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[ ホラー ]
怪談小説という名の小説怪談
澤村伊智 出版月: 2022年06月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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新潮社
2022年06月

No.1 6点 パメル 2024/09/01 19:51
深夜のドライブに同乗する男女が怪談話を披露し合う「高速怪談」は、語り終わった話が後になって、さらなる意味を露にしたりと目まぐるしいスピード感たっぷりの百物語。逃げ場の無い車内で徐々に不安に駆られていく描写がいい。
子育てをする夫婦が幽霊屋敷の存在に歪んだ思いを募らせる「笛を吹く家」は、いくつかの違和感ある描写が重苦しいまさかの真相。
大ヒットを記録したインディーズ系ホラー映画に関わった人間たちの辿る運命を多重な文体で綴った「苦々蛇の仮面」は、淡々とした無機質な怖さが増していく技巧派ぶりがそれぞれに堪能できる。
「こうとげい」は、新婚夫婦が旅先で遭遇する恐怖を緊迫感に満ちた逃走劇に仕立て上げたサスペンスホラー。ドロドロとした土着の恐怖を堪能できる。
学校の怪談と殺人鬼ホラーを組み合わせた「うらみせんせい」は、作者らしいどんでん返しにより、陰湿なホラーに仕上がっている。
「涸れ井戸の声」は、タイトルと同名の短編が登場する一編で、圧倒的に怖いらしいが誰もその存在を明らかに出来ない、いわゆる幻の小説を巡る不可思議な物語となっている。奇妙な怪談話の存在がいい味を出している。
「怪談怪談」は、子供たちの肝試し大会と著名な霊能者の行方を探る物語が並行して進みながら、怪談を語ることの意味に迫って作品集全体の幕を閉じる役割を果たす。怖いというより切ない気分になる。
怪談、ホラーの定番要素を様々な小説作法で再構築していく作者の力量に圧倒される一冊。


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澤村伊智
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