皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
miniさん |
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平均点: 5.97点 | 書評数: 728件 |
No.28 | 8点 | 東方の黄金- ロバート・ファン・ヒューリック | 2008/10/26 10:40 |
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狄(ディー)判事シリーズはとても面白いのでもっと読んで欲しいシリーズだ
「東方の黄金」は発表順は第3作目だが、作中時系列では判事の最初の赴任地の話なので、赴任するいきさつや、後の作品でも判事の手足となって働く二人の部下、馬栄(マーロン)と喬泰(チャオタイ)との出合いなどが描かれ、順番的にはこれから読むのが適当との意見もあるようだ 私は原書刊行順に第1作「沙蘭の迷路」から入門でもいい気もするが、でも「東方の黄金」は屈指の傑作である 巧妙な密室トリックも出てくるが、密室トリックに関しては私は「迷路」での密室トリックの方が不気味で好きだ やはり「黄金」の良さは見事なプロットに尽きる 意外過ぎる黒幕真犯人には賛否両論あろうが、それ以上に意外なのが運河に葬られた人物の超意外な正体で、これには慣れた読者でも驚くだろう さらにメインのネタでは無いが、序盤で登場する幽霊の正体が最後の最後で明かされる粋な演出など、全編に亘って素晴らしい 物語の面白さ、謎解きといい、これを読んだらシリーズの虜になってしまうこと請け合いだ |
No.27 | 7点 | 大鴉の啼く冬- アン・クリーヴス | 2008/10/23 11:21 |
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去年初紹介された現代本格作家作品の中でも出色
グェンドリン・バトラーやジル・マゴーンと並ぶ現代英国女流本格作家の一人アン・クリーヴスは、今まで紹介されなかったのが不思議なほどだ 軽快な文章ではないが読みやすく雰囲気がある この点では文章や話の展開に癖があるジル・マゴーンよりも、むしろとっつき易いのではないだろうか マゴーンの「騙し絵の檻」は謎解き本格としては傑作だが、文章が読み難かったもんなあ クリーヴスの「大鴉の啼く冬」は地味ながら、舞台の魅力、人物描写、謎の三者のバランスが取れている逸品だ CWA賞受賞もこの作家としては遅すぎた位じゃないの |
No.26 | 8点 | 検死審問 インクエスト- パーシヴァル・ワイルド | 2008/10/23 11:03 |
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名前だけは昔から超有名作だが、マトモな完訳は初めてであろう幻の古典作品で、今年の新訳復刊の目玉と言っていい
幻の作品と言われるものには、いざ紹介されるとガッカリてなのも多いが、これは正真正銘の傑作 ”ミステリーとはパズルでもいい”などと主張するような仕掛けの部分だけを抜き出して吟味するようなタイプの本格=パズル論主義者が読んでも面白くないだろう 謎解き部分だけを抜き出して吟味とかじゃなくて、謎が物語の中に絶妙に融合しトータルとして読んで面白いのだ 登場人物キャラでデコレートされているなどという頓珍漢な書評をする人もいるが、それは読みどころを間違えていて、人物キャラこそが読ませどころの中心なのは明らかだろう ミステリーとは断じて単なるパズルではなくて、全ては書き方の問題だよなという良い見本である |
No.25 | 6点 | 指に傷のある女- ルース・レンデル | 2008/10/23 10:50 |
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レンデルは非シリーズの異常心理ものとウェクスフォード警部シリーズとを書き分けていて作品数的にはほぼ互角である
それなのに異常心理ものだけが読まれていてウェクスフォードものが不当に無視されているのは残念だ 非シリーズの方が一般評価は高いが、私はレンデルの異常心理ものはわざとらしいと思うし、力み過ぎて空回りしてると思う ウェクスフォード警部シリーズの方が良い意味で肩の力が抜けた好エンタメに仕上がっている この「指に傷のあるう女」も捜査小説風なところが形式的な本格だけを好むタイプの読者には合わないかも知れないが、地味な捜査小説が好きな私としてはそこが良いんだよね 異常心理サスペンスの女王という側面だけで語られがちなレンデルだが、新感覚の本格派としてのレンデルももっと評価されてもいいんじゃないだろうか |
