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[ 警察小説 ]
教場
教場シリーズ
長岡弘樹 出版月: 2013年06月 平均: 5.54点 書評数: 13件

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小学館
2013年06月

小学館
2015年12月

No.13 6点 zuso 2023/06/19 23:02
採用試験に合格した者が教育を受ける場所、警察学校。そこは人材育成の場であると同時に、適性のない人間を脱落させるふるいの役割も果たす。過酷な訓練で極度の緊張にさらされる生徒たちは、時に邪な考えをを抱いて行動する。それを冷静に見抜き、さりげなく問題を処理していくのが教官、風間公親だ。
規則罰則の厳しさ、教官たちの鬼っぷりに驚かされる一方、職務質問や水難救助といった特殊な授業内容に興味が湧く。ミステリとしてもある種のサバイバルものとしても読める。風間教官の心に残る名ゼリフも多い。

No.12 5点 いいちこ 2021/09/16 10:41
警察学校を舞台として設定した弊害かもしれないが、各編の事件が如何にも稚拙でスケールが小さく、登場人物の造形や作風との関係で違和感が強い。
また、作品全体を通じて教官のスーパーマンぶりが浮き彫りになるだけで、本作の主題・意図が見えてこない点でも高く評価することはできない。
一定の水準に達していることは事実だが、世評ほどの傑作と評価することはできず、5点の最下層

No.11 6点 パメル 2021/05/31 08:44
舞台は警察学校。初任科第98期短期課程に属する約40名はすでに巡査の身分を持つ社会人であり、年齢や志望動機もそれぞれ。だが、半年間にわたる過酷な訓練と、事あれば「連帯責任」を問われる理不尽のなかで、体力的人格的に適性のないものは容赦なく退校を求められる。
この作品は「クラス」でのサバイバルゲームを勝ち抜こうとする学生の様々な企てや思惑を、白髪隻眼の教官である風間公親が次々と砕き、退学させる者と見込みある者を選別していくという6編の連作短編集。
職務質問、検問、運転、水難救助などの実習で学生が問われるのは、まだ犯罪が起きていない日常の中に、犯罪の予兆を嗅ぎ取る力、風間の人の心理を突く頭脳戦に度肝を抜かれながら、学生たちがここを先途と張り合う人間ドラマが魅力的。
警官は「守るべきは社会の正義」と、それを押し立てて、時に刑法が引いた境界線を踏み越える。よしんばそれを越えても帰ってくるものはよし。越えられないものは駄目。風間の教育は、それを一人一人の体にしみとおらせることに尽きるといえようか。

No.10 6点 ぷちレコード 2020/08/19 20:13
年齢も動機も職歴もさまざまな学生たちが、挫折に直面しながら、ふるいにかけられる恐怖に抗っていく。
緊密な文体、極めて密度の濃いプロット。警察小説のジャンルにエポックを画する作品。

No.9 6点 2017/06/16 09:39
謎解き担当は、何でもお見通しの警察学校教官・風間。
凄い観察眼と洞察力です。だからそれに合うよう、伏線とその回収もお見事です。
「全てが伏線」という煽りも大げさではありません。
でも、こんな人間がそばにいたら緊張で喉がカラカラになるでしょう。小説の中だから笑っていられますが(笑えるような小説ではないが)、現実社会にはとても馴染まない存在です。

一応解決を見るも消化不良気味、と第1話読了時にそう思いながら次の話に進むと途中で前の話の謎解き解説がある。全話そんな調子です。そういった、ちょっと変わった連作短編集です。こんな構成なので、なかなか1話ごとに休憩はできません。
短編ごとに視点人物が入れ替わっていくから池井戸短編にも似た感があり、既読の「傍聞き」などの著者短編とは少し趣が違うようです。いずれにせよ、とても魅力的ではあります。

実際にはさわやかな描写もあるのに、陰湿感や暗鬱感、虚無感が目立ちすぎる点はマイナス要素です。

No.8 5点 パンやん 2016/08/06 08:15
警察学校を舞台にした連作短編集で、次へ次へとリンクして繋がって進む構成が面白いが、『傍聞き』同様、価値観が合わないというか、相性が悪いのか、どうも文章が読み辛く、危うく挫折しかけたのは確か。フィクションとはいえ、人間性より適性、スキル重視の警察官って怖っ。

No.7 6点 E-BANKER 2016/03/13 16:34
希望に燃え警察学校初任科第九十八期短期過程に入校した生徒たち。彼らを待ち受けていたのは、冷厳な白髪教官・風間公親だった!
2013年発表。その年の「週刊文春ミステリーベストテン」国内部門第一位に選ばれた作品。
短篇ミステリーの新たな旗手が贈る連作短篇集。

