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ミステリの祭典

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轢き逃げ

作家 佐野洋
出版日1970年01月
平均点6.00点
書評数5人

No.5 7点 測量ボ-イ
(2020/10/16 19:18登録)
存在は30年以上前から知っている作品で、今回ようやく拝読。
(なぜもっと早く読まないんだ?)
この作品も、あらすじ読んで読んでみよう・・・という気になり
ますよね。

さて肝心の中身ですが、やはり構成の妙に目が行きます。
(具体的なところは他の評者さまとかぶるので省略)
犯人の意外性もまずまずで、発覚する過程がいかにも女性目線
ですようね(ネタばれすみません)。

でも全体的には良作です。
1970年の作品。小生にはあまり古さを感じませんが、平成
生まれの方にはやはり古臭いか?

No.4 5点 nukkam
(2018/10/05 21:52登録)
(ネタバレなしです) 1978年に某ミステリー専門誌で識者による「日本長編推理小説ベスト99」が発表された際、佐野作品では「一本の鉛」(1959年)、「透明受胎」(1965年)、そして1970年発表の本書が選ばれました。轢き逃げ死亡事故に始まる展開がニコラス・ブレイクの「野獣死すべし」(1938年)を連想させます。ブレイクは物語の前半を被害者の家族の視点1本に絞りましたが、本書では犯人側や警察側の描写も織り込んで犯罪小説や社会派推理小説要素も見せているのが作品個性になっています。後半になると本格派推理小説のプロットに転じるところがまたブレイク風ではありますが、探偵役のジャーナリストが被害者の家族と不倫関係にあったという設定は読者の好き嫌いが分かれるかも。単なる犯人当て謎解き小説ではなく複雑な人間ドラマを形成している力作ではあるのですが、手を広げ過ぎて冗長と感じる読者もいるかもしれません。

No.3 6点 パメル
(2017/06/27 01:02登録)
小紙文化面に掲載された追悼文で「骨法正しい謎解きミステリを現実社会と緊密に結びつける作風を松本清張氏より引き継ぎ発展させた第一人者は佐野洋氏にほかなりません」と宮部みゆき氏が語っている
この作品も思いも寄らない事件により被害者・加害者またその周りの人物の人生が変容しそれによりフーダニットとしての面白さが増していく
本格ミステリであると同時にサスペンスでもあり新聞記者出身らしい社会派の視点も備えており現代社会の深淵をとらえた感性が光っている

No.2 7点 斎藤警部
(2016/02/16 13:13登録)
力も入った事だろう、稀代の短篇名手が二部構成の大長編を完遂。愛人を伴っての轢き逃げ事件を巡り、第一部は犯人側視点で犯罪隠匿のサスペンス、第二部は被害者側視点で犯罪暴露の謎解き。ところが、犯人側と被害者側、それぞれ一枚岩で単純に追われる者と追う者の立場とだけは言えないものになっており。。 登場人物割と多く、人間関係何気に錯綜。 言ってみりゃ堂々の社会派本格ミステリ。社会派要素はどちらかと言うと物語の核心より表層寄りに位置しているが、作品の快い緊張感をキープするには不可欠な助演級スパイスだ。

さてこの力作、必ずしも作者のベスト・オヴ・ベスト級にならなかった(ように私には思える)のは、紙面に余裕がありどうしても幾ばくかの構造の緩みが生じてしまった所為かしら。昔はいざ知らず今や本作が「佐野洋の代表作と言えば何を措いてもコレ!」的な存在になっていないのは、短篇巧者の称号を掲げる作者にとってイメージが混濁せずラッキーなのかも。余計なこと言い過ぎましたが、かなりよく出来た面白い小説ですよ。昭和ミステリ好きなら必読クラスでしょうね。

No.1 5点 kanamori
(2010/08/02 17:26登録)
突出した傑作がないが駄作も少ない著者の、「一本の鉛」とともに代表作と言われる本書ですが、個人的にはあまりいい印象がない作品。
前半が轢き逃げ加害者視点のサスペンス、後半はその加害者が被害者となる謎とき本格編と構成に工夫がありますが、社会派に影響をうけたような前半部が冗長であまり楽しめなかった。

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