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[ 短編集(分類不能) ]
幽霊屋敷
佐野洋 出版月: 1985年09月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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KADOKAWA
1985年09月

No.1 6点 人並由真 2025/01/07 01:26
(ネタバレなし)
 佐野洋の、男女間のアレコレを主題にしたワンテーマ短編集。全10本収録で、たぶん角川文庫オリジナルのセレクトだろう。全部が初出かどうかは知らないが。

 以下、各編のメモ&寸評。

「幽霊屋敷」……海外に取材旅行に出かけたはずの作家。だがそのパスポートが作家の妻のもとに送られてきた。そこから事件はさらに予期せぬ方向に流れ出す。おそろしくとっちらかった話で、わずか60ページの作品ながらストーリーの概要を語るだけでも難しい。

「影の男」……死んだはずの夫がまだ生きてるのでは? と不審を抱く妻。ちょっと長編『砂の階段』を思わせる設定だが、中味は当然、別もの。

「腰かけ結婚」……全体が書簡のやり取りで構成される短編。途中までは本文庫中でも、最高に面白いが後半、作者が途中で興味を失ったような作りなのが惜しい。

「優れた血」……不倫した要職サラリーマンが巻き込まれた殺人事件。最後のオチはオーソドックスだが、妙に心に響く佳作。

「カラスなぜ鳴くの」……子連れの男と再婚しようとする女。女は幼稚園の先生で、実は相手の男は教え子の園児の父だった。殺人事件もからむが、最後のオチはほとんど普通小説。これでいいのか?

「白い檻」……従順で貞淑だが、性的に不感症な妻を娶った男。そんな夫婦と男の愛人たちとの奇妙な物語。ヘンタイ度は最高で、とにかく笑える。個人的には本書中最高の爆笑エロミステリであった。

「夜の抵抗」……また幼稚園にからむヒロインネタ。結構トリッキィな仕掛けが用意されていて、純粋にミステリとしてならこれは本書内でも上位の方か・

「回転扉」……回転扉を大道具に、カトリーヌ・ドヌーブの映画「昼顔」みたいな主題の人妻売春もの。狙いはわかるが、作中の某人物の心理の方は理解できるようなそうでないような。

「仮面の客」……人妻売春組織の客として現れた、仮面で顔を隠した男。思い付きのアイデアだろうが、それなりに。

「狐の牙」……<虎の威を借りる狐>と揶揄される、社長の娘婿のヤンエグの不倫の決着は……? ミステリ味は薄かったかな。なんか小咄風。

 読んでる間はそこそこ面白かったが、終わりの方になるともう、先に読んだ初めの(巻頭に近い)方の内容を半ば忘れてしまったりする。
 ベストは「腰かけ結婚」か「白い檻」か。あ、あくまで個人の好みだ(笑)。


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