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[ 本格 ]
被害者を捜せ!
別題『被害者を探せ』
パット・マガー 出版月: 1983年09月 平均: 6.08点 書評数: 12件

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早川書房
1983年09月

東京創元社
1984年02月

東京創元社
1984年02月

No.12 5点 三枝 2024/04/12 21:44
事件のあらましというより会社内の揉め事を延々と読まされます。
作中何度も「ゴシップ」という単語が出てきますが、まさに女性の噂話を聞かされているような気分でした。
被害者を導き出す推理はわりと好きなのですが、たった数ページの推理のために200ページ以上もこれを読まされるのはしんどかったです。

No.11 7点 人並由真 2020/09/13 15:00
(ネタバレなし)
 1944年のクリスマス。アリューシャン列島(アラスカからロシアに向けて伸びる列島)に駐屯するアメリカ海兵隊員たちは、娯楽、特に読むものに飢えていた。そんななかで「ぼく」ことピート・ロビンズは慰問品を梱包していた新聞紙の切れ端から、地元のワシントンでの勤務先の会社「家事改善協会」の総代表ポール・ステットソンが、会社の幹部の誰かを殺したという事件を知る。だが新聞記事の紙片は中途半端に破れ、誰が殺されたかが不明。ヒマを持て余すロビンズの仲間たち十数人は、ロビンズのワシントンでの数年間分の述懐を聞き、殺された可能性のある10人の幹部の中から<いったい誰が被害者なのか>を当てる、賭け金込みの推理勝負を始める。

 1946年のアメリカ作品で、作者マガーの処女長編。
 いまさら改めて紹介するまでもない、ミステリ史に輝く革新的な作品(厳密には類似の前例はあるようだが)。
 評者は大昔の少年時代に、中島河太郎の「推理小説の読み方」で本作の存在を初めて認知。そんなぶっとんだ趣向の作品があるのかと思って数年後に当時まだ絶版のポケミス(『被害者を探せ』)も入手したが、実際に読み終えたのはそれからウン十年後の今日になった(もちろん創元文庫版)。
 ……なんだ評者の場合、『七人のおば』(『怖るべき娘達』)と、ほとんど一緒の作品との付き合い方だな・笑(向こうは「推理小説の読み方」はカンケーないけど)。

 それで本作の中身ですが、まず開幕の描写がケッサク。活字に飢えて梱包用の詰め物の婦人用ドレスの広告まで読み漁る悲喜劇の描写は、味噌蔵に閉じ込められためぐろ・こうじ(北上次郎)か、無人島に放り出された読子・リードマンかという図でいきなり爆笑させられる。でもってあまりにも(うまいこと&作者と読者に都合よく)肝心のところだけ破れている新聞記事。その欠損具合のわざとらしさにも腹を抱えて大爆笑。いやこの序盤だけなら、本題の「被害者捜し」という趣向まで踏まえて10点あげたいぐらいであった。

 とはいえそのあとはさすがにちょっとクールダウン。いや一本の小説、そして企業内の人間模様ノベルとしては十分以上に面白く(特に中盤で、ドラマを弾ませるカンフル剤みたいな女丈夫、ロレッタ・ノックスおばさんが出てくる辺りとか)、ミステリとして要求される結構にもよく応えているのは本当によくわかる。だけど出だしのインパクトがあまりに強烈すぎて、一種の出オチ的な側面が生じてしまったのは仕方がない(汗)。

 あと創元文庫の解説では折原センセイは本作を「カットバック手法」と書いているけれど、ロビンズのワシントン時代の回想が始まってからは、最後の最後にアリューシャン列島での場面に戻るまで一本調子の描写だよね? こういうのってカットバック手法って言わないと思う。
 実は個人的にやってほしかったのは、このカットバック手法の技巧で、ロビンズの述懐の合間合間に2~3回ほど、アリューシャン列島側の短い叙述をつっこんで海兵隊員たちのキャラクターをそれぞれもうちょっと事前に見せておけば、最後の推理合戦の部分も「おお、あの海兵隊員は、あの被害者を推すのか!」的にクライマックスとして盛り上がったのではないか。その辺はぶっとんだ革命的な作品ながら、さすがにまだまだ習作っぽい処女作という印象もあった。あと、最後の決め手の手がかりは、もうどうしたって後年の日本人にはわからないよね。

 そんなこんな、さらにはわざと趣向を曖昧な感じにしたタイトルまで含めて、個人的にはやはり『七人のおば』(『怖るべき娘達』)の方がより完成度の高い作品という思いではある。
 ただし本作の奇想的なインパクトとそれを支える舞台設定の叙述のパワフルさは、ゆるぎのない普遍的なものだと今でも信じる。そしてラストのくすぐったい(どっかにラブコメティストを感じる)クロージングも素敵。素晴らしい作品なのは間違いはないでしょう。
 マガー初期作5本の、残りの未読の3冊も楽しみじゃ。

No.10 5点 mini 2016/07/27 10:30
明日28日に創元文庫からパット・マガー「四人の女」の新版が刊行される
”新訳版”じゃなくて”新版”だから、要するにカバーデザインを変更したとか活字がくっきり読み易くなりましたとかまぁその辺でしょ
新訳じゃないわけだししかも旧版がレアでもないし、こんな全然有難くもない新版を出すのが創元らしいや(笑)、と思ったらAmazonでマガー作品としてはこれだけが中古含めて品切れだったんだねえ
知らなかったな、全作入手容易だと思ってた、ちなみに私は「四人の女」だけ未読なんだよね