No.24 | 1点 | ホッグ連続殺人- ウィリアム・L・デアンドリア | 2008/10/21 12:03 |
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私はどうも瀬戸川猛資という評論家が合わず、瀬戸川が貶すものに良いものが多く、瀬戸川が褒めるものは大体つまらないものが多い
「ホッグ」は瀬戸川が褒めて広く読まれるようになり、また新本格読者がいかにも好みそうなので人気があるようだ はっきり断言するがデアンドリアは二流作家である、いや三流と言ってもいい 「ホッグ」は面白い基本アイデアを持っているのに全く活かされておらず、せっかくのネタも料理の仕方が下手だとこうもつまらない作品になるのかと思った もしこのネタが早い段階で見破れなかったら、よほどの初心者か、謎解きのセンスが欠如した人だけだろう まあその方がミステリーを楽しんで読めるからいいか それにしてもデアンドリアのメインシリーズは、「視聴率の殺人」や「殺人オン・エア」などのTV局の調査員マット・コブのシリーズだと思うのだが、こっちは全然読まれてないようなのは日本の読者の嗜好なんだろうか |
No.23 | 6点 | 目撃者を捜せ!- パット・マガー | 2008/10/21 11:43 |
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マガーで一番読まれていないのがこれだろう、他は全部読んだが「目撃者を捜せ!」だけ読んでないという人も居るかもしれない
マガー得意の過去回想の語りパターンではないので代表作には推せないが、全く無視されているのが不思議なくらい実は「目撃者を捜せ!」は面白い 犯人探しに比べて目撃者探しだから面白味に欠けるなんて印象は私は全く感じなかった、むしろこの設定だと、目撃者探しだからこその興味が湧く なぜ目撃者が名乗り出てくれないのか?それが真相とどう関わるのか?おっとこれ以上はネタバレになる 代表作と目される「被害者を捜せ!」「七人のおば」のような作者ならではの設定上の特殊性には乏しいが、ミステリーとして謎解き上の技巧では「目撃者を捜せ!」の方がむしろ上ではないかと感じるのは私だけか 少なくとも変化球を狙ってみたが、実は従来の犯罪サスペンスの形式そのまんまに陥っている「探偵を捜せ」みたいな凡作よりはこっちの方が数段面白い まぁたしかに逆に見れば普通の謎解きミステリーなので、マガー本来の持ち味には欠けるが、マガー”らしさ”という面を求めなければ気の利いた佳作である 特に探偵役の夫婦がほのぼのと良い味出していて、これ1作だけの登場なのが惜しい マガーの未訳作の中にこういう癒し系路線の作があるのだったら読んでみたい気がした |
No.22 | 7点 | 三人のイカれる男- トニー・ケンリック | 2008/10/21 11:26 |
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ケンリックはだいたい原著の順番に翻訳されたと思われているが、一つだけ例外がある
それがこの「三人のイカれる男」で、当時は内容に問題があると版元の角川が考慮して初期作なのに翻訳順がずっと後回しになった 今読むと別に問題は無かったと思うし、むしろ911テロ事件があった頃に訳されていたらその方が問題な気もするけどな 「三人のイカれる男」は書かれた順番としては「スカイジャック」と「リリアンと悪党ども」の間に位置し、言わば作者の最も脂ののっていた時期の作だ キャラ設定がそれほど物語に活かされてないのが弱点だが、話の展開自体は「スカイジャック」よりずっと面白く、構成も見事に決まっている もし順番通りに訳されていれば、「リリアン」は未読だがきっと前後2作に匹敵する評価をされていたと思うんだけどな、タイミングを逸したのが残念 ケンリックという作家があまり好きじゃないので辛口に採点しがちになったが、ケンリック作品の中で不当に無視されてるのを考慮して7点とする |
No.21 | 7点 | トレント乗り出す- E・C・ベントリー | 2008/10/19 11:52 |
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「トレント最後の事件」だけと思われがちだが、ベントリーにはもう一つ重要な作品がある
