皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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miniさん |
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平均点: 5.97点 | 書評数: 728件 |
No.328 | 5点 | 五匹の子豚- アガサ・クリスティー | 2011/11/29 09:57 |
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例の森事典で森英俊氏がすごく誉めていた作品
森氏曰く、”人物描写が弱いと言われるクリスティだが、人物が描けなかったのではなくて敢えて深くは描かなかったのではないか”、とこれまでのクリスティ評価を覆す人物描写に深みのある作という事だ たしかにその通りではある、ただそういう意味では「ホロー荘の殺人」も同等の評価は出来ると思うな もちろんこの「五匹の子豚」を好きか嫌いかと問われればそれは好き、前半だけなら・・ 地道な捜査小説が好きな私の嗜好から言えば、前半のポアロによる事件の聞き取り再調査の件はメチャ好きだ このスタイルを最後まで貫く構成だったならば多分8点以上は進呈したと思う しかし後半になると過去回想ではなくて実際に登場人物達が眼前に現れてくるわけだよな、これだと結局は他のクリスティ作品とさして変わらなくなってしまうのではないだろうか ネタバレになるから詳しくは書けないが、「五匹の子豚」は「ホロー荘」と似た発想を持っているが、「ホロー荘」の方が首尾一貫してテーマを掘りさげている分、私には「ホロー荘」の方が好感が持てた |
No.327 | 6点 | 奇商クラブ- G・K・チェスタトン | 2011/11/21 09:55 |
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チェスタトンと言えばもちろんブラウン神父シリーズだが、ブラウン神父の第1短篇集より6年も前の1905に発表された実質的に作者のミステリー第1作の短篇集が「奇商クラブ」である
ブラウン神父登場より大分前だが、それでも「ホームズの冒険」が1892年だから既にホームズ形式は確立されており、その影響は明らかに認められる 探偵役の元判事バジル・グラントの弟は私立探偵だが、この人物どう見てもホームズに対するアンチテーゼの象徴であり、語り手の役割もワトスン役そのものである それでもチェスタトンの個性は際立っていて、そもそも奇商クラブという発想自体、他の作家には真似の出来ない発想であり、単なるホームズの亜流を免れている、流石はチェスタトン ところで、創元文庫に同時収録のすごく出来映えの良いノンシリーズ短中編2篇については、是非言及する必要性があると思う 短篇「背信の塔」は端的に言えば単なるトリック一発芸でしかないのだが、それがチェスタトンの魔法にかかると芸術作品に昇華するし、中編「驕りの樹」は二重三重のひっくり返しが素晴らしく、早い時期に日本でも単発紹介された事があるのも肯ける いやしかしだ書評はどうでもいい、書評よりこれが言いたかったのだ本音は この2篇が収録されていることによって、創元文庫版「奇商クラブ」の評価がさらに高まってしまう事になる しかしながらこの2篇、実は原著では「奇商クラブ」の収録作では無いのである 「奇商クラブ」全6編だけだと1冊分には分量的に足りず、同作者の他の創元文庫版短篇集との本の厚さの整合性を優先したのが多分理由だろうが、翻訳者か創元編集部かが他の短篇集「知りすぎた男」から2篇を移し変えたのである こういう事をしちゃいかんだろうよ創元、これによって「奇商クラブ」の評価はさらに高まり、「知りすぎた男」の方は非シリーズ短中篇込みでの本来の評価が割り引かれかねない 現状では論創社から「知りすぎた男~ホーン・フィッシャーの事件簿」として刊行されているが、やはり気を使ってか問題の2篇は省かれている 本来ならばだ原著の収録作通りの内容で「知りすぎた男」も創元文庫から出すべきだっただろう、しかし2編を抜き取っておきながら刊行は無視 ハードカバーには手を出さず文庫版しか読まない主義な頑なな読者だと「知りすぎた男」は永久に読まれない可能性も有るのだぞ、これだから短篇集やアンソロジーに限ってだが私は創元という出版社が嫌いなんだ 創元文庫版「奇商クラブ」は作品の質だけなら採点上は7点位は付けられるのだけれど、編集過多の悪癖を持つ創元編集部に対する抗議の意味を込めて1点マイナスだ |
No.326 | 5点 | 時の娘- ジョセフィン・テイ | 2011/11/14 10:00 |
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エリザベス・ピーターズの「リチャード三世「殺人」事件」の書評書いたついでに、オマージュの元となった「時の娘」にも言及した方が良いかなと思い立った
