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[ 本格 ]
おしゃべり雀の殺人
ダーウィン・L・ティーレット 出版月: 1999年08月 平均: 5.00点 書評数: 2件

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国書刊行会
1999年08月

No.2 5点 ことは 2025/01/03 00:55
解説で、第二次大戦前のドイツを、1936年当時に描いたことを称揚している。たしかに生々しい描写がいくつかあるが、それをもって本作を傑作とするのは、ちょっとちがうなぁと思う。
上記のような描写が少しはさまれるが、全体はヒッチコックの映画のようだった。いちばん近いイメージは「北北西に進路を取れ」かな。冒頭の「雀がしゃべった」というエピソードも、終盤にその謎は解かれるのだが、前半はヒッチコックが言ったマクガフィンとして機能する。
そして、次々と事件が起き過ぎて、読んでいる方は全体像がよくわからなくなり、謎を究明するモチベーションも低下してしまうので、これはやや失敗作かと思う。
あと、場面転換がわかりづらいところが多々あるのもマイナス。例えば、レストランに向かって歩き始めて、色々思考をめぐらした記述がつづいたあと、「テーブルについたら」とくる。「レストランに着いて」の一言があるだげで全然違うのにと思う。他にも、「家をめがけて走った」につづけて「机の鏡板を巻き上げ」とあり、家に入ったり部屋に入ったりの描写がなかったりするので、一読では戸惑ってしまった。

No.1 5点 nukkam 2014/09/08 15:02
(ネタバレなしです) ダーウィン・L・ティーレット(1904-1964)は生粋の米国人ながらドイツ人女性と結婚してドイツに在住しました。第二次世界大戦前は不可能犯罪の本格派推理小説を、戦後はスパイ・スリラー小説を書いたそうです。本書は1934年の作品なので本格派推理小説かと思ったら微妙な作品でした。しゃべる雀の謎解きや犯人当て推理もありますが、一方で巻き込まれ型スパイ・スリラー的な展開もあるジャンルミックス型になっています。誰が敵か味方かわからなくするために必要以上に人物の個性を殺してしまったようなところがあって、テンポの速い物語にもかかわらず意外と読みにくかったです。とはいえナチスが勢力拡大してユダヤ人や共産主義者への迫害が日常茶飯事となっているドイツが描かれていて、(物語としてはフィクションながら)時代の証言的なところは価値があります。


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ダーウィン・L・ティーレット
1999年08月
おしゃべり雀の殺人
平均:5.00 / 書評数:2