風桜青紫さんの登録情報 | |
---|---|
平均点:5.62点 | 書評数:290件 |
No.250 | 5点 | 桜と富士と星の迷宮 倉阪鬼一郎 |
(2016/05/22 12:39登録) 文章トリックはすぐにわかったが、叙述トリックのほうが想像以上にイカれていた。こりゃあ酷い……。しかし複線はしっかりと張られており、ふふっと笑えたので5点。著者近影が笑える。 |
No.249 | 6点 | 真実の10メートル手前 米澤穂信 |
(2016/05/03 17:28登録) 表題作の「真実の10メートル手前」はこの作者としては久しぶりに小さな推理を重ねて話を進めていくタイプの作品だったが、『氷菓』や『さよなら妖精』からの成長が確かに感じられた。……が、オチが「死人宿2」でげんなりしてしまった。いい加減、先が読めるし、食傷気味である。これで少し不安になってしまったが、続く「正義漢」は、違和感のある状況から、はっとさせる結末にもっていく、この作者の本領発揮ともいえる作品で、やや持ち直してくれた。「恋累心中」もつっこみどころ全開なのはさておき、伏線の回収の巧みさと意外な結末を見せつけてくれてなかなか楽しめた。「名を刻む死」はなんともしょうもない話で笑った。迷惑じいさんを追い払うのにわざわざ「切り捨てる」という言葉を使わせるあたり、「道徳の逆こそ正論だよね」みたいな作者のしょっぱい意図が読み取れる。「ナイフを失われた思い出のなかに」は期待が大きかったぶん、やや肩透かしだった。日本人が書いた西欧人の一人称には悪い意味で鳥肌がたってしまう。しかし『さよなら妖精』の後日談という意味ではそこそこの出来か。「綱渡りの成功例」もベタな米澤短編だが、なんか面白かった。シリアルが 美味しそうだからか。 『満願』と『王とサーカス』のボーダーライン上の作品だが、正直この二つより面白かった。米澤の本格ミステリ作家としての実力を印象づけてくれる作品である。 |
No.248 | 5点 | 王とサーカス 米澤穂信 |
(2016/05/03 17:04登録) 知り合いからの評判があまりよろしくなかったので、ハードルを下げて読んだ。……そこまで悪くないと思うが、かといって面白いかといわれるとなんとも微妙で、平均的な米澤穂信の作品だという印象だった。 わりと本格としては凝ったつくりなんだが、真相がやや予測しやすく、先行きが気になる謎もなければはっとするどんでん返しもない。となると読ませどころはセンドーの葛藤と成長……なんだが、こちらもいかんせん月並というか軽いというか、虫警部氏のおっしゃる「いかにも」という言葉がふさわしいように感じる。 筆致は落ち着いてるし、話のまとまりもそれなりにあるから、読ませはするけども、ラストシーンの大袈裟さほど余韻の残る読後感ではなかった。第二の『折れた竜骨』を想定していたが、どちらかといえば、第二の『追想五断章』だった。 |
No.247 | 4点 | 猫は知っていた 仁木悦子 |
(2016/04/17 18:57登録) 読んでいて少々疲れた。「日本のクリスティー」ということで期待して読んだが、クリスティーらしいミスリードはこれといってなく、この時代にありふれてそうな機械トリックに落ち着いてしまったのが残念。クリスティーらしさはプロットよりもテイストのほうにあるのだろうが、主人公とアニキをのぞけば、気になる登場人物がこれといっておらず、読みづらさのほうが印象に残ってしまった。「仁木悦子のテイストがたまらない」という人ももちろんいるんだろうが、私には合わない作風のようだ。 書評ページに「トリックに無理があるが、ロジックはしっかりしてるので無問題」というわけのわからん感想があってなんか笑った。もはやロジックってなんだよ。 |
No.246 | 7点 | コリーニ事件 フェルディナント・フォン・シーラッハ |
