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ミステリの祭典

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◇・・さんの登録情報
平均点:6.03点 書評数:191件

プロフィール| 書評

No.171 5点 死刑台のエレベーター
ノエル・カレフ
(2024/08/07 20:33登録)
アプレ社長が金銭上の動機から殺人をするが、数々の偶然が働いて、全く覚えのない事件によって死刑にされるという物語。
この筋自体に作者の皮肉な眼が感じられるし、筆致もそうである。面白いことは間違いないが、無理に凝った破局へもっていこうとするために、説得力に欠けるところがある。


No.170 6点 知りすぎた男
G・K・チェスタトン
(2024/08/07 20:29登録)
上流階級社会の中で起こる犯罪を、フィッシャーという名の人物が解決するのだが、彼自身政治家たちと深いつながりを持つ立場ゆえ、時に事件の真相や犯人をまるでキャッチ・アンド・リリースするように看過してしまう。
その様子を側で観察するワトソン役が政治記者であるところも皮肉が効いている。政治や文明批評でも知られるチェスタトンらしい作品。


No.169 7点 ローズマリーの赤ちゃん
アイラ・レヴィン
(2024/07/19 20:11登録)
ローズマリーという女性が妊娠したその日から、奇妙な現象が彼女の身辺で起こる。周りの人はそれを彼女のヒステリー、妄想だと思っているという点が面白い。その謎の正体は何かという関心が読者を引っ張っていく。
通常のホラーのように怖い実態は特に何も出てこないが妙に怖い。読み進めるにつれて、どんどん不安が大きくなる。そのサスペンスが抜群である。


No.168 5点 マハーラージャ殺し
H・R・F・キーティング
(2024/07/19 20:08登録)
舞台は大英帝国の支配下、藩主王国の王様が各地を支配していた1930年代のインド。
その王様の一人が、狩りの最中に銃の暴発で死亡してしまう。情景描写は実に異国情緒があってよいが、トリック的にはさほど大したことはない。


No.167 5点 処刑前夜
メアリー・W・ウォーカー
(2024/06/05 20:33登録)
ある豪邸で起こった殺人事件で、すでに逮捕されて死刑が求刑されている男が本当に真犯人なのか疑わしい証拠が出てきて、ヒロインの犯罪記者が真相を追う。
古典ハードボイルドに近いムードがあり、霧のかかった中を結末に向けて突き進む雰囲気が出ている。死刑執行までという限られた事件の中で進行するパターンで、どんでん返しもまずまずといったところ。


No.166 6点 蝶たちは今…
日下圭介
(2024/06/05 20:29登録)
第二十一回江戸川乱歩賞受賞作。
康雄は、急病で行けなくなった恋人和子の代わりに友人の拓也を誘って、飛騨路の旅に出た。途中のバスの中でバッグを取り違えてしまったことから、奇妙な事件に巻き込まれる。
バッグには、三年前に心中した娘から十七年前に事故死した男に宛てた一通の手紙が入っていた。過去の二つの事件を結び付ける鍵は果たしてどこに隠れているのか。
魅力的な謎の設定と起伏に富んだストーリー展開に加えて、歯切れのいい会話と文章に魅了された。


No.165 6点 花の棺
山村美紗
(2024/05/15 20:18登録)
名探偵キャサリン・ターナーの初登場作で、同時に京都ものの第一作でもある。キャサリンはアメリカ副大統領の娘。コロンビア大学在学中に父の随員として来日し、東流の小川麻衣子から華道の手ほどきを受けることになっていたが、園麻衣子が空也堂の境内で毒殺死体となって発見されたため、キャサリンは家元の跡目相続をめぐる不可解な連続殺人事件に巻き込まれていく。
日本の伝統文化の世界に若いアメリカ娘を配したキャスティングの面白さ、雪庭の茶室を使った密室と、死体を乗せたキャンピングトレーラーの消失というトリックの斬新さがいい。


