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[ ハードボイルド ]
サマータイム・ブルース
ヴィク
サラ・パレツキー 出版月: 1985年06月 平均: 5.71点 書評数: 7件

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早川書房
1985年06月

早川書房
2010年08月

No.7 6点 E-BANKER 2024/12/05 14:10
アメリカが誇る女性私立探偵のひとり、と言っても過言ではない(?)ウオーショースキー(通称ヴィク)。
シリーズ第一作となる本作は、ハードボイルドを愛する者なら避けては通れない(かもしれない)。
1982年の発表。

~わたしの名はV・I・ウオーショースキー。シカゴに事務所を構えるプロの私立探偵だ。有力銀行の専務から、息子の姿を消したガールフレンドを探してほしいとの依頼を受ける。しかし、その息子はアパートで射殺されており、しかも依頼人自身も偽名を使ったらしい。さらに、わたしは暗黒街のボスから暴力を受け、脅迫された。背後に浮かぶ、大規模かつ巧妙な保険金詐欺・・・。空手の達人にして美貌の女探偵の初登場作品~

舞台はシカゴ、である。これまで、NY、LA、サンフランシスコなど様々な街がハードボイルドのなかの私立探偵が活躍する舞台となってきた。
個人的にはやっぱりLAが一番ハードボイルドの似合う街、という気がしているけど、シカゴもなかなか。
(日本だとどうしても「新宿」しか思い浮かばんが・・・)
全米第三の大都市である。本作で主人公のヴィクは、この大都市のなかを縦横無尽に走り回り、へとへとになりながら全力疾走する。作中で語られるとおり、元々は名門シカゴ大学を卒業し、弁護士となった才媛である。それがどう狂ったのか、貧乏暇なしを地でいく私立探偵稼業で生計を立てている。
ただ、やはり魅力的なキャラである。それは、もう、間違いない。美貌もさることながら、イタリア系移民で同じく逞しい女性だった亡き「母親」の影響を受けた彼女。
強いだけではなく、どこか刹那的で、助けてあげたくなる存在。そりゃーシリーズ化されるよなあー

で? 本筋は?
そうでした。うーん。いや、いいですよ。ヴィクが請け負ったのは、ハードボイルドの王道「人探し」。
探しているうちに、いやおうなく事件に巻き込まれてしまい、事件は当初の想像よりもどんどん大きくなってしまう。
事件の動機はいつだって「金」、そしていつだって「愛憎」。
敢えて苦言を呈するなら、暗黒街のボスなる人物。あまりに紋切型で、かなりチンケ(部下たちもまとめて)。
あくまで脇役の脇役だからいいけれど、そのあたりにも拘って欲しかったな。
事件の「カギ」となる保険金詐欺についても、カラクリは単純。でもまあそこはやむなしかな。
これなら続編も読みたくなる、ということは良かった。
(ラストの彼女の大立ち回り。映像的にも映えるね。前の書評といい、季節か感を無視したセレクトでスミマセン)

No.6 7点 小原庄助 2024/11/29 08:35
ウォーショースキーは、シカゴのサウェループに私立探偵事務所を構えている。そこにある晩、銀行の重役が訪ねてくる。シカゴ大学に通う息子の同級生で、同棲している恋人の姿が見えなくなったので、息子に内緒で捜し出して欲しいとの依頼である。とりあえず息子のアパートを訪れたウォーショースキーは、そこに息子の死体を発見するというのが発端である。
事件の進展で彼女は銀行頭取、国際労組委員長、暗黒街のボスらと正面切ってやり合うことになる。彼女は弁護士だったこともあり、年齢や経歴からしても社会経験を積んでおり、堂々と対決するのも頼もしい。依頼された人捜しから殺人事件に巻き込まれていくのは、これまでのハードボイルドや私立探偵小説ではお決まりのパターンである。
しかし本書ではシカゴという地域性を踏まえ、ローカルカラーを表現した的確な描写とともに、同時代的な社会問題を提起している。単なる娯楽性だけではく、女性探偵の眼で見た社会のさまざまな矛盾を抉り出している。それらが現代のインテリ女性であるウォーショースキーの生き方と、ミステリとしてうまくバランスが取れているところに、このシリーズの成功がある。

