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[ 警察小説 ]
マークスの山
合田刑事シリーズ
高村薫 出版月: 1993年03月 平均: 6.13点 書評数: 38件

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早川書房
1993年03月

講談社
2003年01月

講談社
2003年01月

新潮社
2011年07月

新潮社
2011年07月

No.38 8点 斎藤警部 2026/01/13 00:25
「楽しいマークス! 人殺しのマークス! 明るいな、今日は!」

熱いな。 寒いな。 やっぱり熱いな。 冒頭からワクワクだ! 魅力的な殺人容疑者(毎晩一升瓶を空ける山岳労務者)の日常と勾留、取調べ。 そこから物語が歩き出す先は意外性の起伏に揉まれ、やがて警視庁捜査一課を中心とした警察・検察・××の沼へとたどり着く。 主役は一課七係の刑事合田。 犇めくケイサツ達も個性と魅力と台詞とにマミレている。

「後々先生ご自身のお立場が有利になるだろうという私どもの配慮だったつもりですが」

昭和クロージングサードから平成初頭へ掛けての、もどかしき犯罪ミッシング・リンク探求物語。 雪の南アルプスは “北岳” 周辺。 無関係な悲劇と悲劇とを結び付け、新たな惨劇の種子を仕込んだのは、あの××。
山中にて親子無理心中の生き残りとなった少年は、親戚の養子にもらわれ、その経営する豆腐屋で働き、生きるために心を病み、入院し、刑務所に入り、地を這う紆余曲折を経、看護師の大柄な女に際どく養われる形となる。
一方、都内数か所にて、淡い繋がりが検知される複数の殺人事件が発生。 そこには凶器の謎で引っ張る展開がある。 その奥には通念では考えられない特殊過ぎる恐喝の形態が垣間見える。 恐喝を受けているのは××関係の紳士サークルらしい。 捜査には上層部からの牽制が入る。

≪知ってるぞ、知ってるぞ、ずっと前から知ってるぞ≫

組織の黒い霧に抱きかかえられながら捜査はじりじりと進行し、終盤、或る人物への容赦無い追い込みと、やはり容赦無い返しから、それまでもどかしく遮られていた真相の洪水が堰を切って場を満たし始めた。
振り返れば、××の人物が思いのほか多かったのは驚きだ。
寡黙にバッサリした終結良し。 だがその後に、身を隠した大いなる考え落ちが、オープンな形で潜んだままでいる。 この凄みこそ、本作の見えないクライマックスではないだろうか。
いや、やはり目に見えるラストシーンに収められた巨大な哀しみこそが、一番のクライマックスだろうか。

鉱物を穿つ様な硬質の独特文体。 だが間歇的にだだ漏れとなる戯けに悪ノリの心も見える。
主役、裏主役ともに心の揺れがヴィヴィッドに血を通わせているのが良い。
捜査側の熱い人間関係やら組織間/内の戦いやらに読みどころの重きが置かれ過ぎのきらいはあるけれど、そこが面白いんだから仕方ありません。

大きく息を一つ吐いて、読了とします。

No.37 7点 SU 2025/07/12 16:33
昭和五十一年、南アルプスで起きた撲殺事件。そこで描かれた犯罪は、十六年後の東京を舞台に連続殺人事件として真の姿を見せる。マークスと名乗る謎の殺人者。その名に隠された意味な何か。
過去と現在が犯罪によって繋がり、そこに湧き立つ壮大なスケール。捜査一課の警部補、合田雄一郎の緻密な思考と地道な捜査が事件を紐解く様子が綿密に描かれる。その捜査の中で浮かび上がる警察組織の構造と、登場人物たちの魅力的な造形。
また本書の魅力は、警察小説としての面白さだけではない。警察組織の姿と対称的に描かれるマークスの捉えどころのない姿に隠された人間性が物語をより深いものにしている。単なるエンターテインメントに終わらない驚愕と人間の深い闇が露呈する結末は素晴らしい。

No.36 3点 雨兎耳須 2025/05/25 14:07
水沢の内面や警察組織についてはよく書けていると思ったが、肝心の事件や他の登場人物についての魅力が無かったため、全体的に退屈だった。

No.35 5点 文生 2024/09/22 09:28
犯人像や一枚岩ではない警察組織の描き方は臨場感があってよかったのですが、そうした描写に力点が置かれすぎていて、肝心の事件や捜査そのものにミステリ的な面白みをさほど感じられませんでした。大変な力作とは思うものの、自分の嗜好とは今一つかみ合わなかった作品です。

No.34 7点 ROM大臣 2024/09/03 13:47
昭和五十一年に北岳で起こった事件が十六年後、東京での連続殺人事件を呼んだ。狂気に支配された残虐な殺人鬼マークス。刑事の合田は、上層部の圧力を不審に思いながらも、マークスに近づいていった。
合田のみならず、個々の登場人物に濃密な背景と性格が与えられている。特に三年ごとに「暗い山」と「明るい山」が交互に精神に現れるという殺人者マークスと、彼を庇護する女性看護師の描写は圧巻。
もう一つの魅力は、功名争いや政治的圧力など、警察組織に巣くう暗部を徹底的に描いた点だ。焦り、嫉妬、奸計、怒りが得難い迫力を生んでいる。

