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ミステリの祭典

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ロマンさんの登録情報
平均点:8.08点 書評数:177件

プロフィール| 書評

No.37 9点 七回死んだ男
西澤保彦
(2015/10/20 14:54登録)
SFミステリーという枠組みを、確立させた作家さんの一人だろう。しかし西澤氏の作品は、単にSF背景の中で殺人事件が起きましたと言うものではない。そのSF要素そのものが無くては、トリックが成り立たたないのだ。主人公は月に何日かタイムスリップに会い、同じ日を何度か繰り返す特異体質なのだ。その最中に殺人事件が起きてしまう。普通は起きてしまった殺人事件の真相を、解き明かすのみである。しかし起きた殺人事件をやり直して、どうすれば殺人が起きないのか右往左往する処が読み応えが有るのだ。最期に謎を、隠している処も楽しめた。


No.36 9点 大誘拐
天藤真
(2015/10/20 14:45登録)
ユーモアがあり、テンポもよく、登場人物がみんな愛すべきキャラクター。 結末も読み手が望むところに落ち着いていると思う。 つっこみどころは多々あるものの、爽やかな名作。


No.35 8点 斜め屋敷の犯罪
島田荘司
(2015/10/20 14:43登録)
現実にはまず不可能でも、紙の上だからこそ許されるトリック。この屋敷の構造はずるい。謎解きをされた瞬間はなんじゃそりゃこりゃとなるけれど、振り返ると各所にわりとはっきりヒントが書かれていたことに気付き、納得せざるを得なくなってしまう。「本当っぽさ」のさじ加減が実に絶妙で、その大胆さがまさに「新本格」らしい、屋敷全体をフルに活かした館物だった。


No.34 8点 グリーン家殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2015/10/20 14:38登録)
この推理小説は「犯人は誰か、何のために」を論ずる物ではない。閉鎖的な家で登場人物が次々殺されていく中で分かってしまうから。重要なのは如何にしてヴァンスが矛盾なく推理して行くか、その過程が面白い。謎を残さず全て解明していくので読者は読み終わった後すっきりする。86年前書かれたとは思えない面白さがある。


No.33 9点 幽霊の2/3
ヘレン・マクロイ
(2015/10/20 14:36登録)
パーティーで行われたゲーム「幽霊の2/3」の最中、人気作家が殺害される。事件が起こるまでに読み手に知らされた各登場人物の性格付けと、本格ミステリのお約束である3つの謎。それに加えて次々と増していく謎が読み手の進路を誤誘導する。ただ本格としてはもうひとつインパクトに欠ける。個人的には事件の謎そのものより、登場人物たちの自己本位さと、出版業界裏側の描写に惹き付けられた。秘められた真実を表すタイトルが何より秀逸。


No.32 5点 雪密室
法月綸太郎
(2015/10/20 14:33登録)
「法月綸太郎シリーズ」第一長篇。シリーズ作品は先に数冊読んでいたが、単なる探偵役に済まされない、法月親子の物語として意識される内容が新鮮だった。作風自体は異なるものの、全編に漂う空気には何処かデビュー作『密閉教室』と同様の肌触りも感じられる。ただ、流石にトリックに関しては古びてしまっているような印象も。媒体問わず様々な形で後継となる作品が出揃っている現代にあって、発展史を学ぶ以外にわざわざ読む意義がどれ程あるかは悩み所。構成に係る仕掛けも見破れてしまい、謎解きによるカタルシスは味わえなかった。伏線は丁寧。


No.31 9点 ハサミ男
殊能将之
(2015/10/20 14:27登録)
本当に見事に騙されたとしか言いようがない。驚愕の結末というだけでもネタバレになってしまいそうだ。先入観なしに読むことをおすすめする一冊だ。トリックもかなり精緻に練られており、その切れ味は十分である。


