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あびびびさん
平均点: 6.33点 書評数: 669件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.19 7点 満潮に乗って- アガサ・クリスティー 2012/07/25 01:34
書評を書いた方が、「これを読む人はクリステイーの中毒患者」みたいな記述があったが、まさにその通り。他の小説がつまらなかった時は、その口直しにクリステイーが欠かせない。

ある一族があり、その中に飛び切りの大金持ちがいて、皆の面倒を見てくれる。しかし旅先である若い女性と結婚し、空襲で不慮の死に遭遇。

ちょうど遺書を書き変えていた最中であり、遺産はすべてその若い女性が相続することになった。しかもそれを指揮しているのが自称・兄である…。今まで安楽に暮していた一族が望むのは当然若き未亡人の死であることは言うまでもない…。

こんな分かり切った設定でもクリステイーは見せ場を作るのだから凄い。

No.18 6点 チムニーズ館の秘密- アガサ・クリスティー 2012/07/11 17:18
チムニーズ館は歴史を作り、刻んだイギリス社交界の名門。そこで某国の王子が射殺される…。しかし物語りに悲壮感はなく、ドタバタ的にどんどん先に進む。

最後は、主人公というべき男の正体に驚いてしまうが、クリスティは「時間も掛からず、楽しんで書いた」というから軽い乗りで読むべき冒険ミステリ。

No.17 7点 謎のクィン氏- アガサ・クリスティー 2012/06/07 15:23
サタースウェイト氏はイギリス上流社会のレギュラーと言うべき存在だが、特に大金持ちというわけではなく、階級?的にも目立たない男。しかし、人間関係のひずみには超人的?な嗅覚を持つ。

そして、その場には必ずクイン氏が登場し、サタースウェイト氏の推理、疑問に一石を投じる。ほんの一言助言するだけだが、そのヒントでサタースウェイト氏は鮮やかに事件を解決する短編集だ。

ミステリ的な要素の少ない作品もあるが、どれも重みががあり、アガサ・クリスティという作家の底力を感じさせる。

No.16 7点 スリーピング・マーダー- アガサ・クリスティー 2012/04/06 16:00
新婚の夫は仕事で海外に。その妻が家さがしに出掛けるが、なかなか夫婦の条件に叶う家がない。あきらめかけたその時、一目見ただけで気に入った家は、幼少のころ自殺?した父と一緒に住んだ家だった…。

謎が謎を呼ぶ設定はクリスティならではのものと思う。途中で犯人が分かってしまったが、18年前の殺人事件なので証拠がなく、ミス・マープルも最後は危険な手段を選ぶ。

No.15 7点 無実はさいなむ- アガサ・クリスティー 2012/03/16 15:21
冤罪がテーマの物語だが、殺された資産家に対する養子5人の複雑な心理状態。一旦収まったかに見えた事件が、2年後に冤罪証明者が現れて各人のスタンスが明らかになる。

トリックなどなくて、行き当たりばったりの犯罪だったのだが、それをうまく進行させたクリスティの手腕に興味津々だった。

No.14 8点 火曜クラブ- アガサ・クリスティー 2012/02/14 15:11
この短編連載からマーブルが登場。クリスティはポアロよりマーブルの方が気に入っていたらしいが(ポアロ物は構成に手が掛かり、長編になる?)、この一冊にクリスティの魅力が凝縮されているような気がする。

特に後半は短編にするのが惜しいほど。

No.13 7点 七つの時計- アガサ・クリスティー 2012/02/13 18:07
クリスティ初期の作品らしいが、そんな香りが漂ってくる。セブン・ダイヤルという秘密の組織があって、その会議の秘密を暴こうと、怖いもの知らずの若き女性が戸棚の中に隠れて様子をうかがうシーンは苦笑するしかない。

しかし、最後はいつものどんでん返し。何も考えず、ノンストップで読んでしまうので、いつも作者の策略にはまってしまう。それがまた楽しく、次の作品が待ち遠しい。それにしてもなかなか犯人が当たらない。最近5冊読んで分かったのは1作だけだった。

No.12 6点 死人の鏡- アガサ・クリスティー 2012/01/30 16:34
短編4作になるシリーズ。表題の「死人の鏡」が特に優れているわけではないが、どれも味のある佳作だと思う。

個人的には、「厩舎街の殺人」が読後、波紋のように広がりを見せて印象的だった。いくつもの伏線が解明される様は、自分自身の無能ぶりを改めて思い知るような感じだった。しかし、頭の回転のいい読者はすぐに察知できたと思う。

最後の「砂に書かれた三角形」もクリスティの術中にはまってしまった?これまた自分の視点の甘さを突かれたようなラストだった。

No.11 8点 杉の柩- アガサ・クリスティー 2012/01/20 05:52
「そして誰もいなくなった」や「オリエント急行の殺人」のような大胆さや閃きはなく、地味な作品だと思うが、これは良作。

誰がどう見てもその女性が犯人と言われる毒殺事件を中盤から登場したポアロが、関係者の嘘を一枚ずつ剥いで行く。その心理的描写の素晴らしさ!そしてエンディングも爽やかだ。

超有名な作品でなくても楽しませてくれるクリスティ。これはその典型的な作品だと思う。

No.10 5点 おしどり探偵- アガサ・クリスティー 2012/01/18 14:57
アガサクリスティーはいつも読みやすいと言う印象があるが、これはさらに軽くなった短編集。本を読んでいるというより、テレビの30分番組を見ているといった感じ。

寝付かれない時のために、枕の横に置いていたが、最後まで読まなくてもいいので重宝した。

No.9 7点 鏡は横にひび割れて- アガサ・クリスティー 2012/01/06 11:42
地味な事件だが、これだけの題材をミステリに仕上げるクリスティーの手腕はさすがと言える。

