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ミステリの祭典

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パメルさんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:658件

プロフィール| 書評

No.118 6点 動脈列島
清水一行
(2016/11/30 01:08登録)
新幹線の騒音・振動公害を許せない主人公は公害を根本的に解決するためにいくつかの
要求をし受け入れられないならば✖月✖日に新幹線を転覆させるという予告があるタイムリミットサスペンス
Xデーに目的の犯行をやり遂げるのかもしくは阻止させるのか警察組織との知恵比べは読み応え十分
また非常線を突破するトリックも中々良いアイデアだと思う
楽しめる部分も多いのだが犯人が運が良すぎるというか警察が無能すぎるというかそういう箇所がいくつかあり今一つのめり込めなかった


No.117 7点 人喰い
笹沢左保
(2016/11/23 01:01登録)
本格推理小説の技巧と哀愁のロマンに満ちたストーリーが融合している
トリックは先入観と錯覚を巧みに使われていて読者を欺くための仕掛けが惜しげもなく使われている
姉の名誉のために真相を追及していく妹がある矛盾点に気が付く
この妹がいい味出していて魅力的
数々の小道具・細かいところに仕込まれた伏線そして犯人の意外性と作者の妙技が堪能できる作品


No.116 6点 告訴せず
松本清張
(2016/11/17 01:00登録)
不正な政治資金を持ち逃げした主人公はさらに資金を増やそうと日本古来の占いを信じ素人は手を出さない方が良いとされている小豆相場で賭けに出る
一方奪われた側も主人公に少しずつ恐怖を与え心理的に痛めつけ窮地に追い込んでいく様子が巧みに描かれて引き込まれる
ただある人物の裏切りを感じさせるような描き方は駄目だったと思う
そのため予想通りの展開に予想通りの結末と先が見えてしまった
落ち着くところに落ち着いた感じが残念


No.115 7点 大いなる幻影
戸川昌子
(2016/11/13 01:15登録)
老朽化した女性専用のアパートが舞台
登場人物の老女たちはそれぞれが孤独で秘密を抱えながらも他人の秘密に興味を
持ちながら生活をしている
それぞれの人生の断面を残酷にえぐり陰鬱な雰囲気に満ちている物語は二転三し惹きつけられる
冒頭で提示された謎が最後に収束する展開はお見事
タイトルも秀逸


No.114 5点 ビッグゲーム
岡嶋二人
(2016/11/08 23:05登録)
野球ミステリ
野球の専門用語が飛び交うためある程度野球の知識が無いと何を言っているのかわからないかも知れません
情報が他チームに漏れているのではないかそして内部にスパイがいるのではと疑心暗鬼になっていき不可解な事件が発生する
謎が謎を呼ぶようなスリリングな展開が楽しめる
ただ動機が弱いし罪を犯さなくても違う方法で解決できたのではと感じたため減点


No.113 7点 ゼロの焦点
松本清張
(2016/11/02 01:07登録)
推理小説としての読みどころは夫の失踪の謎と連続殺人事件の解明だが物語の焦点は
占領下の日本のある悲劇に絞られていく
北陸各地の風景描写の表現力の高さに驚くと共に純文学を思わせるような美しさまで覚える
ミステリとしては弱いが文学として質の高さを感じる作品
タイトルは秀逸だと思う


No.112 6点 明治断頭台
山田風太郎
(2016/10/28 12:36登録)
明治初期の警察組織がまだ確立されていない治安の悪い東京が舞台
六編からなる連作短編が長編化する形式で書かれている
明治時代ならではの物を使った物理トリックには一部にコントのように感じてしまったトリックやご都合主義的なトリックがありあまり好みではない
ただ歴史上の人物が数多く描かれており作者ならではのユーモアもあって楽しい
最終章ではそれまでの短編に残された伏線を一気に回収し意外な結末に驚かされた


No.111 6点 龍の議定書
多島斗志之
(2016/10/24 13:22登録)
国際謀略サスペンス
中国の鄧小平と台湾の蒋経国を握手させるというスケールの大きな設定
中国と台湾の接点として孫文を使い孫文ブームを巻き起こし実現させようと
計画を練っていく
ところが次々と怪事件が発生し思いがけない陰謀が隠されていることが判明する
物語は二転三転しどんでん返しも用意されている
ただ孫文の人物像や辛亥革命を成功に導いたことなどが延々と語られ
物語がなかなか進まない点が減点材料


No.110 7点 金雀枝荘の殺人
今邑彩
(2016/10/20 01:05登録)
窓は全て内側から釘が打ち込まれておりドアも内側からカギがかかっている密室状態で
七人の死体が発見される
リレー形式で殺し合いが行われたのではないかという不可解な現場状況と同時に
グリム童話の見立てにもなっている
館の雰囲気は綾辻行人の「霧越邸殺人事件」に似ていていい感じ
サスペンスにホラー色を混ぜた感じで物語は進んでいく
人物描写・揺れ動く心が丁寧に描かれている
真相は悲劇的だが後味は悪くない