No.30 9点 獄門島
横溝正史
(2015/10/20 14:22登録)
横溝作品の中でも、とりわけ評価の高い一作。登場人物、真犯人の正体、動機、使われたトリックと小道具、エンディング、どれも「獄門島」という舞台が存分に活用されている。終戦直後の時代と古さを感じさせない展開、読みやすさは流石。飛び抜けた何かがあるわけではないが、全てにおいてレベルの高さを感じる所はやはり不朽の名作と呼んで差し支えないと思う。


No.29 8点 白昼の悪魔
アガサ・クリスティー
(2015/10/20 14:19登録)
どんな男も虜にする美しき元女優の登場で、避暑地の平穏は破られた。元女優を中心に二つの三角関係が形成され、険悪な雰囲気が漂い始める。そしてついに、元女優が何者かに扼殺される事件が発生。しかし、関係者いずれにも鉄壁のアリバイがあり……。序盤にぬけぬけと張られた伏線や、シンプルながら切れ味のあるアリバイトリックが見事。


No.28 9点 刺青殺人事件
高木彬光
(2015/10/20 14:15登録)
高木彬光のデビュー作。デビュー作にしてかなりクオリティが高い。密室の物理的トリックは心理的トリックの煙幕というのも面白い。顔の無い死体のすり替えトリックも、胴体の無い死体のトリックから注目をそらす効果があり、非常によくできている。


No.27 8点 マジックミラー
有栖川有栖
(2015/10/20 14:11登録)
新本格ではあまり見ない鉄道を使ったアリバイトリックと、タイトルに懸かる双子トリックが盛り込まれたとても贅沢な謎解きミステリ。アリバイ崩しものはあまり得意でないのだが、それがメインでない構成とラストの巧みなどんでん返しには“流石”の一言だ。ダイアローグとモノローグの美しさ、伏線の周到さ、空知が繰り出す“アリバイ講義”、ラストのカタルシスまで非常によく練られた作品である。


No.26 9点 緑は危険
クリスチアナ・ブランド
(2015/10/20 14:08登録)
手術の最中に死んだ郵便配達夫、その事情を知っていた看護師の殺害──メスによる第一の刺傷で即死であったにもかかわらず、なぜ犯人は被害者に手術着を着せて、もう一度刺したのか…。中盤を過ぎたあたりで巧妙なトリックはコックリル警部によって解明される。が、そこから「限定された容疑者たち」が犯行についてディスカッションをし、様々な仮説が飛び交い、それらが否定され、二転三転するブランドならではの展開に──コックリルは容疑者たちに心理戦を仕掛ける、が、それが「容疑者たちの絆」を生じさせ、思いもよらぬ結末へ。傑作。


No.25 9点 野獣死すべし
ニコラス・ブレイク
(2015/10/20 14:06登録)
冒頭の日記からは倒叙ものなのかと思いきや違い、後半怒濤の本格ミステリになり、本格ミステリの部分はどんでん返しが、という三重四重の構造も秀逸でありながら、細やかな心理描写や人のありかたが読んでいて心にしみる小説だった。


No.24 9点 孤島パズル
有栖川有栖
(2015/10/20 13:30登録)
(ネタバレ)“地図に残されたタイヤの跡”を起点とする犯人特定のロジックが秀逸。前述の物証から、犯人が自転車で一往復した事は明白。但し地図が元々魚楽荘にあった事から、タイヤの跡がついたのは“二度目の往路”の際。よって犯人は二往復した事になるが、最初の往路と最後の復路は泳いで移動していた(ボートと自転車が使えなかった為)。防水処置を施していないライフルを持ち帰り、泳げない男に自分の罪を着せる為に自転車で一往復した――という真相には説得力がある。一方、第一の事件では被害者自身が鍵をかけて現場を密室にした動機が巧妙。


