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[ ハードボイルド ]
我輩はカモじゃない
私立探偵トビー・ピータース
スチュアート・カミンスキー 出版月: 1994年06月 平均: 5.00点 書評数: 1件

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文藝春秋
1994年06月

No.1 5点 mini 2011/10/27 09:46
これは以前に書評済なのだが、ウェストレイク作品の再書評に伴い抱き合わせで一旦削除して再登録、こういう事はあまりしたくないのだが今回は悪しからず

カミンスキーは初読み、いくつかのシリーズが有るが、ロストニコフ捜査官シリーズを止めリーバーマン刑事シリーズに切り替えたのは、ソ連崩壊という国際的事情で止むを得なかったからだが、この私立探偵トビー・ピータースものはずっと書き続けられており作者を代表するシリーズなんだろう
作風の幅広いカミンスキーに単純なハードボイルド作家のレッテルを貼るのは必ずしも正しくは無いんだろうが、トビー・ピータースを長く書いているからには、ハードボイルド作家の1人という認識は強ち間違ってはいないと思う
ネオハードボイルド旋風が下火になった1970年代後期のデビューだし内容もネオハードボイルドとは異質で、やはりクラムリー、グリーンリーフ、L・ブロック、エスルマンらと並ぶ’80年代型私立探偵小説の系統だろうな

トビー・ピータースものの特徴は、作中に戦後ハリウッド映画界の実在の人物を物語に溶け込ませている点で、映画界に造詣の深かった作者らしいシリーズだ
シリーズ3作目のこの作でもサイレント映画時代のチャップリンに代わってトーキー時代のコメディスターであるマルクス兄弟がマフィアに恐喝される事件の解決を私立探偵トビーが依頼される
題名もマルクス兄弟の舞台劇を捻ったものだ
それと謎の英国紳士の正体もお楽しみ
トビーは貧乏私立探偵だが、調査費用はトビーを雇う側の映画会社から捻出される
映画会社も人気商売だから醜聞は揉み消したい訳で、その為の私立探偵なのだ
正直言って探偵小説としてはわざとらしい黒幕真犯人の設定などパズラー的には感心しないが、結構面白く読めるし魅力は有る
今回は和田誠氏はイラストと解説のみで翻訳は他の人
ずっと続いているシリーズなのに5作で邦訳が跡絶えているのは残念である


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