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戦国自衛隊
半村良 出版月: 1975年06月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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早川書房
1975年06月

角川書店
1979年07月

角川書店
2005年01月

早川書房
2018年06月

No.1 7点 2021/05/14 08:14
 アメリカ第七艦隊の一部も参加する全国規模演習のさなか、新潟・富山県境の境川河口付近で野営していた自衛隊東部方面隊所属の第十二師団後衛は、突如発生した時空震により補給隊の一部や装備ごと、約四百年前、戦国騒乱期の日本に飛ばされた。だがそこは、彼らの歴史とは微妙に入れ違った物語りを持つ異世界だった。
 第一師団から派遣された輸送隊指揮官・伊庭三尉は隊員たちの動揺を引き締め、車長の島田三曹や普通科隊の木村士長らと共に、現地の紛争には関わらずあくまで中立を保とうとするが、長尾平三景虎と名乗る武士を助けた事からやがて、本格的にこの時代に介入していく。
 「歴史は俺たちに何をさせようとしているのか・・・」
 「SFマガジン」1971年9・10月号掲載。仮想戦記ものの嚆矢となった中編で、1979年12月公開・千葉真一主演の角川映画や劇画家・田辺節雄による複数回のコミック化、更には2005年のリメイク映画版など、今迄幾度もメディア展開されている。著者の最高傑作ではないが、現在半村良の名は〈『戦国自衛隊』の作者〉とした方が通るだろう。卓抜なアイデアを創作世界に提供した、良くも悪くもエポックメイキングな作品と言える。
 当時の著者は〈このアイデアを先に発表しておかなくては〉との思いからダイジェスト的に結末を纏めたそうだが、それもあってか記述は全体にあっさりめ。ただし「近代兵器を過去の戦闘に用いればどれほどの事ができるのか?」という最大の醍醐味は、綿密な取材によりしっかりと押さえられている。この部分の確かさが、パイオニアたる本書が未だ風化しない理由だろう。
 北陸出身の半村らしく、物語では三十人程の自衛隊員たち《とき》衆 が、長尾景虎=上杉謙信と共闘しながら越後→信濃→東海→関東→近畿と、史実とは逆に南進する形で日本中央部を制圧していく。その過程で当然有名な〈川中島の戦い〉も行われることに。丸太を捩じ込んでトラック部隊を止める武田軍の戦法は、ベトコンゲリラを参考にしたものだろうか。田辺節雄のマンガ版ではまさに死闘といった感じだったが、原作での戦闘描写はこれもあっさりめ。この戦い前後から、近代兵器の備蓄その他が底を付き始める。シミュレーション物はおしなべてそうだが、帰趨の明らかとなる後半よりはやはり手探り状態の前半部分が面白い。
 墜落したジェットヘリコプターV107や消耗品の有線誘導ミサイルMATに代わり、統一の原動力となるのが経済の力。佐渡の鶴子金山から金鉱石を発掘、更に装甲車を走らせる為の道路建設工事が国土を潤し、黄金を凌ぐ圧倒的な富を生んでゆく。自衛隊員たる伊庭三尉の不戦の決意や東京への想いが、義将・謙信の評判や関東侵攻に繋がってゆくのも良い。簡潔ながら細部まで考え抜かれた作品で、採点は発表後の多大な影響力をプラスし7点ジャスト。


半村良
1998年12月
妖星伝(七)
妖星伝(六)
平均:6.00 / 書評数:1
妖星伝(五)
平均:10.00 / 書評数:1
1998年10月
妖星伝(四)
平均:9.00 / 書評数:1
妖星伝(三)
平均:8.00 / 書評数:1
1998年09月
妖星伝(二)
平均:7.00 / 書評数:1
妖星伝(一)
平均:9.00 / 書評数:1
1994年10月
フォックス・ウーマン
平均:4.00 / 書評数:1
1979年08月
都市の仮面
平均:5.00 / 書評数:1
1979年04月
英雄伝説
1977年07月
下町探偵局
平均:5.00 / 書評数:1
どぶどろ
1976年01月
女たちは泥棒
1975年06月
戦国自衛隊
平均:7.00 / 書評数:1
1975年01月
となりの宇宙人
楽園伝説
平均:7.00 / 書評数:1
夢の底から来た男
1974年01月
不可触領域
1973年02月
黄金伝説
平均:6.00 / 書評数:1
1973年01月
産霊山秘録
平均:7.00 / 書評数:2
1971年11月
石の血脈
平均:7.00 / 書評数:2