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ミステリの祭典

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平均点:6.23点 書評数:286件

プロフィール| 書評

No.146 7点 放課後
東野圭吾
(2019/10/02 01:11登録)
乱歩賞受賞作。学園物だが数学教師が主人公であり、学園物特有の軽さはない。殺人は2件だけだが、状況が刻々と変化するので退屈しない。やはり一番驚いたのは動機だ。あれが殺人を犯す所まで発展するのか疑問だ。最後は突飛。それまでにあれだけ匂わせたら、あの人を絡めざるを得ないので、無理やり付け足した感じがする。

全体としては、デビュー作からこれだけ読ませるのはさすがだと思った。


No.145 8点 クビキリサイクル
西尾維新
(2019/09/29 05:33登録)
名前は知っていたけど、なんとなく避けていた作家のデビュー作。
これは異質ですね。過去に書評した本で一番異質です。ライトノベル風なのでしょうが、その中でもかなりアニメっぽく感じました。「うにー」はともかく「僕様ちゃん」は誤植かと思いましたよ。事件が起こるまで(文庫本で168ページ!)は、本当に推理小説を読んでいるのか不安でした。
首切り事件が起こると、相変わらず雰囲気は緩いものの、話は徐々に引き締まっていきます。第1の殺人のトリックはちょっと簡単すぎる気はしましたが、第2の殺人以降の流れは予想外で息が付けない面白さでした。どんでん返しも、くどすぎずちょうどいい感じ。
前に読んだ某メフィスト賞受賞作は、雰囲気がふざけていている上に、中身も人を馬鹿にしてるようで腹が立ったのを覚えています。この作品は表面は緩いですが、読者を馬鹿にしているような気配は一切なく好感を持ちました。とはいうものの、この文章は生理的に受け付けない人も多いだろうなあ。


No.144 6点 平家伝説殺人事件
内田康夫
(2019/09/26 06:42登録)
浅見光彦のデビュー2作目とのこと。平家伝説というタイトルだが、登場人物が平家の落ち武者の子孫という程度で歴史ミステリとかではない。むしろ伊勢湾台風の話の方が詳しいような。作者自身が自信作だとあとがきで書いてるが、実際、名作の部類に入るのではないかと思う。
密室トリック、消失トリックは確かにおまけレベルだが、ストーリーには引き込まれるものがあり、一気に読んでしまった。


No.143 8点 悪魔が来りて笛を吹く
横溝正史
(2019/09/26 06:41登録)
<ネタバレあり>

『犬神家の一族』と同じく、トリックよりプロットの妙が光る作品だと感じました。密室殺人はトリックというよりは流れ的にああなったという感じですし、砂の上の火焔太鼓の絵のトリックも金田一の帽子の一件と絡めたからこそ面白い。
須磨、明石、淡路への捜査行はトラベルミステリの原型みたいで、この作家のイメージと違ってちょっと意外でした。
出生の秘密は正直食傷気味ですが、今回はかなり思い切った設定で驚きました。まあ、読んでいてあまり気持ちの良いものではなかったですが。ただ、痣の遺伝はちょっと都合が良すぎるのではないかと感じました。


No.142 8点 白い家の殺人
歌野晶午
(2019/09/24 05:54登録)
なんだか雰囲気が『斜め屋敷の犯罪』に似ているので、島田荘司氏ばりの、とんでもないトリックが炸裂してくれるのではないかと期待しながら読み進めた。

結果、1作目の『長い家の殺人』より格段に良かった。
順番が逆になるが、まず3つ目の殺人のトリック。大まかには予測できたが、細かい所が思った以上に凝っていて感心した。
2つ目の殺人のトリック(まあトリックではないのだが)は単純すぎるがゆえに自分はわからなかったが、つまらないと言う人も多いだろう。
この作品の一番の売りは、1つ目の殺人のトリックと、それにまつわるエトセトラだろう。今までに読んだ密室トリックの中では(そんなに読んでませんが)かなり上位に入る面白さだった。
動機は、それ自体はあまり目新しさはないのでしょうが、この作品とはなんだか合わない感じでそれゆえ盲点でした。
あとは、ちょっと変わった終盤の構成も良かったです。

