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[ SF/ファンタジー ]
ウは宇宙船のウ
レイ・ブラッドベリ 出版月: 1968年04月 平均: 7.50点 書評数: 2件

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東京創元社
1968年04月

No.2 7点 虫暮部 2021/05/23 10:38
 レイ・ブラッドベリの作品には、作者が“文章の人”であることの功罪が如実であると思う。なんてことの無いストーリーがこの人の言葉で語られた途端に鮮やかな幻想に姿を変える(「霧笛」「太陽の金色のりんご」)一方で、魅力的な設定を尻すぼみにまとめてしまう(「長雨」「霜と炎」)バランス感覚の欠如は多分表裏一体。
 本書は自選集で、作者の見方はやはり読者とはズレてるものだなぁと思わせるセレクト。

No.1 8点 斎藤警部 2018/04/23 12:30
読み返せば幸せになる本。 著者みずから青少年枠で過去短篇集から編んだアンソロジーですが、大人が鼻白むようなジュヴナイル臭などありません。責任ある年長者の立場から子供目線~青年目線~大人目線を尊重し、家族の絆や支え合いを基調とする、著者の真骨頂たるユビキタスな詩情でキラキラした一冊。

「ウ」は宇宙船の略号さ/初期の終わり/霧笛/宇宙船/宇宙船乗組員/太陽の金色(こんじき)のりんご/雷のとどろくような声/長雨/亡命した人々/この地には虎数匹おれり/いちご色の窓/竜/おくりもの/霜と炎/タイム・マシン/駆けまわる夏の足音

空間中を満たす、父と息子、そして家族の哀感あふれる慈しみ合い。。やさしき致死量曲線が直線としか見えなくなる悪魔の時間。。時空を超える仲間たちへの進行形ノスタルジー。。 抒情や、時にしっとりした怖さを誘う宇宙系の物語も魅力だが、タイムトラベル系作品の放つクリスピィなユーモアはリズミカルな別の詩情を伴って現れる。 ハードSF風某作では寿命に関する特殊設定が切なさをキリキリさせる。実生活で切なさに襲われるのは確かに、特殊な前提に囲まれた時だ。エンディングは希望を伴う難解の心地良き。。 某作に登場する「カミナリ予知の音」、俺も好きだぜ。(音楽の中にこれと通じるヴァイブを感知したら最高にシビレるぜ) 待ってて、今ぼくもそこに行くからね! と大きく手を振りたくなる素敵なファンタジーの数々。

どこを切っても、とは言わずとも全体的に本当にキラキラしてる。逆松本清張と呼んでも過言ではない。

邦題ですが、これは結果論かも知れませんが「ロはロケットのロ(R Is for Rocket)」「ウは宇宙のウ(S Is for Space←後年の短篇集)」だったらそのまま過ぎて微妙に詩情が醸されませんよね。やっぱり「ウは宇宙船のウ」「スはスペース(宇宙)のス」がブラッドベリ的に正解でありましょう。


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