描写はさすがに手馴れたものです。 |
No.390 | 5点 | レディ・モリーの事件簿- バロネス・オルツィ | 2014/08/13 12:14 |
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(ネタバレなしです) 「隅の老人」シリーズでミステリー史に名を残した作者ですが、女性警官を探偵役にしたミステリーの先駆的作品である本書も忘れてはいけないと思います。本書が出版された1910年には、女性警官がまだ実在していなかったという史実にまず驚かされます。もっとも女性の社会進出を描く目的で執筆されたかというとそこは疑問で、「終幕」でレディー・モリーがとった行動は男女同権主義の読者からは賛同を得にくいと思います。「隅の老人」シリーズと比べて謎解き要素が弱く、中には全然ミステリーでない作品もありますが「フルーウィンの細密画」と「大きな帽子の女」はまずまずの出来栄えかと思います。 |
No.389 | 6点 | 同窓会にて死す- クリフォード・ウィッティング | 2014/08/13 12:00 |
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(ネタバレなしです) 1950年に発表したチャールトン警部シリーズ第9作の本格派推理小説です。事件発生が物語の後半というプロットで、こういう構成だといかに前半を退屈させないかに作者の手腕が問われるところですが、本書は高い水準で課題をクリアしていると思います。当然ながら捜査は限られたページ数で描かれるのですが、その中で部外者扱いのチャールトン、地元警察、ロンドン警視庁の三者がそれぞれの面子にこだわっているところを挿入したりとなかなか芸の細かいことをやっています。結末のつけ方にはツッコミを入れたい読者もいるでしょうけど、読み応え十分の作品でした。 |
No.388 | 8点 | 狩場の悲劇- アントン・チェーホフ | 2014/08/13 10:26 |
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(ネタバレなしです) アントン・チェーホフ(1860-1904)といえば短編小説と戯曲の名手として世界的に有名なロシアの文豪ですが、1884年から1885年にかけて新聞連載発表された本書は数少ない長編作品でしかもミステリーです。当時のロシアはちょっとしたミステリーブームでフランスのガボリオやロシアのシクレリャフスキーが人気作家だったそうです。本書の作中人物にそういう作品はもう時代遅れだと揶揄させているのも興味深いですね。前半は恋愛を軸にした複雑な人間関係描写が中心であまりミステリーらしくありませんが19世紀の作品ですからこれはやむを得ないでしょう。むしろ謎解きの面白さだけで読者を魅了することが困難になり、事件が人間関係や生活に与えた影響を描くようになった現代ミステリーを読んでいる読者にこそ受け容れやすいかもしれません。驚くべきことに謎解きに大胆なアイデアが採用されており、謎解き伏線もそれなりに(ある意味これ見よがしですけど)張ってあって同時代のドイルの「緋色の研究」(1887年)やファーガス・ヒュームの「二輪馬車の秘密」(1886年)よりも高く評価されてよいのではと感じました。 |
No.387 | 5点 | ケンブリッジ大学の殺人- グリン・ダニエル | 2014/08/13 10:06 |
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(ネタバレなしです) 英国のグリン・ダニエル(1914-1986)はケンブリッジ大学の教授でしたが、あるミステリーを読んで窓から投げ捨てたくなるほど腹が立ち(どんなミステリーだろう?)、誰だってこれより巧く書けるぞと発言したのがきっかけで本書を執筆したそうです。内容は犯人当て本格派推理小説で、大学教授が大学を舞台にして書いた作品ながら教養知識や学説を披露する場面がほとんどなく謎解きに集中しています。推理が大変緻密で様々な可能性を細かく検証していくプロットなのですが、惜しくらむは一本調子気味なこと。劇的な展開がなく漫然と読むと退屈しかねません(分量もそれなりにあります)。 |
No.386 | 7点 | 罪深き村の犯罪- ロジェ・ラブリュス | 2014/08/13 08:41 |
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(ネタバレなしです) フランスのロジェ・ラブリュスが1984年に発表したミステリー第1作の本書は意外な掘り出し物の犯人当て本格派推理小説でした。登場人物はそれなりに個性的ですがもっと深彫りした描写であればと思わなくもないし、謎解き伏線も色々と張ってあるものの決め手としての説得力はやや弱いように感じられます。でも真相は結構印象的ですし、本当に理解しているのか怪しいくせにやたらと連発される「もちろんです」が醸し出すユーモアがいいアクセントになっています。最近のミステリーでは珍しくなった、犯人に罠を仕掛けておびき出す場面の緊張感もなかなかで、読ませどころたっぷりです。 |
