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[ SF/ファンタジー ]
産霊山秘録
半村良 出版月: 1973年01月 平均: 7.00点 書評数: 2件

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早川書房
1973年01月

早川書房
1975年01月

KADOKAWA
1981年01月

祥伝社
1992年05月

角川春樹事務所
1999年10月

集英社
2005年11月

No.2 7点 2021/02/19 13:41
 本能寺・関ヶ原・幕末そして戦後・・・日本史に記されたいくつもの動乱期。そこでは必ず謎の一族〈ヒ〉が暗躍したと伝えられる。
 念力移動(テレポーテーション)・遠隔精神感応(テレパシー)・・・・・・伊吹・依玉・御鏡の三種の神器を用い、人智を超えたその特殊能力を駆使して動き回る〈ヒ〉。そして今時は戦国、一族の長・随風は尾張の織田信長に天下を取らせるべく活動を開始、白銀の矢となって全国の忍びのところへ飛んだ。
 数百年にわたる〈ヒ〉一族の壮大な運命を描き、歴史の闇に新角度から切りこむ著者改心の長編伝奇SF。1973年度第一回泉鏡花文学賞受賞作。
 1973年に刊行された、『軍靴の響き』に続く半村良の第三長編。生誕100周年を記念して同年金沢市が制定した泉鏡花文学賞をアッサリと掻っ攫い、仕掛け人の五木寛之を瞠目させた作品。上の巻は永禄十一(1568)年、〈ヒの司〉たる山科言継卿が正倉院の御物を豪商たちに売り渡し〈ヒ〉一族暗躍の元手を拵える所から、寛永二十(1641)年、徳川の天下取りに力を貸した〈ヒ〉の長・随風=天海僧正がみまかり、三傑から戦国・安土桃山期に跳梁した第一~第三世代の活動が終わるまでで、神変ヒ一族/真説・本能寺/妖異関ヶ原/神州畸人境 の四話。
 下の巻は天保十(1839)年、江戸の地底で数奇な死を遂げた鼠小僧次郎吉の秘話から維新の英傑・坂本龍馬の回天の日々を経て、昭和二十(1945)年三月十日、大空襲のさなかの東京深川へ禁断の空ワタリ(未知の場所を念じてテレポートすること)した随風の末子・飛稚(とびわか)の物語までで、江戸地底城/幕末怪刀陣/時空四百歳/月面髑髏人 の四話。全八話で戦国後期から現代日本まで約四百年間にわたる、〈ヒ〉一族の壮大なクロニクルが描かれます。
 〈ヒ〉は日とも、卑、非ともいい、遠い昔皇室に民の安寧を委ねて隠れ住み、一朝皇統の命運がかかる時は、どこからともなくあらわれてその存続に力を尽すといわれる一族。人の祈りの凝った「白銀の矢」が集まる所、神のいます神籬=芯の山=産霊山を求めて流離う〈ヒ〉もうち続く戦乱に疲れ、天皇家以外に力を貸す事で徐々に変質していき、やがては伊賀・甲賀の忍びと変わらぬ存在に。
 この世から戦を無くそうといまだ産霊山を探し続ける〈ヒ〉の末裔もいますが、陽の鬼道衆ともいうべきヒの男たちの影には、「オシラサマ」と呼ばれ古来闇から闇へと葬られたヒの女たちの存在があり、彼らの歴史が決して輝かしいばかりでない事を窺わせます。中盤からは日ごと夜ごと砂を食んで生き、太陽から遠ざけられ地の底に白子の蛇に似た身をうごめかすだけのこの「オシラサマ」の登場が増えてくる。
 ストーリー的には両者を繋げ、後の『妖星伝』へと止揚する龍馬編の第六話「幕末怪刀陣」が頂点。ここまでの流れに比べると、〆の戦災編から現代編まではちょっと駆け足過ぎるかな。割と綺麗に纏めてますが、伝奇小説としては処女作『石の血脈』の方が遥かに荒削りかつ魅力的で、全体の採点はギリ7点。

No.1 7点 kanamori 2010/12/20 18:00
古代から日本の歴史の激動期に暗躍し、裏で歴史を動かしてきた<ヒの一族>について語られたSF伝奇小説。
荒唐無稽で壮大なホラ話。織田信長を中心とした戦国時代や、坂本龍馬の幕末を舞台とした章までの前半部は、謀略もの歴史ミステリとしても傑作。太平洋戦争以降は、若干テンションが落ちる印象は否めないが。
最後は、宇宙まで物語が展開して、後の大長編「妖星伝」に通じるところもありますが、月面に横たわるある人物という図は、「星を継ぐもの」を連想させました(笑)。


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半村良
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