意外と平均点が低くて驚き。なんというか楷書風の作品なので、古典を読み込んでいる方には面白くないのかな。


No.141 7点 名探偵水乃サトルの大冒険
二階堂黎人
(2019/09/23 23:22登録)
『軽井沢マジック』で登場した長身、美形の水乃サトル君が活躍する短編集。キャラもストーリーもかなーりゆるいが、押さえるべきところはしっかり押さえていると感じた。

①ビールの家の冒険
実際に触って違和感に気付かなかった連中は無能。話を聞いただけでわかってしまうサトル君は有能。
ところで、エビスビールは製造工場記号Hの大分日田工場の物がおいしいので、わざわざ九州の酒屋に注文する人もいるらしい。日田天領水なんてあるくらいだから水がいいのだろう。

②ヘルマフロディトス
個人的にはこの作品は好きです。当時38歳のおっさんがこんな物よく書けたものだと感心してしまう。ただ、当時38歳のおっさんがこんな物を書いたのを、生理的に受け付けない人も多いだろうなあ。

③『本陣殺人事件』の殺人
『本陣殺人事件』の別解釈をサトルが示す。確かに手ぬぐいの件はその通りだ。

④空より来たる怪物
バカミスですね。これを書きたいがために、水乃サトルなんてキャラを作り出したんじゃないかと勘ぐってしまう。


No.140 8点 仮面山荘殺人事件
東野圭吾
(2019/09/23 02:06登録)
読みやすい上に長さもなく、2時間かからず読了。
うーん、見事に騙された。今までに書評した139冊の中に、似たような仕掛けが少なくとも2作あったにもかかわらず・・・。クイズのアプリとかでも同じ問題で同じ間違いを何度も繰り返してるから、引っかかりやすいものにはとことん引っかかるのかもしれない。
分かってみれば、そんなに難しくないのに、必要以上に難しく考えすぎてしまった。主人公の鼻の形が変とか、ジンが外国人的な風貌なのに背が低いとか、絶対何かあると思ったのに全く関係なかったな。完全に木を見て森を見ずだ。


No.139 5点 京都三無常殺人事件
花房観音
(2019/09/21 18:48登録)
京都在住の官能小説作家によるミステリ。古き時代に風葬地だった蓮台野、化野、鳥辺野の「三無常の地」で起きる殺人事件、という紹介文だ。
短編3つなのかと思ったが長編である。典型的な京都2時間ドラマ原作といった感じ。一応ミステリらしい仕掛けは仕組んである。それよりも、にわか京都好きでは書けないであろう、普通の旅行ガイドには載っていなさそうな蘊蓄が楽しい。流れるような文章もいい。


No.138 4点 さよなら神様
麻耶雄嵩
(2019/09/19 22:56登録)
前作『神様ゲーム』は平均点よりかなり低い点数を付けてしまいましたが、本作は2014年度本格ミステリ大賞ということで読んでみました。

①『少年探偵団と神様』
全く見所なく終わる。なにこれ?1点。
②『アリバイ崩し』
テレビの音が消えた謎の偶然さが好きじゃない。それを除けば水準作か。6点。
③『ダムからの遠い道』
つまらなさすぎて笑ってしまった。1点だけど笑っちゃったから1点プラスして2点。
④『バレンタイン昔語り』
冒頭の叙述トリックの方は、前作から主人公変えてる時点でバレバレだが(その後もヒントかなりありましたし)プロット自体は面白い。今時あんなことが実際に起こりえるのかな。7点。
⑤『比土との対決』
小学生設定でこれはいくらなんでも無理があるような。まあ、今更ですけど。6点。
⑥『さよなら、神様』
まあオチは普通。4点。

平均4.3点を四捨五入で。なんだか出来不出来の差が激しいように思いました。この方の作品、この作品に限らず、どうも高評価の方がものすごく驚いている箇所で、自分は何とも思わないことが多いんですよねえ。理由はよくわからないのですが。ゆえに平均点より概して低い点数を付けているんですが、別に嫌いなわけじゃありません。


No.137 5点 放課後の名探偵
市川哲也
(2019/09/19 01:59登録)
前作『屋上の名探偵』の翌年という設定。今回はメインキャラの2人以外の視点で書かれた話が多い。前作も軽いタッチのストーリーだったが、今回は更に軽くなった感じ、と思ってたら最後の話重い・・・
ミステリとしてはあまり見るべきものがないと思う。


