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ミステリの祭典

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Kingscorssさんの登録情報
平均点:6.42点 書評数:96件

プロフィール| 書評

No.76 8点 バスカヴィル家の犬
アーサー・コナン・ドイル
(2020/10/04 14:11登録)
ホームズシリーズ最高傑作と名高い本作を読了。

ミステリー的には少し薄味でしたが、世評に違わず面白かったです。先に他のホームズ作品を読んでいたので今作で著者が読者をのびっくりさせたい所は割とバレバレで全然驚きませんでしたが…

ホームズシリーズの短編はどれもテンポが良く、よみやすくて面白いのですが、長編はどれも180〜250ページぐらいで長編としてはかなり短いです。短編ベースの話を長くしているかのような作りなので、途中で中だるみする傾向があるように感じます。今作も途中に事件も謎も進行せずにテンポが悪いところがあったんですが、全体としてはとても面白く傑作だと思いました。

ただ、傑作と言ってもホームズ達のキャラクター性ありきで、ミステリーだけ見るとあまり点数的には高くないと思います。あくまでこのキャラクターありきの点数ということで。

個人的には長編の中では緋色の研究の方がホームズエピソードが満載な分好きなんですが、本作も負けず劣らず面白いのでホームズファンなら必読です!


No.75 8点 四つの署名
アーサー・コナン・ドイル
(2020/10/01 22:28登録)
いや、コレも皆さんの評価低いですが、キャラクターものとしてよく出来ていて面白かったです。ハヤカワ版で読了。

ミステリー部分はそんなに濃くないので、その辺を重視する方には物足りないかもですが、ホームズ登場作品として安定して質の高い出来だと思います。有名なホームズのあのシーンや、ワトスンのあのシーンとか、ファンには必読エピソード満載です。

ただ、難癖つけるならやはり最終章。犯人の独白がちょっと長すぎな気がします。あんまり興味もない話を長々話されても…って感じであの部分を短くうまくまとめてたら、作品自体がもっと良くなったんじゃないかと感じました。

ホームズ第二段のこの作品も一連のホームズ作品の中で重要な立ち位置なので必読でしょう!200ページもないのでサクッと読めます。


No.74 9点 緋色の研究
アーサー・コナン・ドイル
(2020/10/01 02:57登録)
えっ?なんか皆さんの評価低いですが、コレめちゃくちゃ面白かったですよ。(ハヤカワ文庫1983年版で読了)特に悪いところもないですし。

シャーロック・ホームズの第一作目というだけでも必読ですが、ホームズとワトスンが初めて会う所から、一緒にルームシェアする過程、ワトスンがホームズの事件解決譚を記録し始める経緯も含めて丁寧に書いてあり、とても興味深く拝読しました。

唯一、気分を害したのが犬のシーンです。まぁ、日本とは文化が違うし西洋では割と当たり前のなのでアレですが、かなり不快でした。

ちなみにハヤカワ版は翻訳もうまく、かなり読みやすくてキャラクターの描写もバッチリでした。ただ、気づいただけでも二箇所ほど誤植が…
P101(13列目) 一と月 → 一ヶ月
p166(5列目) 態 → 熊
いや、一ヶ月はともかく熊を間違えるのはちょっとドン引きでした。(どちらも念の為にちゃんと英語原文で確かめました。)

細かいところは置いといて、ミステリファンなら必読中の必読でしょう!長編といっても200ページぐらいで、どちらかといえば中編ですのでサクッと読めます!


No.73 8点 かがみの孤城
辻村深月
(2020/09/30 00:09登録)
あんまりミステリーっぽくないとは聞いていたが、面白いということで読了しました。

いや、面白かったです。完全に中高生&女性向け小説ですが、いい年した大人(男)が読んでも面白いと思いますし、涙腺が脆い人なら最後号泣すると思います。

前半が典型的なただのジュブナイルなので読むのが(個人的にジュブナイル苦手なので)辛かったですが、後半は引き込まれてグイグイ最後まで読めました。割と途中で最後までの展開が予想でき、まさにその予想通りの展開でベタのまま終わるんですが、まぁそれはそれで良い読後感でよかったです。

それにしても辻村さんのはどれも超読みやすいが、今回もリーダビリティーが高い。しかも細かいところまでかなりキチンと構成されていて歪がなく、最後まで整合性がとれててすばらしかったです。

