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ミステリの祭典

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ねここねこ男爵さんの登録情報
平均点:5.65点 書評数:172件

プロフィール| 書評

No.72 3点 風ヶ丘五十円玉祭りの謎
青崎有吾
(2017/11/04 23:01登録)
ん〜〜〜〜これはちょっと…擁護できない。ミステリ的でない話のほうが良く出来てます。ミステリ的なものだと二色丼の話かな。

表題作があまりにも酷くてびっくりした。『五十円玉二十枚の謎』に挑んでものの見事に滑っている。違った意味で衝撃の真実。

この作者の作風というか悪癖で、解明の論理を先に作り、論理に合うように舞台をオーダーメイドするため、舞台設定が歪んで不自然と言うのがあります。例えば二色丼ってのは「こういう推理をしたいから二色丼ってのがないと困るから作った」んでしょう。時間的人的に高コストな二色丼が現実の学食にあるとは思えない。いや二色丼の創造くらいは別にいいんですが、表題作みたいに舞台不自然、論理強引、真相は意味不明なまでに歪んじゃってると…
ロジックものの名作は、例えばポットに残った湯の量みたいな些細なことから見事な論理を構築することに素晴らしさがあるわけで、「ボクはこういう公式を作りたい!とにかく作りたい!だから公式として成立するように定義を変えちゃえ!」なんてダメのダメダメです。

以下表題作のネタバレと批判。
祭り後に落ちてるお金を拾っていた連中が、もっと利益を上げようとして①使用硬貨を50円に限定→②流通量増加→③落とす確率増加→④ウマーということ。カウントや運搬に大支障が生じるので猛反発を食らうはずというのには目を瞑るとして、②→③って因果関係あるのか?(この作者はとにかくこういう独りよがり疑似論理が多い)。そもそも一人あたりの流通量の増加じゃなく人の増加そのものが原因じゃね?ってのと落としても祭りの人手では回収困難ってのが落ちてる理由じゃあ。さらに③→④が?実際の祭りのあとだと500円玉も結構落ちている。当たり前だけど50円玉10枚分だ。作者の大風が吹くと桶屋が儲かる論理なら誰かが500円玉1枚落とす確率より複数人が50円玉合計11枚落とす確率と頻度のほうが大きいということになるが…?


No.71 6点 シャドー81
ルシアン・ネイハム
(2017/11/04 22:18登録)
各所でやたら評価が高いので頑張って探して読んでみたが、面白いことは面白いけど言うほどかな?というのが正直な感想か。

ハイジャックの設定はドキドキするし、実行してからは犯人の謎指示の意味が次々明らかになり適度に危機もありで面白い。
が、準備フェーズがあまりにも長く淡々として正直退屈。気付かないように伏線張ってんのかなと思ったら全く張ってなかった。「ぼくのかんがえたさいきょうのじゅんびをみて!」をダラダラと。現代の作家ならこの準備段階での些細なミスや妥協がのちのち主人公を追い込んでいって…とか、実行犯の正体を追跡する捜査の手が徐々に…とかするんだろうけど、順次計画通りでほぼ完璧にうまくいく。危機も偶発的なアクシデントばっかりで計画が段々破綻していくような追い詰められる感がない。そういった部分でもっと面白くなったんじゃないかな〜と思ってしまった。
この時代にこれだけの、という価値はあるが現代のこの手の小説は完全上位互換なので、本作は探してまで読まなくても良いかと。


No.70 5点 モルグ街の殺人
エドガー・アラン・ポー
(2017/11/04 21:52登録)
今の評価基準だと厳しい点数になるでしょう。
読むとミステリの型は誕生と同時に完成していたことが分かります。探偵の変人設定もw

ポーはこの作品をもってミステリの生みの親と言われますが、子は親の想像とは違った道を歩んだような気がします。
手品に例えるなら、ポーは手品により起こる不可思議な奇怪な現象を表現したかったのであり、タネはそれが実現できるものであればそれでよかった(本作の犯人がアレですし)。
ところが後続の作品は現象よりもタネ自体、もしくはタネ明かしの独創性や緻密さに重点が置かれるようになっています。現象に怪奇や独創性は必ずしも求められなくなっています。手段の目的化というやつですね。
もし前者の道を歩んでいたらどうなっていただろうなぁ…と想像しながら読むと楽しいです。歴史的価値を含めて必読でしょう。

個人的に本体よりも前フリの「チェスはより聡明な指し手ではなくより注意深い指し手が勝つ」がお気に入りです。


No.69 7点 さらば愛しき女よ
レイモンド・チャンドラー
(2017/11/04 21:30登録)
本国だと「長いお別れ」よりも本作や「大いなる眠り」の方が高評価だそうで、自分も本作の方が好きです。

