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[ ハードボイルド ] 死ぬときはひとりぼっち ハードボイルド三部作 |
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レイ・ブラッドベリ | 出版月: 1986年06月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
サンケイ出版 1986年06月 |
文藝春秋 2005年09月 |
No.1 | 6点 | クリスティ再読 | 2020/02/29 16:10 |
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何と言ってもタイトルが秀逸。これほどハードボイルドらしいタイトルなんて、あるもんか。作者は...抒情的SFの第一人者ブラッドベリである。これは、不安材料だ(苦笑)。
若い日の作者を投影した売れない作家の主人公は、閉鎖間際の海上遊園地のそばを走る深夜の路面電車の中で、自分の後ろに立った酔漢が語り掛けるのを聞いた...「死ぬときは、ひとりぼっちだ」。面倒を避けようと主人公は振り向かなかった。そして、海上遊園地の海に捨てられたサーカスの檻の中に、主人公は老人の死体を見つける。次々と奇妙な失踪や死を遂げる孤独な人々。主人公はこれらの孤独で奇妙な人々と知りあい、彼らが深夜の悪夢のような訪問者を戸口に迎えていることを知る... という話。ハードボイルドってさ、いつの間に「主観的」な小説になっちゃったんだろうね。チャンドラーだって三人称で書いているうちは、タイトでシビアな客観性を保っていたんだけどね、と毒づきたくなるくらいに、主人公が主観的。そりゃブラッドベリだもんね。ハードボイルドと言うよりも、ちょっと揺らすと崩れちゃう温泉卵みたいなものだ。まあだから、事件に論理性とかリアリティとか、そういうものを期待する小説ではなくって、あくまでもノスタルジックでファンタジックなあたりを楽しんで読むべきだ。能動的に事件を追っていく..なんてアグレッシブさはまったくなくて、出会う奇妙な人々の奇矯な行動に、主人公が過去を刺激されて、思い入れたっぷりに独白していく...というのの連続で小説ができている。主人公のパッシブな感受性がすべてだから、一般小説にかなり近い読み心地。 まあだから、体重170キロの元オペラ歌手とか、無声映画のスターだったがコテージに隠れ住む元女優(でも運転手に変装してロールスロイスをかっ飛ばす!)、世界一下手な床屋などなど、印象的だがどこかウラさびれて哀しげなキャラたちを楽しみ、ブラッドベリ一流の気の利いた文章を楽しむのがよろしい。 「あんたは、いつになったら泣くんだろう」と、やがて私は言った。 「馬鹿ね」と女は言った。「今泣いてきたのよ。海でなきゃ、プールも泣くのに便利よ。プールでなきゃ、シャワーでもいい。どんなに泣きわめいたって人の迷惑にならないし、だれにも聞こえないでしょ。こういうシャワーの使い方、知ってた?」 なるほど。勉強になります。 |