皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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miniさん |
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平均点: 5.97点 | 書評数: 728件 |
No.188 | 7点 | ルルージュ事件- エミール・ガボリオ | 2010/02/04 10:19 |
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ウィルキー・コリンズ「月長石」の2年前、1866年に刊行された世界最初の”長編”ミステリー
短篇ならさらに古いのがあるから必ず”長編としては”という付帯条件は必要である 実は前出のコリンズにはさらに古い「白衣の女」があるのだが、本は入手済だが未読なので判断は保留 しかし「ルルージュ事件」はどう見ても紛れもなくミステリー小説の範疇でしょ なんと言うか大正モダンとでも言うのだろうか、もっとも大正どころか書かれたのは日本の明治維新前だからね、ホームズより前の作品に現代の視点で評価しても意味は無い 書かれた時代を考えれば結構モダンで、むしろ「月長石」の方が伝奇ロマン的要素もあったりで古臭く感じるくらいだ 例の事典での森英俊氏のガボリオ評は散々で、人物描写についても酷評しているが、ちょっと貶し過ぎなんじゃないか 多分にステロタイプな感はあるが、人物描写には頁数を割いており、登場人物が薄っぺらとまでは言えないと思う 森氏は抄訳だった旧訳で判断しているのではないだろうか 現代語訳の新訳は流麗ですごく読み易い訳なのだが |
No.187 | 5点 | 螺鈿の四季- ロバート・ファン・ヒューリック | 2010/01/29 10:15 |
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今年はヒューリック生誕100周年で、案外と今年が生誕100周年のミステリー作家は少ない
前期5部作で言うと「黄金」と同じ狄判事の最初の赴任地時代の事件で、州庁会議に出席した後に赴任地へ戻る途中に立ち寄った県で巻き込まれた事件 そこには当然ながら同等の立場の他県の知事が居るので、判事は副官の喬泰と共に客人として非公式の立場で捜査する 今回は馬栄(マーロン)は登場せず喬泰(チャオタイ)だけがお供、ってことは助さん抜きで格さん単独だな 「螺鈿の四季」で早川書房の和邇桃子訳での中短篇集を除く長編の新訳刊行は全部出揃ったことになる 「螺鈿」は後期の中では早い原著刊行順でしかも最初の赴任地での話なのだから、本来はかなり早い段階で新訳を出すべき作だったと思うが、これが最も後回しにされたのは旧訳があったからなのかな 前期5部作には三省堂版などが過去に存在していたが、後期作で他社の旧訳有りはこれだけだったはず、その旧訳である中公文庫版『四季屏風殺人事件』で既読だった読者も居るんじゃないかな、私も古本屋で見かけたけど、新訳が出るはずだからと思って中公文庫版には手を出さなかった 中公文庫で読んだ人の間では名作との噂があったが、いざこうして後期作まで含めた新訳が全作出揃ってしまうとどうだろう、まあ普通の出来なんじゃないかな 中期作の中では最も早い時期の作なので、前期5部作風の三つの事件が一応絡む体裁になっているが、それが上手く機能しておらず個々の事件が印象的に浮かび上がってこない、読者によっては三つ事件が有る事に気付かないかも またミステリーに怪奇性が必ずしも必要とは思わないが、「螺鈿」はシリーズの特色の一つでもある怪奇色が弱い それと犯人の正体も基本的には平凡で、平凡過ぎて逆にミスリードなんじゃね?と疑ってしまったくらい もっとも「白夫人の幻」のように意外性を狙ったが裏目に出て見え透いてしまっているのもあるから一長一短か 「螺鈿」の肝はやはり最終章でのあるサプライズだろうな ただし最終章で事件そのものがひっくり返るようなドンデンがあるわけでもないので、その手の期待はしないように 最終章である価値判断の印象ががらりと変わるほろ苦い結末となるのだが、まあこの余韻でかろうじて凡作を免れたというところか |
No.186 | 7点 | 死の猟犬- アガサ・クリスティー | 2010/01/25 10:09 |
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本日発売の早川ミステリマガジン3月号の特集は”犬も歩けば謎に当たる”
