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[ SF/ファンタジー ]
10月はたそがれの国
レイ・ブラッドベリ 出版月: 1965年01月 平均: 6.50点 書評数: 2件

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東京創元新社
1965年01月

東京創元社
1965年12月

No.2 7点 tider-tiger 2018/09/16 12:49
10月になったらこれの書評を書こう書こうと思っていて去年は忘れてしまった。
なので、思い立ったが吉日というわけで忘れないうちに。

オープニングの『こびと』はなんともいえない切なさの残る逸品。
そして、『みずうみ』の美しさ。
ミステリファンには『小さな殺人者』も外せない。
後半の諸作は怪奇寓話とでもいいたくなる。
個人的には『使者』が偏愛の対象である。キングのペット・セマタリーの元ネタではないかと思っている。

ブラッドベリはSF作家と認知されていることが多いが、本質的にはSF作家ではないと思う。中でも本作は怪奇幻想小説ばかりの初期作品集。
基本的にはいつも水準以上の作品を提供してくれる作家だが、本作には完成度に難ありの作品がけっこう含まれているように思う。
ブラッドベリを初めて読む方には『太陽の黄金の林檎』をお薦めしたいが、個人的には『刺青の男』と本作が一番のお気に入り。SFファンなら古典『火星年代記』も外せない。
ポーの衣鉢を継ぐなどと形容される。理知的という意味ではポーが上だと思うが、ポーにはない詩情がある。
この詩情というのはなんなのか。
例えば、スティーヴン・キングは映画館で無理矢理最前列に座らせられて、手足を縛られて、ポップコーンも食えないような状態で大画面に向かい合わなければならない感じ。
ブラッドベリは時速30キロくらいで走る汽車に乗って、ゆっくりと流れる車窓の景色を眺めているような感じ。
キングやスタージョンやディックの描く人間は生々しい。だが、ブラッドベリの作品には人間はいるが、それはいつも近くても遠くにいて、彼らを身近に感じることがほとんどない。ただただその物語が美しい。
中学生の時に好きで好きでたまらなかった作家だが、一時、遠のいてしまった。
人間を身近に感じられないので物足りなくなったのだと思う。
ポーの作品に人間はいない。そして、ブラッドベリの作品にも。
二人の最大の共通点はそこではないかと思っている。
そして、二人とも素晴らしい短編を数々残した。
ポーの『告げ口心臓』 ブラッドベリの『使者』ともに震えが来るほどに凄い作品だと思った。

※採点は7点としますが、本短編集は偏愛の対象です。

No.1 6点 mini 2009/10/02 11:47
* 10月だからね(^_^;) *
異色短編作家と言うよりも普通にSF作家として分類されているブラッドベリ
しかし昔は適切なジャンル名称が無かったのが原因だろう
ファンタジーという分野なら昔からあったが、単純にファンタジーと言うともっとほのぼの系をイメージするから分類と合わないと思われていたのかも
後期作ならそんな分類でも合うという評価もあるみたいだけど、初期のあの暗さは普通のファンタジーとはちょっと雰囲気が違う
今ならダーク・ファンタジーという都合の良い名称があるけどね
この短編集は第1短編集である「黒いカーニバル」全編に若干の後の短編を加えたもので、だったら早川版のように素直に「黒いカーニバル」で良かったんじゃないかな
創元版にも原著があるのかも知れないが、こういうところが創元の気に入らないところでして


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レイ・ブラッドベリ
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