皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格 ] リチャード三世「殺人」事件 図書館司書ジャクリーン・カービー |
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エリザベス・ピーターズ | 出版月: 2003年03月 | 平均: 5.67点 | 書評数: 3件 |
扶桑社 2003年03月 |
No.3 | 7点 | nukkam | 2016/06/12 05:25 |
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(ネタバレなしです) 別名義での作品を含めると70作を超す女性作家でエジプト考古学者でもある米国のエリザベス・ピーターズ(1927-2013)は4作のジャクリーン・カービーシリーズを書いていて私はその内3作を読みましたが、1974年発表の第2作である本書は最も本格派推理小説の要素が濃い作品だと思います。ジョセフィン・テイの「時の娘」(1952年)でも取り上げられている英国王リチャード3世がらみのミステリーです。登場人物以外に歴史上の人物の名前が入り乱れますが文章が読みやすくて混乱せずに読むことができました(ユーモアも豊かです)。ジャクリーンに言わせれば「犯人は一目瞭然」だけど犯人のねらいがわかないという、ホワイダニット色の強いプロットです(もちろん犯人の名前も最後に明かされるので、犯人当てにも挑戦できます)。テイの「時の娘」を読んでいなくても問題はありませんが、作品中でリチャード・ハルの「伯母殺人事件」(1934年)のネタばらしがありますのでそちらを未読の人は注意して下さい。 |
No.2 | 5点 | E-BANKER | 2012/09/14 23:52 |
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図書館司書ジャクリーン・カービーを探偵役とするシリーズの1つ。
英国史上の伝説的人物である「リチャード三世」をめぐる歴史論争が事件の背景となる。 ~幼王を殺害し、王位を簒奪した英国史の極悪人リチャード三世。だが、彼の無実を証明する新たな史料が発見された! そのお披露目会が開かれる屋敷には、愛好家がリチャード三世にまつわる歴史上の人物に扮して大集合。ところが、参加者に次々と災難が降りかかる。しかも各人が扮した人物の実際の死にざまを想起させるような形で・・・。何者かがリチャード三世の殺人を再現しようとしているのか?~ 趣向としては面白いが、ミステリーという観点からするとやや疑問。 というのが正直な評価だろうか。 本作が、ジョセフィン・テイの名作「時の娘」のオマージュとして書かれているのは有名(?)のようだが、シェークスピアの描いた“極悪人”としてのリチャード三世を復権させることをテーマとして書かれた、完全な「歴史ミステリー」である「時の娘」と比べて、本作の位置付けはかなり曖昧。 「歴史ミステリーと見せかけたライトなミステリー」とでも言うのが本作の特徴か。 紹介文を読むと、いかにも本格ミステリーっぽいギミックを備えているように見えるのだが、プロットの根幹は実にシンプル。 終盤で探偵役のジャクリーンが、A・クリスティの某有名作を引き合いに出すのだが、それを地でいくようなプロットなのだ。 でもなぁー、これだけのことにリチャード三世にまつわる様々な薀蓄や歴史的背景をわざわざ持ち出さなくてもいいんじゃない、っていう気にはさせられた。 まぁ読みやすい作品なのは間違いないし、決して面白くないわけではないので、こういう手の作品が好きな方なら一読の価値はある。 (結局、リチャード三世は「極悪人」ではなく、むしろ「賢王」ということでよいのだろうか?) |
No.1 | 5点 | mini | 2011/11/11 10:02 |
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名前が紛らわしいのだが、エリス・ピーターズとエリザベス・ピーターズとは全くの別人である、そもそもエリスは英国作家、エリザベスはアメリカ作家と国籍も違うし
しかし紛らわしいのは名前だけではなく、同一視混同しがちなのは仕方が無い面もある と言うのもエリスの方は修道士カドフェルでお馴染みの歴史ミステリーが代表シリーズだが、エリザベスの方もエジプト学者アメリア・ピーボディのシリーズなどがある歴史ミステリー作家だからね 日本での人気度はもう一つだがエリザベス・ピーターズはアメリカでは功労賞にあたるMWA巨匠賞を受賞していて現代本格では重要な作家の1人だ、それは歴代巨匠賞受賞作家の顔触れを見ても分かる 別の作品がアガサ賞を受賞していて自身もコージー派作家団体マリス・ドメスティックから表彰されてるので、日本ではコージー派作家のレッテルを貼る人も居るかもしれない 作者の主流シリーズはエジプト学者アメリア・ピーボディのシリーズだが、作者にはもう1つ図書館司書ジャクリーン・カービーのシリーズが有って、全4作と少ないがその内3作が扶桑社文庫読めるが、原著でのシリーズ第2作(第1作目は未訳)が歴史の謎と現代本格とを融合した「リチャード三世「殺人」事件」である 「リチャード三世「殺人」事件」は、シェイクスピアの戯曲などで悪人と認定されていたリチャード三世を擁護する団体に起こった事件が描かれる ”リチャード三世の冤罪を晴らす”と言えば、そう歴史ミステリーの名作として知られるあのジョセフィン・テイ「時の娘」だ、この「リチャード三世「殺人」事件」はその「時の娘」へのオマージュなのである 「リチャード三世「殺人」事件」は過去の時代が舞台でもないし、若干はその要素が有るにせよ基本的には歴史上の謎を解くのが主眼でもない つまり基本的には歴史ミステリーとは言えないのだ リチャード三世擁護団体のメンバーが集められた館で、各々リチャード三世の時代に絡む歴史上の人物に扮したメンバーが次々”被害に遭う” 敢えて”殺される”とは書かなかったのだが、そもそも題名の中で殺人という単語だけが”「殺人」”とわざわざ括弧で括られているのとも絡んでいるはずだ、だってどうせ括弧で括るなら普通だと”「リチャード三世」殺人事件”と表記しそうだもんね 題名の”「殺人」”に関してもう一つ、題名のトリックはリチャード・ハルの某作品を思わせるが、まぁネタバレになるといけないので止めておこう 館に集められた登場人物達に次々に起こる事件という設定、まさにコード型本格そのもので有り、おそらく意図的に古臭いプロットにしたのだと思う 館ものが嫌いな私としては好みに合わないのだけれど、現代を舞台に「時の娘」とは全く異なるアプローチによって「時の娘」へのリスペクトを表したアイデアは評価したいと思う |