イングランドとフランスとの百年戦争が基本的にはイングランド側の敗北に終わると、イングランド域内では混乱の時代に入る 15世紀後半には諸侯の中でもランカスター家とヨーク家の2大対立が軸となり後世では両家の紋章から”薔薇戦争”と呼ばれている 長年の抗争に諸侯は疲弊し結局は両家は統一され強大な絶対王権が確立される、後にエリザベス一世を輩出する所謂”チューダー王朝”である 薔薇戦争は日本史だとよく”南北朝時代”に例えられるが、う~ん私はちょっと時代的にも違う気がするなぁ、後に絶対王政が確立された経緯を考えると、日本史だと織豊政権以前の混乱期である室町幕府衰退から応仁の乱や戦国時代あたりの内乱に例えた方が近いかも、むしろ12世紀のプランタジネット朝時代のスティーヴン王と女帝モードの対立の方が日本における南北朝時代の感じがする 薔薇戦争時代の歴史はチューダー朝の庇護下に有ったシェイクスピアなどに見る如く王朝の都合で歪められた記述となったものも有り、チューダー史観と呼ばれている つまりリチャード三世の悪行もチューダー史観によって歪められた宣伝であるというのが現在リチャード三世を擁護する人達の基本スタンスである 「リチャード三世「殺人」事件」ではこの辺の押さえておくべき事項が分かり易く冒頭で説明されており、文庫の前説も親切設計だ その点「時の娘」は一般的には基礎知識が無くても楽しめるという意見が有るんだけど、私はいきなり「時の娘」を読んでも分り難いと思うんだよなぁ やはり薔薇戦争時代の歴史の基礎を知っているのと知らないのでは全然違う かなり以前に「時の娘」を読んだ時にはどうもピンとこなかったんだけど、今回エリザベス・ピーターズ「リチャード三世「殺人」事件」を読んでやっと理解できたって感じだ |
No.325 | 5点 | リチャード三世「殺人」事件- エリザベス・ピーターズ | 2011/11/11 10:02 |
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名前が紛らわしいのだが、エリス・ピーターズとエリザベス・ピーターズとは全くの別人である、そもそもエリスは英国作家、エリザベスはアメリカ作家と国籍も違うし
しかし紛らわしいのは名前だけではなく、同一視混同しがちなのは仕方が無い面もある と言うのもエリスの方は修道士カドフェルでお馴染みの歴史ミステリーが代表シリーズだが、エリザベスの方もエジプト学者アメリア・ピーボディのシリーズなどがある歴史ミステリー作家だからね 日本での人気度はもう一つだがエリザベス・ピーターズはアメリカでは功労賞にあたるMWA巨匠賞を受賞していて現代本格では重要な作家の1人だ、それは歴代巨匠賞受賞作家の顔触れを見ても分かる 別の作品がアガサ賞を受賞していて自身もコージー派作家団体マリス・ドメスティックから表彰されてるので、日本ではコージー派作家のレッテルを貼る人も居るかもしれない 作者の主流シリーズはエジプト学者アメリア・ピーボディのシリーズだが、作者にはもう1つ図書館司書ジャクリーン・カービーのシリーズが有って、全4作と少ないがその内3作が扶桑社文庫読めるが、原著でのシリーズ第2作(第1作目は未訳)が歴史の謎と現代本格とを融合した「リチャード三世「殺人」事件」である 「リチャード三世「殺人」事件」は、シェイクスピアの戯曲などで悪人と認定されていたリチャード三世を擁護する団体に起こった事件が描かれる ”リチャード三世の冤罪を晴らす”と言えば、そう歴史ミステリーの名作として知られるあのジョセフィン・テイ「時の娘」だ、この「リチャード三世「殺人」事件」はその「時の娘」へのオマージュなのである 「リチャード三世「殺人」事件」は過去の時代が舞台でもないし、若干はその要素が有るにせよ基本的には歴史上の謎を解くのが主眼でもない つまり基本的には歴史ミステリーとは言えないのだ リチャード三世擁護団体のメンバーが集められた館で、各々リチャード三世の時代に絡む歴史上の人物に扮したメンバーが次々”被害に遭う” 敢えて”殺される”とは書かなかったのだが、そもそも題名の中で殺人という単語だけが”「殺人」”とわざわざ括弧で括られているのとも絡んでいるはずだ、だってどうせ括弧で括るなら普通だと”「リチャード三世」殺人事件”と表記しそうだもんね 題名の”「殺人」”に関してもう一つ、題名のトリックはリチャード・ハルの某作品を思わせるが、まぁネタバレになるといけないので止めておこう 館に集められた登場人物達に次々に起こる事件という設定、まさにコード型本格そのもので有り、おそらく意図的に古臭いプロットにしたのだと思う 館ものが嫌いな私としては好みに合わないのだけれど、現代を舞台に「時の娘」とは全く異なるアプローチによって「時の娘」へのリスペクトを表したアイデアは評価したいと思う |