No.136 5点 お待ちしてます 下町和菓子 栗丸堂
似鳥航一
(2019/09/19 01:58登録)
『ビブリア古書堂』の和菓子屋バージョンといった感じ。出版も同じアスキーメディアワークス文庫から。前に読んだ喫茶店バージョンの本は色々とひどかったが、これは悪くない。キャラクターも魅力的。ミステリとしては若干薄味か。


No.135 7点 東海道新幹線殺人事件
葵瞬一郎
(2019/09/17 23:26登録)
2年前の作品。この作家のデビュー作とのこと。
タイトルを見た時は、西村京太郎氏の後継者を狙いに来たのかと思ったが、この作者、もっと欲張りなのかもしれない。読みやすさ、本の薄さ(1時間半で読める)、事件が起こったのと同じ電車にやたらと乗りたがるあたりは西村京太郎風だ。利根川警部補なんてキャラまで出てくるし。酒呑童子伝説を絡めて旅情風景満載なのは内田康夫風だ。推理作家探偵が酒呑童子にゆかりのある神社を訪ねて周ったり、酒呑童子ゆかりの神社で殺人が起こったりする。やっていることがほぼ浅見光彦だ。まさか一気に両方の後継者狙ってる?
ここまで読むと軽い感じの作品なのかと思われそうだが、本書は実はガチガチの鉄道アリバイものである。トリックは鮎川氏『黒いトランク』と有栖川氏『マジックミラー』のハイブリッドのような感じで、結構うまくできてると思う。最終盤で明らかになる、犯人がどう動いたのかの説明もなかなかいい。

やはりタイトルが悪いですね。このタイトルじゃ本格ミステリファンは絶対買わないでしょ。


No.134 2点 丸太町ルヴォワール
円居挽
(2019/09/16 18:00登録)
10年前の作品。
大して驚けない叙述トリック、どんでん返しを延々と繰り返した後に残ったのは、どうってことのない真相という小説。似たような感じの作品を数冊読んだ気がするが、最終盤くどいくらいにどんでん返しを連発するのは、この時期の流行りなのだろうか?正直面白さがよくわからないから、もう廃れていてほしいんだけど、まだ流行中なのですかね?


No.133 10点 ドグラ・マグラ
夢野久作
(2019/09/14 07:03登録)
三大奇書は『黒死館殺人事件』『虚無への供物』の書評は既に書いているので、これが最後の一冊。過去の2冊の書評は今読み返すと恥ずかしい文章だけど、その時の自分の感覚ということで書き直したりはしない。それぞれに9点と10点を付けたけど、点数も変えない。
似たスタイルのもっとすごい小説が出てきて、これらの価値が落ちたみたいな書評も多いが、自分は全くそうは思わない。『黒死館殺人事件』『虚無への供物』に似た作品はそれぞれ一作~数作あったが、内容も文章も全く本家に及ばない気がした。

さて、『ドグラ・マグラ』である。陳腐な表現だが、想像を絶する面白さだった。創作に10年かかったらしいが、そりゃこれだけの物を書くにはそのくらいかかるでしょう。プロット、特に置く順番が計算されつくされている。狂っているように見えるのは表面だけで、作者はひたすら冷静。こちらも意識的に鳥瞰的に読まないと意味不明になるかも。

一つだけ文句を言うなら、チャカポコの所がいくらなんでも長すぎた。
なお本書の学術的な内容(特に脳髄云々)が現在の研究では否定されているみたいな事は恐らくあるでしょうけど、その辺りは不問で。
点数はあくまで[ SF/ファンタジー ]としてです。


No.132 5点 屍人荘の殺人
今村昌弘
(2019/09/12 07:21登録)
文庫化されたので早速買って読んでみました。

まず文章に関して。
正直所々もうちょっとうまく書けないものかと思いましたが、デビュー作ですし、全体としてのリーダビリティーは高いですから、点数を引いたりはしていません。

で、内容ですね。
私の勝手な思い込みで、読んでいる最中「アレ」の存在は、クローズドサークルを更にクローズする程度の役目だと思い込んでいました。よって「アレ」がトリックに大きく関わってくるのはちょっと予定に入っていませんでした。
3冠作にこんな微妙な点数を付けたのは、そのあたりを今の所、完全に受け入れられないからです。それさえ許容できれば、細かい所まで非常に凝った良い作品だと思います。