(2016/04/17 18:29登録) 新米弁護士を主人公にすえたことで、これまでのシーラッハ作品よりテーマががわかりやすくなった分、奇妙な味はやや薄めになった。しかし、物語自体はいつも通り、「物事は込み入っていることが多い」というようなテイストである。 マイヤーのキャラを気に入っていたので、彼に対して否定的な流れのままで、話が結末を迎えてしまったことがやや悲しい。とはいえ、この作品を「ライアン弁護士の成長物語」と考えれば、それも仕方のないことなのか。 ラストが少々残念だったので6点にしようか迷ったが、読んでいて面白かったのは事実なので7点にしておこう。しかしまあ、この作品に「感情の起伏や葛藤が描かれていない」というような感想が飛び出すあたり、日本でシムノンがうけない理由がなんとなくわかる気がする。 |
No.245 | 8点 | 天使の傷痕 西村京太郎 |
(2016/04/02 22:29登録) 「本当に愛しているならば、女が男を殺人のアリバイに利用するのか」だの「現代ならば、ミステリーも殺人犯の心情や生活環境を詳しく語る」だのという意見は一種のギャグなのだろうか。本作は別に「男への愛」を描いた作品(「女への愛」ならまだわかるけど)でなければ、犯人を語り手にした倒叙ミステリでもない。 しかしまあ、「あんた(主人公)だけが偉いのかよと反発したくなる」という意見に関してはなかなか考えさせられるものがある。この作品では、必ずしも主人公が絶対的な正義として描かれてはいない。(主人公に対する)敵サイドの意見にもきちんと道理があり、そしてそれが強い説得力を持っている。だからこそ、読者側としても完全に主人公の味方をすることはできず、どこか「あきらめ」の気持ちが生まれてきてしまう。(もし作者が島田荘司とかだったら、主人公が村人を殴って終わりだっただろう) しかしそれでも、主人公たちを応援したくなってしまうのは、彼らの「悲惨な状況を打破したい」という思いが鮮烈に描かれているからに違いない。道徳と社会を対立させることで、本作は「善の研究」を成したのではないかと思える。トリックはなんとも単純なので謎解き小説としては微妙だが、筆致と高い社会性を評価して8点。 |
No.244 | 3点 | ムーンズエンド荘の殺人 エリック・キース |
(2016/03/20 23:03登録) うーん、アメリカでいまどきこんなレトロな本格ミステリが出てくるのは意外だったし、序盤は面白く読めたんだが……ちょっとレトロすぎた。利き腕とか入れ替わりみたいなネタは本格ミステリが充実した日本では少々肩透かしな印象。読みやすいという意見もあるが、ブライアンとジョーナスを始めとしてキャラの書き分けが微妙だし、むしろ読みづらかったような気が……。犯人当ての伏線の多さには驚いたが、それを楽しめるほどには話には乗れなかった。しかしまあ、作風は嫌いではないので次回作に期待しておく。 |
No.243 | 6点 | 大誘拐 天藤真 |
(2016/03/20 22:45登録) 憎めない誘拐犯トリオのやり取り、ハッスルしたばあちゃんのキャラクター、本気で100億円獲得をやらかすハチャメチャなプロット。面白かった……が、どうも「軽い」という印象が強かった。登場人物がどいつもいい人すぎて、なんだかしっくりこない。しかしまあ、人によっては「すべてにおいて完璧」だとか「エンターテインメントの極み」だとか言ってしまうようだし、きっと趣味の違いなのだろう。ドタバタ劇なら私は筒井康隆の強烈な毒のほうが好きである。 |
No.242 | 4点 | 万能鑑定士Qの事件簿4 松岡圭祐 |
(2016/03/01 02:26登録) 相変わらず文章は読みやすいし、意外な犯人といえば意外な犯人だが、少しだれてきた。ご都合主義を徹底している分、そこに乗れないと楽しむのが難しい。今回はオタクコレクションを巡る旅で、サブカル方面に知識がないとやや退屈。前三作みたいなとんでも現象もないし、やや読むのがつらかった。ポスターを焼く理由も斬新ではあるけど、なんだか釈然としない。そこまでやるかなあ……。 それにしても、イケメンで結構な仕事をしていてそこそこの学歴がある主人公に「オタクは莉子さんを汚すぜ!」みたいなことを言わせて大丈夫だったんだろうか、Qシリーズの読者の大半は、オタク的な性質があるだろうし、美形じゃないだろうし、立教に入れるだけの学力もないんじゃ……。いや、これは喪男たちへの警鐘なのだろう(笑)。 |