No.324 | 6点 | 死を呼ぶ婚礼- エリス・ピーターズ | 2011/11/11 09:52 |
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修道士カドフェルシリーズ第2作「死体が多すぎる」が盟友ヒュー・べリンガーが初登場するなどシリーズの方向性の出発点だったとすれば、この第5作目「死を呼ぶ婚礼」はその方向性を確定した作と言えるだろう
まさにシリーズの王道パターン、これを読めば修道士カドフェルシリーズがどんなものか分り易い作だ 少なくともシリーズ第1作「聖女の遺骨求む」だけは後続のシリーズ作品とは傾向が違うし話が直接は繋がってないので後回しにする方が良い 歴史的背景の要素がかなり強かった「死体が多すぎる」に比べると、「死を呼ぶ婚礼」は基本的には普通の謎解き本格なので歴史ミステリーが苦手な人が読んでも大丈夫なんじゃないかな ただしミステリー読者なら犯人の目星は付いてしまうだろうけど 謎の女性エイヴィスがいい味出している |
No.323 | 5点 | ジーヴズの事件簿 才気縦横の巻- P・G・ウッドハウス | 2011/11/09 09:56 |
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『ジーヴズ、発売中の早川ミステリマガジン12月号の特集は”ユーモア・ミステリ遊歩、クレイグ・ライス/ウッドハウス/カミ”だ、便乗企画である私的遊歩なんだが、締め括りの第7弾は特集にも名前が載ってるウッドハウスにしようと思うんだ』
『御意、今回のユーモアミステリー便乗企画も暫く続きました故、当サイト閲覧者の方々もそろそろ飽きてこられた頃かと存じます』 『そうだな、この辺でおひらきとしよう、ところで文春文庫から執事ジーヴズシリーズの短篇集が2巻出たようだな』 『これは元々は文春のハードカバー版「ジーヴズの事件簿」を2巻に分けて文庫化したものでして、内容はほぼ同じと存じます』 『そのハードカバー版は過去に”このミス”にもランキングしたんだったな』 『左様でございます、ですから文庫版のも初心者にとって安心して読める内容かと存じます』 『おぉ、それは良かった、なにしろジーヴズを雇い入れる事とあいなった顛末も描かれておるのだったな』 『シリーズ第1作でございますな、初めてこのシリーズに接する読者にも入門としてお薦め出来るものと存じます』 『思うのだがもうちょっと捻って我輩をもう少々だな、賢く描いた異色作も有ると良いのだがな』 『それは無理な注文かと存じます』 |
No.322 | 6点 | ドーヴァー 4/切断- ジョイス・ポーター | 2011/11/07 09:47 |
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発売中の早川ミステリマガジン12月号の特集は、”ユーモア・ミステリ遊歩”
便乗企画として私的に遊歩してみるか、第6弾は見逃し易いが忘れるわけにはいかないジョイス・ポーター 「ドーヴァー4/切断」はこれをユーモアミステリーとしてどうかという観点でだけで採点したら多分4~5点位、兎に角笑えねえよこのユーモア しかしこの作品の肝は途中のユーモア要素ではなく衝撃的な真相につきると言えるだろう ユーモアという言葉だと、やはりkanamoriさんのお使いになったブラックユーモアという用語がぴったりで、一般的な意味でのユーモアとは別次元て感じだ この突き抜けた真相を笑って享受出来るか否かで評価が割れそうだけど、案外と国内新本格しか読まないような読者にも合うかも |
No.321 | 4点 | スカイジャック- トニー・ケンリック | 2011/11/04 09:49 |
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発売中の早川ミステリマガジン12月号の特集は、”ユーモア・ミステリ遊歩”
便乗企画として私的に遊歩してみるか、ユーモアミステリーったらこの作家を忘れちゃいけないよな、第5弾はケンリック 実はトニー・ケンリックという作家はあまり好きじゃないんだけど、その原因の一つがかなり昔に読んだ「スカイジャック」が面白くなかった印象が有るからだ しかしずっと時は流れて2冊目として「三人のイカれる男」を読んでケンリックを見直した 「三人のイカれる男」は初期作にもかかわらず、出版社角川の思惑で翻訳順が後期作より後回しになってしまった特殊事情が有る作で、話題にならなかったのは内容ではなくて翻訳順が原因、つまりただ単に読まれていないだけだと思うのだよな 「スカイジャック」も5点くらいは付けられるのだろうが、どうしても私の中で「三人のイカれる男」と比較してしまうからなぁ それだけ「三人のイカれる男」の方が面白かったという事か どうもケンリックと言うと、”「スカイジャック」と「リリアン」だけ読んでおけば良い”みたいな風潮があるが、私としては是非「三人のイカれる男」を読んで欲しいと願うのである ありゃ~「スカイジャック」の書評になってねえや、ゴメン |