ただ、聞いていた通りミステリー要素は薄いので、そこを期待してるとそこまでは面白くはないかもしれません。また、前半は全然展開が進まず、ただの中学生の愚痴とかトラウマを読んでるだけ(もちろん隠れた伏線はたくさんあるのだが)で心が締め付けられて辛くキツイですが、とにかく前半は我慢です。自分も後半に行くまではコレ本当に面白いのか?と自問自答しながら読んでました。ジュブナイル物は苦手なので。(;´∀`)

しかし、ファンタジージュブナイルものとしてまごうことなく一級品です。ミステリーに疲れた時読んでみるのはどうでしょうか?同作者のスロウハイツの神様が好きなら超オススメです。雰囲気や話の持ってき方とか全体的に感じが似てますので。前半ただただ心が締め付けられ続ける分、最後は開放されます。


No.72 2点 不可能楽園 〈蒼色館〉
倉阪鬼一郎
(2020/09/28 15:27登録)
単純に仕掛けを含めて、内容に全く面白いところがありませんでした。つまらない、嫌いとかではなくて、面白味を感じられる箇所が少しもなかったです。

前作『新世界崩壊』はバカミスとしてはかなりいいアイディアだったのですが、今回は何もかもが凡庸で、バカミス好きの自分でもいいところを探すのが難しい始末。

いつもの言葉遊びは個人的に好きではないんですが、その言葉遊びの仕掛けさえダメダメの出来。最後のオチ含めて何もかもも面白くなかったです。。。どうしたんでしょう。。。

言葉遊びの仕掛けのために内容は希薄になるは明白で、その言葉遊びまでダメとなるともう評価できるパートがなく、最低でもこういう言葉遊びは多大な労力をかけるわりにマンネリですし、そろそろやめたほうがいいんじゃないかなぁと思いました。その分、内容だけでバカミスとしての完成度を上げたほうがよっぽど面白い本かけるんじゃないかと思います。

初めて倉阪鬼一郎さんのバカミスを読んだ人ならもう少し点が上がるかもしれませんが、何作も読みこんでる読者には辛い点数になりそうです。


No.71 5点 新世界崩壊
倉阪鬼一郎
(2020/09/27 20:22登録)
バカミス大好きという前提での点数付けです。なんというか、ただただ惜しいと思いました。

メインのアイディア自体はバカミスとしてかなり良かったと思うんですが、その後の異様にしつこいメタ視点の解説がいただけない。特に一々ページ数まで指定され、しかもその量が異常に多いので途中からどうでも良くなってきます。多分労力に対して面白さが比例してないかと。

講談社ノベルス特有の2段印刷を活かしたトリックと設定は本当にバカミスらしくてよかったんですが、メタ視点の言葉遊びと暗号の言葉遊びはかなり蛇足に感じました。

最後のレストランの謎もかなり初期からバレバレなので最後にもったいぶって持ってくるようなネタでもない気がし、完全に不要で、言葉遊びのためにどうしても内容が薄くなるぐらいなら、ノベルス版の二段印刷を活かした館のネタ一本だけでもっと話を盛り上げたほうが何倍もいいバカミスになったと思います。

メインのアイディアが素晴らしく良かっただけにもったいないなぁと思いました。


No.70 3点 五色沼黄緑館藍紫館多重殺人
倉阪鬼一郎
(2020/09/27 13:11登録)
泡坂妻夫さんのアレで既にこの手の仕掛けは初体験ではないが、完成させた労力にはただただ賛美の拍手を送りたい。

…が、それ以外は少しも面白くなく、小説としてはかなりダメダメレベルでつまらない。仕掛け有りきで作っている話なのである程度はしょうがないとはいえ、最後の方のメタ視点での謎解きに行くまではただただ読んでて苦痛。

個人的にはバカミスはかなり好きなんですが、ここまでメタ視点でどう?この仕掛けすごいでしょ?気づいた?ここにもあるよ!こんなにもあるよ!みたいな書き方されると逆に食傷すぎて嫌悪感が出てきてしまいます。なんというかバカミスというよりは(小説部分がありえないぐらい内容が薄っぺらいのも手伝って)ただの言葉遊びのゲームブックみたいに感じました。

泡坂さんのアレみたいに最後の最後でヒントだけもらってしれっと気づくほうが衝撃が大きいし、効果もあると思うんです。この本みたいに一から十まで作者に教えてもらって解説までされると、親切の押し売りみたいでありがたくはなく、途中からただの自慢に見えてきてしまい、すごいものもすごいと感じなくなってきます。

