ねここねこ男爵さんの登録情報 | |
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平均点:5.65点 | 書評数:172件 |
No.12 | 8点 | マジックミラー 有栖川有栖 |
(2017/09/28 23:17登録) この作者の2大シリーズもの以外では最高傑作では。 ロジックよりトリックに比重が置かれていますが、切符の指紋など細かいところまでよく出来ています。長さもちょうどよく、無駄な下りもほぼなし。人物も結構好きです。 有名な『アリバイ講義』ですが、個人的には講義本体よりもそのあとの推理小説観にグッときました。 |
No.11 | 6点 | 幻惑の死と使途 森博嗣 |
(2017/09/28 23:00登録) この作者一番のおすすめ。 魅力的な謎の設定、シンプルかつ効果的なトリック、最後の視点の転換によるカタルシスなど、この人らしくない。他作品だと目立つ登場人物のナルシス臭もありません。 |
No.10 | 3点 | 笑わない数学者 森博嗣 |
(2017/09/28 22:52登録) ある程度推理小説を読み慣れた人なら、本文の前の見取り図を見た瞬間にトリックが分かる。 だからレベルが低いということではない。この作者は、文章やキャラ設定、台詞回しなどで斬新先進的革新的という雰囲気を出すのは上手いが、肝心の中身は古典推理小説の焼き直しに過ぎないものがほとんど。 探偵役(=作者)の「だって僕天才だもん」のナルシス臭もキツい。最後の一対一とかほんとキツい。「不定だ」「不定だ」布団で顔隠して足ジタバタしたくなるほどキツい。 なんつーか、『この本に込められた本当の狙いに、当然気づきますよね?』『ボクの本を理解できるのは頭のいい人だけです』として信者を作り出そうとしてるようにしか見えない。 登場人物も金持ちやエリートばっかりで、それに一目置かれる探偵=作者という展開がとても多い。なんかコンプレックスでもあるんだろうか。 とにかく思わせぶりなだけで中身がちょっと…。 |
No.9 | 8点 | 占星術殺人事件 島田荘司 |
(2017/09/28 22:40登録) メイントリックが秀逸。細かい部分もよくできていると思います。 某推理漫画に丸パクリされたのでトリックだけ知っているという人もいるかと思いますが、それを差し引いても楽しめます。 もっとも、最初の密室殺人での第一の推理(某推理漫画では真相になってたアレ)自体が海外の超有名短編まんまなのですが。もちろん作者は知っていて、そのため正解でなく否定される案にしたのでしょう。 冒頭の手記の凄まじい退屈さに我慢できるかどうかが全てです。 |
No.8 | 3点 | 斜め屋敷の犯罪 島田荘司 |
(2017/09/28 22:32登録) この作者は、不可能状況を作るのはいいとして、その解決に『意外だがスジの通った論理』や『シンプルだが効果的なトリック』を当てはめる能力がないのを誤魔化すために『子供だましのなんちゃって物理トリック』を乱用する傾向がありますね。んで、推理も『天才的探偵が思いついた。納得いかないヤツは凡才だから』。 死体がとても不可解な状態にあるのですが、その理由が「なんとなくそうしてしまった」って……1982年当時はこんなんでも許されたんでしょうかね。 読む価値なしです。腹が立つだけ。 |
No.7 | 1点 | 暗闇坂の人喰いの木 島田荘司 |