No.320 | 6点 | ハロウィーンに完璧なカボチャ- レスリー・メイヤー | 2011/10/31 09:58 |
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* 季節だからね(^_^;) *
ドメスティック系コージー派 ドメスティック系と言えば真っ先に名前が挙がるのはもちろんジル・チャーチルの主婦探偵ジェーンシリーズ レスリー・メイヤーの主婦探偵ルーシーシリーズはその路線を意図したものかもしれないが、私はメイヤーの方が好感が持てるなぁ ジル・チャーチルのは日常生活を舞台にしているようでありながら、何となく登場人物たちが浮ついた調子で、ドメス系と言いながら案外と生活感に乏しいんだよな その点メイヤーの方が地に足が着いた感じが有って生活感にリアリティが感じられる 日本同様に四季が割とはっきりしている東海岸メーン州が舞台だけに季節感の演出が毎回有るのも良い、このシリーズ第3作でもハロウィーンという季節的背景が付け焼刃じゃないもんな それと決して上辺だけでない社会派的な要素もあって単なるドタバタ調コージーとは一味違う、それでいてダイアン・デヴィッドソンみたいに雰囲気が暗くも無いし ジル・チャーチルに比べて謎解き要素が弱いのが弱点だが、謎解き度ばかり求めるのでなければ、コージー派入門にはお薦めしたい作家である |
No.319 | 6点 | 強盗プロフェッショナル- ドナルド・E・ウェストレイク | 2011/10/28 09:57 |
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発売中の早川ミステリマガジン12月号の特集は、”ユーモア・ミステリ遊歩”
便乗企画として私的に遊歩してみるか、第4弾も引き続きウェストレイク 「強盗プロフェッショナル」はドートマンダーシリーズの第2作目 これ読むと第1作「ホットロック」の時点ではシリーズものにしようとは作者も思ってなかったみたいだね、たしかに「ホットロック」って何となく書き方が1話完結ぽいんだよな シリーズ化を意識して書いたのはこの第2作目からという事になる、だからなのか初登場の人物の活かし方が不十分な感もある 例えばメンバーに必要な錠前破り師だが、、「ホットロック」とは人物を代え、ハーマンX(どう見てもマルコムXの洒落)なる黒人錠前破りを初登場させている ところが一応活躍の場面は有るものの、それほど話全体の中で存在感が際立ってはいない 同じく初登場だが相棒ケルプの甥で元FBIという若者ビクターは、キャラは立っているがユーモアの造成以外の役割で言うと話の展開上どうしても必要な人物とは思えない ビクターは後の作品に再登場するようで、シリーズ化を睨んで長い目で存在意義を考えていたようだ 読んでみて感じたのは結構面白いという事、どうも私にとってドートマンダーシリーズが合わないのではなくて、シリーズ第1作「ホットロック」の特異な構成、つまり4分割されたような段階的プロットが合わなかっただけなのかも知れん ただし今の読者は次々にイベントが起こらないとすぐに中弛みとは言う読者が多いからなぁ、その手の読者には当然「ホットロック」の方が合うだろうね |
No.318 | 7点 | 我輩はカモである- ドナルド・E・ウェストレイク | 2011/10/27 09:51 |
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発売中の早川ミステリマガジン12月号の特集は、”ユーモア・ミステリ遊歩”
便乗企画として私的に遊歩してみるか、第3弾は犯罪小説のジャンルでユーモアミステリーの代表作家の1人ウェストレイク、当初の予定では特集に含まれていたが、事情により次号に持ち越しになったみたいね この作品は以前に書評済ではあるが、今回の企画にぴったりなので一旦削除し再登録することにしたので悪しからず 「我輩はカモである」が出たのは泥棒ドートマンダーシリーズの第1作「ホットロック」の3年前、MWA賞も受賞してるし名実共に作者初期の出世作だろう、シリアスな作品が強いMWA賞をユーモアミステリーで獲った珍しい作である 作者の代表シリーズはなんと言ってもドートマンダーシリーズであるが、ドートマンダーシリーズが予め作戦を立てて行動するのに対し、この作はノンシリーズの巻き込まれ型である その為か「ホットロック」で感じた不自然さをあまり感じなかったし、ユーモア度も「我輩はカモである」の方が上回っている 私はどうもユーモアミステリーが苦手な読者だけれど、これは皮肉の効いたユーモアミステリーとしてはかなり評価出来る作だと思う 惜しむらくはこの真相だったら、私が作者ならばもっと完全にはじけて全ては○○でしたみたいに持っていった方が良かったんじゃないかとも思えた、題名通りにね 一応謎解きパズラー的要素も組み込むところがウェストレイクらしい器用さなんだろうが、かえって中途半端になってる印象も無くは無い気がした |