小説としてはコレでもかと言うぐらい内容がうすっぺらくて1点。仕掛けの労力には+2点の3点で。


No.69 5点 女王様と私
歌野晶午
(2020/09/26 21:42登録)
バカミスと聞いて読んでみましたが、あんまりバカミスっぽくなかったです…
たしかにテーマ的にはバカミスというか、なんでもアリみたいな感じでしたが、これはかなりの読者に嫌われそうなプロット…

まず、とにかく登場キャラクター全員に全く共感が持てず、ただただ気持ち悪い。最初の100ページぐらいはオタク描写がとにかくキモくて読むのが辛かったです。その後は最初の殺人を機に歌野晶午さん得意の疾走感で最後まですんなり読めました。ただ、扱ってるテーマが〇〇なので、もう推理とかどうでもよく、特に途中で〇〇とわかってからはどんな緊迫した展開でも”どうせ全部〇〇なんででしょ?”て感じで全くワクワクもドキドキもせずただ文章読んでるだけになってました…

最後のオチもだいたい予想通りなオチだったんですが、このイヤミス的終わり方は嫌いじゃなかったです。そこが唯一良かった点でしょうか。


No.68 6点 シャーロック・ホームズの回想
アーサー・コナン・ドイル
(2020/09/25 15:04登録)
前作の冒険同様に娯楽小説として質は高いのだが、ミステリーとしては少し凡庸化していると感じました。

(ネタバレあり)
個人的に、マイクロフトのキャラ付けがあんまりよくないと思いました。なぜならホームズの上位互換だからです… いくらホームズほど行動力がないとはいっても、クラブでの推理合戦で普通にホームズを破るぐらいの頭脳を見せられると、なんか今まで神格化してきたホームズが小物に見えてきてしまうのが何とも微妙な感じがしました。 せめて特定の分野だけはホームズを凌ぐとかにすればよかったのに… 全分野で上位互換(今までわからない事件は兄に相談してたとかドン引き)とか… しかも、その兄は全然捜査に関係してきませんし、わざわざ兄なんか出さなくても良かったんじゃないかとさえ思います。

また、最後の事件でのモリアーティーが伏線もなくいきなり出てきて、”組織が…”とか大きい事言われてもなにか陳腐に感じるだけでした。しかも最後の対決は頭脳での推理合戦と見せかけて滝でステゴロ対決かい!と突っ込んでしまいました… その上両者揉み合って滝に落ちて死ぬ(いや、大人の事情で復活して出てくるのは知ってますが…)とか、悪い意味で言葉もありませんでした。

その他の短編もコナン・ドイルがお金のために嫌々書いてただけあって、あんまり突出して面白いのはなかったです。

…が、相変わらず読みやすく(ハヤカワ版で読了)、ホームズファンとしては十分楽しめる必読書なのでおすすめです!


No.67 6点 黄色い部屋の謎
ガストン・ルルー
(2020/09/23 17:20登録)
古典的名作で密室といえばこの作品。遅まきながら読了しました。

総評としてはもちろん面白くて楽しめました。…が、いくらか気に入らない点もチラホラ。

まず良かったのはやはり最後まで謎がわからず早く解決編読ませてくれと切に願うほど引き込まれます。読んだのは創元版だったのですが、わりと読みやすく、翻訳とかは問題なかったです。そして超意外な犯人と密室トリック。そして最後のあの人間ドラマ。解決編での法廷アクションなんかは民衆ともども熱気に包まれてる臨場感を体験できとても良かったです。

(ここからプチネタバレあり)
さて、ここからは残念で悪かった点。まず、とにかく謎を含めた色々な隠し情報を最後まで引っ張るので、すごくヤキモキします。そのせいで途中冗長と感じる部分が結構あります。あと、犯人のもう一つの名前とか急に出てきて、誰コレ?この名前出てきたっけ?状態。『黒衣婦人の香り』とかいきなり意味不明ワードを用いたり、唐突に暗号みたいな合言葉(一応最後の方で理由はわかるが)みたいなので相手を黙らせたり、一瞬ついていけなくなるような展開がたくさんあり、あんまりいただけなかったです。そして最大の残念ポイントはやはり密室の謎。いや、夢とか偶然を密室に組み込んではダメでしょと思いました。黄色い部屋の完全密室にかなり期待してたので、ちょっとドン引きしました。あと、最後にルールタビーユの秘密?みたいな謎(まぁバレバレなんですが)が読者に明かされないまま終わっちゃうこと。

しかし、小説としては楽しんで読ませてもらいましたし、これを60年以上も前に書き上げたルルーには感服しかないです。ただ、このシリーズの続編は全て駄作揃いらしいのが悲しいですが…


