皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格/新本格 ] 毒入りコーヒー事件 |
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朝永理人 | 出版月: 2023年08月 | 平均: 6.71点 | 書評数: 7件 |
![]() 宝島社 2023年08月 |
No.7 | 5点 | 蟷螂の斧 | 2025/05/16 11:04 |
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(ネタバレあります)
「好みがわかれるシリーズ2」 Amでは4、5点が54%、1~3点が46%。星一つが17%(好みがわかれる、冗長、無理やりなどんでん返しなど)。本サイトは平均7点。この差は?とのことで拝読。 一言で言えば、嫌いなパターンのトリック。よって、いままでも同様なトリックはすべて低評価です。また、ラストの男と女の会話は読者を混乱させるものではありますが、ああ、読むの面倒くさいとの思い(笑)。まあ、5点献上は、二つの事件の謎自体が楽しめたので…。 |
No.6 | 7点 | 虫暮部 | 2025/05/09 14:17 |
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“推理の不備” を予め宣言して無駄にハードルを高めておいて、緻密な騙しでキチンと期待に応えてくれた。
綺麗に整い過ぎじゃないかと言う気もしたが、最後に気持悪いエピソードが飛び出したので良かった。 結果的に、金持ち(?)と再婚して家を乗っ取ってしまったように見えるけど、そういう話じゃないのね……。 |
No.5 | 7点 | メルカトル | 2025/04/22 22:09 |
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自室で毒入りコーヒーを飲んで自殺したとされている箕輪家長男の要。
遺書と書かれた便箋こそ見つかったものの、その中身は白紙だった。 十二年後、十三回忌に家族が集まった嵐の夜に、今度は父親の征一が死んだ。 傍らには毒が入ったと思しきコーヒーと白紙の遺書――要のときと同じ状況だった。 道路が冠水して医者や警察も来られないクローズドサークル下で、過去と現在の事件が重なり合う! Amazon内容紹介より。 単純そうな事件かなと思いましたが、意外とロジカルで良く出来た作品でした。同じような状況で時を経て起こる二つの事件は、どう関係してくるのか、自殺か他殺か、二人の迷い人の正体とは、探偵役は誰なのかなど様々な謎が解決編で見事に収斂します。畳み掛ける様な推理の連続で意外な事実が明らかになる過程は、スリリングで読み応えも十分です。 ただ、最後に交わされる男女の会話はやや勿体ぶっていて、読者に対して不親切な感が拭い切れませんでした。勿論それも作者の計算の上に成り立っているものなので、決して齟齬があるとかという訳ではありませんが。そういったエンディングも粋で良いんじゃないかという意見もありそうですが、どうせなら最後に全てを明かすのもサービスとしてアリだと個人的には思いました。 |
No.4 | 7点 | ミステリーオタク | 2025/03/04 21:55 |
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伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」に衝撃を受けてミステリを書き始めたという作者だが、まだ世に出回っている作品はあまり多くないようで自分も本作がこの作者の作品の初読みとなる。
終盤で明かされるメインを含めたいくつかのトリックはいずれも斬新とは言えないまでも十分意表を突くもので、サプライズの連打を楽しませてくれる。ロジックも悪くないし、よくできたミステリだと思う。しかし解決編に至るまでのストーリーにスリルやゾクゾク感が殆どないので眠気と戦いながら読んだ部分も少なくなかった。 この作者は短編集も出しているようなので次はそちらを読んでみたい。 |
No.3 | 7点 | まさむね | 2025/01/21 23:02 |
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これは面白かった。
「誰が毒を入れたのか」。登場人物が限られている中、その真相解明の過程が楽しかったですね。そして終盤の怒涛の絵解き?が素晴らしい。 「カップの底から真相が浮かび上がるとき、読者は『自分が何服も盛られていた』ことに気付くだろう」との、市川憂人氏の推薦文は、非常に的を射ています。手軽に読み進められる文量でもあるし、一読の価値はあると思います。個人的に、こういう作品は大好物だし、長く印象に残りそう。 |
No.2 | 7点 | 人並由真 | 2023/09/19 06:26 |
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(ネタバレなし)
大手文具メーカー「ミノワ文具」の元社長・箕輪征一は、現在、地方で妻と長女とともに静かに暮らしていたが、そこに東京でOLをしている次女・まゆが帰参した。だが当日は大雨で、村の交通は閉ざされてゆき、まゆは途中で出会った難儀する二人の若い男性を、私の家で雨宿りすればいいとそのままいっしょに実家に連れ帰る。箕輪家の家族に歓待される青年たちだが、やがて一同の話題は十数年前の悲劇に及んでいく。 もしかしたら現代の国産ミステリシーンのなかでもかなり上の方の論理派じゃないかと、評者がひそかに思っている作者の新作。 そういう訳で今回も結構な歯応えのあるものを予期したが、しかしこの新作のお話そのものは存外に読みやすい。リーダビリティが高い。 設定はあらすじのように明確なクローズドサークルものなので、登場人物は少な目で、これでどうやってサプライズを演出するんだ……と、思っていたら、まんまと騙された! まあ人によっては……(以下略)。 ミステリとしての組み立てはかなり精緻で、もしかしたらこれまでの作者自身の作風すらギミックに用いたんじゃないか、と思ったりもする。 繰り返すけど、ページ数はそんなになくて読みやすい。しかし、ハマればハマると思う。興味ある人は、どっかでネタバレをされないうちに、さっさと読んだ方がいいです。 |
No.1 | 7点 | nukkam | 2023/08/09 07:51 |
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(ネタバレなしです) 「幽霊たちの不在証明」(2019年)を読んで個人的に注目していた作家の2023年発表の本格派推理小説です(本書の前に「観覧車は謎を乗せて」(2022年)というのが発表されているのも認識はしてますが、(本物の)幽霊が登場するという特殊設定にためらってまだ未読です)。アントニー・バークリーの「毒入りチョコレート事件」(1929年)を連想させるタイトルですがあまり共通する要素はありませんでした。宝島社文庫版で300ページに満たない分量は老読者の私にはありがたいです。登場人物数を絞っているのは「幽霊たちの不在証明」と比べて改善点ですがそれでいて豊富な謎解き伏線と推理の論理性は遜色ない出来栄えだし、どんでん返しの鮮やかさでは上回っています。最後は名前を出さずに男と女の会話で締めくくっていますが、そこにも技巧を感じさせます(誰でもすっきりできるように最後の最後で素性を明確にしてもよかったかも)。注文をつけるなら舞台の見取り図があればなあと贅沢を言いたくなりました。 |