No.317 | 5点 | 我輩はカモじゃない- スチュアート・カミンスキー | 2011/10/27 09:46 |
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これは以前に書評済なのだが、ウェストレイク作品の再書評に伴い抱き合わせで一旦削除して再登録、こういう事はあまりしたくないのだが今回は悪しからず
カミンスキーは初読み、いくつかのシリーズが有るが、ロストニコフ捜査官シリーズを止めリーバーマン刑事シリーズに切り替えたのは、ソ連崩壊という国際的事情で止むを得なかったからだが、この私立探偵トビー・ピータースものはずっと書き続けられており作者を代表するシリーズなんだろう 作風の幅広いカミンスキーに単純なハードボイルド作家のレッテルを貼るのは必ずしも正しくは無いんだろうが、トビー・ピータースを長く書いているからには、ハードボイルド作家の1人という認識は強ち間違ってはいないと思う ネオハードボイルド旋風が下火になった1970年代後期のデビューだし内容もネオハードボイルドとは異質で、やはりクラムリー、グリーンリーフ、L・ブロック、エスルマンらと並ぶ’80年代型私立探偵小説の系統だろうな トビー・ピータースものの特徴は、作中に戦後ハリウッド映画界の実在の人物を物語に溶け込ませている点で、映画界に造詣の深かった作者らしいシリーズだ シリーズ3作目のこの作でもサイレント映画時代のチャップリンに代わってトーキー時代のコメディスターであるマルクス兄弟がマフィアに恐喝される事件の解決を私立探偵トビーが依頼される 題名もマルクス兄弟の舞台劇を捻ったものだ それと謎の英国紳士の正体もお楽しみ トビーは貧乏私立探偵だが、調査費用はトビーを雇う側の映画会社から捻出される 映画会社も人気商売だから醜聞は揉み消したい訳で、その為の私立探偵なのだ 正直言って探偵小説としてはわざとらしい黒幕真犯人の設定などパズラー的には感心しないが、結構面白く読めるし魅力は有る 今回は和田誠氏はイラストと解説のみで翻訳は他の人 ずっと続いているシリーズなのに5作で邦訳が跡絶えているのは残念である |
No.316 | 5点 | 素晴らしき犯罪- クレイグ・ライス | 2011/10/24 09:54 |
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明日25日発売予定の早川ミステリマガジン12月号の特集は、”ユーモア・ミステリ遊歩 クレイグ・ライス/ウッドハウス/カミ”
便乗企画として私的に遊歩してみるか、似た作風のシャタックを書評したついでに第2弾はクレイグ・ライスだ ユーモアミステリーと言ったら真っ先に名前が挙がる第一人者クレイグ・ライス しかし「素晴らしき犯罪」の舞台はいつもの手馴れた本拠地シカゴではなくてニューヨークへ出張、これが微妙にいつもの雰囲気と違っている なんてーかさぁ、ライス独特の湿った感じが無くて、そりゃ普段から能天気な主人公達だけど今作は特にそれを感じる 得意のユーモアも、ますだおかだの岡田のギャグみたいに上滑りだしなぁ閉店がらがら ユーモアの中にも独特の陰影があるのがライスの良さなのに、ただ明るいだけなんだよね、やはり「大はずれ」が傑作過ぎるのか「素晴らしき犯罪」はちょっと落ちる、シカゴとニューヨークという舞台の違いなのかなぁ、それとも翻訳者が小泉喜美子なのも原因か ただ謎解き面だけなら「大はずれ」「大あたり」に比べて「素晴らしき犯罪」も決して引けは取らない 真犯人の設定なども、あまり見た事が無い独特のテクニックがあって、ライスの持ち味を考慮しなければ普通に本格としては名作だろう それにしても小泉喜美子の訳はこなれてない直訳調が読み難くてあまり好きな訳文じゃないな |
No.315 | 4点 | ハネムーンの死体- リチャード・シャタック | 2011/10/21 10:01 |
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近日25日発売予定の早川ミステリマガジン12月号の特集は、”ユーモア・ミステリ遊歩"
