皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格 ] The Paddington Mystery プリーストリー博士シリーズ |
|||
---|---|---|---|
ジョン・ロード | 出版月: 2018年08月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
Collins 2018年08月 |
Independently published 2021年01月 |
No.1 | 5点 | おっさん | 2011/07/14 12:45 |
---|---|---|---|
ちと忙しく、読書のはかどらぬ、今日このごろ。
あわただしい毎日のなかでは、日本語の短編集を1冊じっくり読むより、じつは平明な英語の長編を1冊読み切るほうが、楽だったりします。 ミスター教科書英語w のようなジョン・ロードは、そういうときの心強い友なんですが・・・ 霧の立ち込める冬の夜、酔っ払ってパディントン郊外に帰宅したハロルド・メリフィールドは、寝室でずぶ濡れの死体(見知らぬ年配の男)を発見し、仰天します。 検視の結果、死因は心臓マヒとわかり、殺人の疑いは消えますが――遺体の身元は判明しません。くだんの男が、なぜ外の堀を泳ぎわたり、メリフィールドの部屋へ窓を壊して侵入し、ベッドの上で死に果てたのかも謎のままです。 世間の好気の目にさらされているメリフィールドに救いの手を差し伸べ、事件の調査に乗り出したのが、大学を辞して悠々自適の日々をおくる、偉大なる数学者、ハロルドの父の友人・ランスロット・プリーストリー博士でした。 スリラー長編で作家生活をスタートさせたロードは、四作目にして天才型の名探偵を創造し、探偵作家として名乗りを上げました。1925年に発表された本書が、その転機となった作です。 謎の提示と複雑なプロットの構築はたくみですが(セイヤーズやクロフツを思わせる要素もあります)、いかんせん長い。 ロードの文章は、筆者と波長が合い、基本的にクイクイ読めるのですが、この作ではまだ言葉かずが多く、効率が悪いんですよね。 古風な大衆小説の側面(のちにプリーストリーの助手となるメリフィールドと、博士の娘エイプリルのロマンス)があるかと思うと、終盤の謎解きに小説全体の30パーセントを使ったりと、バランス配分も悪い。 <不自然な自然死>の真相も、後年の The Claverton Mystery などに比べたら、チョンボみたいなものです。 まあ、習作でしょう。 でも、オマケの楽しみとして、おそらく本書でしか読めない、のちのシリーズ・キャラクターのパーソナル・ヒストリーが描かれており、ロードに関心をもつ者なら、これは目を通さないわけにはいきません。 |