No.66 10点 シャーロック・ホームズの冒険
アーサー・コナン・ドイル
(2020/09/21 13:46登録)
いくつかの有名エピソードは既に映画とかドラマで見たことがあってネタを知ってましたが、今更ながらハヤカワ版でこの名作を読了。

いや、2020年の今でも全く色褪せない素晴らしい短編の数々。発表当時ならより刺激的だったに違いありません。内容については皆さんたくさん書かれてますので割愛ですが、とにかく読みやすい。ここかなり大事なポイント(同じ古典短編集でもブラウン神父は読み辛いのがかなり残念)だと思うんですよ。そのためかどうかわかりませんが、よく原文が中学や高校英語の教科書に学習目的で載せられるのも納得です。

読みやすいだけでなく、内容もページをめくる手が止められないほどのめり込む内容の数々で、洞察力の披露、推理力、行動力、機転力など問題を解決するまでの過程や話の奇想天外な結末を十二分に堪能できました。

個人的に驚いたのは、安楽椅子探偵というイメージからあまり部屋から出ないと思ってただけに、思い立ったらすぐ調査や仕掛け、情報収集(乞食に変装までして)に出向く行動力にはびっくりでした!あと、連絡手段の一貫ですが、自らこまめに手紙を出しに行ってるのもちょっと受けました。

有名すぎて逆に手を出してなかった自分みたいなミステリーファンの皆さん、絶対の絶対に必読ですよ!


No.65 6点 超・殺人事件―推理作家の苦悩
東野圭吾
(2020/09/19 20:55登録)
ミステリー要素自体はかなり薄いが、単純に読み物として面白かったです。まぁ、同作者の『名探偵の掟』同様にバカミスですよね。これも。ただ、今回はメタ発言みたいなものはないので、『名探偵の掟』でメタ視点が苦手だった人にもおすすめです。

内容は色んな推理作家の苦悩を面白おかしくブラックユーモア全開でまとめた短編集です。ところどころ東野圭吾さんの売れてなかった時代(今では考えられない…)の心情とか作家としての心の声とかが作品に反映されていると思われ、それらを想像しながら読むと又違った面白さがありました。

最初の税金対策の話とか抱腹絶倒で、これ絶対作者の経験した税金地獄をベースにフィクション化してるよなぁと勝手に想像してました。最後のエピソードで出てきたショヒックス・キラーとかシッタカブリックスとかは自分も超欲しいと思いました。東野圭吾さんも欲しすぎて妄想した結果、作品に取り入れたんだなぁと。

何にせよ、軽い気持ちでサクッと読めるので超オススメの一作です!


No.64 7点 名探偵の掟
東野圭吾
(2020/09/19 20:40登録)
東野圭吾の初期作品で、いわゆるバカミス。

内容は古今東西の有名ミステリーのパロディをベースにし、メタ視点で皮肉交じりに斬りまくる怪作で、どのエピソードもミステリーマニアからしたら吹き出すネタ満載の短編集です。

いや、素直に軽い気持ちで読む分には最高です。声出して笑ったやつもありました。
ところどころ、ネタではなくて東野圭吾さんの心の声がダダ漏れなのがまた良い感じです。2時間ドラマ編のメタ発言は、これ絶対自身の作品を映像化の際にダメにされた恨みを滔々と語らせてると確信しました。面白すぎる。

マイナス点は、最初から最後までメタ発言全開なので、メタ視点が嫌いな人に対してはあまり面白いと感じ辛いのと、誰でも最初の方は文句なしに面白いんですが、途中からこの作風に慣れてきてそこまで面白く感じなくなってくることでしょうか… まぁ、どんなコントも長く見てると不感症になるのと同じでしょうがないですよね。

とはいえミステリーマニアでまだ未読ならおすすめの一作です!


No.63 7点 たったひとつの、ねがい。
入間人間
(2020/09/18 13:12登録)
ライトノベル全般が好きではないのですが、これは面白いと薦められたので読了。
結論から言うと期待してなかった分楽しめました。

表紙も作者も完全にライトノベルなのでそういうつもりで読み始めるとかなりびっくりすると思います。理由はライトノベルとは程遠いグロ描写が多いからです。

内容はあまり書かないほうがいいと思いましたが、どういうやつかだけでもわかると好奇心の触手が伸びると思うので簡単に書くと、復讐ものです。これ以上は実際読んでみて下さい!