No.385 | 5点 | パニック・パーティ- アントニイ・バークリー | 2014/08/12 19:05 |
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(ネタバレなしです) アガサ・クリスティーの名作「そして誰もいなくなった」(1939年)より5年も前の1934年に発表された孤島ミステリーという紹介は間違いではないのですがかなり性格の異なる作品で、本書がクリスティ-に影響を与えたとは思えません。「ルールをことごとく破って」という冒頭の作者コメントが気になりますが、推理の説得力が弱い印象は受けたもののルール破りとまでは感じませんでした。他のバークリー作品と異なるのは冒険スリラー小説の要素が強いことで、特に終盤では謎解きよりもどう混乱を収めるかについて多くのページを費やしています。その点で本書のタイトルは適切だと思いますが犯人当ての面白さが犠牲になっていることも否めません。特に最終作的な演出的はありませんがロジャー・シェリンガム第10作の本書がシリーズ最後の作品となりました。 |
No.384 | 5点 | 見えない精霊- 林泰広 | 2014/07/23 18:04 |
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(ネタバレなしです) 林泰広(1965年生まれ)の2002年発表のデビュー作で好き嫌いが大きく分かれそうな本格派推理小説です。嘘を見抜く能力を持った人間など超能力ぎりぎりの設定があるのはフェアな謎解きのために必要なのは理解しますが、あまりにも異世界風に感じられます。トリックもシンプルでわかりやすいのはいいのですが、これを成立させるための前提があまりにも好都合すぎるという気もします。そこに目をつぶれば真相はこれしかないという説得力はそれなりにありますけど。 |
No.383 | 6点 | 五枚目のエース- スチュアート・パーマー | 2014/07/22 13:05 |
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(ネタバレなしです) 1950年発表のヒルデガード・ウィザーズシリーズ第11作の本書はシリーズ最大の異色作と原書房版の巻末解説で紹介されていますが、本書以前に翻訳出版されたシリーズ作品が「ペンギンは知っていた」(1931年)の1作のみでは、どれほど本書が異色なのか読者には伝わりにくいのではと思います。その解説では死刑執行日をデッドラインにしてサスペンス濃厚なこと、ユーモアやどたばたが抑えられておることが異色の理由と書いてありますが、パイパー警部とミス・ウィザーズのどこか噛み合わない会話はユーモアたっぷりだし、一方でデッドラインサスペンスの方はさほど効果的とも思えず、やはりこの作者の本領はユーモア本格派推理小説だと思います。 |
No.382 | 5点 | 秘められた傷- ニコラス・ブレイク | 2014/07/17 15:39 |
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(ネタバレなしです) 1968年発表の非シリーズ作品でニコラス・ブレイク(1904-1972)の最後の作品となりました。ハヤカワポケットブック版の裏表紙解説では「本格ミステリの醍醐味」と紹介されていますが、結局自白頼みで真相が明らかになるのでは本格ミステリとしては高い評価を与えられないと思います(論理的な説明にもなっていません)。サスペンス小説として読むべき作品で、派手な展開ではありませんがじわじわとサスペンスを盛り上げていく手法は手堅さを感じさせます。謎めいたエピローグの意味するところを自分は理解できなかったのが少し心残りです。 |
No.381 | 5点 | 本格ミステリ館焼失- 早見江堂 | 2014/07/17 12:28 |
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(ネタバレなしです) 矢口敦子(1953年生まれ)が早見江堂名義で発表した三部作の2007年出版の第1作ですがうーん、途中までは文句なく楽しめたのですが本格派推理小説としてこの結末はどうなんでしょう?大胆かつ衝撃的であることは間違いないのですが、これを納得できる読者はよほど許容力が強い読者か、ありきたりの真相ではもう物足りないという末期的症状の(笑)読者しかいないのでは。私はそういう読者ではないので悪夢を見ているかのような結末に打ちのめされました。でも(この三部作の範囲内では)まだましな方だったかも(笑)。 |
No.380 | 10点 | 「跳ね鹿」亭のひそかな誘惑- マーサ・グライムズ | 2014/07/03 16:56 |
