石の眼 |
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作家 | 安部公房 |
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出版日 | 1960年01月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 4点 | ◇・・ | |
(2025/02/10 20:46登録) ダムの工事に不正があり、満水時には決壊の恐れがある。もみ消し対策に狂奔する関係者のあがき。ある朝、そこへ殺し屋が登場する。彼は工事作業中の中に、むかし親分を密告した奴がいるのに嗅ぎ付けてやって来たのだ。 このようにお膳立てはそろっているが、構成人物が無個性で魅力に乏しく、スリラーとして緊迫感にかけている。 |
No.2 | 5点 | 虫暮部 | |
(2021/05/25 12:39登録) 全体を貫く灰色の空気感。謎の成り立ちが曖昧で、人々はその周りをぐるぐる回っている。戯画的な雰囲気にいきなり厚みのある思考が切り込んで来たりして落ち着かない。 “謎”とはそれを載せるなにがしかの土台があってこそ成立するわけで、そこを不確定にした本作は結果的にミステリに対する批評、と言うにはしかし中途半端で、最終章で何故あんな行動に出るのか不可解。そしてそれでこそ安部公房。 |
No.1 | 6点 | 空 | |
(2020/05/01 22:43登録) 安部公房が書いた、ダム建設に関する収賄、手抜き工事をテーマとする社会派ミステリという点が非常に意外な作品です。普通、聖書の一節「ラクダが針の穴をとおるのは、金持が天国へ行くよりも容易しい」(マタイ19章16-26節の意訳というか曲解)という説に基づいて実際に駱駝が主人公の眼の中に入り込む(『壁―S.カルマ氏の犯罪』)ようなホラ話を書いている作者とは思えません。 県監督官庁課長がダム監査廊の急な階段に置かれた石につまずいて危うく死にそうになった事件について、登場人物たちがそれぞれ異なる説を考えるという多重解決趣向は、「不条理」感を出す役に立っていると言えなくはないとは思いますが、パズラー系ではたいして珍しくありませんし、最後に明かされる真相が特に意外というわけでもないのも、このタイプの宿命みたいなものでしょうが、ミステリとしてしっかりまとまってはいます。 |
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