No.241 | 5点 | 万能鑑定士Qの事件簿3 松岡圭祐 |
(2016/03/01 02:15登録) さすがに前作ほどのインパクトはないものの、展開はうまい具合に二転三転し、意表をついたどんでん返しも用意してくれているので楽しく読めた。赤点の生徒が東大リスニングで満点とか、とんでもない現象をうまく持ってきてくれるのも良し。しかし、ちょっと前まで日本壊滅だったのに、何ごともなかったようになっているのに笑う。Tポイントカードもクソもねえwww。 |
No.240 | 6点 | 万能鑑定士Qの事件簿2 松岡圭祐 |
(2016/03/01 02:10登録) ストーリーは清々しいまでにご都合主義だが、二転三転する事件の模様と、日本壊滅のインパクトのおかげで、飽きずにスラスラ読める。犯人の正体にもショックを受けつつ「ねーよww」と笑わせてもらった。面白かったが、このテンションに飽きが来たときに楽しめるかは、やや心配。次回作で新たな展開を見せてくれることを期待しよう。 |
No.239 | 5点 | 万能鑑定士Qの事件簿 松岡圭祐 |
(2016/03/01 02:04登録) 力士シールだの日本壊滅だの、いきなり話がインフレしすぎていて笑いがとまらんwww。ストーリーは荒唐無稽なのに、固有名詞をどんどこ出して説得力を強固にしてしまうあたりは、この作者ならではといったところか。莉子さんの成長物語を、高校生の学参みたいな知識とともに語ってくれます。空気にうまく乗れるなら、結構楽しめる一冊。 |
No.238 | 6点 | しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 泡坂妻夫 |
(2016/03/01 01:53登録) 文字にかける執拗ぶりは後続の倉阪鬼一郎ほどではな い(紙とワープロの違いはあれど)が、初読ならほとんどの人がびっくりするトリックだろう。しかし、個人的には、それ以上に、どたばたギャグ小説としてこの作品を楽しんだ。ヤセールみたいな小ネタ、ガンジー先生の飄々としたキャラクター、泡坂作品は肩の力を抜いて読めるのがいいのです。 |
No.237 | 7点 | 奇想、天を動かす 島田荘司 |
(2016/03/01 01:34登録) 同じトラベル・ミステリ作家でも、西村京太郎のほうが社会派ミステリ作家としてはるかに優れているな、と思わされた。「本格と社会派との融合」だなんてとんでもない。結局のところ、島田荘司のやっていることは、社会問題を安直にエンターテイメントと結びつけて「水戸黄門」をやっているだけ。大西巨人の言う「俗情との結託」をここまで地でいってしまうとは涙が出てくる。 「悪」として日本人を設定し、「被害者」として外国人を設定し、「正義の味方」として主人公を設定する。それだけの発想から生まれた単なるヒーロー小説に社会派のリアリティもへったくれもあるわけがない。単なる不幸な外国人の人生を追ったホワイダニットものだったんなら、まだ良かったんだが、「我々は謝っても謝りきれませんなあ」だとか「俺たちは負の面をたくさん持ってるんだ〜」とかキャラクターに言わせているあたりでドン引きしてしまった。こんなもん、「自虐している俺はなんて善人なんだ」みたいな無自覚ナルシストじゃない限り、萎えること請け合いである。売れたいがためにこんなもんを書いたのかは知らんが、島田荘司は社会派を書くなら、森村誠一みたいなゴミじゃなくて、『天使の傷痕』の個人と社会の対立にもっと学ぶべきだったというべきだろう。 しかし困ったことに、この作品、本格ミステリとしては抜群に面白い。事件のスケールの大きさもさることながら、消失するピエロ、空飛ぶ列車、白い巨人と、とんでもなく魅力的な謎を提示してきたうえで、それを本格的に絶妙に処理してしまう。老人の気味悪い&ミステリアスな空気も話の掴みとしては十分で、作品としては、全体的にかなりバランスがいい。それだけに前述の薄っぺらい社会派成分が残念だった。 本格ミステリとしては8点だが、社会派ミステリとしては3点がつけばいいほうだろう。 |