No.5 6点 レッドキング 2024/01/04 06:52
サラ・パレツキー処女作。薄汚れ私立探偵、皮肉たれ一人称、行方不明捜し依頼、殺人事件遭遇、怪しげな依頼者関係者と裏社会勢力、分かりやすーいミステリ、効果的にバイオレンス・・主役探偵とトビキリ情人の男女をチェンジした、絵に描いた様な、お手本ハードボイルドと思いきや、結末は如何にも米国好みハリウッド - ディズニー系ハッピーエンド。ヒロインの挑発、「おまえ、タタないから拳銃握ってんのよ」に激昂する殺し屋(^o^)。 女医・警部(補)はじめ「気のいい」保護者協力者に恵まれすぎで・・・ハードボイルドっちゅうのは、もっともっとハードでビターでダークでありたい・・・まあいいや、新年初採点なんで、点数大オマケ。

No.4 7点 クリスティ再読 2021/11/07 10:00
いいじゃん。いや評者前から読みたいと思ってたシリーズなんだけど、未読作家なので後回しにしていた。シリーズ自体全くの初読である。

事件自体は、社会派的な内容で、パズラー好きな読者がそもそも面白いと思うようなものではない。でも労組+損保+信託銀行というこの背景のシブさは、ちょっとデビュー作とは思えないくらいのもの。1982年出版で、当時まだあった学生運動の残り火と、既成労組の腐敗(いわゆるダラカンってやつ)の対比とか、明白に70年代的なネオ・ハードボイルドの流れを受け継いでいるのがわかる。評者ご贔屓なモーゼズ・ワインに近いポップなテイストも感じるんだよ。フェミだってさあ、やはり70年代の空気感からやはり育ってきたものだしね。

ふつうはイニシャルを使っているわ。弁護士として働きはじめんたんだけど、同僚や相手方の男性弁護士というのは、わたしのファースト・ネームを知らないときのほうが、横柄な態度に出ないものってことに気づいたの

これが実にV.I.ウォーショースキーのキャラを如実に示していると思う。

女はナメられる、それにムカツきながらも、それをカワす知恵を駆使して、オトコたちとワタりあうヒロイン像。しかも、ヴィクが女性差別にムカついているのを、直接描写ではなくて、チャンドラー風の警句にうまく昇華しているあたりが、「おお!」と膝を打たせるようなうまい「ハードボイルドの使い方」なんだ。フェミの声高さをハードボイルドに昇華したあたりで、リアルというよりも「ポップ」という方向に向かっているのが、この作品の良さなんだと思う。

だからかな....ヴィクのファンタジーの中だと、ピーター・ウィムジー卿が白馬の王子様なのが、微笑ましくも許せる(苦笑)。

No.3 5点 YMY 2020/02/26 20:46
移民が作り上げたシカゴという街の闇の部分が興味深く、70年代のアメリカにおける時事問題を反映しているのも面白い。
しかし、最も魅力的なのはヒロインのヴィク。行動もさることながら台詞がタフで、クールでしびれる。

No.2 5点 2016/11/11 22:30
ヴィクを空手の達人とするシリーズ作品についての文章を時たま見かけていたものの、そんな場面には今までお目にかかったこともないしなと不思議に思っていたのですが、この第1作を今回初めて読んで、なるほどと納得しました。ヴィクに手刀をくらった悪党が「カラテの達人だってことまでは聞いてなかったぜ」と言っているのです。つまりあくまで彼の主観なわけで、実際のところ、本作のアクション・シーンを読む限りでは、ヴィクには空手の心得もあるといった程度です。それなのに本作のカバーでの紹介文を始めとして、勝手に事実みたいに書かないでもらいたいですね。
ハヤカワ・ミステリ文庫の訳者あとがきでも、筋書きは複雑でないし、特に目新しい領域に踏み込んでもいないなんて書かれているように、真相は初めから見えていて、ひねりが全然ありません。しかしハードボイルド的には、ラスト・シーンもよかったですし、まあまあでしょうか。

No.1 4点 mini 2008/12/07 10:33
クリスマスの時期なのに季節外れの題名の書評で恐縮
読んだ時は真夏だったので(苦笑)
ハードボイルド作家は案外とインテリが多いが、パレツキーは女性作家団体の会長も務めたりと作家活動以外の分野でも中心人物で4Fの中でも功労者と言えるだろう
現代私立探偵ものを書くならこうだよな、っていうイメージ通りで、ものすごく面白いわけでもないが決してつまらなくもない
ちなみに江口寿史のカバー画も結構イメージ通り
文章は上手く個人的には文体だけならグラフトンよりパレツキーの方が好き
ただ主人公ヴィクを取り巻く人達を都合良く配置しているのがちょっと気になった


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平均:5.71 / 書評数:7