皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ クライム/倒叙 ] 迷宮課事件簿Ⅰ |
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ロイ・ヴィカーズ | 出版月: 1962年01月 | 平均: 4.75点 | 書評数: 4件 |
早川書房 1962年01月 |
早川書房 1977年05月 |
No.4 | 2点 | E-BANKER | 2017/06/03 21:58 |
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紹介文によると、『倒叙ミステリーの伝統を守る短篇集』と書かれている。
スコットランドヤードが誇る(?)迷宮課の活躍を描く作品集。 ①「ゴムのラッパ」、②「笑った夫人」、③ボートの青髭、④「失われた二個のダイヤ」、⑤「オックスフォード街のカウボーイ」、⑥「赤いカーネーション」、⑦「黄色いジャンパー」、⑧「社交界の野心家」、⑨「恐妻家の殺人」、⑩「盲人の妄執」 以上10編。 ということで・・・ 実に退屈な読書だった。 もしかしたら、私の読解力が足りないのだろうか? はたまた古めかしい訳のせいなのだろうか? 序文で本作(特に①「ゴムのラッパ」)を激賞されているE.クイーンには申し訳ないけど、これは・・・2017年の現在からすると、どうにもこうにも・・・ね? 倒叙ものはどちらかというと好きなジャンルなんだけど、ただ只管に事件の顛末を犯人目線で書かれても、「それで?」という感想にしかならない。 当時はこういうジャンル、切り口自体が目新しかったのかもしれないけど、これはもう陳腐化したということだろう。 途中まで我慢して読んでたけど、ラスト前でギブアップ! ギブアップは久しぶりだな・・・ そういう意味では貴重かも。 |
No.3 | 5点 | nukkam | 2016/08/18 18:19 |
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(ネタバレなしです) 英国のロイ・ヴィカーズ(1888-1965)は1920年代からミステリーを発表していますが60作を越えるとされる長編のほとんどは現在ではあまり評価されず、短編作品に存在価値があるとされています。迷宮課シリーズはその代表とされていますが1930年代に発表された当初はそれほどの反響を得られず、エラリー・クイーンが注目したことによってようやく陽の目を見たそうです。フリーマンの倒叙ミステリーの伝統を引き継いだ作品とされていますが、miniさんや空さんのご講評で的確に指摘されているようにフリーマン型倒叙推理小説とは微妙に異なるように思います。1949年に10作を収めて短編集としてまとめられた際にクイーンが寄せた序文の紹介にもあるように、フリーマンの作品に比べて推理色が薄く探偵役としての迷宮課(主にレイスン警部)も個性がなく、さりとて犯人が最後まで主役を演じる犯罪小説でもなく、どこか中途半端な印象を受けます。個人的なお勧めは犯行に至るまでの人間関係の変容を描いた「オックスフォード街のカウボーイ」と「黄色いジャンパー」です。 |
No.2 | 7点 | 空 | 2014/12/12 22:07 |
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miniさんや、『百万に一つの偶然』でkanamoriさんもご指摘のとおり、倒叙とは呼ぶには微妙な連作短編集です。倒叙とは何を倒して、つまりひっくり返しているのかと言えば、「本格派」だからで、もう一度ひっくり返し直しても、本書に収められた短編は本格派にならない、と言うか、つまらないものにしかならないのです。なぜなら基本的には殺人者を描いた犯罪小説だからで、それに謎解き的な要素も加味されているというだけでしょう。
シリーズ第1作『ゴムのラッパ』については、序でクイーンは絶賛していますが、そのヴィカーズの持ち味が完全に達成できているとはあまり思えません。犯人があまりに無計画な自己中心主義者だからというところもあるのでしょうが。しかし次作『笑った夫人』からは犯罪者の側からと言っても、実際の殺人を明確にしなかったり先に死体発見を描いたり、と様々な手法を凝らして楽しませてくれます。 |
No.1 | 5点 | mini | 2011/10/04 09:35 |
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発売中の早川ミステリマガジン11月号の特集は”刑事コロンボに別れの挨拶を”
刑事コロンボに興味は無いがコロンボと言えば倒叙、便乗企画の私的な倒叙祭り週間もそろそろ締め括り! 正しくは「迷宮課の事件簿」ではなく「迷宮課事件簿」であって間の”の”は余分 「迷宮課事件簿」と言えば従来から倒叙作品の一つと言われているが、これは絶対に3大倒叙には含まれない 何故か?理由は簡単、書かれた時代が全然違うからだ 3大倒叙作品は全て黄金時代の真っ只中、1930年代の発表だ 私が4大倒叙にすべきと主張したフリーマン「ポッターマック氏の失策」だって1930年の作だ しかしヴィカーズの活躍したのは40~50年代、完全なる戦後作である 40~50年代に新たに倒叙に挑戦した心意気は買うが、ただこれは倒叙という観点からは微妙なシリーズだよなぁ 捜査側の崩しは終盤の1~2ページのみ、全編に渡って延々と犯人の半生と言うか犯行に至った経緯が淡々と語られる 九割方はクライムノベルと呼ぶべき内容なのである クライムノベルが倒叙よりも価値が低いわけじゃないが、一般的には倒叙と喧伝されてるからなぁ 刑事コロンボみたいに、どんなロジックによって犯行隠蔽工作が崩されるのかという技術論的な観点しか倒叙に求めないタイプの読者には絶対に向かない 人生論的な要素を許容出来る読者でないとキツイと思う 倒叙作品群の中では全くもって初心者向きではなく、中上級読者向きなシリーズだ ついでだけど、ヴィカーズは「迷宮課」しか知られていないが、実は作者にはもう一つ”淑女怪盗フィデリティ・ダヴ”というシリーズキャラが有って、どこかの出版社、このシリーズを短篇集に纏めてくれないかな |