①「職質」=主人公は教師という職を捨て、警察学校へ入校した宮坂。恩義のある警察官の息子・平田を常に気にかける宮坂だったが、思わぬ事態に巻き込まれる。そして、風間との出会いが・・・
②「牢間」=主人公は楠本しのぶ。そう女性警官を目指す女性。優秀なデザイナーだった彼女が警官を目指すのには大きな理由があった・・・。その理由に大きく関係する一枚の写真の欺瞞について、風間がある指摘を・・・
③「蟻穴」=主人公は白バイ警官を志す男・鳥羽。隣り部屋の稲辺と心通わすようになった鳥羽だが、ある事件の際ついた一つの嘘が稲辺を苦しめることになる。それはやがて自身への報復という形で帰ってくることに・・・
④「調達」=主人公は元ボクサーの日下部。三十歳を超え警官を目指す彼にとっては、良い成績で卒業する必要に迫られていた。そんなさなか、年下の樫村とコンビで警備担当をすることになったが、あらぬ疑いをかけられることに・・・
⑤「異物」=主人公は四輪の運転技術が随一の男・由良。一匹狼をきどり、決して他人に与しない彼には過去に起因する苦手なものがあった。それが黄色いある「異物」・・・。ここでの風間はかなりいい人。
⑥「背水」=主人公は本作で唯一冒頭から登場していた生徒・都築。生徒総代を目指す彼に突然訪れた体調の変化。卒業文集の委員になった彼の下には①~⑤の主人公たちの文章が集まってきた。それを読んだ風間が放つ言葉に・・・

以上6編。
「警察学校」というのは意表をついた舞台。
世間から隔絶されたある種異様な世界と、そこが似つかわしい異様な人物・風間。
警官を目指す若者たちの屈折した心理と、それを元に巻き起こる事件・・・

やはり新たな短編の名手という冠に偽りはなし。
確かに旨い。でも、何か足りない気がするのは私だけか・・・
それが何かはよく分からないのだけど、横山秀夫との比較ではやはり一枚も二枚も劣る、というのが感想。(まぁ当然かもしれないが)
好評を受けてパートⅡが出版されたとのことで、とりあえず続編は手に取るだろうな・・・
(他の方も書いてたけど、確かに「ジョーカー・ゲーム」シリーズと雰囲気が何となく似ている感はする)

No.6 7点 itokin 2015/11/20 15:47
連作短編集とは知らずに読みにかかったのだが最初の20ページ位で氏の力量の高さが分かった。登場人物のキャラ、陰湿さと、誇張が目立つ表現に違和感を感じたが話はそれぞれ面白い。それにしても、本当に警察学校はこれほど厳しく競争が激しいのかな。

No.5 5点 kanamori 2014/05/02 20:42
警察学校を舞台にした連作ミステリということで、横山秀夫が得意とするような新機軸の警察小説をイメージしていましたが、特殊設定の学園ミステリといったほうが近い印象。

フィクションだから多少の誇張は許されるとはいえ、戦前の軍隊を思わせるような体罰や、警官を目指す生徒たちがかなり屈折した人物だったりで、リアリティを欠いているため、初めはこの小説の世界に入り込めなかった。ミステリとしても、最初に謎を提示する形ではなく、何が謎なのかも不明なまま物語が進んでいくものばかりなので、取っつきにくいという側面もある。
それでも、話が進むにつれ陰湿さが薄れ、風間教官から受けるイメージも変わってきた。最終話の「背水」はミステリ的にも面白い仕掛けで、エピローグもうまく締めていると思う。
ただ、この作品が昨年の「このミス」2位に相応しいかと問われて首肯するのは難しい。

No.4 6点 アイス・コーヒー 2013/12/18 15:31
警察学校にやってきた白髪の風間はクラスの新しい教官だった。風間と警察学校の生徒たちの出来事を描いた連作短編集。

新ジャンル・警察学校小説の決定版として書店に並んだ本作だが、最初の方は少しワンパターンかな、と思って読んだ。警察ともあまり関係ないように思われた。しかし、途中から勢いに乗ってきて、最後の背水あたりは結構面白かった。一つ一つの話でちゃんと伏線を回収し、読みやすいミステリ。
警察の組織の一員でありながら、まだ警察官ではない警察学校生。彼らが社会で働くまでの苦悩を描く異色の構成で、中々内容の焦点が定まらない。ジャンルとしてはまだ開拓の余地がありそうなので、著者が次回作でどれくらい進化できるかに期待。

No.3 5点 HORNET 2013/11/11 19:26
 数年前に読んだ「傍聞き」がとても印象に残っていたので期待して読んだ。警察学校を舞台としたシリーズ短編。さまざまな思惑が交錯する警察学校生同士の関わり、駆け引き。その中で一喜一憂し、生き残りのために格闘する学校生たちだが、最後にそのすべてを見透かしていた風間教官に気づかされる―。
 こうした設定やシリーズ短編集という形が、柳広司の「ジョーカーゲーム」とイメージが重なる。だから知らず知らずのうちに比較してしまう。たぶん人間としてはこっちの風間教官のほうが好き。でも、突き抜けた超人ぶりや、舌を巻く仕掛けという点ではもう少しという印象だった。

No.2 4点 まさむね 2013/10/18 20:46
 個人的には,「短編の新名手」と評価している作家の連作短編集。舞台は警察学校です。
 個々の話には確かに巧さも見えるのですが,全体としては,現実感が希薄すぎるからなのか,何ともぼやけた印象。特に心にも響かず。警察学校内でこんな問題ばかり起きるってどうよ?あり得ないよね…と思いつつ,心の片隅で不安を感じながら読了した次第です。
 ちょっとハードルを上げすぎて読んじゃったのかなぁ?私としては,この作者の純粋な短編の方が好みですね。結構辛目かもしれませんが,この点数で。

No.1 5点 haruka 2013/08/06 14:32
警察学校で起きる様々な事件を教官の風間が解決していく連作短編。「傍聞き」同様、小説としての完成度は高いと思うのだが、面白いかというと微妙。教官の風間は完璧すぎるし、いくら警察学校という特殊な世界とはいえ、生徒たちが屈折しすぎていて、感情移入しづらい。


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