やはり”犬”も入れとかないとね でも作中には具体的に犬が出てこないんだよな(苦笑) 特定の探偵役が出てこない非シリーズ短編集『死の猟犬』は、次の2つの理由で有名である 1つは名作と言われる短編「検察側の証人」が含まれていることで、戯曲の1巻としてクリスティ全集にも入っているが、普通の短編としてはこの短編集の収録作なのだ もう1つは、この短編集が全体としてホラー中心の短編集であることだ その為か「検察側の証人」1篇がこの短編集の中で浮いてしまっている感も有り、別の短編集に収録しても良かったんじゃないかという気もする ただ内容ではなく探偵役による分類だと、初中期の短編集は探偵役別の短編集が中心だったりで、ノンシリーズ短編を収めるとなると適した短編集が他に『リスタデール卿』くらいしか見当たらず仕方なかったかも知れない クリスティは意外と非本格のホラー短編が上手く、中期の短編は別だが初期のポアロものの短編群の質を考えたら、ホラーの方が質が高いとさえ言える きっちり謎が解かれて終わらないと気がすまない本格偏愛読者には合わないかも知れないが、相性は読者側の問題であって作品の質とは無関係だ 私は異色作家短篇集なども読むので全然無問題 ホラーは本格より格下などと思い込むような狭量な視点は持ちたくないものである |
No.185 | 3点 | 猫はソファをかじる- リリアン・J・ブラウン | 2010/01/22 09:51 |
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近日発売の早川ミステリマガジン3月号の特集は”犬も歩けば謎に当たる”
私はヘソ曲がりなんで”猫”の方を ココシリーズは、初紹介だったが本来は第4作目の「殺しをかぎつける」を最初に読んだ読者が多そうだけど、そうすると牝猫のヤムヤムが当たり前のようにレギュラー登場しているらしい しかし第1作ではヤムヤムは登場せず、初登場するのがこの第2作なのである もっとも最後に方でちょっと顔を出すだけなので正式なレギュラー化は次の第3作目から、ということで登場人猫一覧表にヤムヤムの名は無い 牝猫導入を薦める猫の精神分析家ってのが良い味出してるな シリーズ第1作「手がかりを読む」では美術、この第2作ではインテリア・コーディネイトの世界 当時のアメリカではこんな事に現を抜かしていたのか、暇な奴等だぜ 何かこう扱われている業種が現実遊離していて世界に浸れねぇよ 謎解きの方もいただけないなこれは だってさ、保険のかかった翡翠の盗難とくりゃあミステリーファンなら当然あれを疑うだろ それはいくらなんでもミスリードちゃうんかいと思うと・・ 殺人事件の犯人も、やけに登場のさせ方が地味だったんでずっと疑っていた人物で当てちゃったし やはりこのシリーズはウィットに富んだ粋な会話文だけが取り柄だな |
No.184 | 5点 | ダムダム- カーター・ブラウン | 2010/01/18 10:52 |
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通俗軽ハードボイルドの代名詞的存在のカーター・ブラウンは元々多作だけに、翻訳されたのは一部であってもかなりの数が翻訳刊行されている
残念なことに文庫はたった3冊で残りはポケミスでの刊行で、しかもほとんどが絶版だ まぁ古本の入手はし易い作家だが 昔は人気だったらしいが、このいかにもなB級臭さを見ると肯ける 長編としては文庫で200頁にも満たない短さと軽いノリ、由美かおるの入浴シーン並に毎度お約束のセクシー美女の登場 B級グルメは所詮高級料理にはならんけど、中には富士宮焼きそばみたいなブランドもあるからね B級はB級として楽しめばいいんだぜ 「ダムダム」は”あまりにも馬鹿馬鹿しい結末で有名”と森事典では紹介されていたので、怖いもの見たさで読んだ人もいるかもしれんが、真相がバカミスしてるわけじゃねぇんだよ 真相じゃなくて”馬鹿馬鹿しい決着の付け方”なのさ 今読んだら特にどうってことなくて、バカミスを期待して読むと肩透かし ところで田中小実昌のべらんめぇな訳文は威勢が良くて雰囲気出てるんだけど、ちょっと引っ掛かるというか若干読み難い感じがした |
No.183 | 5点 | さあ、気ちがいになりなさい- フレドリック・ブラウン | 2010/01/16 10:22 |
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異色短篇作家フレドリック・ブラウンは、SFファンだと普通にSF作家の認識だろうし、ミステリーファンにとっては短編集「まっ白な嘘」などの短篇作家か、長編「シカゴ・ブルース」などのエド・ハンター・シリーズのイメージが半々と言ったところか