いや、最後完全に騙されました。多少アンフェアっぽいですが、ラストは割と衝撃的でした。読了後に一瞬????となりますが、意味がわかるとなるほどと思いました。そうきましたかと。

ライトノベル作者なので文体もやや物足りなく、キャラクターも割と薄っぺらいし、作中のある重要キャラはいかにもラノベキャラという感じで正直いなくてもよかったんじゃないかとも思いましたが、作品の構成や仕掛けのプロットはなかなか良くできていたと感じました。

グロ注意ですが、なかなか仕掛けが変わっていて、楽しめたミステリーなのでおすすめです!(グロいのダメな方にはおすすめしません)


No.62 3点 ブラウン神父の童心
G・K・チェスタトン
(2020/09/18 11:49登録)
この低い評価には理由があります。自分が読了したのが東京創元社、1982年版だからです。

もう、とにかく読み辛い。一度読んだだけでは全く頭に入ってこないので、全エピソードを二度づつ読みました。日本語訳の海外ミステリーでこの本ほど翻訳がダメと思ったことはありませんでした。ただ原文を”構文ごと”に修飾して訳しただけの感じで、最早小説というよりはただの情報の羅列。同じ会社から新板も出たみたいですが、殆ど変わっておらず相変わらずめちゃくちゃ読み辛いらしいです。

自分は国語が昔から得意ではありません。そのせいもあってか、小学生の頃の作文でよく先生に、もっと段落を区切りましょう、改行しましょう、大きく場面や話が変わる際にはわかりやすいように1行空けてみましょう、…といった指摘をよく受けましたが、まさにこの本にはそれがまるまる当てはまるじゃありませんか!

人物や場所等の修飾がやたら多いくせに、場所の説明や状況の説明があまりにも少なく、場面が変わろうといつもそのまま区切らず書かれているのでとても混乱しやすいのです。これらは原文のせいかもしれませんが、それらを補足してこそ現代訳になると思っています。

翻訳の愚痴だけだとアレなので内容のことにも触れておくと、どれも古典でよく出来ていると思いますが、個人的には平均すると6点ぐらいの評価でした。気に入ったエピソードは、青い十字架、秘密の庭、イズレイル・ガウの誉ーー辺りです。神父とフランボウの関係にはほっこりきて共感しましたが、神父のキャラクターには全く愛着がわきませんでした…

ファンの方たちには申し訳ないのですが、せっかくの面白い話を翻訳で台無しにしている感が拭えません。内容6点、翻訳で−3点の3点です。しかし、ハヤカワから出てるのはかなり読みやすいらしいのでいつか再読に挑戦してみようと思います…


No.61 8点 99%の誘拐
岡嶋二人
(2020/09/17 11:22登録)
30年以上前の作品なのに、倒叙ミステリーとしてかなりよく出来た傑作でした。エンタメ性が半端ない!

とにかく、読んでて引き込まれます。手に汗握るとはこのことでしょうか。最初から最後まで息つく暇もなくグイグイ読破できます。岡島二人さんは本当に読みやすく、それでいて味のあるうまい文章を書かれるのであっという間に読めました。

倒叙ミステリーなので犯人やトリックは読者にはほぼ全てわかっていますが、警察を煙に巻くその手段や行動力がとにかくクールでカッコイイ。もう某国スパイ並です。

ただ、当時はハイテク機器でも今では30年前のもの(音響カプラーとかパソコン通信とか)なので、それらを知らないと少し混乱する時があるかもです。わからない機器はググりましょう。自分もカプラーとかわからなかったので調べました。より楽しめます。しかし、この時代に既にボーカロイドみたいなのを登場させてたあたり、とにかく岡島二人さんは小説(クラインの壺とかもだが)の中では発表当時の時代より何10年も先に行ってた方だったんだなぁと実感しました。

あえて残念だった所をいえば、倒叙なのでどんでん返しみたいな驚愕のラスト(一応プチサプライズみたいなのはあるが)は用意しておらず、映画のワンシーンみたいなクールな終わり方なので、ちょっと物足りなく感じる読後感になることでしょうか…
完全に個人的見解ですが、最後もう少し派手な帰結があるとなお良かったと思いました。これはこれでカッコいい終わり方だとは思うのですが…


No.60 7点 Yの悲劇
エラリイ・クイーン
(2020/09/17 10:39登録)
エラリー・クイーンの最高傑作の一つ。一般的にはXの悲劇よりこちらの方が高評価ですが、個人的にはそこまでではなかったです… (Xの悲劇は最高評価しました!)