(2017/09/28 22:23登録) なぜこんなに評価が高いのか全く理解できない。 序盤の雰囲気と魅力的な謎の設定から繰り出される全て偶然の産物という酷い解決。 多少なりとも評価できるのは巨人の家の下りくらいで、メインの方はもう本当にひどい。この作者にありがちの『小学生の思いつきレベルの物理トリック』と『不可解なものは全部偶然そうなった』で、全く持ってお話にならない。デスノートを使っても『こんな死に方はあり得ないから心臓麻痺』になるレベル。 強風にあおられて屋根の上にまっすぐ着席とか意味わからない。バカにしてるのか。 要は、意外な犯人にしたかったけどアイデアが全く思いつかなかったので、『非力な人間にはこんなことは出来ない、よって犯人ではない』というくだらない論法をもってきただけ。しかも偶然によって。よくこれで売り物にしようと思ったな。 煽りでなく純粋な疑問なのだが、本作を高評価する人は「すごい!こんなに不気味で不可思議な謎が全部強風によって起こった偶然だったんだ!しかも何回も!おまけに事件前に描かれた絵と殺人現場が完全に一致するなんて偶然のちからってスゲー!高評価!!」と思うんだろうか。 |
No.6 | 7点 | りら荘事件 鮎川哲也 |
(2017/09/21 13:35登録) これでもかこれでもかと『推理小説によくある光景』を詰め込んだサービス精神旺盛トリック大盤振る舞いな作品。 『殺人現場に置かれたスペードのエース!』これですよこれ。 かなりたくさん殺されますが、一つ一つにそれなりに説得力を持たせてあるので違和感はなく楽しく読めます。 特に推理小説読み始めという人にものすごくおすすめ。 あと、初読時は「犯人を当ててやろう」とか思わず素直に楽しむことをすすめます。 (以下その理由 ネタバレ風味) フェアであることを念頭に置いて書かれているため、『連続殺人の現場に次々置かれるトランプの謎』をまじめに推理するとかなり早い段階で犯人が分かってしまいます。そうすると「ああ、だからこの場面を描くことでこいつが怪しまれないようにしているのか」と思ってしまい興ざめです。 |
No.5 | 10点 | 星を継ぐもの ジェイムズ・P・ホーガン |
(2017/09/21 13:16登録) 文句なしにおすすめ。 とても魅力的な謎の設定と、その解決時におけるカタルシス。 専門知識部分も説明してくれているのでストレスなく読めるかと。 登場人物もみんないい人w かなり古い作品のため、翻訳が少々堅苦しいかも。 |
No.4 | 3点 | 有限と微小のパン 森博嗣 |
(2017/09/21 13:06登録) ネットが未発達な時代に、海外で流行った楽曲や曲ネタをそのまま日本でやって大プロデューサーになった人がいた。本人は売れだしたとき「コイツらこんなんでいいのか…」と思ったそうな。この作者から同じ臭気を感じる。創作活動はバイトみたいなもんらしいし。 さて書評。 『賛否が分かれる』ということですが、これは…古典の焼き直し(つーかパクリ)では?これが許されるのは一番最初に書いた人だけだと思います。 探偵役は作中の天才wと過去に会っているのになんで気づかねぇの?(これ説明が見当たらない)ってのと、ヒロインがいちいち気絶しすぎで周りも止めろよって。 作者は特徴的なタイトル群や作中の雰囲気でなんとなく先鋭的独創的なイメージを持たせていますが、実はトリックなど推理部分は手あかのついたもの(古い=悪い、ということではない)で、解決も『天才である探偵役が思いついたからそれが真実だ』というものばかり。 悪意のある表現をするなら、『過去の名作を焼き直してストーリーテリングや登場人物の雰囲気作りで面白いように勘違いさせるのが上手』ということになるでしょうか。 あと本作に限らないこの作者の悪癖として、『作中で使われるトリック等の不自然さ無理矢理さをフォローするために作中で延々とその言い訳をする』というのがあります。言い換えると、この作者の著作物で世の中や人間心理の曖昧さが繰り返し述べられているのが目についたらトリックのエクスキューズ(と言うかネタバレ)です。そんなことをするということは作者本人も無理矢理さに気づいているわけで、それならこんなもん書くなよと言いたい(編集者が無理やりねじ込んでるのか?)。 もちろんそれで売れる作品を数多く世に出しているのですから素晴らしく力量のある作家ということになりますねぇ。さすがメフィスト賞を象徴する作家。 |