特に得意なのが文明批評的な哲学的なテーマを軽い口調で語る話で、とかくF・ブラウンと言うとサプライズのある軽妙なオチの短篇作家というイメージで語られがちだが、案外とテーマ性が強いという点を指摘した書評は少ない しかし、言葉尻だけの底の浅いオチの短篇作家と言うなら、ロバート・ブロックあたりの方が当てはまる感じである 切れ味ではR・ブロックの方が上だが、F・ブラウンの場合はオチ重視な短篇でさえも文明論的な深みが感じられるのである この短編集はいくつかの個別短編集から集めた傑作選的な意味合いを持ち、ブラウン入門には最も適したものであろう でもこうして異色作家短篇集という早川書房の全集の1巻としてあらためて読んでみると、他の異色短篇作家に比べて特別に優れているとも思えなく感じてくるのであった F・ブラウンということで期待し過ぎてしまうせいなのか それにしても翻訳者が星新一て狙ったな早川(苦笑) |
No.182 | 9点 | ビッグ・ノーウェア- ジェイムズ・エルロイ | 2010/01/02 10:22 |
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年が明けて新年早々の夜、ロスの街に猟奇殺人事件が発生するLA四部作の第二弾「ビッグ・ノーウェア」
個人的にはLA四部作第一弾「ブラック・ダリア」の熱にうかされたような異様な雰囲気も捨て難いのだが、客観的には「ビッグ・ノーウェア」の方が採点上は上だろう テーマの掘り下げ深みでは「ブラック・ダリア」なんだけど、物語の奥行きという点では断然「ビッグ・ノーウェア」だ 「ブラック・ダリア」は終始特定の一人の人物の視点だけど、この作は三人の人物の視点を絡め合わせているので、話に広がりがある そして後半、いろいろな要素が収束していく様はノワール文学の一つの到達点だろう 解説がいかにものりりんって感じ |
No.181 | 7点 | クリスマスに少女は還る- キャロル・オコンネル | 2009/12/25 09:44 |
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* 季節だからね(^_^;) *
実は原題を直訳すれば『囮の子』なので英語の原題名にクリスマスの文字は無い ネットなどの書評を見るに、”原題より日本版訳題の方がずっと良い”という指摘が多いが、私はその意見には反対論者なのだ 訳題はこの作品の最大の仕掛けを強調しているのだろうし、各種書評もその部分だけしか見てない気がする しかしメインの仕掛け以外に、終盤まで真相を引っ張る他のもう一つの無視出来ない謎がある 重要な女性登場人物の”顔の傷”の謎なのだが、原題はこっちの謎にも意味を掛けているのは明らかで、訳題ではこの意図が伝わらない だいたいさぁ、この翻訳題名ではネタバレだろ(微笑) 一見平凡に見えるが『囮の子』という原題の方が適切である この作品は悪く言えばいくつも欠点がある 特に文章が読み難いのは弱点で、時制が錯綜したりとか表現がすっと頭に入ってこない場面が多々あった 採点は本来なら8点でも良いが、文章の欠点で1点減点だ 通常のミステリーなら当然メインとなるはずの真犯人の正体は全くもって平凡で、フーダニットという観点だけで見たら評価は無理だが、この作品の真価は犯人探しではない それと一体誰が主人公なのか良く分からず、話が散らばっている構成も難だが、まぁこれは特定の一人の主人公を設定しないのが最初からの狙いでもあるだろうから良しとしよう それでもだ、数々の欠点が有りながらも魅力的な作だ 単なる仕掛けのための仕掛けにならず、最後まで読むと大きな感動が待っているのは賞賛したい 10年後でもクリスマスが来るたびにこの作品を思い出すだろう |
No.180 | 6点 | サンタクロース殺人事件- ピエール・ヴェリー | 2009/12/24 09:42 |
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*季節だからね(^_^;)*
フランスが英米流本格かぶれに染まっていた時代にS=A・ステーマンらと同時期に活躍した仏本格派作家 しかしトリック最優先の貧相なステーマンとは違って、ヴェリイのイマジネーションに溢れたメルヘンファンタジー本格といった雰囲気はなかなか魅力的だ まさにホワイトクリスマス 大雪に見舞われて外部との交通が遮断された小さな町でサンタクロースが殺される こう聞くとクローズドサークルを期待する人も居るかも知れないが、特定の館が孤立しているのではなくて、町全体が孤立しているのである つまり町の外部へは行けないが町の中は自由に動けるので、CCと言うより限られたコミュニティ内部が舞台と言う方が近い しかもこの孤立状態は物語り半ばで解消される 謎解き面では若干アラもあるが、この作品は謎解きと雰囲気が見事にマッチしている点に見所があり、謎解き部分だけを取り出してアラ探しするのも無粋と言うものだろう |