これは完全に個人的見解ですが、最初の卵酒事件ですぐ犯人がわかってしまい、第2の事件のルイザの証言が出た時、犯人確定(いや、あれは流石に犯人丸わかり)だと思いました。実際その通りでひねりもなく最後のどんでん返しを迎えたので、あまり驚きもせず、予想通りの結末を予定調和で読破しただけという感じになってしまいました…

いや、いくら勘の悪い人でも手記の内容が出た時点で完全に犯人のネタバレになると思います。あの手記が出た時点でもうどんでん返しが成り立たなくなってしまうんじゃないかと…

Xの悲劇と違い、読者を驚愕させようとしすぎて逆に、犯人の隠し方があまりうまくいかなかったのではないかと感じました。

ただ、ミステリー小説してはもちろん完成度が高い素晴らしい作品なので未読の人は是非読んでみて下さい!個人的には”それなり”にとどまりましたが、もしかしたら全く犯人わからず最後まで読み進み、超絶驚愕するかもしれません。


No.59 10点 Xの悲劇
エラリイ・クイーン
(2020/09/17 10:23登録)
古典にしてミステリー史上最高傑作の一つ。とにかく完成度がすばらしい。プロット、トリック、演出が非の打ち所のない出来で、ダイイングメッセージやどんでん返し等の意外性、エンターテイメント性も優れており、納得の高評価。多くは語らないので未読の人は是非是非読んでみて下さい!エラリー・クイーンのファンになります。

ちなみによくYの悲劇と比べられますが、個人的には断然こちらの方が面白かったです。


No.58 5点 スロウハイツの神様
辻村深月
(2020/09/17 10:14登録)
辻村深月さんの一番の代表作。一応叙述みたいな仕掛けはあったけど、ミステリーとして読むとかなりがっくり来るので注意。どちらかといえば青春恋愛小説。

内容は、一言でいえば現代の”トキワ荘”物語。本当、それ以上でもそれ以下でもない… 母親との確執で心に傷をもつ売れっ子女脚本家が、叔父から譲り受けたというアパートをリフォームし、スロウハイツと名付け、芸術関係の友人達を集めて共同生活する。それぞれの芸術分野での葛藤、人間関係の軋轢などを得て各々のドラマが続いていき、最終的には…

最終章はグッと来るものがあるが、そこに行くまでが長くて冗長に感じてしまう。理由の一つは読んでてイライラする住人(読めば誰かはすぐわかる)のせいもあるが、各章で丁寧に住人一人一人をきちんと描写するので、単純にページ数がその分多くなっているのが要因だと思いました。それと、冒頭の猟奇殺人が、事件単体としては全く掘り下げておらず、ただのエピソードの一つみたいな扱いで、どこかでキチンと真相がわかると思ってたら最後までなにもなかったので肩透かしくらいました…

冒頭でも書いたことですが、叙述ミステリーっぽい要素も含蓄してるのでミステリーに分類されることもある本作。しかし、ミステリーファンからするとかなり肩透かし喰らいますので、普通の恋愛青春小説として楽しむ人向けの本だと思いました。


No.57 7点 黒いトランク
鮎川哲也
(2020/09/11 23:04登録)
2002年発行創元推理文庫版を拝読。小説の出来はいわずもがな。とても完成度の高い典型的な列車を使ったトリックもの。

内容に関しては文句のつけようもないのですが、個人的に列車ミステリー大の苦手です… 鉄道マニアではない自分には、トリックとかより、時刻表を見て細かい時間を追うのと、なんといっても馴染みのない地名と場所を把握するのが苦痛すぎるからです…

この傑作、黒いトランクも例に漏れず、途中時刻表を使った説明の部分で何回か挫折しかけました… いや、ちゃんと理解できる方々にはいいんでしょうが、自分みたいな時刻表見ただけでパニクる低能には完読するのが大変でした…

せめて列車の時刻表と地図を全部巻頭におき、列車の乗車時刻等を全て漢数字でなくアラビア数字で表記してほしかったのと、地名には面倒でも全部都道府県を毎回つけて欲しかったです。地理に疎い自分には拷問でした…
常にえっ?今何処?何処?(゚Д゚;≡;゚Д゚)!? 状態でした…

内容9点、ややこしいトリックが−2点で7点で。すいません。またいつか機会があったら再読したいです。

※この2002創元推理文庫版、文末解説374ページ上段13行目の鬼貫が鬼貰になってます… まぁ本編じゃないからいいんですが…

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