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(ネタバレなしです) 1985年発表のリチャード・ジュリーシリーズ第7作はエリザベス・ジョージの「隠れ家の死」(1994年)ほどは深刻な書き方でないにしろ動物虐待という社会問題を取り上げているのがこのシリーズとしては珍しいです。しかし本書の特徴は何といってもあまりにも劇的な結末でしょう。「あんまりだ」と感じる読者もいるでしょうが、それだけいつまでも忘れられそうにない結末になっています。個性派揃いの登場人物、サスペンス豊かな展開と中盤も充実しており、個人的には名作だと思います。 |
No.379 | 5点 | 扼殺のロンド- 小島正樹 | 2014/06/25 08:25 |
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(ネタバレなしです) 2010年発表の海老原浩一シリーズ第2作の本格派推理小説です(島田荘司との共著「天に還る舟」(2005年)はカウントせず)。私は海外本格派を中心に読んでいて、国内本格派を読む時にはぜひ海外にも紹介できるような作品であって欲しいなと常々思っているのですが本書に関しては残念ながら海外の読者にはまずぴんと来ないような箇所がありました。次から次に不思議な謎が提供されるプロットは魅力十分で、詰め込みすぎという意見もあるとは思いますがやたら大作主義に走るよりはよいかと思います。 |
No.378 | 5点 | 生れながらの犠牲者- ヒラリー・ウォー | 2014/05/16 14:55 |
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(ネタバレなしです) 1962年発表のフェローズ署長シリーズ第5作ですが、警察小説と本格派推理小説のジャンルミックス型を予想すると肩透かしを食らいます。最後に明かされる真相は自白頼りになっており、推理による謎解きを期待する読者には不満が残るかもしれません。但し別の視点で鑑賞すればなかなかの作品だと思います。仮にフェローズの代わりに私立探偵を探偵役にしていたら同時代のロス・マクドナルドにも通じる、事件の悲劇性を強調したハードボイルド小説として評価できたのでは。もともとウォーはハードボイルド作家としてデビューしており、ドライな文章が救いのない結末を巧みに演出しています。 |
No.377 | 7点 | サンタクロースは雪のなか- アラン・ブラッドリー | 2014/05/16 13:25 |
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(ネタバレなしです) 2011年発表のフレーヴィア・ド・ルースシリーズ第4作の本格派推理小説です。化学知識が豊富で思考が理詰めなフレーヴィアですが、本書ではサンタクロースを捕まえようとあれこれ画策するところに11歳らしさが感じられ、これまでの作品では1番キャラクターに共感できました。華やかさはあまりありませんがクリスマスの雰囲気はそれなりに演出されており、謎解きの面白さと相乗効果を出すことに成功しています。終章もクリスマスらしい締めくくりが用意されています。作中に「人形遣いと絞首台」(2010年)のネタバレが若干ありますので未読の方はご注意下さい。 |
No.376 | 6点 | 服用禁止- アントニイ・バークリー | 2014/05/14 13:18 |
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(ネタバレなしです) 1938年発表の本書は意外にも「読者への挑戦状」付きの本格派推理小説でした(シリーズ探偵は登場しません)。ただ最終章の謎解きはそれほど証拠に基づく推理が披露されているわけではなく(犯人からも「推理と証拠は違う」と反論されています)、しかも最後は罪と罰の議論に話がすり替わって微妙に不条理な締め括りとなります。このあたりがバークリーらしいといえばらしいのですが、そうなると何のための「読者への挑戦状」だったのだろうというという疑問が残ります。 |
No.375 | 2点 | 水曜日のジゴロ 伊集院大介の探求- 栗本薫 | 2014/05/14 12:32 |
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(ネタバレなしです) 2002年発表の本書は伊集大介シリーズ作品ですが本格派推理小説でなくサスペンス小説ですね。無理に本格派として鑑賞しようとすると、あの真相はあまりにも読者に対してアンフェアという印象しか残りません(伊集院は全然活躍せず、ただ結果報告しているだけ)。セックス描写(同性愛もあり)も好き嫌いは分かれそうだし、心理描写におけるセックスへの関心度が非常に高いです。個人的にはそこが1番なじめませんでした。 |