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[ ハードボイルド ]
バースデイ・ブルー
ヴィク
サラ・パレツキー 出版月: 1994年10月 平均: 6.50点 書評数: 2件

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早川書房
1994年10月

早川書房
1999年05月

No.2 6点 レッドキング 2025/04/28 23:01
ヴィクシリーズ第八弾。齢四十を目前にして、かつての女性解放運動・・後に言うフェミニズム(当時は「ウーマンリブ」)・・の仲間たちも、それぞれに社会的地位・役割を持ち、当初の「イデオロギー・理念」と、その後の「利害・転向」の狭間で、反動と偽善を生きざるを得なくなる・・かつて左翼だった男たち同様、後ろめたさと居直りを払拭できぬままに・・。「どうせ職業を持った女のあなた達は主婦の事なんかクズだと思ってるんでしょ」:悲痛の有力者妻の殺害を廻るWhoWhyダニットミステリ、かつ、二組の痛ましき母子・姉弟の行方不明を追うフェミニンハードボイルド。地下魔道サスペンスや爆発炎上アクションのオマケも付いて、面白かったんで、点数にもオマケ付けちゃう。

ミステリ根幹は、「裏金疑惑」(我が国でも話題の)を嗅ぎ付けた女の殺害と冤罪工作スリップネタ・・ま、クロフツレベル・・なんだが、面白いのは、もう一つのテーマ、「父親による幼娘への性的虐待論難」 vs 「でっちあげ架空物語批判」の応酬、終わりそうで終わらないフロイト主義の相互転倒、フェミニズム援護と糾弾に絡んだ決着できそうでできないテーマ。それにつけても、米国に屹立している(んだろう)おぞましいまでに堅牢な、父権男根主義・・「レディファースト」幻想や弱者保護仮象、ハードボイルド文化にも貫かれている・・マッチョ男支配体制の、どうしようもなさ。現大統領見ててもよーく分かる。(我が国にも我が国特有のドウショウモナサがあんだけどねぇ)

No.1 7点 2016/02/12 22:30
ヴィク・シリーズの長編第8作は、それまでの最長だった前作『ガーディアン・エンジェル』からさらに15%近くも長くなって、約660ページ、それも最近の活字が大きくなった文庫ではなく、1ページ19行の版でという長大さです。しかし、前作が長さに見合うだけの内容が感じられなかったのに対して、今回はなかなか充実した事件内容になっていて、社会福祉的な主題も読みごたえがあります。ただ、凶器が発見された時点で、それを殺人現場まで持ち運ぶことを考えると、ほとんど当然容疑対象から外されるだろうと思われる2人に、ヴィクも警察もこだわり続けているのだけは、ちょっと間抜けに思えますが。
例によっての巻頭謝辞の中であえて設定を1992年にしたことが述べられていて、その理由は何なのだろうと思っていたのですが、現実に起こった(読後にWEBで確認)大変な出来事をうまく取り入れて見せ場にしていました。


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