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[ 本格 ]
プレード街の殺人
プリーストリー博士シリーズ
ジョン・ロード 出版月: 1951年01月 平均: 5.33点 書評数: 3件

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雄鶏社
1951年01月

早川書房
1956年01月

早川書房
1956年03月

No.3 6点 人並由真 2020/07/03 04:33
(ネタバレなし~途中まで~本レビューは後半ちょっと変則的になります。)

 大昔に購入したポケミス(奥付は「昭和31年11月30日 印刷発行」)で読了。
 あらすじは、先にkanamoriさんが書かれたレビューの冒頭のものがとても明快なので、今回は評者はパス。
 森下雨村の翻訳は古い言葉が続出ながら、ブッシュの『100%アリバイ』同様、存外にテンポがよくて読みやすい。さすが「新青年」&博文館の大ボス。

 犯人の正体は早々にバレバレで、21世紀にこれを読んで素でダマされる読者はまず絶対にいないと思うが、kanamoriさんがおっしゃっている通り、終盤に「怪人対名探偵」ティストが浮上してきて、妙なオモシロさになる。フィリップ・マクドナルドの『ゲスリン最後の事件』とかに近い敷居の低い面白さで、これはこれで楽しめた。





【以下・いささかネタバレ。そして……】

 本サイトでは先行の方のレビューの批判をしないというのがルールで、もちろん当方・評者もそれを遵守したいのだが、今回に関しては、決して批判ではないつもりで、先の◇・・さんのレビューに疑問を感じた。
 そこで今回、評者は以下の文で、あくまで客観的な事実をもとに、冷静な(決して批判ではない)お話をさせていただけると誠に幸いに思います。

 まず、◇・・さんはレビューのなかで

・この作品はミッシングリンクの傑作ではない
(そもそもミッシングリンクテーマのミステリとして成立していない)
・なぜならば「冒頭に裁判の場面があって、本章にはいると、
 それに出席した人が一人ずつ殺されていく。」
 ゆえに(被害者の関係性は)最初からわかっている

という主意のことを書かれている。

 実のところ、評者はこのご意見になんとなく違和感を覚えたので、メモをとりながら今回、ポケミス版を読んでみると

・物語の序盤、最初の被害者である青果商ジェームズ・トーヴィが殺されるまで、またはそれ以降も、裁判シーンはストーリーの中にまったく登場しない。
(過去のある刑事事件と、その判決が話題になるシーンは前半にある。)

・その上で連続殺人事件が進行し、ポケミス版のP66で、いったいなぜこれらの被害者は(殺人予告カードを送ってくるおそらくは同一犯によって)次々と殺されるのか? と、作中人物から疑問が投げかけられる(つまり、このタイミングで、ミッシングリンクテーマという本作の謎の主題が、読者に提示されている)。

・さらにポケミス版のP120で、中盤から登場した名探偵プリーストレイ博士によって、真相に繋がるある伏線が張られる。

・そして実際に被害者の関係性(ミッシングリンクの真相)が明かされるのは、本文全220ページ(ポケミス版)のうち、ストーリー全体の75%も進んだ166ページめで、このあとは真犯人と犯行の細部の解明、探偵と犯人との対決などのまとめの山場シーンとエピローグに費やされる。

……ということで、これでは十分に、ミッシングリンクテーマの謎解きミステリとして成立しているのではないだろうか? 少なくともポケミス版を読むかぎり。

 誠に恐縮ながら、◇・・さんにつきましては、改めまして、ご記憶、読書記録など、そして何よりの作品現物の再確認を、(決して批判ではなく)どうかお願いの次第(平伏!)。

 なにせ、ことが「ネタバレ」なので、万が一ご勘違いで作品の大ネタをバラしていたら(誠にもって恐縮ながら、現状の◇・・さんのレビューは、事前警告なしの盛大なネタバレになっていると思えます・汗)、本サイトの参加者、さらにはこのサイトにこの作品のレビューを見に来る、これから本作を読むミステリファンにとって、あまり望ましいこととは思えないので(……汗)。

 もちろん昭和26年刊行の「雄鶏みすてりーず」版、もしくは原書などに◇・・さんのおっしゃる冒頭の裁判のシーンなどがもしちゃんと存在して、◇・・さんがそちらをもとにレビュー内のご意見をされたというのなら、まったく話は変わってくるのですけれど(大汗)。

 重ねて誠に恐縮ながら、ご記憶、作品そのものの再確認を今一度願えますと幸甚に存じます。

【2020年7月7日追記】
 この件につきまして、本サイトの掲示板内の7月6日の「おっさん」様の御指摘で、事情が判明しました。翌7日の当方(人並由真)のレスとあわせてご参照ねがえますと幸いです。

No.2 4点 ◇・・ 2020/04/05 17:51
よくミッシングリンクものの傑作みたいなことを言うけど、それは間違っている。
冒頭に裁判の場面があって、本章にはいると、それに出席した人が一人ずつ殺されていく。どこにミッシングリンクがあるのかといっても何もない。最初から分かっている。

No.1 6点 kanamori 2016/08/09 18:52
ロンドンのプレード街で突如として発生した謎の連続殺人。被害者は、青果商、パン屋、詩人、酒屋など、何の繋がりもないように見えたが、番号が入ったカードが事前に送られていたという共通点があった。警察は状況証拠から煙草屋のカッパードックに目を付けるが、彼にも6番目のカードが届く-------。

プリーストリー博士(本書の表記は”プリーストレイ”)が探偵を務めるシリーズの一冊。本書は、70作以上あるシリーズのなかの最初期の作品(昭和28年に森下雨村が翻訳)で、昔から、ジョン・ロードの作品の中では、典型的な”ミッシングリンク”ものとしてタイトルだけは有名な長編です。
前後編の2部構成になっていて、煙草屋のカッパードックと隣近所に住む薬草家の二人を中心に、街で次々と発生する殺人事件が語られる前半部は、それなりに面白く読めました。全く見えてこない動機の謎に加え、警察監視下の密室状況の殺人というハウダニットの興味まで用意した”謎の提示”に関しては申し分ないです。
ところが、プリーストリー博士が登場する後半部になると、おやおやとなってしまう。探偵だけが知る情報によって、キモの部分がスルスルと解けてしまうのでは、読者が謎解きに参加する余地がありません。本格ミステリとして成立している要素も残りますが、作者の狙いの方向は、どちらかというと名探偵対犯人というスリラー部分にあったように思いますね。


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