翻訳は…旧訳新訳どっちもそれなりにクセがあるので少し目を通してからお選びください。自分は旧訳。


No.68 6点 帽子から飛び出した死
クレイトン・ロースン
(2017/11/04 13:48登録)
うーん普通に素晴らしいけど普通です。密室ものですが、真価はそこ以外かと。出来はいいですが特筆すべきところもなく、評価は高いですがマイベストに上げる人はいないみたいな。
「密室講義」にひとこと言いたかったみたい。
アマゾンが未整備な時代にあちこち探しまくってようやく入手した思い出がありますが、そこまでして読むべきかというと…


No.67 6点 点と線
松本清張
(2017/11/04 12:48登録)
大きな社会派ムーブメントを生み出した作品だそうで。

旅行雑誌に連載された作品ゆえの大人の事情があるのか(だから社会派って言うのかも)、苦しい部分が多いですね。批判も昔からあるみたいです。
①連載時の次回へのヒキのためか、探偵役が当然気づくべきことになかなか気づかない
②有名な「空白の四分間」と「あさかぜ」の利用は連載雑誌の要望だそうで、かなり強引にねじ込んでいるゆえ全体が歪んでしまった
③②もそうだが、犯人は被害者をものすごく上手く誘導しなくては犯行が成立しない設定(と言うか催眠術でも使わないと無理)なのだが、どうやって誘導したかが全く書いてない!

文庫本の解説で③に触れなかったのはミス、みたいなことが書いてあったように記憶していますが、これは巧妙なフォローで、本当は誘導が困難で書きようがないので書かないことで誤魔化した、解説者はそれを分かっていて触れ忘れということにしてあげた、というところでしょう。優しい世界。
今の物差しだと厳しい評価になるでしょうが、ここからミステリがどのような方向に発展したかを知るためにも必読かと思います。
ちなみに皮肉なことに鮎川哲也氏が本作の完成形を示してくれています。


No.66 4点 キドリントンから消えた娘
コリン・デクスター
(2017/11/04 12:25登録)
人によってはとんでもない名作になるんだろうなぁと。
どんでん返しより緻密さ、トリックよりロジックな自分もこれは合いませんでした。

推理の構築と破壊の繰り返しはこの作者の作風で、それはいいんですが一つ一つにあんまり緻密さや感動が無いように思え、結論も「いくつか正解の候補を考えてとりあえずコレにしましたわ」な感じが…。

大分昔に「ウッドストック行き〜」と二冊買いして読み切りましたがウッドストックも同印象。


No.65 4点 誰彼
法月綸太郎
(2017/11/04 12:12登録)
コリン・デクスターの手法を取り入れたということでなるほど納得。
作者の他長編でも推理の試行錯誤はありますがここまでではありません。正直他長編と比べるとかなり落ちる印象。それはミステリの仕掛け部分ではなく上記の手法に原因があるように思います。
一つ一つはさすがの素晴らしさだけに、幾つかに切り分けて数篇の短編にしてくれたらよかったなぁ…と思ってはいけないことを思ってしまいました。

初の法月作品がコレになる人がいないように祈るばかりです。惜しい。


No.64 5点 ウッドストック行最終バス
コリン・デクスター
(2017/11/04 12:01登録)
ロジックものは本来大好物なんですが、これは馴染めませんでした。他作品も結構読んだんですが…

推理を構築して破壊して構築して…ですが、リズムが平坦に思え、特に中盤は忍耐を強いられました。トンデモ推理も無いわけではなく、カタルシスを感じられないというか。残りページ数から「この推理も間違ってるんだろうな〜」と思ってしまいます。

英国の作家さんだそうで違和感になんとなく納得。
数学はフランスで発展した部分が多いのですが、数学的帰納法などの分野は英国で発展したそうで、高校数学なんかだとそこが他分野と比べてかなり異彩を放っています。「コレが産業革命を起こした国の思考法か…」と今回と同質の違和感を感じましたね。

なので、とてもおいしい料理なんだろうけど、口に合わなかったのでこの評価です。ごめんなさい。


No.63 9点 法月綸太郎の新冒険
法月綸太郎
(2017/11/04 10:04登録)
どんでん返しというか、構造の転換もの中心。
本筋以外でひっかかった所として、
「身投げ女のブルース」女性のコレを手掛かりにするのはすごいw刑事コロンボで近いものを見たことがあるくらい。
「リターン・ザ・ギフト」犯人はなぜ不要な事件を起こしたか?の理由が切ない。

法月綸太郎氏の短編集はやはり素晴らしいキレ味。


No.62 8点 邪馬台国はどこですか?
鯨統一郎
(2017/11/03 02:43登録)
テンポがよくてストレスなく読める。
特に前半はとっても楽しい。表題作は本当にそうだったらとてつもなく愉快だなぁ…と。個人的には一話目がベスト。
明治維新と推古天皇について、自分もずっと引っかかっていたことに触れてくれていたので嬉しくて評価に加点。


No.61 3点 新・日本の七不思議
鯨統一郎
(2017/11/03 02:32登録)
邪馬台国はどこですか?に比べるとかなり落ちる。
というか、何のために書かれたかよく分からない短編集。
前作で言い足りないことを言いたかったのか?
二匹目のドジョウを狙ったのか?