No.109 5点 天狗の面
土屋隆夫
(2016/10/16 01:00登録)
村の合併をめぐる村議選の対立に新興宗教が絡み殺人事件が発生する
誰もが毒を入れる機会が無かったと不可能犯罪を匂わせている
この毒殺トリックは信者を巻き込んだ心理トリックが使われており予測出来てしまった
心理トリックは成功する気がするが肝心の物理トリックに無理がある
映画のポスターをそれに結び付けて説明している点も不満
余談ですが誤断トリックとしてクイーン・坂口安吾・バークリーの有名作品のネタバレ
しているので注意が必要


No.108 7点 天国は遠すぎる
土屋隆夫
(2016/10/13 01:09登録)
鉄壁と思われたアリバイを刑事の師弟コンビが何度も挫折を繰り返しながら
執念を燃やし真相に立ち向かっていく
この間のコンビの会話も中々味があって良い
そしてある言葉をきっかけにヒントを得て物語は急展開する
盲点を突くようなトリックが使われており実現も十分可能な点も好印象


No.107 6点 暗い傾斜
笹沢左保
(2016/10/10 22:40登録)
男女の人間関係が愛憎と欲望で複雑に入り乱れている
独特の情緒があり雰囲気は楽しめる
ある事件の容疑者になることにより実際に犯した事件のアリバイを成立させるという
トリックはなかなか面白いと思った反面心理的な誘導を必要とするため実現可能かと
いうと少々疑問が残る


No.106 6点 殺しの双曲線
西村京太郎
(2016/10/07 12:47登録)
東京での連続強盗事件と東北の雪に閉ざされた山荘での殺人事件が交互に語られていく
双生児のトリックを使うと明言している点とこの事件がどのように繋がっているのかと
興味をそそられる
テンポが良くリーダビリティが高い点は評価できる
ただ緊迫感が足りないし動機も今一つ


No.105 7点 幻の女
ウィリアム・アイリッシュ
(2016/10/02 12:08登録)
死刑宣告された主人公がアリバイを証明するために一夜限りの食事を一緒に
した「幻の女」を探し出し刑の執行までに無実を証明出来るかという
タイムリミットサスペンス
全体的に緊迫感に包まれている点やスリリングな展開そして当時のニューヨークの雰囲気が目に浮かぶように描かれていて好印象
ただ見ているはずの多数の人物が誰も見ていないと証言する真相が強引さを感じる


No.104 6点 ウォッチメイカー
ジェフリー・ディーヴァー
(2016/09/26 01:17登録)
犯行現場に置時計を残すウォッチメイカーと名乗る連続殺人者
また会計士自殺偽装事件
この二つの事件がどこかで繋がっていると思いながら読み進めていく
どんでん返しが連続する終盤は前半部分に後半に繋がる多くの伏線が
あったことが分かるにしても無理がある展開
どんでん返しが多すぎて焦点がぼやけてしまった感がある
エンターテイメントとしては楽しめます


No.103 6点 影の車
松本清張
(2016/09/21 13:33登録)
七編からなる短編集
悪くは無いのだが作者の良さが出ているかといえば疑問が残る
得意の社会の暗部を抉るとかドロドロとした愛憎で緊迫感や駆け引きで
引きずり込んでほしかった
トリックで驚かせようとかフーダニット・ハウダニットで楽しませるとかの
作品では無いのだからこの点が弱いと魅力が半減してしまう


No.102 6点 殺人者志願
岡嶋二人
(2016/09/18 11:37登録)
返すあてのない借金に切羽詰まり殺人を請け負う夫婦
密室殺人を企てるのだが土壇場で躊躇してしまう
証拠隠滅のために現場に戻ると考えられない光景が・・・
奇怪な罠が次々と仕掛けられている
斬新な構成と型破りなユニークな展開
夫婦の軽妙な会話も楽しい
サスペンスとしてはおとなしめ


No.101 5点 私が彼を殺した
東野圭吾
(2016/09/09 10:51登録)
フーダニットに特化した作品で物語自体に面白みは感じられない
「犯人は誰だろう」と推理しながら読み進めることに一番の魅力を感じる方にはオススメ
物語の雰囲気や世界観・スリルなどを味わいたい方には物足りなさを感じるでしょう


No.100 9点 霧に溶ける
笹沢左保
(2016/09/05 11:16登録)
量産型作家として敬遠されがちな作者だがこれは傑作
ミスコンを巡って続発する怪事件
さまざまなトリックが詰め込まれ周到に張られた伏線から導かれる真相
絡みに絡み合った人間関係の構図が明らかになっていく
フーダニット・ハウダニット共に十分に楽しめる贅沢な作品
最後のオチもいい味出している


No.99 8点 眼の壁
松本清張
(2016/09/02 12:21登録)
実際にあった事件を元に描かれたのではないかと思わせるようなリアリティさがあり
引き込まれていく
主人公は背後にある悪の組織に危険を感じながら友人の新聞記者と共に詐欺の首謀者を追う
物語は東京・名古屋・美濃路へと急転していく
巧みな心理描写が冴えるサスペンスでリーダビリティも高くスラスラ読める
個人情報がダダ漏れしている点が現代では通用しないが古臭さは感じさせない
社会派小説が好きな方は是非読んで頂きたい一冊

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