No.164 7点 ずっとお城で暮らしてる
シャーリイ・ジャクスン
(2024/05/15 20:12登録)
自分の内なる狂気の世界こそ正常な世界であり、外部の日常世界は悪魔の徘徊する異世界だと信じている少女が主人公。
彼女は、両親と兄と叔母を殺害したと疑われている姉、現在のことには一切無関心で過去の世界に生きている叔父の二人と一緒に大きな館に住んでいる。そこに正常人の従兄弟チャールズがやって来た時から、惨劇が始まる。
狂人の観点から語られる閉じられた世界の恐怖。戦慄と優しさ、グロテスクと悲しみの入り混じった静かなホラー小説である。


No.163 4点 トミーノッカーズ
スティーヴン・キング
(2024/04/24 20:39登録)
メイン州の田舎町近辺の森林の地中に埋まっていた太古の宇宙船が発掘されることによって、街の人々に起こるグロテスクな精神的、肉体的な変化をブラック・ユーモアをたっぷりに描いている。
一説には放射能汚染の恐怖を語っているとも言われているが、基本的には自分ではない何か他のものに変容していくことの忌まわしさを、そして自分が変容していくことによって、図らずもしでかしてしまうことの恐ろしさを語っている。


No.162 5点 視線
石沢英太郎
(2024/04/24 20:34登録)
第三十回日本推理作家協会賞を受賞した表題作など6編を収録され、それぞれに切れとコクが楽しめる。
表題作は、銀行強盗にホールドアップを命じられた行員が、非常ベルを押そうとした隣席の同僚に視線を走らせたばかりに、その同僚が射殺される事件を扱っている。彼はなぜ視線を走らせたのか。
人間の心理の微妙さを一瞬のシーンに定着させて鮮やかな印象を残す。


No.161 6点 五十万年の死角
伴野朗
(2024/04/02 21:51登録)
太平洋戦争の開戦直後、日本軍は北京原人の化石骨を摂取すべく米国系医科大学の研究所を急襲したが、すでに持ち出されたあとだった。軍医部長の特命を受けて骨の探索に乗り出した主人公は、日本の特務機関、国民党の謀略組織、中国共産党の三つ巴の争奪戦に巻き込まれていく。
当時の大陸情勢を背景に、主人公の瑞々しい探究心と、ヒューマニズムを謳い上げた戦記サスペンスで、この種の謀略ものには珍しく読後感が爽やか。


No.160 6点 逃げるアヒル
ポーラ・ゴズリング
(2024/04/02 21:45登録)
アクション主体の軽いサスペンスもの。シルベスター・スタローン主演で「コブラ」という映画にもなった作品。
普通のOLが、殺し屋の顔を偶然目撃してしまったために命を狙われ、腕利きの刑事と共に逃避行に出る。圧倒的に凄い敵がいたり、どこから来るか分からない相手を待ち構えて迎撃したりと、どの場面もスリリング。


No.159 6点 死者たちの礼拝
コリン・デクスター
(2024/03/12 19:52登録)
描写が曖昧で読んでいる時は、霧の中を歩いている感じ。教会で礼拝中の信者が殺され、礼拝を執り行っていた牧師も死んでしまうというのがメインの謎。
ここで使われるトリックはなかなか切れ味があるが、それ以前の部分が面白すぎてトリックの所在を見失ってしまう。この雰囲気が最高の持ち味。


No.158 7点 衣裳戸棚の女
ピーター・アントニイ
(2024/03/12 19:49登録)
純然たる密室ものだが、完全に施錠されたホテルの一室で男が射殺体で発見され、同じ部屋の衣装棚の中にはウェイトレスが閉じ込められている、という奇妙な状況が提示される。
かなり短い小説で、そのシンプルさが魅力の一つだが、トリックが突飛すぎて万人におすすめすることは出来ない。それほど独創的で、二度と使えない類のトリック。


