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[ 本格/新本格 ]
最後のあいさつ
阿津川辰海 出版月: 2025年08月 平均: 7.00点 書評数: 3件

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光文社
2025年08月

No.3 7点 まさむね 2025/12/28 22:58
 人気ドラマ「左右田警部補」のファイナルシーズン最終回直前、主演を務める雪宗衛の妻が密室状態の中で殺害される。密室の「中」にいた雪宗は、自供もあって逮捕され、最終回「最後のあいさつ」はお蔵入りに。しかしその後、雪宗は自ら推理を披露し、無罪を勝ち取る。30年後、新たな殺人事件が発生して…。
 現在と過去の事は勿論のこと、それらを取り囲み、つないでいく複数の謎も魅力的でグイグイ読まされました。作家・風見創のドキュメンタリー調での進行も良。精緻に組み立てられています。
 ちなみに、今年の映画と言えば「国宝」。役者の業というテーマは通底する部分があります。その描き方には個人的に思うところもあるのですが、力作であることは間違いなく、作者の新たな一面を見た気もしました。

No.2 6点 虫暮部 2025/12/19 16:07
 非常に独創的なプロットではないだろうか。先の見えない展開に急かされてグイグイ読み進んだ。
 ただ、最後で躓いた。
 犯罪事件の真相ではなくて、かの俳優の心の深層について。あと最終回の完パケに関する感想。それらが、ミステリとしての謎解きと同じ調子でロジカルに説明されてしまったのが、私にはどうも納得出来ない。
 そこは “説明” ではなくて、もっとはっきり “実感” させて欲しかった。ここの表現が足りなかったせいで、犯罪事件解明のカタルシスが物語の最後のページまで持続出来なかったのである。

No.1 8点 人並由真 2025/10/28 06:27
(ネタバレなし)
 1980年代終盤から90年代半ばにかけて放映された、国民的人気番組の刑事ドラマ『左右田警部補』。だがその最終シーズンである第7期は、誰にとっても思いもかけぬ形で終焉を迎えた。それから30年を経た2025年。番組に大きな関わりのあったシリアルキラー「流星4号」の復活を思わせるような殺人事件が発生した。新進ミステリ作家の「私」こと風見創(はじめ)は取材活動の上で、少年時代からの親友で今は記者の小田島一成の協力を受けながら、『左右田警部補』の元主演俳優・雪宗衛(ゆきむね まもる)本人と彼にからむ30年前のある事件の軌跡を追っていくが。

 ミステリテレビドラマ制作の業界もの、という側面もあり、同時にドキュメントノベルと映像、ジャンルは異なれど、創作や表現に勤しむ者たちの人間ドラマでもあり、そしてそういった大枠の中で、広義の密室殺人事件の謎が語られる。

 相応に具材が多い作品ではあるが、その割には登場人物はそんなに多くなく、リーダビリティもこの作者の作品らしく非常に高いのでスイスイ読める。
 かたや、本文一段組なれど全部で400ページの紙幅にはなかなかの量感はあり、途中でこれだけ読むのにカロリーを使った感があるのにまだ半分か、という気分も生じたが、250ページを過ぎたあたりから、ほぼイッキ読みであった。トータルで読了までに4時間ぐらいかな。

 (中略)の密室トリックは現実に出来るんだろうか? とも思ったが、作者が自信ありげに説得にきてるのでまあ可能なのでしょう。ビジュアルで観たいものである。
 一方で犯人の方は物語の構造と作者のミステリ趣味から何となく想像がつき、まんまと当たり。まあそこで終わり、の作品ではないけれどね。

 謎解きパズラーの軸を守る一方、キャラクタードラマを描きたい、という作者の欲目も満々で、その辺を雑駁ととるか小説的な厚みととるかで、作品の評価は変わるだろう。個人的には作者が意図的に蒼さをさらけだしたような部分も踏まえて、おおむね読み応えを感じた。
 まあヒロインの扱いとかに作為を感じるというamazonとかのレビューはわからんでもないが、その辺はヌカミソサービスでいいじゃないか。

 今年の国産ベスト3は微妙だけど、ベスト10には入ってほしい、そんな一冊。


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阿津川辰海
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