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[ 本格/新本格 ]
二人で殺人を
佐野洋 出版月: 1975年05月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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KADOKAWA
1975年05月

No.1 7点 人並由真 2021/03/23 05:18
(ネタバレなし)
「私」こと「中央日報」の記者で28歳の瀬能公(せの こう)は肺病で長期休職し、静養中。時間を持て余した彼は、同じ年のガールフレンドで弁護士の我妹(わぎも)糸子のもとを5年ぶりに訪ねる。最近の糸子は美人の若手弁護士として活躍し、マスコミ出演の機会も多く「女流メイスン」の勇名を馳せていた。瀬能は、ミステリファンで文筆活動の心得もある糸子に、推理小説の新人賞に応募する合作の話を持ちかける。乗り気の糸子だが、そんな二人の前に糸子とその父が営む「我妹弁護士事務所」を頼る依頼人が来訪。これは小説のネタになると見やった糸子は、勝手に瀬能を当事務所に嘱託の私立探偵だと依頼人に紹介。半ば強引に事件に介入させるが、やがて事態は一人の若い女性の服毒死(自殺? 殺人? 事故?)に至る。

 書籍の元版は、1960年に光文社のカッパ・ノベルスから刊行。
 評者は今回、角川文庫版で読了。

 主人公の探偵コンビの設定も、都内の一角で起こる怪死事件の謎&訳ありっぽい過去の経緯も、それぞれアメリカの50~60年代のライトパズラーを思わせる感触。

 事件の主舞台となる服飾研究室とフォトスタジオの主要人物のキャラクター造形がそろって平板なのはちょっとキツイが、佐野洋がそういうところにあまり力を入れる書き手ではないのは以前から良くわかっているので、そんなに気にならない。

 一方で小粋な昭和の謎解きミステリとしては、なかなかよく出来ている。事件の真実、隠されていた過去の秘密、ある種の偽装トリック、それに……と、中小のアイデアを闊達に組み合わせて、順々にカードを表返ししていく手際が鮮やかだ。
(ただし真犯人については、前述のキャラクターの書き分けがあまり冴えないので、本当ならもっと演出できた意外性がもうひとつ映えなかった、と思う。)

 主人公ペア、瀬能と糸子の友人以上恋人未満の関係(よりはやや、異性の友人同士寄り)はなかなか心地よい。読後にTwitterなどで感想を探ると、シリーズキャラクターに昇格したといっているような声もあるが、作者の名前とこのキャラクターたちの名前でweb検索しても特に続編らしいものは見つからなかった。やはりこれ一冊でお役御免になったのだろうか。かなりもったいない。
 佐野洋はその辺の俺ルール(連作短編でのシリーズものは一冊まで。長編ではシリーズキャラクターは使わない)に関しては、本っ当に頑固なヒトだったね(苦笑)。


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佐野洋
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