No.179 | 6点 | クリスマスのフロスト- R・D・ウィングフィールド | 2009/12/23 10:03 |
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* 季節だからね(^_^;) *
フロスト警部初読み 他サイトの書評で”これは警察小説ではなく一風変わった構成の本格だ”という書評を見たことがあるが、う~んそうかな、やはりこれ警察小説でしょ 筋の運び、謎の解決法、複数の事件が同時発生などモデュラー型の警察小説という一般的な分類で合ってると思う それにしても話の進め方が上手い作家だな 流石に本職が脚本家だっただけに、場面展開のスピーディーさは抜群で、一つの話が行き詰ると絶妙のタイミングで別の話題が持ち上がるなど、飽きずに頁を繰る手が止まらず、やや厚めの文庫なのに長さが全く気にならなかった 正直言ってユーモアはあまり面白いとは思わなかったが、一応キャラは立っているし、やはりこの物語展開の軽快さが持ち味なんだろう ところで最初はメインと思われた事件が次第に脇筋に回り、途中から明るみに出た別の事件が終盤で重要になるなど、前半と後半とでそれぞれの事件の役割が変わってくる 一つの事件で首尾一貫して無いのでこうした構成を考えると、冒頭に置かれたショッキングな章はあまり意味を成していないと思えるのだが |
No.178 | 1点 | 本格ミステリ・ベスト10 2010- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2009/12/16 10:27 |
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850円は高ぇ~よ『本ミス』、『早ミス』だって700円に抑えてるし、『このミス』は老舗の強みで500円、『インポケ』なら200円だ
『文春ベスト』も安いけどあれはなぁ、週刊文春の1コーナーだから週刊誌としての値段だからなぁ 『本ミス』がまず腹立たしいのは相変わらず海外編は頁数で1/5程度と海外読みを馬鹿にしている 『本ミス』は読み応えはあるという意見もあるようだが、作家インタビューばかりじゃんよ、私は作家ウォッチャーじゃないから興味ねえよ 他もつまらん記事ばかりだし、肝心のランキング作品解説は無駄に長文だし、第一ランキング自体がつまらん 毎度毎度アルテとディヴァインと、あとはクイーンやカーのラジオドラマ脚本集みたいな落穂拾い もうね作家のネームヴァリューで投票がされてる感じ こう言うと、海外は現代作家に本格が少ないから仕方ないと反論されそうだが、実は必ずしもそうではない 例えばコージー派なんかはかなり翻訳出版されている ところがコージーは殆んどランキングには入らず、投票者が不可能犯罪系じゃなくちゃ投票してはいけないとでも思い込んでるみたいだ 不可能犯罪系だけが本格じゃないだろ! 他のライヴァル誌では本格に限らず全てのミステリー分野が対象だから、なかなかコージーまでは拾い難い事情がある つまり本格に特化した『本ミス』だからこそ本格の窓口を広く取り、コージーまで救わないといけないのだ、コージー派だって本格の一種だから ところが『本ミス』は本格の定義を他誌以上に狭く解釈し、不可能犯罪オタ向けにしておけば受けるだろう的な浅はかさが見て取れる 具体例だと、この作家はコージーじゃないがアンナ・マクリーンあたりは他誌では引っ掛かり難いから『本ミス』こそ採り上げてもいいんじゃないかな 『早ミス』には杉江松恋のコージーコーナーみたいな記事があったりで、この面でも『本ミス』は『早ミス』に負けてる もしブックオフで100円で売ってたとしても、『早ミス』『このミス』なら買ってもいいが、『本ミス』は100円でも要らない いくつかある競合誌の中で『本ミス』が一番どうでもいい |
No.177 | 4点 | IN★POCKET 2009年11月号- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2009/12/11 10:42 |
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この種のランキング本の中でちょっと見逃され易いのが通称『インポケ』