No.33 5点 HORNET 2020/08/03 20:00
 著者の代表作であり、壮大な構成は素晴らしいとは思うが、ミステリとしては平均的な内容だと思う。それは平均的な水準で面白かったというよい意味でもある。
 ミステリとしては…としたのは、上下二冊を読んだラストに待っていた真相が、冒頭の事件の起こりを読んだ時点で予想した内容のとおりだったこと。経験ある登山者ならばとるはずのないルートで下山した最初の被害者、とるはずのルートで発見された白骨死体、とくれば大体予想はできてしまう。
 ただそれはそれとして、大学の山岳会OBを順に辿っていきながらの刑事捜査の過程自体は力があり、読み物として十分読み応えがあった。
 ラストはちょっとドラマ仕立てな感じがしてしまい、個人的にはあまり好きになれない終わり方だった。

No.32 5点 人並由真 2016/05/25 20:10
(ネタバレなし)
 少し前の、今年のゴールデンウイーク中に読んだ作品のひとつ。元版のハードカバー版は購入したまま、結局、新規改定された文庫版の方で読んだ。今回が初読であり、映画も観ていない。

 読む前の勝手な印象としては、強大な犯罪者VS個性豊かな刑事たち捜査チームの対決を主軸に描く警察小説かと思っていたが、これは微妙~相応に違った。小説の力点はもっと複数のポイントに分散し(警察内の組織論、過去の事件の真相と軌跡、事件関係者の複合的な相関など)、そのそれぞれが主張してくる。
 重厚感において読みごたえがあったのは間違いないが、終盤まで作者に振り回されて時間が経っていった、そんな感慨も生じる作品。

No.31 7点 ボンボン 2013/10/18 00:40
キャラクターが活き活きとしていてスピード感がある。独特の世界観。山の刺すような空気が強く印象に残った。なぜだか、自分も気力と体力の限り、働きづめに働きたいと思ってしまった。
ただ、いくつもの犯罪の一つ一つの結果が、捜査の盛り上がりの割りに、どうも肩透かしのような。

No.30 6点 りらっくま 2013/07/07 21:52
作品自体はミステリというジャンルではないけど、山岳部の
仲間が次々と殺されて、最後、弁護士と刑事との心理戦は
読み応えがあった。中井貴一主演の映画版も観たが、より楽し
めた。というより、小説を読んでから映画版を観たほうが
確実に面白いと思う。

No.29 9点 TON2 2012/11/04 20:58
私のとっては、最高に面白い作品でした。
警視庁の刑事たちが、チームを組みながらも人間の本性まるだしで事件の捜査を行う過程が、読みごたえがありました。

No.28 4点 蟷螂の斧 2011/08/19 10:29
文学的素養がない私には、「ドグラマグラ」(夢野久作氏)と同様、理解ができませんでした。では映画ならと思い、観ましたが二作品とも同じ結果でした。

No.27 7点 E-BANKER 2009/11/15 17:57
直木賞受賞作。
作者の代表作でしょう。
精神疾患を持つ犯人が起こす猟奇的殺人事件と、そもそもの背景である過去の南アルプスでの殺人事件・・・この2つがどのようにつながっているか、というのが本筋です。
ただ、それよりも主人公の合田刑事を含む警視庁の捜査員たちのセリフや動きが実に生き生きして、なるほど警察官というのはこういう人種なのかというのがよく理解できます。(どこまで本当か分かりませんが・・・)
トリックや凝ったプロットが出てくるという訳ではないですが、読み応えのある大作という評価で良いでしょう。
ただ、長い・・・

No.26 4点 いけお 2009/09/26 11:48
読みにくいと感じたが文章自体は好みの問題だと思う。
スケールは大きくおもしろそうなプロットだが、一つ一つの展開が論理的でなく最後まで夢中になれなかった。

No.25 6点 2008/11/26 17:08
個人的には、改行が少なく少々読み難い文体の作品だったが、思っていたほど悪い本じゃない。僕としてはミステリとしても満足できた。でも、人によって好き嫌いは分かれるだろうなぁ、という作品。

No.24 10点 touko 2008/09/10 18:45
ミステリー要素はあまりないですが、犯人像が面白く、警察内部の足の引っ張り合いや主人公の職業刑事としての意地など、面白く読めました。

この作家特有のセンチメンタリズムがいい方向に作用し、独善に陥らないだけの品格や1歩手前で踏みとどまる客観性もあり、情熱と哀惜が伝わってくるとてもいい作品です。

No.23 4点 yoshi 2008/07/03 20:10
力作だとは思いますが、ミステリとしての評価は低いかな。発想の飛躍がないので、この長さを読み通すのが苦行に近い。苦行の末に最後まで読んでもカタルシスがない。この人は純文学をやっていれば良かったのにと思う。

No.22 2点 sasami 2008/07/03 07:49
とにかく読みにくかった。
犯人が何も悪くない育ての親を殺したことの説明がなくてなんか納得いかなかったです。
この時点で自分の中で犯人は完全な悪者になったんですが、それでいて犯人をちょっとでも美化するようなラストとかなんか嫌だなって思いました。
読後感のものすごく悪い本でした。

No.21 9点 itokin 2008/05/03 16:08
高村作品に出会った最初の小説いろんな意味でショックをうけた。これと「レディージョーカー」は、もっとも好きな作品です。

No.20 3点 あびびび 2007/09/18 19:23
しんどかった。登場人物の中の刑事たちが最後まで区別がつかなかった。純文学のような表現が多々あり、自分のような凡人にはスラスラとはいかない。
自分がマークスの山を登っているようだった。

No.19 3点 ウォル 2007/07/08 00:33
個人個人の描写は引き込まれるものがありますがミステリーとしての驚きという点では0点ではないでしょうか・・・・。


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