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ミステリの祭典

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シーマスターさんの登録情報
平均点:5.94点 書評数:278件

プロフィール| 書評

No.18 6点 片想い
東野圭吾
(2007/06/16 00:59登録)
性同一性障害・・・今でこそ殆どの人が「聞いたことはある」という不適応性疾患の1つだが、競艇選手のトピックなどで広く知れ渡る以前に、このテーマでこれ程の作品を書いた作者にはやはり脱帽するしかないだろう。

確かにこの障害に無縁な(99.9%以上の)読者にとっては全く理解不能な世界であり、ストーリーに入れ込めなくても止むを得ないと思う。

だが、この疾患に限らず今いろいろな障害を抱える人達の問題が少しずつクローズアップされるようになってきている中、障害者の想いが「片想い」であってはならない、という社会全体として育んでいくべき理解とバリアフリーなコンセプトを提起するという点においては、実に中身の濃い作品であると思う。


No.17 6点 魔球
東野圭吾
(2007/06/12 22:38登録)
何とも言えずやるせない話だが、無関係に見える2つの事件が繋がっていく展開は、この作者ならではのストーリーテリングが冴えを見せている。

全く個人的な印象だが、自分は昨年の夏に読んだので頭の中のビジュアルイメージが
主人公・・・・マー君(現楽天)
弟(勇樹)・・・・斉藤佑樹(早稲田)
になってしまった。
(更に関係ないけど早大の今のエースは須田というんだね)


No.16 5点 白馬山荘殺人事件
東野圭吾
(2007/06/11 22:25登録)
ツマラナくはないと思う。

ただ本作のメインである暗号解読は、それなりの素養を持った人には結構楽しめるものであろうことは想像に難くないが、我々凡人には少々高尚すぎるのではないだろうか。
密室トリックは特筆すべき程のものでもないかな。

自分が一番印象に残っているのは、始めの方での相方のちょっとしたサプライズ。


No.15 8点 法月綸太郎の功績
法月綸太郎
(2007/06/10 23:56登録)
この作者の短編集としては4作目になるのかな。

・「イコールYの悲劇」 本書の何年か前の書き下ろしアンソロジーからの作品。途中までは法月らしく「仮説と却下の繰り返し」あり、ゴリゴリしたロジックあり、だが詰めは飛躍気味。
・「都市伝説パズル」 これはうまい。自分などは始めのルーモアで震え上がってしまったが、それを逆手に取ったトリックは妙逸。こういうのをダラダラ長引かせずに一夜のアームチェアに纏めてくれるのも好感が持てる。怪談風のエピローグも程がいい。
・「ABCD包囲網」 これも以前のアンソロジーからの作品。実は何気なく買ったその本で本作を読み、「おっ」と思ったのが法月作品に手を出すきっかけとなった。(今思えば他が駄作ばかりだったかも)

この人の短編はコクがあるのにキレがある話が多く、手軽に楽しめてハズレも少ない。(『パズル崩壊』を除く)
そろそろ次作を期待したい。


No.14 6点 予知夢
東野圭吾
(2007/06/06 23:03登録)
ガリレオ第2弾。
前短編集よりオカルトチックなテイストがやや濃くなっている。

前2作は(例外的に?)難解な物理学を要さないミステリ。
・「夢想る」 小児期の記憶の正体を解明する話としては普通。
・「霊視る」 なかなかトリッキーな構成で面白い。「ガリ」の手がかりはちょっとオシャレかも。
以上の事件の真相究明に物理学者の助けが要るとは、警察無能すぎ。

後3作は再び物理地獄。
・「騒霊ぐ」 オカルト現象(ポルダーガイスト)を科学的に説明する典型的なバターン。 あの4人は犯罪者であるにしても一体どういう神経をしているのか。
・「絞殺る」 美しくも悲しい職人芸。
・「予知る」 叙述的なカラクリと工学トリックを併有。前者は面白いが、その設定に持ち込むためにちょっと無理がある感じ。後者には「ああそうですか」と言うしかない。