No.236 | 4点 | 寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁 島田荘司 |
(2016/03/01 01:01登録) 島田荘司は本格ミステリ作家として非常に高い技量を持っているが、それが常に上手く機能するとは限らない。冒頭から覗き魔を出したり、残虐な死体を出したりなんかをするのは掴みとしては悪くないんだろうが、なんというか殺伐としすぎていて、トラベル・ミステリの「ああ、風流ねえ」という空気には合っていないんだな……。本格ミステリの作法が根底にあるせいなのか、吉敷が動き回っていても、事件解決のパーツを揃えるためにキャラが動かされているだけのように感じてしまう。そんなわけで社会派としてはあまり面白くない。新人とベテランの違いはあれど、読んでいて飽きず、旅町情緒も味わえる西村京太郎との間に大きな差を感じた。まあ、島田荘司が西村京太郎に劣っているというわけではなく、ただ、作風が合っているか合ってないかの違いなんだろうけど。どんでん返しの技術にはさすがだと感じさせられたので4点。 |
No.235 | 7点 | 漱石と倫敦ミイラ殺人事件 島田荘司 |
(2016/03/01 00:45登録) ビビりまくる漱石wwwwwww。「徳の高い人物」と「モリアーティをだますだの変装」のくだりに爆笑させてもらいました。シニカルな漱石の語りと、大袈裟なワトスンくんの語りのギャップがとにかく笑える。ユーモアを書かせても面白いあたりが、作者の技量の高さを示しているといえるでしょう。終盤が駆け足ぎみで、トリックが軽い感じに収まってしまったのが少し残念だが、まあ、作風的にあまり派手なトリックにはできないだろうからな……。 |
No.234 | 8点 | 占星術殺人事件 島田荘司 |
(2016/03/01 00:34登録) 三度読み返してしみじみと思ったことだけども、とことんメイントリック一本に絞った構成になっている。トリックのための事件、トリックのための登場人物、トリックのためのストーリー。作者もよほど自信があった証拠だろう。改めて見ると、出し惜しみ感がすごい。中盤に御手洗がトリックを思い付かずに混乱している場面なんか、真相を知ってから読めば、「どうしてこんなのがわからないんだ!」と思ってしまうのだが、初読時には私も御手洗と同じくさっぱりわからなかった。トリックの期待度を高める演出は、この作品に限らず多くある(極端な例でいえば流水)ものの、その期待を上回る結末を見せてくれる作品は稀である。そして本作はその稀な部類の作品だった。 トリックは作者の演出力があって初めて光るものだと思っているのだが、島田荘司は本当にそこをよく掴んでいると思う。たぶん『六枚のとんかつ』や『異人館村殺人事件』で初めてこのトリックに触れたとしても、さしてインパクトはないだろう(頭の体操?ぐらいの感想に終わる)。どうしてこの作品に関してはここまでトリックの衝撃が強くなるかと言えば、冒頭の手記から、中盤のミスリード推理まで、伏線が周到に張り巡らされているところに理由がある。アゾート製作だの、死体運搬の旅だの、一見どうでもいいようなサイドストーリーを大袈裟にしまくるのも、すべてはトリックの衝撃を最大限にするため……。あり得ないような決着でも、ここまで徹底的にやってしまえば、文句のつけようがない。本格ミステリとしては疑い用のない完成度の作品。 それにしても、かわいそうなのは金田一と横溝正史だ。なんの関係もないのに、「切腹しろ」なんて訳のわからん因縁をつけられるとはwwww。 |
No.233 | 6点 | ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ! 深水黎一郎 |