便乗企画として私的に遊歩してみるか、第1弾はリチャード・シャタックだ 1940年代にデビューした戦後アメリカ女流ユーモアミステリー作家を3人挙げろと言われたら、クレイグ・ライス、マーガレット・シャーフ、そしてリチャード・シャタックだな もう1人フィービ・アトウッド・テイラーという大物作家も居るが、テイラーは戦前1930年代デビューなので黄金時代作家のイメージが強く、やはり戦後作家という括りにはテイラーは入らないだろう リチャード・シャタックは男性名だが実体は女性作家だ ライスにも出版社との契約上の問題なのかマイケル・ヴェニングという男性名義があるのだが、内容的にもライスと似た面が多く、シャタックはさながら同時期のもう1人のライスだ ただドタバタ調ユーモアという作風では似ているものの、人物造形に深味が無く、いや深味と言うより陰影に乏しいと言う方が近いか、その為ライス独特の哀愁に欠けている ライスの場合はユーモアと裏腹なペーソスがスパイスのように作品の味を引き締めているのだが、kanamoriさんも御指摘の通りシャタックは能天気に終始ドタバタ一辺倒なので心に残らない あと文章も不満、難しい語句は何一つ使ってないんだけど、文章が一連の流れになっておらず、すんなりと頭の中に入っていかないので平易な文の割りに読み難かった、おそらくは原文もあんな感じなんだろう やはりライスに比べると一枚落ちる印象だなぁ ところで解説が森英俊なのは初めて気付いた、森氏は好意的に評価しているけどね シャタックは僅か5年くらいの活動期間にたった4作しか残さなかったが、最後の第4作目を出してくれないかなぁ それと全4作しかないシャタックなのに半分の2作が翻訳されているのだが、作品数ではずっと多いのに3大戦後アメリカ女流ユーモアミステリー作家で未訳で残ったもう1人、マーガレット・シャーフをどの出版社が手を出すかだな P・A・テイラーだって論創社から刊行予定が立ったことだし、各出版社頼みますよマーガレット・シャーフ |
No.314 | 5点 | 迷宮課事件簿Ⅰ- ロイ・ヴィカーズ | 2011/10/04 09:35 |
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発売中の早川ミステリマガジン11月号の特集は”刑事コロンボに別れの挨拶を”
刑事コロンボに興味は無いがコロンボと言えば倒叙、便乗企画の私的な倒叙祭り週間もそろそろ締め括り! 正しくは「迷宮課の事件簿」ではなく「迷宮課事件簿」であって間の”の”は余分 「迷宮課事件簿」と言えば従来から倒叙作品の一つと言われているが、これは絶対に3大倒叙には含まれない 何故か?理由は簡単、書かれた時代が全然違うからだ 3大倒叙作品は全て黄金時代の真っ只中、1930年代の発表だ 私が4大倒叙にすべきと主張したフリーマン「ポッターマック氏の失策」だって1930年の作だ しかしヴィカーズの活躍したのは40~50年代、完全なる戦後作である 40~50年代に新たに倒叙に挑戦した心意気は買うが、ただこれは倒叙という観点からは微妙なシリーズだよなぁ 捜査側の崩しは終盤の1~2ページのみ、全編に渡って延々と犯人の半生と言うか犯行に至った経緯が淡々と語られる 九割方はクライムノベルと呼ぶべき内容なのである クライムノベルが倒叙よりも価値が低いわけじゃないが、一般的には倒叙と喧伝されてるからなぁ 刑事コロンボみたいに、どんなロジックによって犯行隠蔽工作が崩されるのかという技術論的な観点しか倒叙に求めないタイプの読者には絶対に向かない 人生論的な要素を許容出来る読者でないとキツイと思う 倒叙作品群の中では全くもって初心者向きではなく、中上級読者向きなシリーズだ ついでだけど、ヴィカーズは「迷宮課」しか知られていないが、実は作者にはもう一つ”淑女怪盗フィデリティ・ダヴ”というシリーズキャラが有って、どこかの出版社、このシリーズを短篇集に纏めてくれないかな |
No.313 | 7点 | ポッターマック氏の失策- R・オースティン・フリーマン | 2011/09/28 09:58 |
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発売中の早川ミステリマガジン11月号の特集は”刑事コロンボに別れの挨拶を”
俳優ピーター・フォーク追悼企画だろうね 刑事コロンボに興味は無いがコロンボと言えば倒叙、便乗企画として私的に倒叙祭り週間続けるぜ! 倒叙という形式の創始者オースティン・フリーマンはホームズのライヴァルの1人ソーンダイク博士の生みの親である事から短篇作家とのイメージの人も居るかも知れないが、実は20作以上の長編を書いており、ドイルと異なり長編作家の面が強い ただ倒叙形式の発明者にしては長編での倒叙作品は少なくて全部で2作程度しか無く、倒叙長編の数ではクロフツの方が多い 「ポッターマック氏」は数少ないフリーマンの倒叙長編だが、これはソーンダイク博士ものの名作の1つではないだろうか よく長編第1作「赤い拇指紋」だけしか読んでなくて、そのイメージだけで判断する人も多いみたいだが、「証拠は眠る」も悪くなかったし中期以降の作は見直す必要が有りそうだ さて倒叙の観点で見ると、森英俊氏は3大倒叙の中で「クロイドン」が倒叙の形式に一番近いと言っていたが、「ポッターマック氏」は「クロイドン」よりも更に倒叙の定義に忠実だ 