No.131 8点 ビブリア古書堂の事件手帖2
三上延
(2019/09/07 06:20登録)
前作はドタバタした話も多かったが、今作はより動きが少なくなった。こちらの方が作風に合っていると思う。
シリーズ2作目であるが、前作同様、非常に丁寧に書かれている。3作目『UTOPIA 最後の世界大戦』のプロットが特に良かった。栞子の冴えも抜群だ。徐々に分かってきた母親の謎は次作以降に保留。これは読まざるを得ない。

以下どうでもいい話
前に東川さんの烏賊川市シリーズのドラマに関して、朱美役が剛力彩芽さんで、なんだかイメージと違うみたいなことを書いたのだが、当作品のテレビドラマの栞子役も剛力さんだったと聞いて驚いている。朱美以上にミスキャストだろう。当時ごり押しごり押し言われていたが、今になって納得。


No.130 5点 殺人はサヨナラ列車で
西村京太郎
(2019/09/05 02:30登録)
昭和63年の短編集。十津川班はほとんど登場しない。
①『殺人はサヨナラ列車で』
これは推理小説ではないかな。表題作だが一番見どころがない。
②『薔薇の殺人』
意表を突かれた。薔薇だが薔薇じゃないな。
③『秘密を売る男』
これも推理小説という感じではない。長編にすればよかったのに。
④『第六病棟の殺人』
精神病棟で起こった殺人。この亀井刑事はカメさんなのだろうか。
なんだか色んな意味で笑いどころの多い作品。
⑤『狙撃者の部屋 』
小品の割には見どころが多いのではないでしょうか。


No.129 2点 十津川警部 怒りと悲しみのしなの鉄道
西村京太郎
(2019/09/05 02:28登録)
この作家の本はこれまでに9冊書評しているが、全て昭和に書かれたものだった。今回は今年出版の新書本である。

話は警視総監誘拐という所から始まる。相変わらず壮大な導入部だ。その後は推敲とか一切なしで口述したものをそのまま文字にしたという感じ。昔、出口王仁三郎が一晩で数百首の短歌を詠んだとかいう逸話を思い出した。ここまで文章を整えようとしていない本は初めて読んだかもしれない。
それでも中盤は一応ストーリーの破綻はなく進む。これだけ量産してると他の本と内容が混ざったりしそうだが本書はそれはない。連載のためか、章初めで、前回までのおさらいのような文章が入る。この部分は、なんだか作者がストーリーを思い出すために書いているとしか思えない。こちらは同じことを2回、3回読まされてうんざりだ。
で、連載も最終回。残りページ数がなくなり、一応の推理はしたものの解決を投げ出したままで終わってしまう。

来年90歳の老人がいまだに年間10冊ほど書いているんだから、このくらいのレベルの作品になるのは当然であろう。東野さんの『超高齢化社会殺人事件』が90歳の作家でしたよね。あれを考えると、まだ一応読める作品になってるのはすごいのかもしれない。


No.128 6点 屋上の名探偵
市川哲也
(2019/09/02 20:07登録)
この作者は映画、小説、テレビ問わず学園物が大好きらしい。実際、読んでみるとそれがよくわかる。なんというか学園物好きが求めているツボを押さえている気がする。テレビドラマ化すれば人気が出そうだ。
ただし、キャラ付けが過剰なところは(映像化を狙ってあえてそうしているのだろう)好き嫌いが分かれそう。

殺人は起こらない。最終話は傷害事件だが、それ以外は高校で起こった不可思議な事件の謎を解くスタイル。トリックもいかにも学校らしい物が多い。ただこの本はどちらかといえば、トリックよりロジックで魅せる。派手さはないが全体的に丁寧に書かれていて好印象だった。


No.127 6点 寝台特急(ブルートレイン)八分停車
西村京太郎
(2019/08/26 02:35登録)
2時間ドラマ原作のトラベルミステリとしてはかなり上質な部類だと思う。普通の推理小説としてもまずまず。
相変わらず話のつかみはうまい。犯人はわかりやすいが、埋まりそうなのに最後のピースがなかなか埋まらないのが良い。話のオチもユーモアがあって楽しい。
マイナス点は、頭脳明晰な医者が最後にあんな性急な行動をするのは解せないこと。まあ、ああでもしなければ話が終わらないから、仕方ないと言えば仕方ないんだけど。

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