(2016/02/13 02:19登録) どうも「読者=犯人」の触れ込みに惑わされている読者が多いんじゃないかと思う。すでに指摘されている方もいるが、この作品はあくまで作中作構造であって、「『ウルチモ・トロッコ』を読んでいる読者たちが犯人」などとは一言も書いていない。当然、「読者の解釈によっては破綻する」なんてことはありえない(「『ウルチモ・トロッコ』の読者=犯人」ではないから)わけで、この作品の中では「読者=犯人」という図式を十分こなしていると言えるだろう。もちろんそこにガッカリする人も多いだろうけど……。 作者が黒歴史にしているというウワサ(最近文庫化したけど)を聞いていたので少し怖かったが、なかなか面白い作品だった。デビュー作(しかもメフィスト賞)にしてはやけに文章が落ち着いているし、なんだか読んでいて楽しい。作者がわりと歳を食っていたと知って納得。「読者が犯人」というメチャクチャ気になる前書きから、超能力についての話題、ところどころに現れる黒歴史日記(笑)まで、何かがありそうだがどこに着地するかわからない。それが先行きを気にさせるから、どんどん続きを読みたくなってしまう。真相には「くだらねーww」と苦笑いしまったが、確かに伏線はしっかり張られていたし、まんまと一本とられたと思わされた。本格ミステリというよりもネタ本として優れた一品。 |
No.232 | 6点 | 星降り山荘の殺人 倉知淳 |
(2016/02/12 13:10登録) 斎藤警部氏の書評を見てショックを受ける。この作品が叙述トリックものとして評価を受けていたとは……。誰がそんな評判を広めた(もしかして作者自身が言ってたりする?)かは知らないが、私見ではこれは叙述トリックではなく単なるミスリードの一部。これが叙述トリックならルパンやブラウン神父の初登場作品だって叙述トリックになっちゃうじゃないの。この作品の真価はかっちりとした犯人当て(叙述トリックが肝心なんて意見は的外れ)のほうにあると思うんだが、このサイトの書評を見ると、「トリックがわかった! 簡単!」みたいな意見ばかりで涙が出てくる……。これは『十角館の殺人』や『弁護側の証人』みたいな話の根幹を錯覚させるものとはまったく異なるタイプの作品なのです。 倉知淳ほどパズラー推理にこってる作家はなかなかいないと思うけども、それが特にわかるのは、ミスリードの回収の上手さ。この作品でそれが特に発揮されるのは、「ミステリーサークル」の存在でしょう。このなんとも不思議な現象が、犯人にとって必要なものだったと判明したときのカタルシスはなかなかのもの。また誤答推理のほうでもこの現象を野放しにせず犯人当ての材料に使っていき、その推理もそれなりに納得できるものになっているのがまたいい。このクリスティ的なミスリードについては、新本格でもなかなか使う作家は見当たらない(法月はなんか違う)し、そういう仕掛けを積極的に使う点で倉知はレアな作家なのです。叙述トリック一辺倒の作品と並んで評価されるのはいかがなものか。 まあ、問題点としては話の中盤が中だるみ気味だったということだろうか。最後の犯人当てを成立させるためには分量が多くなるのは仕方ないが、やや退屈。米澤穂信の『折れた竜骨』などはこの作品の影響をもろに受けてるんだろうが、あちらはファンタジー小説としての要素を加えることで、読み物としてそこそこの出来になっているし、読んでいて退屈することはあまりない(その代わり分量はかなり多め)。しかしそういう手を使わないところに、倉知淳の本格スピリットというのが見えてくるではありませんか。 |
No.231 | 6点 | 殺戮のディープブルー 天樹征丸 |
(2016/02/11 21:56登録) 原作の金田一少年ではこれが一番面白かった。大掛かりな舞台と、いかにもといったテロリストたちとのバトルが、なんとも少年マンガという感じでよろしい。周防さんや三井くんたち茜の婚約者候補の連中がなかなかキャラが立っていて、彼らのやり取りも冴えている。犯人が分かりやすすぎる上に、トリックも実にしょぼいのが難点なんだが、個人的には金田一少年にトリックを期待してはいないので大して気にはならず。あえていうならヒロインの茜があの素敵な婚約者候補たちが盲目になるほどの女性に見えなかったのが難点か。しかしまあ、金田一少年はマガジン的というのか、基本的に女の子があまり可愛くないから仕方ないか……。 |