まあね大きさが文庫版だからね、本棚でも目立たないよね 『インポケ』は元来が講談社発行の文庫本情報冊子って感じだが、毎年年末に翻訳ミステリーのベストを主催する 対象が文庫版限定なのでハードカバーなどは対象外 ランキング本としての他誌との違いは選ぶのが読者、作家、翻訳家&評論家の三つに分けていること 総合ランキングは上記の三つのポイントを単純に合計してるのではないかと思われる 『早ミス』は今年から一般投票を止めたらしいし『このミス』は最初から素人投票は受け付けていないが『本ミス』などはネット投票も点数に加算される 『インポケ』の場合は1/3は読者投票の点数が占めるから一般投票の影響が強いのが特徴で、これが最大の弱点だ 『インポケ』は評論家だけの集計結果を見ると他誌と代わり映えがしないが、読者投票は笑えるぜ なんたって7位が「黒猫・アッシャー家の崩壊」だもんな いくら今年がポー生誕200年記念とは言えそんなんありかよ?と思うが、新訳は対象範囲内なので原則ルール上は違反じゃないんだよね、昨年もホームズの新訳が入ってたし それ以外にも10位に拡大解釈でフランソワーズ・サガン「悲しみよ、こんにちは」、12位がもう一冊のポー、13位になんとクイーン「Xの悲劇」、17位ライス「スィート・ホーム」、18位ケン・フォレット「大聖堂」といった新訳復刊が並ぶ もうね読者が新訳を読んで投票したとは思えないよね 旧訳を既読で内容は知っているから投票したんじゃないの、って雰囲気 実は『このミス』もたしか一応は新訳も原則ではありだったと思うが、流石にプロの評論家は意図的に避けるよな まあ「幽霊の2/3」みたいな旧訳がレア状態だったのは復刊奨励の意味で別だろうが あともう一つ笑えるのが、お約束の毎年P・コーンウェルが上位に入ること(爆笑)流石は講談社文庫だぜ あ、でもこれだけは褒めとこ、値段が200円です |
No.176 | 6点 | ミステリが読みたい! 2010年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2009/12/07 10:15 |
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『ミス読み』とも略されるが『早ミス』とも呼称される
もちろん早川書房だからだけど、面白いことに他のライヴァル誌に比べて呼称通り刊行時期がひと月ほど早い だから例えば昨年度の国内ものだと、連城の「造花の蜜」などは刊行時期がタイミング悪くて他誌では間に合わなかった感じだが、締め切りがひと月ほど前倒しの『早ミス』は翌年度扱いになるので2010年度版では国内1位だ まぁ逆に言えば1年遅れてるようにも感じてしまうが こういうのは整合性の観点から各誌締め切り日時を合わせるべき、という意見も当然出るかもしれないな で2010年版『早ミス』だが、この表紙はミシュランかよ(笑) 昨年の表紙デザインが『このミス』と被ったからか(追笑) 内容も思い切り刷新していて、まるで目録と化してるとの批判もあるようだが、この種のガイド本としての性格上だと目録で良いんじゃないの?私は好きだぜ、こういう編集方針 少なくとも保存版資料価値としての目録の充実度だけなら断然他誌を圧倒する むしろ肝心のランキングが要らないくらい(笑) こういうスタイルで作らせたらやはり早川の編集部は上手いよな 恒例の早川刊行の本が上位に来る傾向はご愛嬌 ところで巻末の特別企画”海外ミステリー・オールタイム・ベスト100 for ビギナーズ”だけど、入門向けという意味ではちょっと疑問 初心者向け限定ではない一般的な”名作100選”みたいな趣向での集計結果とあまり変わらん 評論家などの投票者諸氏がもう少し初心者向けという条件を考慮すべきだったと思う 何名か同一作家の作品が複数入っていて、例えばJ・エルロイも3冊入っている 犯罪小説やノワールも入れて本格に偏らない配慮は良いと思うが、入門向けにエルロイ3冊はちょっと重いんじゃないかなぁ エルロイを1冊に絞りその分を軽いE・レナードとかに振り分けた方がバランスが取れた気もするが 軽さと言えばケンリックも100冊内に入ってないし クリスティーとかごく一部の作家を除き、基本的に1作家1冊に絞った方がより多くの作家を紹介できるしね |
No.175 | 9点 | 鳥―デュ・モーリア傑作集- ダフネ・デュ・モーリア | 2009/11/06 09:51 |
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異色短篇作家と言うよりも単純に長編「レベッカ」で有名な、と言った方が適切であろうデュ・モーリア