No.23 9点 九尾の猫
エラリイ・クイーン
(2015/10/20 13:24登録)
ニューヨーク市中をじわじわと連続絞殺魔の恐怖が襲い、市民は見えない犯人に怯えていた。かつての推理の失敗のためもう二度と事件には関わらないつもりでいたエラリイだが、クイーン警視の懇願もあり重い腰をあげる。ヒステリーとパニックの気配が充満していて、何の共通点もなさそうな被害者からミッシングリンクを見つけ出すまでの手に汗を握る展開、その後の急降下も含めて、とても面白かった。論理と知性を鼻にかけ、それを自分のために磨くいけすかないエラリイは、ここにはいなかった。


No.22 10点 時計館の殺人
綾辻行人
(2015/10/20 13:21登録)
館シリーズ五作目。 緻密に計算された<時>を題材にした本格ミステリである。先ずは巧妙に練り上げられたトリックを、物語の引き立て役として使い捨てる氏の大胆さに驚愕するだろう。そして、結末を予測した読者を困惑させる、あまりにも普通過ぎる結果にたどり着いた瞬間に、物語の初めから終わりまで流れ続ける<時>が文字通り音を立てて崩れていくのである。


No.21 10点 オランダ靴の秘密
エラリイ・クイーン
(2015/10/20 12:39登録)
国名シリーズ第三作目。数々の著名な本格ミステリ作家陣からフーダニットの最高峰と呼ばれる本作、果たしてどのような道筋で犯人を導きだすのかと期待に胸を膨らませたが事実と論理を組み合わせた予想を遥かに上回るフーダニットだった。概ね犯人の特徴に感づくことはできたがエラリーの様に確信を持って1人に絞り込むことが出来なかった。驚くべきは物的証拠を一切用いずに容疑者一人一人の信頼性と俯瞰した状況を突き合わせて確実性を増した証言のみを検討してたった1つの真実へと辿り着いていること。ミステリ好きならばたまらない作品だろう。


No.20 9点 プレーグ・コートの殺人
カーター・ディクスン
(2015/10/20 12:18登録)
黒死荘で降霊会が開かれようという矢先、庭の石室で術者が惨殺された。凶器と目されたのは遺体の傍にあった短剣。そのかつての所有者は、屋敷と浅からぬ因縁を持ち、呪いの言葉を叫びつつ黒死病に倒れた絞刑吏助手だった。現場の石室は窓の鉄格子以外に隙間がなく、周囲には足跡も残されていない。これは幽霊による殺人なのか? H・M卿初登場作品。密室での殺害方法より密室が作られた理由の方に感心した。もう意外性はないかと思っていたら、犯人の正体を知ってまたびっくり。少し無理がある気もするけれど。予想以上にトリッキーな小説。


No.19 8点 赤後家の殺人
カーター・ディクスン
(2015/10/20 12:14登録)
第一の殺人のトリックは秀逸。毒の性質、毒殺方法のヒントが散りばめられているが、カーらしいオカルト趣味が、うまくそこから注意を逸らしている。第二の殺人及び真犯人の心理や目的については、人によって評価が分かれるかもしれない。個人的には、犯人の特定は十分にできるので、動機は後からついてくるものとして捉えても良いように思えた(まあ、部屋からの返事とか、冗長な要素は多いのだが)。総じて言えば、非常に面白い一冊。H・Mはややおとなしめだが、マスターズはよく頑張った。


No.18 10点 十角館の殺人
綾辻行人
(2015/10/20 12:11登録)
大分県の東岸S半島J崎、ひなびた港を出発し沖合約5キロに浮かぶ角島に向かうK大ミステリー研究会のエラリイ、カー、ルルウ、ポウ、アガサ、オルツィそしてヴァン。そこには十角形の奇妙な館「十角館」がある。昨年この島では、凄惨な事件が起こっている・・角島青屋敷謎の四重殺人。屋敷は炎上、主の中村夫妻、使用人夫妻は惨殺。失踪した庭師の犯行が疑われたが未解決となっている。一週間の滞在を心待ちの学生達、しかし左手首を切断され絞殺死体となったオルティが発見されるがそれは始まりに過ぎなかった。連続殺人の謎、結末は衝撃・・ ・

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