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[ クライム/倒叙 ]
ビッグ・ノーウェア
LA4部作
ジェイムズ・エルロイ 出版月: 1993年11月 平均: 7.67点 書評数: 3件

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文藝春秋
1993年11月

文藝春秋
1998年11月

No.3 6点 レッドキング 2019/04/05 16:18
一見ハードボイルド風に三人の刑事の三視点で話が進むが、主題は「同性愛」。「同性愛」に異常な「コンプレクス=こだわり」を持ってしまった二人の主役・・・刑事と殺人鬼・・・の物語。「若手イケメン刑事」の情念に憑りついてしまった「ホモ残虐殺人事件」。彼が追い求めた「殺人鬼」もまた、己の「血の狂気」から自分を追う刑事に執着していた・・・。
「同性愛」が「文化」として成立し、近代においてもせいぜい「笑いもの」になるレベルだった我が国とは異なり、米国のような所では、おそらく壮絶な暗黒歴史があったんだろな「同性愛」。「黒人」であることの残酷な運命と同じような歴史があったんだろう。にしても「眼球を抉り取られた眼窩にペニスをぶち込んで射精」って・・・。
「ビッグ・ノーウェア」=「大いなる・虚無」とでも訳すのかな、でも「眼球無き虚ろな眼窩」だ。

No.2 8点 tider-tiger 2016/05/09 18:07
新年早々に発生したホモ絡みと思われる猟奇殺人事件の犯人を追うダニー・アップショー保安官補、赤狩りで名を上げようとするマルコム・コンシディーン警部補、暗黒街の始末屋バズ・ミークス。この三人の行く道が絡み合い、友情が育まれ、協同戦線が張られます。やがてホモと赤が絡み合い……
視点人物であるこれら三名のうち、キャラが面白いのはバズですかね。深みがあるのはアップショー。アップショーの追っている事件も面白い。コンシディーン主体の赤狩りの話は日本人にはいま一つピンとこないかも。コンシディーンパートは家族小説の趣も、ちこっとあり。
私はいきなり死体を転がす話よりも、序盤で下地を作り、それから動き始める話の方が好きなので無問題なのですが、第一部は多少退屈に感じる方もいるやもしれません。安心して下さい、一部の終わりくらいからぐいっとテンションが上がります。
三人のうち、誰を軸にして読むのか。
LAコンフィデンシャルではエドかバドかで迷いますが、本作ではダニー・アップショーに軸を置いて読むことを薦めます。
甘くはありませんが、しみじみとした余韻があり、読後感は良い話だと思います。ちなみに本作を読まずにLAコンフィデンシャルを読むと、LAのプロローグの意味がまるでわからずということになります。

LA四部作の中で、もっとも驚きのあった作品でした。ミステリ的な意味ではありませんが。
読者のテンションが上がるシーンが多く、お肌に悪そうな緊張感が最高です。構成も前作ブラックダリアよりはるかに良い。ホモとアカと暗黒街が綺麗に収斂していく。ただ、コンシディーン警部の家庭の話がちょっと消化不良気味。
タイトルBig Nowhereの意味が判明したときに、すべてが夕闇に溶け込んでいって、なんだか自分が静かに狂っていくような気がしました。いや、それほど凄いことでもないのですが、酷く感じ入ってしまいました。
とある動物が小道具として登場しますが、使い方が巧妙というわけでもないのに物凄くインパクトがある。
エルロイの作品では悪徳警官ばかりが出てきますが、本作のコンシディーンとアップショーは比較的まともな部類です。
エルロイの出世作とされるブラックダリア、映画化されたLAコンフィデンシャル、異様な文体と某作家さんのとち狂った解説で有名なホワイトジャズ。これらの谷間に埋もれて地味な印象の本作ですが、実は最初に手に取るべきは本作だと思います。ブラックダリアがダメだというエルロイファンはけっこういると思いますが、本作がダメだというエルロイファンはあまりいないと思われます。

LAコンフィデンシャルVSビッグノーウェア
完成度は本作よりもLAコンフィデンシャルの方が上だと思いますが、その理由はLAは……
1事件の裏の陰謀が深く、スケールが大きい。
2視点人物の三人が別個に調査をし、それらすべてを重ね合わせることにより真相が浮かび上がるというその構成が非常に緻密で素晴らしい。
3最初に激しい対立があり、その後、友情が育まれていく、その過程が複雑で緊迫感があってリアル。

ブラックダリアVSビッグノーウェア
miniさんは三人称多視点小説の利点をあげて物語の奥行きを重視、本作に軍配を上げていらっしゃいましたが、私は一人称小説の利点を。文体に変化をつけやすく、視点人物の生の声が聞こえてくること。三人称小説は文体に変化をつけるのが難しい。
物語に奥行きを持たせるには多視点が有利ですが、語り口の工夫や登場人物の心情、情念の表現には一人称の方が断然有利です。
まあなにを言おうとも小説の出来はブラックダリアよりもビッグノーウェアの方が二枚くらい上なんですよね。

以下蛇足ではありますが。
好き嫌いだけで順位をつけるなら、ブラックダリア>ホワイトジャズ>ビッグノーウェア>LAコンフィデンシャルとなります。私は一人称小説の方が好きなのかも。ホワイトジャズの採点を低め(7点)にしたのは二つ理由があります。
どう考えても万人に薦められるようなものではないこと。ビッグ、LAを未読だと感動が半分くらい薄まってしまうこと。ホワイトジャズには最高にかっこいい一行(二行になるのかな?)があるのですが、本作とLAを読んでいないとその一行にこめられた意味がまったくわかりません。

LA四部作の書評終了。なんだか寂しい。

No.1 9点 mini 2010/01/02 10:22
年が明けて新年早々の夜、ロスの街に猟奇殺人事件が発生するLA四部作の第二弾「ビッグ・ノーウェア」
個人的にはLA四部作第一弾「ブラック・ダリア」の熱にうかされたような異様な雰囲気も捨て難いのだが、客観的には「ビッグ・ノーウェア」の方が採点上は上だろう
テーマの掘り下げ深みでは「ブラック・ダリア」なんだけど、物語の奥行きという点では断然「ビッグ・ノーウェア」だ
「ブラック・ダリア」は終始特定の一人の人物の視点だけど、この作は三人の人物の視点を絡め合わせているので、話に広がりがある
そして後半、いろいろな要素が収束していく様はノワール文学の一つの到達点だろう
解説がいかにものりりんって感じ


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ジェイムズ・エルロイ
2016年05月
背信の都
平均:6.00 / 書評数:1
1998年01月
アメリカン・タブロイド
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1996年03月
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1995年10月
LAコンフィデンシャル
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1993年11月
ビッグ・ノーウェア
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自殺の丘
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1990年01月
ブラック・ダリア
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ホプキンズの夜
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1986年08月
血まみれの月
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1985年09月
レクイエム
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1984年08月
秘密捜査
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