皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ SF/ファンタジー ] ファミリーランド |
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澤村伊智 | 出版月: 2019年07月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 2件 |
早川書房 2019年07月 |
KADOKAWA 2022年08月 |
No.2 | 5点 | パメル | 2023/09/16 06:59 |
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「コンピューターお義母さん」語り手の恵美は夫と息子の三人暮らし。義母は関西の老人ホームにいるが、自分のデバイスに様々なアプリやプログラムをダウンロードして息子家族の家と家電に同期させている。だから遠く離れていながら、娘の行動を把握しているのだ。日々の生活を細かくチェックされて恵美のストレスはたまっていく。テクノロジーは人間の価値観や習慣をどう変えるのか。二十一世紀になっても嫁姑の複雑な関係は変わらないし、強力な武器が手に入れば過激化するということなのだろう。本書には6つの短編が収録されているが、いずれも普遍的な家族問題が題材になっている。赤ん坊が誕生し「翼の折れた金魚」、大人になって伴侶を見つけ「マリッジ・サバイバー」、子供を育て「サヨナキが飛んだ日」、親を介護して「今夜宇宙船の見える丘に」、死を迎える「愛を語るより左記の通り執り行う」。一冊で人間の一生をカバーとしているところが秀逸。
中でも「翼の折れた金魚」には戦慄した。特殊な薬剤の投与によって金髪碧眼と高い知能を持つ計画出産児が当たり前になった時代。黒髪黒眼の無計画出産児は、デキオあるいはデキコと呼ばれ差別されている。小学校教師の森村が担任を務めるクラスにもデキオとデキコがいた。 妻と計画出産を進めている森村は、無計画出産児に対する偏見を隠している。ただ、子供に罪はないと分かっているので、音楽の才能を見出されたデキコを手助けしようとするが。物語の冒頭に登場する新種の金魚の見方がちょっとしたきっかけで激変したように、どんな属性の人間がマジョリティになるかは、時代や環境によって変わる。多数派は鈍感なまま生きられるが、その立場は絶対的なものではない。差別は誰にとっても他人事ではないと実感する一編。 |
No.1 | 5点 | HORNET | 2021/08/12 21:06 |
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すべて、情報技術が現在よりさらに進化し、老若男女すべてがタブレットでアプリを駆使するのが日常の、近未来を舞台にしたSF短編。
「コンピューターお義母さん」…アプリで嫁の行動を逐一監視し、あげくの果てには性生活まで把握する姑。最後は大団円と思いきや… 「翼の折れた金魚」…薬を使って計画出産をすることが「通常」として常識化され、自然妊娠・出産が「異常」として差別される世の中。 「マリッジ・サバイバー」…婚活成就後もサポートすると評判の婚活サイト。待っていたのは配偶者を徹頭徹尾監視するシステムと、「それが普通」という規範。 「サヨナキが飛んだ日」…家庭の医療ケアを全て行う「サヨナキ」を常備するのが常識となった世界。それに強い違和感と感じる母親と、受け入れている娘。 「今夜宇宙船の見える丘に」…介護する側の負担を考え、要介護者に非人道的とも思える処置が許された世界。 「愛を語るより左記のとおり執り行おう」…葬儀も全てヴァーチャルで行われることが常識となった世界。そこに「昔のやり方でやってくれ」と強硬に言う死期間近の老人が表れて… 各短編はそれぞれ短編として楽しむには十分の仕上がり。それより、各編のタイトルや、登場者の名称などで、特に一貫性もなく昭和~平成風俗が取り入れられているのが気になる。巻末の〈参考・引用 文献・資料リスト〉の反映先を探すことの方に気がいってしまった。 |