No.60 7点 白い兎が逃げる
有栖川有栖
(2017/11/03 02:07登録)
粒揃いの短編集。
この人はワンアイデアを手堅くまとめるのが上手いです。
地下室の処刑の『なぜ死刑執行直前に毒殺したのか?』は結構好きです。

どんでん返しと衝撃の真実が好きな人は読んではいけません。


No.59 8点 時計館の殺人
綾辻行人
(2017/11/03 01:55登録)
館シリーズ最高傑作。
館シリーズにおける建造物のご都合主義的構造(隠し部屋隠し通路)はフェアな描写をされていながらあんまり好きではなかったが、本作はそういうこともなく派手な仕掛けを楽しめる。
発表当時のインパクトは十角館の方が上だったのだろうが、ミステリとしては本作の方がよく出来ている。


No.58 4点 日曜の夜は出たくない
倉知淳
(2017/11/01 23:30登録)
評価高いですが、自分はイマイチでした。
一話目で「あん?」と思ってしまったからかもしれませんが…探偵役がさかんに数学は苦手、とアピールするのは、トリックの強引さは重々承知しているから見逃してくれ、という作者のエクスキューズでしょう。そもそも数学じゃなくて物理だし。
日常の謎を扱った話はよく出来ているかと。
猫丸先輩に好意的な評価が多いですが、個人的には「人間的にはどうかと思うが推理力だけは突出してる変人」というありがちな名探偵キャラに過ぎないように思います。


No.57 8点 カラスの親指
道尾秀介
(2017/11/01 23:16登録)
ほのぼのクライムノベル。
読後感も悪くないし、読みやすいし、適度にどんでん返しもあるしでオススメ。

漫画的ご都合主義的展開がありますが、本格ミステリじゃないので目くじら立てずにそれを楽しみましょう。


No.56 8点 葉桜の季節に君を想うということ
歌野晶午
(2017/11/01 14:47登録)
執筆当時の流行りに上手く乗っかった作品(褒めてます)。この手の仕掛け全盛時だったと記憶していますし、個人的に仕掛けもこの作者も本来大嫌いですが、本作は読める。多分、本質的にミステリじゃないからだと思います。
本作の書評のされかたからして難しいとは思いますが、出来るだけ予備知識なくミステリとしてでなく楽しんで欲しいと思います。

評価として公正ではないですが、タイトルがすごくお気に入りなので加点。ごめんなさい。


No.55 4点 7人の名探偵
アンソロジー(出版社編)
(2017/11/01 14:33登録)
正直言って期待はずれ。
自分の短編集には載せられない捨てネタを再利用してみた感。正統派なのは有栖川有栖氏と法月綸太郎氏のものくらいか。まぁせっかくのお祭り短編集にまともなものを書いてもしょうがないって事かもしれませんが。
自分の感受性の低さ故でしょうが、我孫子武丸氏の作品はスベってるような気がしました…


No.54 6点 水車館の殺人
綾辻行人
(2017/11/01 14:24登録)
犯人と大まかな仕掛けは構成からミエミエですぐに見当がつくので、その精度と、あとは「それ以外の要素」がどの程度か?と言うことになるかと思いますが、「それ以外」がほとんどなかったので…。そもそも舞台が水車館である必要がないでしょう(このツッコミは野暮だとは思いますが)。それからあくまでトッピング要素で本筋にはほぼほぼ無関係かつ充分に存在を匂わせてはいますが、やっぱり後出し隠し部屋は個人的に萎え要素です。
気に入ってるのは清純そのものの美少女が実はどうしようもないビッチだったというところw


No.53 2点 長い家の殺人
歌野晶午
(2017/10/29 05:54登録)
個人的に読んだ推理小説の中で最もつまらなかった作品。

見取り図どころかタイトルだけでトリックが分かる…のはいいとして、すべてがミステリあるあるの継ぎ接ぎでだいぶダメ。
なんと言うか、『ミステリオタクが有名作をあれこれパクって自信満々でオリジナルだと言いはってる』感。解説を読むと作者はトリックを見破られたのが相当ショックだったそうで、嘘でしょ?と思った。
登場人物もまるで魅力がなく、ミスリードも見え見えで、あんな暗号作るもんか。
こういう未熟だけど一生懸命さがある作品には寛容でありたいんだけど、本作は漂う作者のナルシスっぷりがどうしてもダメだった。

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