しかし巷では短篇の評価も高く、お為しに短篇集から読んでみた 表題作「鳥」は作者のもう一つの有名作だが、実は原本では「鳥」が表題作ではないのだ やはりヒチコックの映画で有名なこちらを表題作にした方が売れるだろうという創元の思惑に違いない 特に得意なのが古風な舞台設定で、昔からの定番のテーマを現代を舞台に置き換えたお話はよくあるがデュ・モーリアは逆 古き革袋に新しい酒を盛るという言葉があるが、古風な舞台設定の中で聞いたことも無いような物語が展開される感じと言えば近いか 内容はかなりヴァラエティに富んでいて、「鳥」がパニック小説ならば、本来の表題作「林檎の木」なんてほとんど心理ホラーな怪談話だし、「番(つがい)」は何と○○トリック、集中最も謎解き色の強い「動機」は私立探偵小説の趣だ 中でも集中のベスト作「モンテ・ヴェリタ」は荘厳な神々しささえ感じさせる名作だ 唯一の弱点は、決して欠点ではないのだが、短篇とは言っても分量的に長めの短篇が多く、短い長さでラストのオチの切れ味勝負な短篇ばかり好む読者には向いていない点だ オチだけが異色短篇の絶対評価基準じゃない、短篇作家としてのデュ・モーリアも恐るべき作家だった |
No.174 | 6点 | ピアノ・ソナタ- S・J・ローザン | 2009/11/02 09:56 |
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街路樹が紅葉に染まる秋のニューヨーク
私立探偵ビル・スミスは恩師から捜査依頼されて老人ホームへ潜入したのだが、そこでピアノ演奏の上手い上品な物腰の老婦人と出会うのだった しかし周囲ではまたしても事件が 原題は外来語にもなってる『コンコース』、邦訳題名はもうちょっと適当な題名が欲しかったな S・J・ローザンは中国系女性リディアと白人男性ビルの視点の話を作品ごとに交互に書いているが、この2作目はビルの視点の方 正統派ハードボイルドの趣に業界の裏事情などの社会派的要素を絡ませ人物描写にも優れたローザンらしさが良く出た作だ ラストの纏め方があまり手際が良くないのが気になるが、私立探偵小説作家にとっての名誉ある賞シェイマス賞受賞も納得出来る シェイマス賞受賞の女流作家だとグラフトンとかごく少数だからね |
No.173 | 6点 | ハーヴァードの女探偵- アマンダ・クロス | 2009/10/28 10:06 |
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アマンダ・クロスは海外の名作表にはよく載っていて話題に引用される作家名だったが今まで未読だった
実は意外と翻訳には恵まれていて5冊も紹介されているが、問題は版型なのだ 4冊はミステリー出版ではややマイナーな三省堂でしかもノベルス風な新書版、1冊は講談社だが文庫ではなく四六版ソフトカバーという中途半端な出版形態 しかも翻訳者はばらばらで題名にも統一感が無い これだったら文庫でなくても普通にハードカバーででも出しておけば良かったのにって感じだよなぁ よく本格という概念を狭く形式的に捉えてテンプレート化し、その形式に近いかどうかで評価するような書評がネット上でも蔓延しているが、その手の書評者には受けないタイプの作家だと思う この作も事件現場の実地検分などの場面はほとんど無くて、大部分は関係者との会話が中心だし 私は本格というもの対してある種の一般型を求める読者じゃなくて、作家個々の個性を重んじるタイプの読者なので、クロスに関しては個性的だしこれはこれでありだと思った クロスはよく”フェミニズムをミステリーに持ち込んだ先駆者”と言われているが、思想的には後の女探偵ものの興隆にも通じるものが有るのかも知れ無いが、自身は純粋に本格作家であって女捜査官ものなどの直接の元祖とは違う気もする この作品もしつこい位徹頭徹尾にフェミニズムを話題にしていて、海外での高い評価もその辺なんだろうが、まぁ日本の読者には合わないんだろうなきっと |
No.172 | 8点 | くじ- シャーリイ・ジャクスン | 2009/10/22 10:24 |
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異色短編作家シャーリィ・ジャクスンは男性が多いこの分野では珍しく女流作家で、「山荘奇談」や「ずっとお城で暮らしてる」など長編でも有名だが、出世作「くじ」など基本は短編作家だろう