それが短編集「トレント乗り出す」で、国書刊行会の短編集企画『ミステリーの本棚』六冊の中では話題にならなかった方だが、こういうのこそ擁護したい 収録作の中でよくアンソロジーに採られてるのが「本物のタバード」で、ベントリーらしい上品さと犯行計画とのバランスが良く取れていて、個人的には大好きな短編である 短編集の棹尾を飾る「ありふれたヘアピン」は、感動の名作で多分ベントリーの最高傑作だろう |
No.20 | 3点 | 探偵を捜せ!- パット・マガー | 2008/10/19 11:18 |
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「被害者を捜せ!」や「七人のおば」は話が淡々として地味だからサスペンスのある「探偵を探せ!」が代表作、みたいな事を言う人もいるが私は賛成できない
何々を捜せみたいな特殊な設定という側面ばかりが強調されがちなマガーだが、基本的にマガーはあの過去回想を淡々と語るのが特徴である 地味とか派手とかではなく、あの語り口調が持ち味なので、眼前のサスペンスが主題の「探偵を捜せ!」はマガーの本領とは言えない 趣向的にもただ単純に探偵と犯人の役を入れ換えただけでさぁあまり芸が無い そもそもこれってさ、いわゆる犯罪サスペンス小説そのまんまでしょ、つまり変化球を狙ったのに、本格派以外のジャンルとして見れば形式的な直球そのままになっちゃってるんだよ これを一種の変化球に感じる読者ってのはさ、犯罪サスペンスものを殆ど読まずに本格派しか読みませんみたいな読者だけでしょ むしろ変化球としてなら、「目撃者を捜せ」の方を私は推したい 私は、その作家にとっての異色作というのは代表作と認めない主義だ だって例えばある作家が100作書いていて、99作が特定のシリーズ物で、1作だけノンシリーズの人気作だったと仮定して、シリーズ物もそれなりの水準なら代表作はその中から選ぶべきだろう たった1作のノンシリーズが代表作ってのも変だと思う 例えば「そして誰もいなくなった」が傑作で無いとは言わない しかしポアロもマープルも登場しない同作を私はクリスティの代表作とは呼べないのだ ”代表作”というのは必ずしも”最高傑作”でなくてもいい、その作家の中でも全体の3~4番手位の出来映えでもいいのだ、それよりもその作家の特徴が充分に発揮されているかの方が代表作と呼ぶには重要だと私は思う やはりマガーの代表作は「被害者を捜せ!」「七人のおば」あたりから選ぶのが妥当だろう |
No.19 | 6点 | ペンギンは知っていた- スチュアート・パーマー | 2008/10/19 10:58 |
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新樹社には『クイーンのライヴァルたち』という企画があって、全四作のうち、日本だけで変な人気があるロジャー・スカーレットや、不可能犯罪マニアに人気のデイリー・キングが好まれているようだ
最も好まれていないのがパーマーみたいなので、擁護したい スチュアート・パーマーはクイーンなどと同期のアメリカ本格全盛時代を代表するパズラー作家の一人で、当時のアメリカでは人気作家だった いかにもなアメリカ風な雰囲気が日本人に受けないのかもしれないが、この時代のアメリカ本格を語る上で絶対外せない作家なので、もっと他の作も翻訳されるべきである 水族館のペンギン・プールから死体が登場する冒頭部や、その後のドタバタな展開など魅力的で、探偵役の女教師ヒルディのキャラも含めて雰囲気を楽しめれば面白いと思うのだが |
No.18 | 7点 | 九人と死で十人だ- カーター・ディクスン | 2008/10/18 13:04 |
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現状では文庫で入手できない作品の一つ
ハードカバーを敬遠する読者だと、このカーの隠れた名作を読み逃してしまう事になるのが実にもったいない 全編船上ミステリーで、カーらしい怪奇趣味は全くないので、カーにオカルトを期待するファンには物足りない その代わり書かれたのが戦時中なので、船がドイツ軍の襲撃に遭う可能性が緊迫感を生んでいて別の魅力がある しかもドイツ海軍襲撃に対する非常訓練の場面も伏線に一役買っていて設定が活かされている 謎解きに関してはカー作品中でも屈指の出来映えで、慣れた読者でも真相を見破るのは容易ではないだろう ハードカバーだからといって敬遠せずに読んで欲しいカー中期の名作だ |
No.17 | 4点 | 毒蛇- レックス・スタウト | 2008/10/18 12:45 |