本書のタイトルの意味は、最終作の最後の2ページにあり・・・と言っていいだろう。


No.13 6点 探偵ガリレオ
東野圭吾
(2007/06/03 00:12登録)
いやはや・・・・・ごもっとも。

ミステリの醍醐味の1つは「この不思議な謎の真相は一体どうなっているのだろう?」というクエスチョンを抱きながら読み進み、最後に明快なアンサーが提示され「ああ、そうだったのか」と驚き、感心することにあるが、
本短編集のそれぞれの解答は全て、電気エネルギーだの超音波だのレーザーだの・・・で説明されるのだからタマったものではないよね。

だが本書はそんな苦言を呈しながらも(物理現象や理工トリックがあまり理解できなくても)そこそこ楽しめる作品群になっている。
本質的には人間臭い愛憎劇が主体である話が多いからであろう。


No.12 6点 犯人のいない殺人の夜
東野圭吾
(2007/06/02 00:55登録)
確かにトータルとしては上質な短編集と言えるだろう。

・「小さな故意の物語」 作者得意の学園もの。ミステリとしては○○の要素が大きすぎてスッキリしない。
・「闇の中の二人」 途中で大体見えてしまうが、こういうドロっとした話も東の真骨頂の1つ。
・「踊り子」 何とも言えず悲しい・・・
・「エンドレス・ナイト」 これは刑事がいい味出してる。
・「白い凶器」 既存のネタの組み合わせという感じ。
・「さよならコーチ」 トリックがまあまあな割にはインパクトに欠ける。 タイトル、雰囲気がどこか「世にも奇妙な物語」を連想させる。
・「犯人のいない殺人の夜」 折原一ばりの叙述ドンデン。凝り過ぎの気がしないでもない。

肩肘張らずに楽しめる佳作集でもあるが、読んだそばから忘れてしまいそうな話が多い印象も拭えない。     


No.11 4点 依頼人の娘
東野圭吾
(2007/05/31 00:08登録)
1つ1つの話はそれほど悪くはないが、今時(といっても10年以上前か)こんな子供の漫画みたいなキャラクター探偵は如何なものかと。

らしくないぞ、東野センセイ。


No.10 6点 宿命
東野圭吾
(2007/05/31 00:05登録)
事件が起きて、捜査や推理があって、犯人とトリックが解明される・・・・・という表面的な部分は「普通のミステリ」

この話の本質は主人公とライバル、元カノ達の生まれながらの運命、特に前2者の間に絶対的な「宿命」が潜んでいたところにあるが、表の事象との関連がちょっと薄すぎるかな。

伏線とも言える、彼らの過去のストーリー展開はこの作者らしい。


No.9 6点 殺人鬼2
綾辻行人
(2007/05/29 21:09登録)
ハッハッハッハ・・・

こういうのもたまにはいいんじゃない?
次はSAWⅢやテキサスチェーンソービギニングにも負けない描写を期待しています。


No.8 4点 レベル7
宮部みゆき
(2007/05/28 23:26登録)
一応、サスペンスチックな展開があり、ミステリ的なオチもあると言っていいと思うが、
推理小説を読み慣れた読者がドキドキワクワクしたり、アッと驚いたりするとは、とても思えない。(確かに初心者にはオススメかも)

個人的に一番シラケたのは、現実には千人に一人もいないような正義感の持ち主が(都合よく)3人も4人も登場してくれたこと。


No.7 6点 沈黙の教室
折原一
(2007/05/27 20:47登録)
悪くはないが・・・
折原作品の中でも評価が高い方なので期待しすぎてしまったか。

(結構ネタバレ)