これは映画化されていて「クリスタル殺人事件」という題名。出演者が凄く、エリザべステーラーにロックハドソン、キムノバック、トニーカーチスと、この手の映画としては凄いメンバーだが、あまりヒットはしなかった。

というのも華やかなハリウッドスターが競演するような内容ではなく、小説でしみじみ人間の心理的葛藤をなぞる物語だと思う。

No.8 7点 教会で死んだ男- アガサ・クリスティー 2011/08/15 17:05
全体的にバラエティに富んでおり、楽しく読めた。どれも長編までは膨らまないが、ニヤリとさせられる佳作ぞろい。

中でも「スズメ蜂の巣」は、なにげない生活の中から殺人事件の前兆を読み取り、それを阻止すべく行動に移るポアロの自信に満ちた行動。自慢のひげがぴくぴく動いている様が思い出された。

No.7 7点 葬儀を終えて- アガサ・クリスティー 2011/07/24 15:38
犯人が大胆すぎ、その割にはやや動機が弱い気はするが、クリスティらしい流れ。最初やけに登場人物が多いなと思ったが、後半は絞られた感じになり、逆に少ないと思った。

まあ、いろいろな評価はあるだろうが、本当に外れのない作家だと思う。

No.6 7点 ポアロのクリスマス- アガサ・クリスティー 2011/07/08 18:32
ポアロの口ひげが得意げにぴくぴくしていそうなラスト。いかにもミステリの王道であり、犯人のトリックもそれにふさわしい。

大傑作ではないにしても、こんな流れを嫌う人はあまりいないのではないか。

No.5 5点 春にして君を離れ- アガサ・クリスティー 2011/06/20 23:17
クリスティなのにミステリではない。今までこの本を手にした方たちはあえてこのコーナーで紹介をしなかったのではないか。

嫁いだ娘の健康状態が悪く、母親がイギリスからバクダッドまで行く。娘の健康が落ち着き、それからイギリスに帰るのだけど、当時は大陸を通って、一週間ほどの旅だった。その矢先、交通の不都合で、砂漠のど真ん中の宿に何日間足止めされる。

持って行った本はすべて読んでしまい、なにもやることがない。それで砂漠の中で今までの人生を振り返る。それはすべてが自分自身のわがまま、自己中心的な人生であることを示していた。夫も3人の子供たちも自分の事を鬱陶しく思っているに違いない。

イギリスに帰ったらまず夫に謝ろう、そして…。蜃気楼にも似たその思いが、心の中で激しく揺れて行く。

それを読者(自分自身)に例えたら、本当に怖い。

No.4 8点 殺人は容易だ- アガサ・クリスティー 2011/06/17 11:36
「そして誰もいなくなった」とか「オリエント急行の殺人」のように大がかりなトリックではない。それゆえに知名度はないのだろうが、よく出来ている。傑作だ。

外国勤務を終えた元警官が、ロンドン行きの列車に乗る。途中、アクシデントから老婆と向い合せになるが、その老婆はある村で連続して起こった死亡事故が実はある者による殺人だと言う。しかも次の犠牲者も分かっており、地元警察では心もとないから、ロンドン警視庁へ相談しに行くのだという。

その時は話を合わせていただけの元警官は、次の日、その老婆が交通事故で死んだことを知り、しかもその後、その村で老婆が言った名前の男が事故で死んだという記事を見てしまった……。

半分くらい読んだころに、そういえばこの作品はミステリチャンネルで見た覚えが…と思い出し、だいたい犯人も見当をつけて、物語もそんな流れになったが、さすがクリスティ、最後の最後でどんでん返しを食らった。元警官が推理する容疑者がすべて犯人だと思わせる組み立ては実に巧妙だ。

素直にミステリを堪能できるお薦めの一冊だと思う。

No.3 8点 五匹の子豚- アガサ・クリスティー 2011/05/13 16:24
16年も前の事件を回想して心理的局面から事件を解決に導く。以前、ミステリチャンネルでずっとボアロを見ていたせいか、俳優のスーシエばかり思い出したが、それが決して邪魔にならないのが不思議だった。

いかにも手順がクリスティーで、自分は良いミステリを読んだ…と満足した。

No.2 4点 復讐の女神- アガサ・クリスティー 2011/04/23 11:00
久しぶりにクリスティを読んだ。さて、どんなどんでん返しが…と期待していたが、「この人が犯人では…」と、想像したままであり、動機も物語の流れそのままだった。

あるお金持ちから遺言書が届き、旅行が手配され、なんのヒントも与えられず、事件に対処するといった設定はさすがだと思ったが、それほど深い謎はなかった。

No.1 8点 検察側の証人- アガサ・クリスティー 2009/10/26 22:59
クリスティーの真骨頂というべき作品ではないか。

ラストの顛末が見たくて、DVDを借りたが、「情婦」という題名はひどい。そのまま、検察側の証人でよかったのではないかと思う。

最後に、犯人が吠えれば吠えるほどこの作品が凄みを増す。そういう意味では「情婦」は物足りない。いつか見たテレビドラマの方が、「このクソ野郎!」と思った。

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あびびびさん
ひとこと
仕事が専門紙を作ることだったので、いつも目が腫れて活字を見ること自体が苦痛だったが、旅をするようになり、移動時間に読むようになった。

今では家に未読の本が4.5冊ないと落ち着かない。
好きな作家
アガサクリスティ。ミステリ界の宝石箱。色々な輝きを持った作品がある。
採点傾向
平均点: 6.33点   採点数: 669件
採点の多い作家(TOP10)
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