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[ 本格/新本格 ]
折々の殺人
佐野洋 出版月: 1986年08月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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講談社
1986年08月

講談社
1989年07月

No.1 6点 斎藤警部 2015/10/19 12:24
東大文学部卒の浮雲エリート仲間、大岡信が朝日新聞(佐野氏の勤めた読売のライヴァル)に連載した 文芸コラム”折々のうた”で紹介された古今の和歌・俳句にインスパイアされた小品を収めた後期短篇集。インスパイアと言っても核心部分では元の”うた”から離れている作ばかりで、小説と和歌との共鳴し合いをしみじみ玩味する様な代物ではないのがちょっと企画の浅さを感じるが、各作の前に置かれた、大岡氏による元のうた紹介とそのオリジナル解説、佐野氏による元のうた及び大岡氏の解説に対する感想と自分の小説に対する前書き、という都合五段構えの各プロローグ(長くはありません)を読むのも新奇で愉しく、また肝心の小説部分がじゅうぶん読書に堪えるのはやはり手堅い業師の仕事。めちゃ軽いですけどね。

中に一つ、氏にしては珍しいほど笑いに直結させる下ネタ押しで驚いたのがあった(品の有る艶笑っぽいのは氏によくあるけど)。と思ったらそれがミスディレクションだったってのかまさかの重い終盤展開に目を白黒、、とあっけに取られていたら最後は。。と意外なストーリー展開で飛びぬけて印象に残ったのがあったなあ。他に、老父の娘への切実な愛情がちょっと凄い形で具現化された、なのにどういうわけか心温まる殺人物語(?)もちょっと忘れがたい。とは言え全体で見ると質の高い読み捨て用といった趣き。悪くはありませんが、ファン向けだね。

最後に余計な事を言うと、本作連載の頃(平成に切り替わる前後)、氏は男性機能の衰えに煩悶されていたのではないかな、と窺える表現や主題が所どころ鼻に、いえ目に付きましたかな。中にはもう、そういうテーマの軽医学エッセイ(?)を照れ隠しにミステリの蓑を被って書いてるような作もありました。それはそれで興味深い。

その時の2人/固い背中/盛り上がる/階段の女生徒/夢の旅/衰える/ひそかな願い/意地悪な女


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佐野洋
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