皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格/新本格 ] オルゴーリェンヌ 少年検閲官シリーズ |
|||
---|---|---|---|
北山猛邦 | 出版月: 2014年11月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 5件 |
東京創元社 2014年11月 |
東京創元社 2022年04月 |
No.5 | 8点 | 青い車 | 2017/01/06 22:14 |
---|---|---|---|
シリーズ2作目にして世界観が決定的に完成されている感がありますね。今回はオルゴールをモチーフにしたファンタジー風味が効いています。
ミステリー的にもなかなかの出来です。特に、三つの殺人それぞれに工夫を凝らした物理トリックを用意しているあたりに、作者がデビュー時から貫いてきた拘りが読み取れます。三番目の殺人の成功率にはやや疑問もありますが、そこも許容範囲内です(作品世界から言って多少のラフさもマッチしているのかもしれません)。 意外な犯人と切なさの残る幕引きまで印象的で、北山猛邦の新たな代表作と言えると思います。 |
No.4 | 4点 | HORNET | 2016/04/16 10:48 |
---|---|---|---|
このシリーズの前作を読んでおらず、設定に慣れていないためか、非常に読みづらかった。特殊な世界設定によるミステリ自体には基本的に抵抗感はないのだが、なぜか本作品は頭の中でその世界を描きにくかった。
各事件のトリックも突発性や偶発性が多い気がしたり、アクロバティックな仕掛けがぴんと来なかったりした。登場人物のキャラクターも揺れが大きく、汲み取りきれなかった感があるし、謎めいた要素や意味深な要素が不要にちりばめられている感じもした。何より、この世界設定に慣れていないからか、動機などの心情面があまり理解できず、全体的に次第と読むのが億劫になってしまった。 |
No.3 | 8点 | mozart | 2015/11/27 19:12 |
---|---|---|---|
前作「少年検閲官」ではその世界観にちょっとなじめなかったせいか、余り楽しめなかったけれど、本作はハウダニット、フーダニットとも著者の面目躍如といったところで、文句なく楽しめました。もう一度前作を読み返してみようと思います。 |
No.2 | 7点 | kanamori | 2014/12/14 15:30 |
---|---|---|---|
将来のミステリ作家を目指し、書物が禁止された異国を旅する英国人少年クリスは、検閲官に追われる少女ユユと出会う。突如現れた少年検閲官エノとともに、オルゴール作り職人が住む海に囲まれた洋館を訪れることになるが、そこで3人を待っていたのは不可解な連続殺人だった---------。
「少年検閲官」シリーズの第2弾。海面上昇による世界の終末感が漂い、”ミステリ”をはじめあらゆる書物が焚書の対象となっているという異世界を舞台にした幻想的な本格ミステリです。 ミステリの諸要素”ガジェット”を宝石状の結晶にして隠すとか、少女の体をオルゴールにする”少女自鳴琴”(オルゴーリェンヌ)といったファンタジー要素が出てきますが、骨格はガチのクローズドサークルもの本格編で、作者お得意のアレ系トリックが連打されます。3つ目の密室殺人のトリックにちょっと疑問点があるものの、「黒死館」や「本陣」を連想させる趣向はなかなか面白かった。 もう一人の少年検閲官や、ある人物を交えた多重推理・多重解決の末に、明かされる真相はかなり意外性があり、哀切感と余韻が残るラストもいい感じで、傑作と評価したい。 |
No.1 | 8点 | アイス・コーヒー | 2014/11/30 14:33 |
---|---|---|---|
海面上昇によって本土とは切り離され、孤立した土地・海墟。オルゴール職人たちが住むカリヨン邸はその一つに聳え立っていた…。
書物が禁止され焼却することを義務付けられた世界で、ミステリを追い求める少年・クリスとミステリを排除する少年検閲官のエノたちが新たな事件に出会う待望の〈少年検閲官〉シリーズ第二作。 そろそろ出るんじゃないか、と云われ続けて七年間。ようやく「少年検閲官」の新刊が発売された。約380ページ、二段組みの大作になっていて、どうやら「ミステリ・フロンティア史上最厚」らしい。 冒頭の「月光の渚で君を」から北山節全開で感動した。流石に何年もの間熟成されただけはある。また今回は、前作に引き続き登場のクリス、エノの二人に加えてカリヨン邸から逃げ出したという白髪の少女・ユユが登場する。この三人がまた可愛らしく実によく描かれているのだ。 勿論物理トリックも荒ぶる。「書物が駆逐されていく」という世界観をいかしつつ、前作以上にとんでもないトリックが使われている。バカミス的ともいえるほどの豪快な技だが、実に鮮やか。相変わらず詰めが甘いのが難点となっているものの、致命的な問題はない。 「ミステリ」それ自体というシリーズ全体のテーマと、オルゴールというテーマを物語的にもトリック的にも見事に利用して独自の世界観を作り上げる手腕はさすがというべきか。 結末の切なさがまた魅力的。最初から最後まで北山作品の良さが横溢した一冊だった。今のところの最高傑作と言っても過言ではない。 しかし、次回作ではいよいよミステリ作家を目指すクリスと自分自身の役割に疑問を持つエノの正義がぶつかり合うのだろうか…。またしばらくクリスたちに会えないのは残念だが、読者は10年でも20年でも待つつもりです。 |