特に得意なのが、善意の押し付けなど偽善というものに対する徹底した皮肉で、このテーマの短編は多く、作者が女性なせいか押し付けがましいオバサンが余程嫌いなのだろう もう一つの得意技が、例えば都会と田舎の対比などの日常と非日常というテーマを象徴的に語る話で、作者の持ち味が良く出ている 表題作「くじ」は雑誌ニューヨーカーに掲載されて話題となり、ジャクスンと言うと、ああ!あの「くじ」を書いた作家、と今でも言われるような超有名な短編だが、むしろ「くじ」以外の短編に本領が発揮されている気もする ジャクスンは白黒はっきり決着を付ける様なオチは書かないので、こうした分野の短編ですら割り切れる解決じゃないと気が済まない読者向きでは無いが、私はこの手の短編に偏見が無いので素直に楽しめたし、この早川の全集の中でも割と好きな方の短編集である |
No.171 | 6点 | 歌う砂―グラント警部最後の事件- ジョセフィン・テイ | 2009/10/19 10:27 |
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日本では「時の娘」1作だけで知られるジョセフィン・テイだが、例えばリリアン・デ・ラ・トーレのような元々歴史ミステリーの専門家というわけではない
テイはグラント警部を探偵役とするシリーズを計6作書いており、「時の娘」はシリーズ5作目で極端に安楽椅子探偵に偏った異色作らしい 「時の娘」以降はシリーズは1作しか書かず、それが遺作となった「歌う砂-グラント警部最後の事件」である 「歌う砂」では警部は普通に行動する普通の探偵役であり、まあこういうのがテイ本来のスタイルなんだろう ただこの遺作では、「時の娘」とは違った意味でのグラント警部の療養休暇的な扱いになっていて、作者側も「時の娘」同様の異色作的効果を狙ったのかも知れないが しかし一般の本格読みの人が読むと、もう一つ捉えどころの無い本格としか見えず評価も低めになると予想する テイは解決の切れがどうとか、そういう観点で読んでも面白さが伝わらず、途中経過を読ませるタイプだと思う でも今の本格編愛読者は解決編だけを重んじる風潮だからなあ |
No.170 | 5点 | 不思議のひと触れ- シオドア・スタージョン | 2009/10/06 09:53 |
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異色短編作家シオドア・スタージョンは、本格好きな読者だとクイーンの「盤面の敵」の代筆者として知られているだろうし、SF好きな読者なら普通にSF作家の認識だろう
内容と言い守備範囲の広さと言い、スタージョンこそ異色短編作家という肩書きが似合っている 守備範囲を言うなら収録の「高額保険」などはミステリーそのもので、最初期にはこんなのも書いていたのを考えると後にクイーンの代作をしたのも肯ける スタージョンはアイデアだけなら他の異色短編作家と比べて卓越しているとは言い難いが、やはり持ち味は文体と語り口調にあるだろう 特に得意なのが、例えば寸法が何センチ重さが何グラムだとか具体的数値を記してディテールにこだわる描写で、幻想的な作風なのに妙な生々しさとのミスマッチが不思議な感触を生んでいる この「不思議のひと触れ」は初期作を中心にヴァリエーション重視で編まれただけにスタージョン入門には最も適した短編集らしいが、早川版全集の「一角獣・多角獣」も入手はしてあるのでいずれ読みたいところ 従来は晶文社などハードカバーでしか読めない作家のイメージだったが、今では「不思議のひと触れ」と「海を失った男」の両短編集が河出文庫に入り価格的にも手に入りやすくなった |
No.169 | 6点 | 10月はたそがれの国- レイ・ブラッドベリ | 2009/10/02 11:47 |
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* 10月だからね(^_^;) *
異色短編作家と言うよりも普通にSF作家として分類されているブラッドベリ しかし昔は適切なジャンル名称が無かったのが原因だろう ファンタジーという分野なら昔からあったが、単純にファンタジーと言うともっとほのぼの系をイメージするから分類と合わないと思われていたのかも 後期作ならそんな分類でも合うという評価もあるみたいだけど、初期のあの暗さは普通のファンタジーとはちょっと雰囲気が違う 今ならダーク・ファンタジーという都合の良い名称があるけどね この短編集は第1短編集である「黒いカーニバル」全編に若干の後の短編を加えたもので、だったら早川版のように素直に「黒いカーニバル」で良かったんじゃないかな 創元版にも原著があるのかも知れないが、こういうところが創元の気に入らないところでして |