No.157 8点 暗闇の薔薇
クリスチアナ・ブランド
(2024/02/22 20:50登録)
嵐の夜、車を走らせるヒロインの前で巨木が倒れ、行く手をふさがれてしまう。何者かに追われていると思しき彼女は、倒木の向こう側で同じように立ち往生している見知らぬ男性と、お互いの車を交換することで急場をしのぎ先を急ぐ。しかし、その交換した車の後部座席に死体が乗せられていたという、なんとも魅力的な謎で幕を開ける物語。
サスペンスフルな展開、畳みかけるようなツイスト、そして驚愕のラスト。縦横無尽に繰り出されるテクニックは、まさに本格の芸術と呼ぶに相応しい、比類なき美しさ。ヒロインの素晴らしい造形も名人ならでは。


No.156 6点 華やかな死体
佐賀潜
(2024/02/22 20:44登録)
法曹としての知見がよく生かされた法廷ミステリ。
大手食品会社社長の死体が花に埋もれて発見された。被害者の元秘書で、現在は後妻のマネービルの指南役をつとめている男に疑いがかかる。少壮検事の城戸は、十分な証拠固めをした上で起訴に持ち込んだつもりだったが、弁護側の意外な反撃にあって敗北を喫する。
刑事裁判の実態をリアルに描いた重厚な作品で、冤罪を生み出しやすい日本の法体系に対する批判も含まれている。


No.155 9点 推定無罪
スコット・トゥロー
(2024/02/22 20:39登録)
地方検事を選ぶ選挙戦のさなかに、美人検事補が自宅で全裸の絞殺死体となって発見された。事件を担当したラスティ・サビッチ首席検事補は、彼女に怨みを持つ変質者を洗うが、捜査は遅々として進まない。サビッチは実は彼女と愛人関係にあり、やがて容疑は次第にサビッチに向けられていく。
現職検事補の手による本書は、発表後一躍ベストセラーになった。圧倒的迫力の法廷シーン、意想外の結末に加え、司法制度への批判までも盛り込んだ法廷ものの傑作である。ハリソン・フォード主演で映画化もされている。


No.154 6点 ナポレオン狂
阿刀田高
(2024/01/30 19:50登録)
「来訪者」は、出産の時に病院で世話になった雑役のおばさんが、退院後もしばしば家にやってきて赤ん坊に異常な愛着を示すという話で、一見ありふれた話ながら、背筋が寒くなるようなスリルとサスペンスがある。
表題作の「ナポレオン狂」は、ナポレオンの遺品収集に執念を燃やす男に、自分はナポレオンの生まれ変わりだと信じ込んでいる男を紹介したところ、男たちはそのまま消息を絶ってしまったという話で、いかにもこの作家らしい奇妙な味が楽しめる。


No.153 6点 殺意の演奏
大谷羊太郎
(2024/01/30 19:45登録)
大学受験に失敗して芸能ショーの司会者になった細井道夫がアパートの自室でガス中毒死していた。彼はクイズを得意にしていたが、クイズとも暗号ともつかぬ遺書のようなものが残されていた。現場が完全な密室状態だったところから、警察は自殺として処理する。数年後、兄の志を継いでアナウンサーになった弟が、ひょんなところから疑惑を抱き、恋人や兄の親友だった男と共に真相解明に乗り出す。
トリックに凝りすぎてストーリーにやや渋滞が見られるものの、魅力的な謎、論理的な展開、意外な結末の三要素に、芸能界の内幕情報が加味されて、まさしく本格派の醍醐味を感じさせる。


No.152 6点 黒後家蜘蛛の会1
アイザック・アシモフ
(2024/01/10 18:55登録)
全て同じ形で書かれた短編で、舞台はいつも数学者や科学者などの専門家6人が集まる黒後家蜘蛛の会という食事会。彼らの楽しみは謎を持ち寄って、それを話題にすることだが、推理を闘わせた後で給仕のヘンリーが真相を言い当てて見せるというお約束のパターン。
当たりも外れもあるが、よくも同じ型で書き続けたものだと感心する。基本的にワンアイデアミステリだが、メンバーがスペシャリストで面白いから、彼らが蘊蓄を傾けて喋るのを聞くだけでも面白い。

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