そもそも「教室の沈黙(異様な雰囲気)」の説明が結局全くなされていない。恐怖新聞の前からのはずだし、出回ってからも本質的には変わっていない。
また、記憶喪失氏が真犯人とは無関係だった、偶然別個に殺人計画を立てていただけだった、というのもそこまでのストーリーを思えば興ざめ。
そして、真犯人も「そう言えば、そんなのがいたなあ」レベル。
さらに、ヤツ・・・脅迫、強姦、置石の犯人・・は最後の「脅かし」だけで許されていいのだろうか。

まあ、うるさいことは言わずに折原らしいジメジメした雰囲気を楽しめばいいのかもしれない。


No.6 6点 そして二人だけになった
森博嗣
(2007/05/26 21:35登録)
力作であることは認める。

だけど、これって結局、某作家Aの「某作品S」と「某作品N」の2つのネタを、1つのストーリーの中で立て続けに噛ませてみたっていう話ではないのかね。


No.5 6点 暗黒館の殺人
綾辻行人
(2007/05/25 21:40登録)
とにかく長いの一言!

ミステリとしてのトリックは「並」の感が否めないが、館シリーズを何とか纏め上げた労力には惜しみない賛辞を贈りたい。(なーんちゃって生意気すぎ)

最終章(エピローグ章)前の最後の一行は、恐らく十角館の「あの一行」に匹敵する衝撃を狙ったものと思われるが、館を読破してきた読者なら大方それまでに見抜いてしまったのではないかな。


No.4 8点 手紙
東野圭吾
(2007/05/23 22:15登録)
『手紙』

辛く苦しくやりきれない話だが、序章から引き込まれ止まらず一気に読了してしまった。

弟を想うあまり不覚にも人を殺めてしまった兄。
そして「殺人犯の弟」という生涯消すことのできない烙印のために「人生のチャンス」がことごとく逃げていく主人公・・・彼の苦悩と葛藤が、客観的には淡々と描かれているだけに重くジワっと応えてくる。


「兄貴、俺たちはどうして生まれてきたんだろうな・・・
 兄貴、俺たちでも幸せになれる日が来るんだろうか・・」
・・・・・・『イマジン』があまりにも切ない・・


No.3 6点 世界の終わり、あるいは始まり
歌野晶午
(2007/05/23 00:58登録)
これは評価が分かれるでしょう・・・・
(と思ったら、このサイトではそれほどでもないか)

前半、主人公が苦悩しながらじわじわと、どうしようもなく追い込まれていく様は生々しく、息苦しささえ覚えるほどである。

そして・・・・・・・・・・・・・・・・チェンジ

「そりゃないよ」と普通はまず感じるだろう。
だがそこまでの、子供の犯罪とそれが露呈していく過程や
「家族に殺人犯が出るとどうなるのか」の展開が実にリアルに実感できるストーリーになっていて一息に読めてしまい、決して悪い印象ではなかった。

後半は、「別バージョンをいくつかどうぞ」といったところか。

「小説って結末がどうであろうと読んでいる間入れ込めたなら、それはそれでいいんじゃないかな」と感じさせられた一作。


No.2 5点 放課後
東野圭吾
(2007/05/22 10:29登録)
これが東野の原点か・・・・・主人公のキャラに反して(学園ものであることを差し引いても)全体的に青臭さが感じられるのは先入観のためか。

二段構えの密室トリックは流石と言っていいと思う。

動機になった「現場」は、その時の描写が明確でないので、被害者達にどれ程の非があるのか分らないが、彼らからすれば「オマエが勝手に無防備のまま、そんなところでそんなことをしていたのに、何でオレ達が殺されなければならないんだ」という怨念の方が大きいだろうね。


No.1 9点 星降り山荘の殺人
倉知淳
(2007/05/22 10:01登録)
これほど遊び心タップリで最後にドンデンを味わわせてくれる作品も少ないだろう。
犯人の豹変ぶりも大笑いできる。

エンターテインメント性、痛快さにおいて申し分なし。

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