倒叙形式は端からフーダニットの興味を捨て去りハウダニットな興味が中心となるが、フリーマンという作家は元々フーダニット構築が下手で逆に稀代のトリックメイカーだから、やはり倒叙には向いていたのだ 殺害方法は平凡だが、それを誤魔化す為のトリックがいかにも科学者作家フリーマンらしい 笑ってしまうのは後半には現代では絶対有り得ないトンデモトリックが炸裂するが、まぁこれは御愛嬌 少なくとも後半の展開がありきたりだった「クロイドン」などよりこちらの方が面白いと賛同してくださる読者はきっと居るに違いない 論創社からこの作品が刊行されたのは割と最近だが、これがずっと昔に翻訳されていたら、”3大”ではなく”4大倒叙”と称されていたんじゃないだろうか こうなると”5大倒叙”の5番目になる可能性を秘めた未訳作、フィルポッツ”Portrait of a Scoundrel(極悪人の肖像)”を、どの出版社が目を付けるかだな |
No.312 | 3点 | クロイドン発12時30分- F・W・クロフツ | 2011/09/26 09:58 |
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発売中の早川ミステリマガジン11月号の特集は”刑事コロンボに別れの挨拶を”
俳優ピーター・フォーク追悼企画だろうね 刑事コロンボに興味は無いがコロンボと言えば倒叙、便乗企画として私的に倒叙祭り週間じゃ! 由来は不明だが”3大倒叙”と言われる中で第2弾は「クロイドン」だ 森事典で森英俊氏も3大倒叙の中で、「殺意」「伯母」と比較して最も厳密な意味での倒叙の概念に近いと言っている たしかにその通りだと思う、しかしながら、だから面白いかと言うと実はつまらない たしかに一応は”倒叙”の概念に近い、その辺は認める、特に前半は しかしフレンチ警部側の視点による犯行隠蔽に対する崩しはラスト近くの数ページだけで物足らない、後半も延々と犯人側の視点で物語は進むし 一応は長編だから物語を膨らませる展開にはなっているんだけど、後半早々にある登場人物から密約取引が持ち込まれるという展開はいかにもありきたりだ 倒叙という形式は二重構造だから短編向きじゃないが、端からフーダニット興味を捨てているわけだから余程上手く書かないと長編ではありがちな展開に陥りやすい やはり倒叙ってハウダニットに絞った中編位の分量が丁度良いのかも あとこれは倒叙と直接関連は無いが、題名からトラベルミステリー的な面白があるのかと期待したがそれも全く無い、基本的舞台設定は屋敷の中といたって地味、冒頭の事件発生の飛行機の発着時間が題名の由来なだけでがっかり これだったら犯罪心理小説だと割り切って読むなら、むしろアイルズ「殺意」の方が面白かった ※ さて倒叙祭り第3弾は当然「伯母」だと思うでしょ、へそ曲りな私はそんな予想通りにはいかないのである(苦笑) ハル「伯母」は既読なんだけど某海外古典作品と抱き合わせ書評したいので後回しの予定 タッグを組む予定の某海外古典作品は本は入手済みだけど積読状態なんでそれ読んでからにしたい えっ、その某海外古典作品って何かって、nukkamさんとか海外古典本格に詳しい方にはバレバレですよねきっと |
No.311 | 6点 | 殺意- フランシス・アイルズ | 2011/09/23 10:01 |
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明日24日発売予定の早川ミステリマガジン11月号の特集は”刑事コロンボに別れの挨拶を”
今年の夏前に逝去した俳優ピーター・フォークの追悼かな 私はミステリードラマ鑑賞には全く興味が無く、ドラマを鑑賞する時間が有ったら読書時間に充てたいし、したがって刑事コロンボにも興味が無い しかし刑事コロンボと言うと出てくるのがジャンルとしての”倒叙”という語句だ ようし私的に倒叙祭り週間だぁ! 私的倒叙祭り週間第1弾はこいつだ、3大倒叙作品の中で「殺意」は最も早く書かれている さてところで”3大倒叙”という言葉はよく聞くが、実は調べても誰が選定したんだか由来がはっきりしねえんだよ 乱歩由来説とか、創元が自社文庫の宣伝文句に使ったとか、案外と定かじゃない そこで疑問なのが、3大倒叙以外に語られるべき倒叙作品は存在しないのか?、もう一つは果たして「殺意」は倒叙なのか? 前者の疑問については近日中に私が答えを出す予定、ちょっと待っててね、今回は後者の疑問について 例の森事典で森英俊氏は、3大倒叙の内厳密な意味で倒叙と言えるのはクロフツ「クロイドン」のみで、他の2作は犯罪心理小説の一種に近いと主張していた そう言えば倒叙の定義は、前半で犯行側が描かれ、後半で捜査側がそれを崩していくというパターンなわけだ つまり後半に犯罪の隠蔽が覆されるシーンが描かれていても、それが終始犯人側からの視点な場合は狭い意味での倒叙とは言えないという事だな たしかにそういう意味では「殺意」もR・ハル「伯母」も捜査側の視点に乏しい、狭い意味での倒叙という観点だけで見るなら「殺意」を評価は出来ない しかし先入観に捕らわれず犯罪サスペンスの一種と割り切って読むと、正直言って「クロイドン」などより「殺意」の方が面白い、「クロイドン」は倒叙という観点で見てもつまらん アイルズはバークリーの別名義だが、流石はバークリー、こうした犯罪心理小説を書いても捻くれた独特の感性は健在なのである |