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ウルフもの第1作目
『このシリーズはどれを読んでも同等なレベルだから、どれが代表作でも同じ、だからその作家の1番の作品への投票は「毒蛇」でいい』みたいな意見を他のサイトで見たことがあるが、その意見には全く賛成出来ない おそらくそいつはそもそもスタウト作品を1冊でも読んでいたのか疑問すら感じさせる スタウトの代表作あるいは最高作が「毒蛇」って絶対有り得ない、「毒蛇」が知名度が一応有るのはウルフシリーズ第1作だからという理由しか思い付かないな 私は作品ごとに結構バラツキがあると思う 「毒蛇」は1作目なこともあってか、作者がミステリーを書くことにまだ慣れてなかったんじゃないだろうか、犯人をばらすタイミングが実に中途半端である 物語全体の2/3位で犯人を明かしているが、普通の本格のように終盤まで隠そうと思えば隠せたはずで、でなければ逆に半分位の時点でわざと明かしてしまい後半を犯人とウルフとの対決によるサスペンスに持ち込むという手もあったと思う 少なくともスタウト作品としては「料理長」や「シーザー」には明らかに劣る出来だ |
No.16 | 6点 | ながい眠り- ヒラリー・ウォー | 2008/10/18 12:13 |
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警察小説の元祖みたいに言われるウォーではあるが、初期はその通りの王道な警察小説だが、中期以降のフェローズ署長ものは若干傾向が違い本格色が顕著だ
「ながい眠り」はフェローズ署長もの第一作で、物語の中盤で捜査が暗礁に乗り上げてしまい雲をつかむような状況になるのがいかにもウォーらしいが、ちゃんと仕掛けがある わざとらしいミス・ディレクションもあるが、後半は容疑者が絞り込まれてしまうので、初心者でもない限りは仕掛けは見破れると思う でも本格初心者なら意外と楽しめるんじゃないかな |
No.15 | 7点 | 蛇は嗤う- スーザン・ギルラス | 2008/10/14 11:37 |
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長崎出版は海外クラシック全集の中では後発だけれど、面白いところを突いてくるので目が離せない
長崎出版の比較的新しい作家の中で最も掘り出し物と思ったのがスーザン・ギルラスだ 西アフリカの異国情緒たっぷりな舞台 旧仏領の西アフリカ地域は距離的には欧州から案外と近く、日本で例えると香港とか台湾やフィリピンあたりな感じか 謎解き部分もまあまあで、何と言ってもエキゾティックな雰囲気に気分良く浸れるのが嬉しい |
No.14 | 6点 | 失われた時間- クリストファー・ブッシュ | 2008/10/14 11:24 |
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ブッシュははるーか昔に「完全殺人事件」「100%アリバイ」などが訳された後、ずーと放置されたままだった
それが突然に論創社から出たのにはびっくりした ブッシュはアリバイものだけを書いたわけではないが、日本に紹介された作品は全てがアリバイものである 「失われた時間」もアリバイと言えばアリバイだけど、すごく短い時間が重要になっている ネタバレしないように言うと、表面的にはアリバイものだけど、実際は人間心理の機微を突いた話である トリックにしか興味の無い読者には良い意味で向いていない、そもそもトリックの巧拙だけがミステリー小説の価値を決めるわけでもないし トリックがどうのとかなって議論とは無関係に優れたミステリーであり、ブッシュの代表作と言えると思う |
No.13 | 6点 | 断崖は見ていた- ジョセフィン・ベル | 2008/10/14 11:13 |
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論創から出たときは評価は低かったみたいだが、それほど悪くない作品だと思うので積極的に擁護しておきたい
内容は過去のいくつかの出来事に関してそれぞれの地方へ調査に赴く行程が中心である この現地調査の部分は地味だが風景描写も良く飽きずに読める 物語全体に仕掛けられた謎の真相は頭の働く人なら簡単に見破れるだろうが、上手く書けていると思う 短編でこの仕掛けを書くのは難しく、長編ならではのネタだ 過去の事件への現地調査という設定が活かされている |