No.3 | 10点 | 孤島パズル 有栖川有栖 |
(2017/09/21 12:51登録) タイヤの跡を起点とするロジックが超秀逸。 不合理なはずのタイヤ痕のせいで「変なことになったりはせえへん。犯人が判ってしまうんや」… 奇妙だが必然的な犯人の行動、事象を論理一本で解明していくのは圧巻。作者のベスト作品かと。 それから、この作品の密室は密室史上屈指の美しさだと思うがいかがか。 『ロジックよりトリック』『どんでん返し!意外な犯人!衝撃の真実!』な人は読んではいけません。 |
No.2 | 7点 | 体育館の殺人 青崎有吾 |
(2017/09/21 12:37登録) 推理部分はかなり良くできています。 全体のテンポもよくサクサク読めます。 続編だとかなり鼻につくテンプレラノベ臭も、今作は気になりませんでした。 ただ、他の方も書かれているとおり放送室のロジックに穴があります。 それから、物証が『そのものずばり犯行の痕跡』なのか『犯人のミス』なのか『犯人の仕掛けた罠』なのかの判断基準がご都合主義的なのがほんのちょっと気になりました。 この作品に限らないやむを得ない部分だとは思うのですが、少し気を使って欲しかったかも。 全体的にはおすすめです。面白かった。 |
No.1 | 5点 | 水族館の殺人 青崎有吾 |
(2017/09/21 12:13登録) 本体である推理のロジック部分はよくできていて楽しめる(他の方も書かれているが足跡が入り口まで続いているのが意味不明。作画のミスか?)。 問題なのは小説部分で、個人的には読むのがなかなか苦痛だった。 この作者はメディアミックス欲が先行するあまりアニメウケするテンプレに沿わなければいけない強迫観念が強すぎる。 こういう『ノリ』なのは前作で分かっていたけど、今作はそれが前面に出すぎていて、 ①会話やドタバタの大半が無意味(いわゆるテンプレばっかり) この作者は『普通の人物』を書くつもりがないのか書き分ける力量がないのか、登場人物が見事にテンプレそのままで、会話やドタバタもありがちな『オイシイ場面』のオンパレードで不要なものばかり。「こういうのいいでしょ?楽しいでしょ?」の押し付けがキツイ。 ②作者が①を書きたいあまりに登場人物が人格障害としか思えない テンプレ通り『頭が固く物わかりの悪い大人』が『生意気で変人だけど有能すぎ俺つえーw』に振り回される様子を書きたすぎて無理やり突っ込んだためかなり不自然。警部さんが人格障害レベル。自分で呼んでおいて「とっとと帰れ!」って、アタマ大丈夫か?さすがに不自然だと思ったのか作中でも「呼んでおいて扱い悪くない?」「お前に頼んだのはアリバイ崩しだけ」と言ってフォローはしているけどね。 あと、ドタバタを書きたいのは分かるけど、乱暴にエアコン(のリモコン)壊したりスマホを叩き落しておいて逆切れする刑事妹はさすがに頭おかしい。作中だと変人扱いの探偵役だが実はだらしない以外は結構まともで、警察陣営と刑事妹がかなり異常者。 ③最後の一対一が白々しい 多分作者が「テンプレばっかりじゃなく俺ってこういうのも書けちゃうんだぜ!」ってやりたいんだろうけどね。最後だけまじめに手品するマギー司郎か。 ④続編に登場させる気満々なのはいいが不要な登場人物+章が多すぎ 卓球の試合のくだり丸々いらん。なんだこれ? あるあるの集合体ゆえ話がとてつもなく不自然なこと、あるあるに当てはまらない人物を登場させると途端に影が薄くなることが目に付くかつかないかで評価が分かれるだろう。 繰り返すが、推理部分はよくできている。物理的に苦しいのは目をつぶろう。…理系学部を出た人間なら分かってもらえるだろうが、再現性の厳しい現象は本来採用しないんだけどね。 |