初期、と言ってもマガ―は初期作しか翻訳が無いんだけど、の中で個人的に一番好きなのは「目撃者を捜せ」、ただし「目撃者を捜せ」は代表作とは言えない
私は最高傑作と代表作とははっきり区別する主義で、最高傑作は文字通りの意味だが、代表作とは必ずしも一番じゃなくてもいいから、それよりも作者の持ち味が存分に出ているかが重要ポイントだと思っている

そこでだ、マガーの代表作は?、そりゃ「被害者を捜せ」と「七人のおば」の2作でしょうね当然
「目撃者を捜せ」と「探偵を捜せ」はやはりちょっと異色だからね、異色作は代表作とは呼べないという原則が有るからね
例えばクリスティーだと、ポアロもマープルも登場しないノンシリーズの「そして誰も」を代表作だと思ったことが無い、こう言うとブーイングする人も居そうだけどさ、先に最高傑作と代表作とははっきり区別するって言ったでしょ
マガーの持ち味とは?、それはもう”淡々とした過去回想の語り”で間違いない、この作風が他の作家とは一味違う雰囲気を醸し出しているからだ
そして「被害者を捜せ」と「七人のおば」はまさにマガーらしさそのものである、代表作と呼ぶに相応しい
えっ!、それにしては採点が低いなですって、先に最高傑作と代表作とははっきり区別するって言ったでしょ、観点が全然違うんですよ
「被害者を捜せ」って”代表作”には相応しいんだけど、だから面白いかって言うと、あまり面白くなかったんだよなぁ
「七人のおば」が物語中心で真相解明場面は割とシンプルなのに対して、この「被害者を捜せ」は推理合戦が組み込まれているのがミソなんんだが、その推理合戦の部分がやたらつまらなくてさ
”推理”という要素を兎に角重最要視するタイプの読者には「被害者を捜せ」の方が受けが良いかも知れないが、私はそういうタイプの読者じゃないからねえ
私には「七人のおば」の方が面白かった

No.9 5点 yoshi 2016/04/07 14:46
「七人のおば」が面白かったので読んでみた。
「七人のおば」でも思ったが、登場人物の書き分けが上手く、
特に同性である女性の腹黒さを描くのが抜群に上手い。
最近の「イヤミス」のはしりと言っても良いんじゃないでしょうか。

だが謎解きはちょっと論理性・説得力に欠ける。
小説だからまあ探偵役の指摘が当たるわけだが、
ちょっと当てずっぽうに近いと感じた。

No.8 4点 斎藤警部 2015/10/29 23:43
「被害者が誰だったか」を追求するにしてもね、もしこれがいわゆる社会派流儀のストーリーだったらどんなにかスリルも哀感もあったろうかと惜しまれてね。もちろんマガーさんにそんな事は求めちゃいませんがね。「探偵を捜せ」が持っていたサスペンス性は無いし、ロジックの魅惑も物語の訴求力も、何と言ってもヒネリが無い! オラの村には電気が無え!  とは言え、古い本格好きなら自分の好みに合うかどうか試しに読んでみる価値はあるでしょう。

No.7 3点 HORNET 2015/04/07 21:31
 うまく言えないけど、題名からもっと違う話を想像していた。現場と離れた所で推理合戦をするという話とは思っていなかった。「当時は斬新」とかそういうことではなく、例えばバークリイの「毒入りチョコレート」などは今読んでも十分力があり面白い。結末も平易で、自分としては正直期待外れだった。

No.6 6点 ボナンザ 2014/12/08 14:44
被害者当てという新機軸を打ち立てたのは流石で肝心の内容も中々面白く出来ている。
ただ、最後の解決は若干強引で、それいったら誰でもよくね?と感じてしまうのが難点。

No.5 6点 蟷螂の斧 2013/08/02 15:21
構成はユニークであるのですが、それ以外、特筆すべきものはないような気がしました。犯人の特定については、物語の性質上仕方ないのですが、やはり証拠に基づく推理ではないということなので、若干物足りなさを感じてしました。

No.4 7点 isurrender 2011/06/17 23:27
貫井氏の『被害者は誰?』を先に読んでいたので、「被害者探し」という点では目新しさを感じなかった
心理に重点を置いた優れたトリックだと思うが、分量の割に、展開が少ないので中盤はちょっと退屈に感じてしまいましたね

No.3 7点 kanamori 2010/08/04 23:39
初期の作品では、いずれも一味違った趣向のミステリを書いている著者の、本書はデビュー作で、集団安楽椅子探偵ものの”被害者当て”ミステリ。
異国の地の海兵隊員たちが、母国で発生した殺人事件の新聞記事に欠けている被害者名を特定するため、主人公の回想をもとに推理合戦をする。ロジックを楽しむタイプのミステリではありませんが、ユニークな趣向が印象にのこる作品。

No.2 10点 nukkam 2009/01/22 10:23
(ネタバレなしです) 米国の女性作家パット・マガー(1917-1985)のデビュー作で犯人探しではなく被害者探しの謎解きを楽しむ異色の本格派推理小説です。このアイデア自体はレオ・ブルースの「死体のない事件」(1937年)が先行採用していますが、作品としての面白さは圧倒的に1946年発表の本書が上回ります。当時としては珍しいであろう企業ミステリー要素もあり、個性的な人物描写、犯人(最初から読者に知らされています)を取り巻く人間関係がだんだんおかしくなる展開のサスペンスが実に魅力的です。ゲーム感覚で謎解きに挑む探偵役の海兵隊員たちのユーモラスな会話もいい味出しています。

No.1 8点 こう 2008/04/24 01:14
この作品は主人公の回想を元に被害者を探す趣向で読み物としては最高でした。回想中に語られた犯人の性格から誰を殺したかを推理するスタイルでトリックもなく誰が犯行が可能だったかを推理するわけではないですがアイデア一本勝ちでとても面白いです。また非常に読みやすいです。七人のおばは更に傑作だと思います。


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