No.12 | 7点 | ランプリイ家の殺人- ナイオ・マーシュ | 2008/10/14 10:47 |
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英国ではクリスティに次ぐくらいの人気作家だったのに、日本ではイマイチ人気にならないマーシュ
たしかに現役文庫本で読めるものが皆無という理由もあるが、セイヤーズすらあまり読まれていない日本では仕方ないか マーシュはセイヤーズ同様にストーリー・テリングで読ませる英国風スタイルだ ただし違いもあって、セイヤーズは一発芸トリックを上手く物語に融合するが、マーシュはその辺が下手で、トリックが物語の中で浮いてしまっている 逆に言えばセイヤーズからトリックだけを抜き出しても意味が無いと言うか、トリックだけ見たら馬鹿馬鹿しい その点マーシュはトリックだけを吟味しても一応鑑賞には耐えそうだ 「ランプリイ家」はこうしたマーシュの長所短所が濃厚に表れていて、物語性重視なのが嫌いな人には絶対に好まれないだろう まさにいかにもな英国風本格が肌に合うかの踏み絵のような作品で、「ランプリイ家」が合わない読者はきっとアメリカン本格向きなのだろう 例えばロースンとかスカーレットとか好んで選ぶような人にはマーシュが合わないのではないかな 言わんとしている意味は分かってもらえると思うが そう言えばミステリー=パズルでいい論を標榜する他の某サイトでも「ランプリイ家」の評価はメチャ低かったなあ やはりな、その手の書評者には合わないだろうな |
No.11 | 8点 | 殺しにいたるメモ- ニコラス・ブレイク | 2008/10/14 10:23 |
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ニコラス・ブレイクと言えば「野獣死すべし」の名がどうしても出てくるが、「野獣」は特別な作品で、他の作品は普通の本格が大半なようだ
例えば「死の殻」などは陳腐な仕掛けにがっかりする出来だったが、「野獣」に対抗できる正攻法な本格が1作あるのだ それがこの「殺しにいたるメモ」で、原書房のハードカバーでしか読めないので、文庫しか読まない人は見逃してしまうのが残念だ ブレイクってこんなにロジックにこだわる作家だったっけ、と再確認してしまうような王道直球な本格だ 本来は私はこういう真っ当過ぎる本格は好みではないのだが、この作は黄金時代本格の呪縛から免れているのが良い 黄金時代本格の雰囲気を引きずった「死の殻」などより数段進歩しているのだ 登場人物の台詞などに現代感覚が有り、作者ブレイクの持ち味が良く発揮されている それでいて本格としての謎解きと上手く融合しているのである ラストが引っ張り過ぎなのが唯一の難で、終盤をもう少しすっきりまとめていたら9点でもよかったかな |
No.10 | 7点 | 不思議なミッキー・フィン- エリオット・ポール | 2008/10/13 16:19 |
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「ルーヴルの怪事件」が過去に翻訳された事もあり、一応名前だけは知られていた作家
どうもネットでの評価は散々なようで、良い評判をほとんど聞かない こうした作品の擁護こそ私の出番だ 終盤のぐだぐだな展開などロジックやサプライズばかりにこだわる読者にはたしかに評判悪いだろうな でも物語は楽しい雰囲気に溢れている 個人的には西洋美術史が好きなので、エコール・ド・パリの時代的雰囲気は良く出ていると思う 作者はアメリカ人だけど、さすがに作者自身がその時代にパリ在住の異邦人だった経験が活きている |
No.9 | 5点 | ブレイディング・コレクション- パトリシア・ウェントワース | 2008/10/13 16:06 |
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未紹介だった頃は名前だけは日本でも知られていた作家
というのも老嬢探偵ミス・シルヴァーがあのミス・マープルに先んじて登場したというのが知られていたから ところがいざ翻訳されると話題にもならなかった ここでもちょっぴり擁護しておきたい 普通の本格としてはそんなに悪い作品ではないし、一発大トリックばかり求めなければ普通に楽しめる むしろ問題なのはクリスティに似過ぎて独自の個性に乏しい事 ミス・シルヴァーをそのままマープルに置き換えても通用しそう クリスティのファンには安心して薦められるけれど、それ以上ではなく、クリスティが持っていないような+αは何もない感じ |