No.310 | 6点 | 殺し屋- ローレンス・ブロック | 2011/09/21 09:56 |
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昨日20日に二見書房から殺し屋ケラーシリーズの多分最終作なのか「殺し屋 最後の仕事」が刊行された
最初期の快盗タナーは別にすると、マット・スカダー、泥棒バーニイと並ぶローレンス・ブロック3大キャラのもう1人が殺し屋ケラーだろう、この機会に初めて読んでみた このシリーズ第1作「殺し屋」は各短編を章に見立てた長編の体裁を採っているが、各短編は個別に雑誌に掲載されたものの集合体で、実質は短篇集である 最後の1篇は書き下ろしで、単行本化するにあたって全体の纏めをするのが目的で追加として書き下ろしたのだろう まぁ快盗タナーなんて長編でもエピソードの羅列みたいで殆ど連作短篇集同様だったしな、ブロックの資質は短篇向きなのかな 主人公は殺し屋だが、殺しの場面などカットされた話も有ったり、ハウダニット的な興味は希薄 殺し屋の日常・心情を描いた私小説かエッセイって趣で、思想性が有る様で無く、無い様で有る、どうって事の無い話なのに面白く読まされてしまういつものブロック節だ 特にMWA賞受賞の2篇は優れている、「ケラーの責任」はオチがやや見え透いているので「ケラーの治療法」の方が好みかな 強いて難を言えば、元締めの秘書ドットとの会話は面白いのだが、kanamoriさんの御指摘通り他の登場人物との会話にブロックらしい洒落っ気が乏しいのが残念 ところで二見文庫の題名はなんじゃこりゃ ヒット・マン → 殺し屋 ヒット・パレード → 殺しのパレード ヒット・エンド・ラン → 殺し屋 最後の仕事 どう考えても統一感から見ても原題そのままカタカナ書きすべきだろ、これじゃ原題の洒落っ気が台無しじゃねえかよ、商標権とか何か問題でも有ったのか? 訳者解説によると原著も当初は『ケラーズ・グレイテスト・ヒット』の予定だったらしい、その方が良かったのに 私が勝手に選定する”邦訳題名の下手な文庫ワースト3”はこれじゃ 1. 扶桑社文庫 2. 角川文庫 3. 二見文庫 |
No.309 | 2点 | グリーン家殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン | 2011/09/20 09:53 |
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近日に国書刊行会からジョン・ラフリー著「別名S.S.ヴァン・ダイン~ファイロ・ヴァンスを創造した男」が刊行される
MWA評論賞を受賞したヴァン・ダインに関する評伝である 今では本国アメリカでも忘れられた作家で、私も特に思い入れのある作家では全然なくてごく一部の作品しか読んでいない しかしながら人気の凋落振りは悲しいが、ミステリー史において一時期には一世風靡し人気の絶頂期が有ったのも事実として認めざるを得ない 日本で妙なマニア人気が有るロジャー・スカーレットみたいな、終始マイナー作家だったわけでは無いのだ 現代では歴史に埋没した作家ではあっても、ヴァン・ダインがそれまで優勢だった英国勢に対抗出来た初のアメリカ勢として歴史的には重要作家の1人であったのは間違いない ヴァン・ダインと言えば一般的に2トップと見なされているのが「グリーン家」と「僧正」だろう 世の各種ネット書評でも当サイトに於いても、「グリーン家」のまあまあな評価に比べて「僧正」の評価が相対的に低いのが目立つ しかし私は断然「僧正」支持派なのである 元来が私はお屋敷もの館ものという舞台設定に何の魅力も感じない読者だし様式美というものが嫌いなので、「グリーン家」の館ものという舞台に魅かれない 強いて言えば館ものという舞台をカントリーハウスから大都会のど真ん中に持ってきたという目新しさが手柄かもしれないが 中心トリックがホームズの某短編のパクリなのは大目に見るとしても、作者が過去のミステリー小説を読破して方法論を理解していた事からも、全体的に古典的なスタイルの総集編と言うか、従来の手法を纏め上げただけという感は否めない、要するに古臭いのだ 新しい何かを提案しているという意味では内容的にはイマイチでもまだ「ベンスン」あたりの方が歴史的意義があるし、「僧正」には現代ミステリーに通じる要素が有る 「僧正」の評価出来る理由については「僧正」書評時に譲るが、私にとってはヴァン・ダインの代表作と言ったら「グリーン家」なんかじゃなくて絶対に「僧正」なんである |