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[ ホラー ]
ぼぎわんが、来る
比嘉姉妹シリーズ
澤村伊智 出版月: 2015年10月 平均: 7.20点 書評数: 5件

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KADOKAWA / 角川書店
2015年10月

KADOKAWA
2018年02月

No.5 7点 まさむね 2022/12/03 21:56
 家族に強く勧められて読んでみたのですが、大正解でした。ズバリ面白い。他の方も述べられていますが、まずは章立てが絶妙です。「ぼぎわん」の怖さもさることながら、次第に真相(?)に迫っていく過程が良かった。深みもあります。
 日本ホラー小説大賞受賞作で、選考委員(綾辻行人・宮部みゆき・貴志祐介)全員が絶賛したとのこと。デビュー作でこのレベルは、素晴らしいと思いますね。家族の評によれば、シリーズ続編はさらに良作とのこと。続編も読むことになりそうです。

No.4 6点 メルカトル 2020/12/02 23:05
幸せな新婚生活をおくっていた田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。取り次いだ後輩の伝言に戦慄する。それは生誕を目前にした娘・知紗の名前であった。原因不明の噛み傷を負った後輩は、入院先で憔悴してゆく。その後も秀樹の周囲に不審な電話やメールが届く。一連の怪異は、今は亡き祖父が恐れていた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのか?愛する家族を守るため秀樹は伝手をたどり、比嘉真琴という女性霊媒師に出会う。真琴は田原家に通いはじめるが、迫り来る存在が極めて凶暴なものだと知る。はたして“ぼぎわん”の魔の手から、逃れることはできるのか…。第22回日本ホラー小説大賞大賞受賞作。
『BOOK』データベースより。

王道を往くホラーですね。一章ごとに語り手が変わるプロットはなかなか巧緻で、思わず引き込まれます。しかし、あまり怖くはないです、まあ個人の感想ですが。徐々に迫ってくる正体不明の怪物にどう対峙するのかが読みどころです、それと同時にその怪物が一体何に由来するのか、どこから来たのかが語られ物語が上手く組み立てられています。

田原家を魔の手から守ろうとする真琴と野崎が正に命懸けでぼぎわんに立ち向かう姿が描かれる二章は、一章とは物事の見方が逆転して構成の妙を見せつけます。この辺りは新人とは思えない手腕を発揮していると思います。
そして真打、同じ霊媒で真琴の姉である琴子の登場シーンには痺れます。その格好良さには惚れ惚れしますね。その後のぼぎわんと琴子、野崎の対決はファンタジーの様なアクションシーンがふんだんに盛り込まれており、物語のクライマックスを迎えます。しかし、その描写がやや物足りなかったのは残念です。もっと上手く盛り上げられたはず、この作者なら出来たはずでしょう。
蛇足ですが、大いに意外だったのが解説を千街晶之が書いている事です。ホラー作品の解説を千街が?と驚きましたが、『ずうのめ人形』がミステリ寄りの作品だったことが関係しているようです。

No.3 7点 パンやん 2019/07/19 13:21
日本ホラー小説大賞受賞作で、掴みとなる第一章がとても怖くて面白い。第三章でアクションエンタメに変わってしまうのは、評価の分かれ目であろうか。特筆すべきは第二章の今どきのイクメンの描写であり、その風潮に異をたてる小生は実に共感できるのでありまする。

No.2 8点 ボンボン 2018/06/24 16:04
こわいこわいこわいこわい。
第1章がもの凄く怖い。抜群の巧さに引き込まれる。第2章は、人間の裏表。これも別の意味で相当怖かった。第3章は、意外に現代的なエンタメに。章ごとに語り手が変わり、視点が移ることで、同じ事柄や人物を横からも後ろからも知ることになり、見えていなかった真相に近づいていく。
もちろん怖かったりグロかったりはするのだが、登場人物が皆、繊細に、複雑に、やわらかに描かれているので大変読みやすい。
ホラーとしても、サスペンス、ミステリー、そして人間ドラマとしても最高だ。
「ぼぎわん」に込められたものが濃い。

No.1 8点 HORNET 2017/02/05 15:58
 第22回日本ホラー小説大賞受賞作。
 東京の製菓会社で働く新婚の田原秀樹のところに、会社の後輩が訪問者の取り次ぎに来る。後輩が話す伝言には誰も知らないはずの、生まれてくる娘の名前が。慌てて向かうがそこには誰もおらず、かと思うと、急に後輩の腕から血が滴り出す・・・。その後入院し、憔悴しきって会社を辞めてしまう後輩。その後も次々に起きる不審な電話やメールに、秀樹は幼いころ祖父に聞かされた、「ぼぎわん」という化け物の話に思い至る。
 途方に暮れる秀樹は、幼馴染の大学教授の伝手で霊媒師・比嘉真琴と、オカルトライターの野崎を紹介してもらい、その力を借りて解決を図ろうとするが―

 第一章は上記の田原秀樹の視点で描かれるが、その後第二章では妻の香奈、三章はライター・野崎の視点で描かれる。視点人物の入れ替わりにより、見えていなかった事実や心理が明らかにされ、ことの全貌・真実が次第にはっきりしてくる構成が秀逸。
 民俗学を下敷きにして「ぼぎわん」という名の由来や伝承が描かれていることも面白く、ホラーでありながらも幾分かのリアリティを感じる作品になっている。
 まるで映画を見ているかのように臨場感を感じながら一気に読んでしまうが、決して安っぽい疾走感で引っ張っているのではなく、緻密に練られたプロットと人物描写で読ませる筆力があった。
 よかった。


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